こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。

 

 前回の記事では円形脱毛症の1種類である反発性円形脱毛症の経過について書きました。本日の記事ではその症例をなぞりながら円形脱毛症全般について思うところを書いてみたいと思います。

 

 

まずこの反発性円形脱毛症を引き起こすに至った原因ですが患者様から詳しくお話を伺いました。御本人として原因かどうかはわからないが抜け始めたと感じられた時の出来事をお聞きできました。

 

それは多量の飲酒です。

 

元々お酒にお強い方で普段から酒量は多いとのご自覚が有りました。その方が多量というのは本当に多量の飲酒であったと想像できます。そして飲酒した翌日にシャワーで異常な程の抜け毛が認められたそうです。そこから症状が始まりました。

 

一般的に円形脱毛症は3ヶ月前に何かアクシデントがあって……という言い回しをされますが、私はこれとは違う見解です。私の見解はアクシデントの直後から抜け始めます。過去記事でも書いていますが抜け始めて3ヶ月位経過すると気がつくくらいの大きさに成長してしまっている、若しくは日常生活の中で頭を触るなど気がつくような仕草をします。この仕草を繰り返す中で確率論的に3ヶ月位の間で気がつくのだろうと考えています。飲酒にしても飛行機にしても風邪やインフル、この3〜4年の注射にしても行動をした当日から遅くとも1週間程度で変化が訪れていました。ご来院されている方の頭皮は毎回チェックしているのでそう言えます。

↓3か月前についての詳細はこちらを!

 

 

少し話が外れますが今回のような多量の飲酒というアクシデントだと直後から症状が始まりますが生活習慣による発症に関してはこの限りでは有りません。

例えば一気に多量の飲酒をしなくても普段からの酒量が多くなってきた時や甘いものなどの過食、首肩のコリ、眼精疲労などは発症の明確な日時が分からない時があります。

ここから導き出される推論としては髪に対して悪影響を与える様々な要因の累積量により発症を促すのでは無いかという事です。イメージしにくいかもしれないので例えると丁度運転免許の点数制度に似ていると思います。違反運転の程度や頻度により点数が加算され、一定の点数に至ると免停や免取りになります。細かい違反(速度10キロ超過)を繰り返して免停になる場合、大きな違反(速度40キロ超過)では一発免停(免取り?)もあります。この制度と円形脱毛症の発症は似ているように思えるのです。逆に言えば細かい違反だけならば免停にならない程度で難と過やっていけるわけです(交通法規は守りましょう例えです念の為)。髪に対して後ろめたい生活習慣が続いたならばそれから暫くの期間は大人しくしておいた方が良いということになります。なので一生お酒が飲めない、アイスが食べられないであるとか極端なことは考えなくて良いと思います。時を経て自然に治る円形脱毛症も多いのはコレだと思います。

 

話は戻ります。

私はこの方の発症のきっかけは多量の飲酒と見ました。そしてこの方は今回が初めての円形脱毛症では有りませんでした。従来から時折小さな脱毛部が現れては消えることを繰り返されていました。つまり何か体調の不良が有った時にその影響が円形脱毛症として現れやすい状態だったと言えます。言い換えればその時円形脱毛症に縁が強かったわけです。このような時、飲酒という大きなアクシデントがあって燻っていた脱毛症に傾きやすい体質に火が着いたとも言えます。過去記事『ボム!』で書きましたが病気は爆弾に例えられます。火薬(体質)と起爆装置起動(アクシデント)の両方が揃わなければ爆発(発症)しません(タブン)。

 

ではこの方の体質とはどうだったか。

所見としては肝鬱血瘀(かんうつけつお)と診ました。肝(かん:肝臓にまつわる気)が渋滞するのと同時に血(けつ:血の状態)が非常に悪いといった感じの意味です。

脈診では強い弦脈(げんみゃく:橈骨動脈の脈の打ち方が弦楽器の弦のような感じ)で舌診では暗い紫が印象的でした。また頭頂部は肝の経脈(けいみゃく:気の通り道)の終着点ですがそこから抜け始めたことも肝にまつわる症状であることを感じさせました。眼球の白眼部分も赤っぽく『気』の上亢(じょうこう:上半身に偏る事)が伺えました。

更にマニアックになりますが左の心兪が凹み、左の肝兪が固く、右の三陰交にホクロがあるという円形脱毛症の典型的なお身体つきをされていました。円形脱毛症に特有な身体つきは過去記事を参照してみてください。最後のハットリ君(?)のイラストに載せています。最近はこれに列缺(れっけつ:肺のツボの一つ)のホクロも加わります。

 

 

そんなこんなで施術は疎肝駆瘀血(そかんくおけつ)をテーマに据えました。疎肝駆瘀血とは肝の『気』を散らして瘀血を排除するというそのままの意味です。東洋医学の見立て(証立て)とはそのまま治療法も意味するのですが当にその通りです。

こうして方針が決まったわけですがさて、どの方面から攻めるかが問題です。肝鬱も血瘀もそれだけである一定の候補となる経穴(けいけつ:ツボの事)が割り出せるのですが経穴であれば何でも効くというわけでは有りません。実際には見て聞いて触って経穴の異常を察知していかなければ効果的な経穴は見つけられません。

そしてこの方の場合、身体の背面にある太陽膀胱系(たいようぼうこうけい)と呼ばれる経脈上にある経穴に気に成る点が多くあることが分かりましたのでこの経脈を中心に疎肝駆瘀血を目指していく事としました。その途中経過が前回のブログの記事でもあった左側の太陽膀胱系の経絡上の変化です。

※前回の記事から抜粋

※出典『経絡流注講義』横田観風著 医道の日本社

 

とは言え、膀胱経を中心に施術したら全員がこのような感じで回復し始めるわけではないのです。ヒトによっては大後頭神経と呼ばれる神経が後頭部を走っていますがその走行部位と思われる部位だけ髪の生えるのが遅かったり、もみあげ部の膨らんだ血管の上だけ髪の生えるのが遅く成ったり生える順序だけでなく生え方や部位も含めて回復過程はヒトにより様々です。

前回の記事のおさらいにもなりますがこの過程を観察する事で現在の症状の成り立ちや失調の中心が推測出来たりもします。

 

そうして施術をしていくわけなのですが毎回施術後は先ほど書いた弦脈と呼ばれる脈状や舌の深い紫色などが改善され穏やかで元気な脈に、明るい赤で適度に唾液で湿っている脈に変化しています。施術中という短い時間ではありますが適切な施術を施すと見事に脈や舌が変化します。程よい脈の打ち方、きれいな舌の色が出ればその施術はそのヒトの体質を改善していく方向に向かっていると言えるでしょう。誤っている場合はより不健康そうに思える脈や舌の状態を呈します。そしてこの変化は翌日には元に戻っています。そうすると一見意味ないようにも思えるのですが体質改善とはこのような変化を反復していく事で徐々に変わっていきます。筋トレと同じです。

しかしこの方の場合は脈も舌も良い方向へ持っていく事は出来ていたのですが抜けが止まりませんでした。前回の記事で書きました「時系列的な足きり脱毛現象」の場合、抜けを止める事の難易度は高いと云わざるを得ないのです。では一生懸命施術を受けて意味がなかったかと云えばそうでは無いと思います。その後が違うと感じます。抜けてしまったらもうお終いという訳ではありません。以前にも書きましたが円形脱毛症において抜ける期間というのは全闘病期間を見渡した時、ほんの一瞬でしかありません。その一瞬は大事な時間である事は間違いないのですが本当に大事なのは髪が生えてくる事です。特に汎発性の場合は抜けた後に髪が生えずうんともすんとも言わない期間(停滞期)がとても長い傾向なのが特徴です。

↓抜けている時と生えない時、円形脱毛症の本体とは?

 

回復速度の違いはQOLに大きな違いを生みます。前回に引き続きかきますが営業的な意味ではなく施術頻度を高く維持できるとその後の速さが異なる傾向があります。これもあくまでも傾向なのであって全員がそうなるとはいえません。やはりなかなか生えてこない場合もあります。ですが私の経験則上確かに回復(髪が生えだす)が早まる傾向はあるように感じます。

 

 

そして回復してきた後の事です。これは汎発性に限らずの話なのですが回復してきて暫くすると誰もが少し気持ちが緩み始めます。これはとても良い事なのですが同時に粘り強い注意が必要な時でもあります。

それまで期間は様々であっても定期的に施術を受けられていたのが諸事情によりポカーンと間が空いてしまう事があります。そしてそれが1度ではなく連続していきます。これは当院の鍼灸だけでなく皮膚科の治療にも言えるように感じるのですが受診の間隔は指示の無い限りは出来るだけ伸びないように守られた方が良いです。あくまでも私の印象ですが皮膚科で言えば特に局所免疫療法はやるにしてもやめるにしても医師の指示通りにされた方が良いと思います。やったり止めたりは特に局所免疫療法の場合お勧めできないと個人的に考えています。

当院での鍼灸施術に関しては3週間が一つの区切りとなるように思えます。そしてそれまで調子よく回復してきていたとしてもどこか少し髪が切れ始めていることが出始めるのが5週間くらい無施術の時です。もちろん全員が5週間で悪化し始めるわけでは無く、少数ではありますがこの位の期間で出てくる傾向があります。もちろん期間の問題だけでなくその間に過食などの影響を受けている場合もあります。この3週間の区切りというのは最初アトピー性皮膚炎の施術から経験則として出て来た期間です。アトピーの痒みを抑えるための施術も脱毛症と同時にする事があります。これも個人差があるのですが結構治まると思います。そして痒みの治まっている期間を見ていくと多くの方で3週間は痒みの少ない状態を保てるようなのです。一月後にご来院された方にお話を聞くと先週位から少し痒くなってきた云々と云われる方が多く、そこから導き出した期間が3週間なのです。では3週間で良いかといえばそうとも限らない。私の受ける印象では例えば住宅ローンなどの利息だけ払って元本がなかなか減らないような期間というのが丁度3週間位の施術間隔であると感じています。では3週間以上の間隔では治らないかと云えばそうとは限りません。症状の落ち着いた状態であったりする時は3週間以上の間隔が空いた時であっても施術は十分プラスに成ると思います。あくまでもお身体の調子次第で間隔の開いた施術に意味があるか否かが変わってくるように思います。激しく抜けている真っ最中に1カ月に1度では意味が薄いという意味です。円形脱毛症は誰でもどうしても長期戦に成ります。頑張り過ぎては続きませんのでその人なりの頑張り方で行くしかないのですが無理は禁物です。

 

 

また症例の話に戻ります。

総合的に見てこの方の場合は回復が速かったこと何よりも良かったと感じます。

もちろんもっと早ければ……との思いもありますが本当に悪い症状の場合に比べてまだ良かったと言える範囲だと様々な円形脱毛症を見させていただいてきた経験から個人的に感じています。

それ以外にも回復の速い傾向にあるのが小児です。小児といっても幅が広いのですが乳幼児から中学生〜高校生位を含みます。この場合は何度も経験してきていますが私が驚くような速さで回復する例があります。とは言え小児も先ほどの3週間の縛りを受けます。これもやはり全員では無くてあくまでも傾向ではありますが、小児の回復が早い事は元々の新陳代謝の速さが関係しているのではないかと考えています。脱線しますが新陳代謝で必須なのは『亜鉛』と『ビタミンB』ですね。どちらも円形脱毛症で重要とされている栄養素です。そう考えるとやはり円形脱毛症は新陳代謝の失調が原因なのではないかと思いを新たにするのでした。

よければ参考にしてみて下さい

 

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≪参考過去記事≫

 

 

 

 

胃が元気になる気がします(個人的な感想)。

副作用はお腹がすくこと?!

亜鉛も銅も入ってます。

チロシンも入っています!

 

 
 
 
 
 
 

 

 
 
 

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