『生える』は『伸びる』の一部です

こんにちは。

あおい堂鍼灸院の今泉です。

円形脱毛症において一般的に注目されるワードは『抜け毛が止まる』と『髪が生える』、この2つではないかと私は思っています。

『抜け毛が止まる』はその名の通り脱毛部が広がらないように、頭皮の肌色が目立たないように願う言葉です。円形脱毛症は実質見た目の問題である事が大半なのでこの願いは切実です。しかも刻々と変化する病勢に不安を抱きながら過ごす時間がどれだけ辛く苦しいか。罹った人にしか実感として理解する事は出来ないと思います。変化する病勢、つまり円形脱毛症の『動』の側面です。

しかしながら誤解を恐れずに云うならば私は円形脱毛症において抜け毛が止まる事も当然極めて大切な事柄であると思うのですが、さらにその上を行く重要な事は『髪が生える』事であると感じています。先ほどの『抜け毛が止まる』を「動」とするならば生えるのを待つのは動きの無い時期をただただ待つ『静』の時期であると思います。これはこれでまた非常に辛いものです。いつに成ったら……という確約の無い先が見えない状態です。そして円形脱毛症は抜け毛が治まったら生えてくるというものでもありません。抜け毛が止まったと思えてもその先、直ぐに髪が生えてくる人もいれば、数か月、数年、更にはもっと……髪が生えてくるような変化が見られない事も普通にあります。髪が生えて来て初めて回復してきている事を自他共に実感できるようになるのです。円形脱毛症の肉体面にピリオドを打つ為には髪が『生えてくる』と云う事実が最も必要な事柄なのです。

ではこの『生える』なのですが、この言葉にどのような印象を持たれていますか。

よくある印象としては『生える』のはとてもとても特別な出来事である。髪が『伸びる』のは日常的な事であるのに対して、髪が『生える』のは非日常でスペシャルな出来事。……、このように思われている方が多いように感じます。しかしこの『生える』と『伸びる』は実は同じ出来事ではないでしょうか？本日のタイトルにもあるように『生える』は『伸びる』の一部なのです。当たり前ですけど髪が伸びなければ髪は生えて来ないのです。『生える』とは何もなかった頭皮に初めて髪の存在を認めた時点を形容する言葉であると思います（動詞ではありますが……）。

何もなかった毛穴に髪が造られ始めます。この時点でごく短いですが髪が伸びた事にも成ります。どんなに短くても長さがあるようになったのですから。そしてもう少し長さを感じられるようになった時点で毛穴から髪の毛先が飛び出します。一般的にはこの時が『生える』と呼ばれる現象だと思います。そして生え始めた髪はずっと伸びて成長していきます。つまり髪が存在した時点で既に髪は『伸びた』のです。その後も髪は伸び続けます。ひねくれた言い方をすれば生え始めた1本の髪が『ずっと連続的に生え始めいている』または『生え始め続けている』のが髪が伸びている現象なのです。

何故このような事を書くのか。

それは円形脱毛症は兎に角髪が伸びて成長してさえいれば回復の芽は直ぐ近くに来ていると言いたいのです。

円形脱毛症は髪の成長が止まる病気であると、このブログでは最近頻繁に主張しています。抜ける前には髪の成長が止まり、髪の成長速度が０の時は脱毛部に髪が見当たらず、生え始めた時の髪は最初ゆっくりとしか伸びて行きません。

この３つの現象だけを見ても

髪が成長して伸びる現象の有無が

円形脱毛症の核心部分であると思います。

ですので今後、ご自身の脱毛が現在どのような状況なのかを知る際には懸念のある部分の髪が以前に比べて伸びているか否かを調べるようにして見ることも参考にしてみて下さい。観測する髪は産毛でも成長した髪でも構いません。以前に比べてキチンと伸びている様子であればまずは一安心です。

一方で伸びていない、そういえば3か月前と長さがほとんど変わらない等と言う場合は少し注意が必要です。

注意と言っても、どうやって……と思われると思います。この場合の私の意見としては刺激を与える行動が必要だと思います。この際に各家庭でできる事柄を鍼灸師として具体的に言うと梅花鍼（ばいかしん）や集毛鍼（しゅうもうしん）等で髪の伸びていない部分に刺激を与えます。皮膚が軽く発赤する程度を日に数回おこなえると何もせず手をこまねいているよりもずっと良いのではないかと思います。