現在日本で認められている除菌方法は二種類ありますが、それぞれのクスリの発売元によって薬剤製品名が変わりますので、ここでは一般名で記載します。
【除菌方法】
1.まずは一次除菌=最初にやる方法です。
『プロトンポンプ阻害薬』+『アモキシシリン』+『クラリスロマイシン』
上記処方を朝夕二回ずつ7日間内服します。
「プロトンポンプ阻害薬」は「PPI」と略されている胃十二指腸潰瘍の薬です。
「アモキシシリン」はペニシリン系の抗生剤で、溶連菌感染症などにも使われます。
「クラリスロマイシン」はマクロライド系の抗生剤で、昨今よく使われるクスリです。小児で耳にすることの多い「クラリスドライシロップ」はこの「クラリスロマイシン」です。
それぞれバラバラで処方する医師も居ますが、今は便利なモノがありまして、ワンシートで一日分になっている製剤が出ています。
こちら。
ランサップって言います。
これが一日分ですよ。結構多いですよね。
かつてはこの一次除菌で80-90%除菌成功しておりましたが、昨今は60-70%まで低下しているとも言われています。クラリスロマイシンに抵抗性を示すピロリ菌が増えているようです。
2.二次除菌(一次除菌で成功しなかった場合に使用します)
『プロトンポンプ阻害薬』+『アモキシシリン』+『メトロニダゾール』
一次除菌同様、上記の組み合わせを朝夕7日間内服します。
見ての通り「クラリスロマイシン」が「メトロニダゾール」に代わったわけですが、この「メトロニダゾール」は寄生虫駆除薬で、もっともポピュラーな使い方は「トリコモナス膣炎」を代表される婦人科領域感染症です。膣錠っていう製剤もあって、直接膣内に挿入する事もあります。
正直、この除菌薬としての使用が無ければ、ワタクシは縁遠いくすりですw
二次除菌薬もシート製剤があります。
ランピオンって言います。
二次除菌の成功率は80-90%と言われていますが、もう少し低いかもしれません。
3.三次除菌
残念ながら現在では「三次除菌」として確固たるものはありません。
臨床研究では『プロトンポンプ阻害剤』+『アモキシシリン』+『シタフロキサシン』などが行われているようですが、その効果は未だ未知数です。『シタフロキサシン』はニューキノロン系の抗生剤で、目下「最強の抗生剤」とも言われているものです。
二次除菌で不成功な方々は、もう一度二次除菌の組み合わせでチャレンジしているのが現状です。
【副作用】
結構用量の多い抗生剤を7日間内服しますので、副作用で多いのは消化器症状です。
中でも「下痢・軟便」は10-20%に出現します。また重篤な「出血性腸炎」などになるのは0.5%と言われております。
「出血性腸炎」による下血などが出現したら、内服を止めて主治医に相談した方が良いです。軽い「下痢・軟便」であれば継続して7日間完遂した方が良いです。(余談ですが、便秘で困っていた患者さんが除菌をしたら、便秘が解消されてスッキリして、なおかつ除菌も成功して二度喜んでいた方もいましたw)
【全く除菌出来ない場合】
一次除菌でも二次除菌でも、はたまた二次除菌を二回やっても除菌できないケースもあります。
そういう場合は、現状では他に方法がありません。
胃十二指腸潰瘍をお持ちの場合は、プロトンポンプ阻害薬かH2ブロッカーを長期内服するしかありません。胃十二指腸潰瘍が無くて、症状もない慢性胃炎などの方は、何もしないで様子を見るのが得策かと思います。症状が無いのにクスリを飲む必要はありません。
いずれにしても、胃カメラを定期的にお受けになることをオススメします。
【除菌判定を忘れずに!】
ピロリ菌陽性で除菌をした方でも、「除菌判定」をしていない方って少なくありません。つまり除菌薬を飲んだらそれで終わりって思っちゃってるんです。
それはいけません。
必ず!
除菌をしたら!
除菌判定を受けて下さい!
前回のエントリーでもお示しした通り、内視鏡をやらないでも判定出来ますので、きちんと除菌後判定をしましょう!
ただし!!!
ここから重要です!
除菌判定は除菌後1-2ヶ月空けて下さい。プロトンポンプ阻害薬の効果で、陽性でも陰性と出てしまう=偽陰性が出ることがあります。
除菌後は必ず!1-2ヶ月空けましょう!
というわけで、ピロリ菌陽性慢性胃炎にも除菌が適応となりましたので、三回に分けてご紹介いたしました。