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夢は小説家ですと本気で宣ふブログ

文章の世界に魅入られた小娘が、妄想を書籍化しようと奮闘する日記。

 仕事を辞めて1週間がたちました。
 そんな話は今しか書けないので徒然なるままに、好き勝手語ってみようと思います。

 仕事を辞めて1週間がたちました。思えば、3年間と4カ月、私は誰に命じられて誰の為に月に300時間を超える労働をしていたんだろうと不思議に思います。
 いま、私を起こす人は誰もいません。なんで起きれていたんだろう?
 休みの日に電話をしてくる人もいません。なんで電話はきたんだろう?
 私はそれほど偉かったんでしょうか? 今ではよく分かりません。

 でもこの1週間で2回、お客様から「店長いなくてお店変わっちゃったよ」って言われました。多いのか少ないのかも分かりません。

 楽しかった記憶よりも、たぶんしんどかった記憶の方が多いです。やっぱり私は辛かったんだと思います。

 いま、アルバイトもできずに(有休消化中なので)、日々やりたいことやって思いつくまま好きなことして暮らす中で、「働きたいなぁ」と思っている自分がいます。

 もし小説を書くようになって、生計がたてられるようになったら、こんな日々が毎日続くのであろうかと思うと「はて?」と思います。(現実はそんなに甘くない、甘くないよ)
 完全に夏バテしている胃腸も、仕事を続けていれば大丈夫だったのでしょうか? 謎です。

 とりあえず、有休消化は今月いっぱい続くので悩みに悩みぬいてみようと思います。
 時間があるっていいね。

 うん。
 今日から新しい1週間ということで、新たな事柄に挑戦してみようと思います。
 純文学の真骨頂といえるかもしれない比喩表現。簡単に言ってしまえば、「喜びに瞳を輝かせた」っていう文章を「長年探していた手紙が出てきたような気分だ。古臭い紙とインクの匂いが鼻孔をくすぐる。受け取った日、大切にしまいこんでそれきりだった。久しぶりにみる彼女の整った文字を何度も指でなぞる。胸中がじんわりと暖かくなりようで、瞳を輝かせた」なんか違いますね。難しいですね。
 でも雰囲気でいったらそういうことなんですよ!(無理やり)

 感情表現を直接表現で表さない。

 今日から、そんな練習をしていこうと思います。
 
 今日のお題【喜び】

 もう何日も真っ暗な洞窟の中をさ迷っていた。一緒に歩いているはずの相棒も暗がりの中では姿を確認することはできず、声を出してみても反響して特定の場所を確かめられない。手を繋いで歩くには道幅は狭すぎて、結局孤独に震えながら前に進むしかなかった。目の前に針先くらいの小さな明かりが見える。光だ。我先にと走った、こぼれる光を見失わないように前だけを見た。何日ぶりの光であろう。だんだんと広がっていく白に、はやる気持ちが抑えきれない。白い光の中に飛び込んだ。
 眩しいくらいの光に目が開かない。薄目を開けて周りを見渡すと眼前に鮮やかな草原が広がっていた。色とりどりの花、鳥の鳴き声、真っ青な空。隣を見れば真っ黒になった相棒がいて、「汚ねぇ」と笑った。
 
少女 (双葉文庫)/双葉社

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【少女】著 湊かなえ

 湊かなえさんの作品は告白に続き2作目でした。
練り上げるというのはこういうことをいうのか、というのが一番の感想です。散りばめられた伏線は精巧に組み立てられ回収されていく。

 物語の中心は【人が死ぬのを見てみたかった】という少女たちの無邪気な好奇心から動き出す。巻き込まれる大人や友人たちは可哀想なんだけれど、本作の言葉を借りるなら因果応報なのだろう。

 さて、読書感想文を書くにあたって少し湊かなえさんを調べてみました。稚拙かなと思われる文体は、やはり文芸一本でやってきたという人ではないようである。家庭科の先生とはなかなか、嫁にしたい←
 高校の非常勤の先生をする傍ら少女の若さゆえの狂気に触れたのであろうか。高校生というのはやはり情緒不安定で、突拍子もない行動に出るものである。うん、情緒不安定だったからだと思いたい黒歴史ってありますよね。
 こうやって読んでみると、やっぱり文体なんてものは後付けでいいのだと思わされる。真似できない文章力、キャラクター、物語性、すごいなぁと思っているうちはまだまだなんだろうな。
 楽しく読ませていただきました。
 真夏日の暑さをしばし忘れることができるような薄ら寒いお話です。夏にぜひ!
きみはポラリス (新潮文庫)/新潮社

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【きみはポラリス】著 三浦しをん

 夏休み入って1発目の読書感想文が、夏休みが始まって7日目の今日となってしまったことには反省するほか弁明の言葉などないのですが、まず1冊目です。

 きみはポラリス。三浦しをんの恋愛小説ばかりを集めた11編の短編集です。
 物語にはそれぞれ核となるお題があり、それに沿って個性豊かな登場人物が生活の一部を覗かせてくれます。さすが、と言わざるを得ない比喩表現は本当に身につけたい繊細な美しさがあります。(比喩でいったら巻末の中村うさぎさんの解説も凄い良かった。押し花の喩えは本当に鳥肌ものでした)
 読書感想文というものは普通、内容の紹介と個人の見解を書くものだと理解していますが、内容の紹介など気になる方はアマゾンなり楽天なりで調べてみるのが一番早い。ここで私がどうのこうの言っても仕方ないとすら思う。だから、好き勝手に思いつくままに見解のみを書き綴ると致しましょう。そして、それによって本を読んだ気になどさせてはいけないので購買意欲は煽るだけ煽らせて頂くこととしよう。

 三浦しをんの専売特許ともいえるのは、ユニークな登場人物にあると思う。居そうで居ない、いや絶対に居ない個性豊かな登場人物たち。特にこの短編集では1人が変というよりは、出てくる登場人物になかなかの魅力がある者ばかりだったように思う。
 1つ例を挙げることにしよう。自分お題「結婚して私は貧乏になった」まさかこのお題からあのストーリーが生まれてくるとは思いもしないだろう。貧乏になった様子が、満足に入れられないお湯の嵩で表現されているのもまたいい。夫になるという男の謎の言動、行動、振り回されるうはね。そして我々が気になった、うはねの名前の由来もきっちり回収してくれるという有り難いネタばらしの数々。我々は頭の中に、松の木を描き、田舎の風景を思い、そうして都心のアパートに2人で帰る様を思い描くのだ。うん、いいねぇ。
 1つ1つの物語に恋愛だけではないユーモアを散りばめて、読者を飽きさせない。しかし流れる空気感は穏やかで、まったりとした午後を楽しく過ごさせていただいたことを感謝しようと思う。面白いだけではなく、やはり読後感は「読書っていいなぁ」と思わせる。そのような1冊を作り上げるために、やはりまだまだ文章を磨かねばならないと決意も新たに文章を終えることにしよう。


「里奈、こっち」
 数十個のマイクに押しつぶされるようにうずくまっていた里奈の手を引いた。
「ちょっと、困りますよ!」
「里奈さん、1言でいいのでコメント頂いてもよろしいですかね」
 矢継ぎ早と喋り出す報道陣を霧散する勢いで声を張り上げる。
「迷惑だっつってんだろ!」
 俊太は里奈の手を引いて路地裏を駆け抜ける。生まれて早14年、この町で育ってきた俊太にとっては迷路のような路地裏も庭みたいなものだ。誰にも見つからない難しい路を選んだ。
 里奈の父親が浮気しているという報道が流れたのは、給食の時間だった。俊太の学校では給食の時間にTVをつけることが許されている。担任の先生が、NHKの連ドラを楽しみにしているからだ。お昼のニュースの一発目で流れたニュースに、里奈は箸を落とした。
 浮気なんてものは、よくある話だろうと思う。世の中に一対の運命の人以外に存在しないというくらい人口が少ないわけではない。一生独身で暮す人もいるが、新宿の交差点なんかを思い出してみて欲しい。前に進むのも億劫なくらい人がせめぎ合って暮らしている。そんなもんだから世の中に運命の人を一人どころか二人、三人と見つけてしまうこともあるだろう。
 しかし、ここで問題なのは、里奈の父親が有名な議員であるということだ。
「この女誰よ!」
「知らねぇよ、気付いたらポケットに紛れ込んでたんだろう」
 火サスよろしくのシラを切る男というものは許されない。里奈の父親の職は、国民からの支持率と信用で成り立っているのだ。
 報道陣の足は速く、報道のあった日の夕方には学校にまで押しかけて来た。お隣さんのよしみで俊太は里奈の守衛を買って出ている。
 問題を起こしたのは父親だというのに、子供に何を語らせようというのだろうか。父親への不満? こんなことする人だと思いませんでしたとか? あほらしいと思う。
 沸き上がる苛立ちの解放先も分からないまま、里奈の手を引いて歩く。里奈はずっと黙っていた。
 家の前にも何組かの報道陣が待ち構えている。
 裏側の戸口から、お手伝いさんの田中さんが顔を覗かせていた。
「なんで私が、裏口から入らなきゃいけないのよ」
 里奈は確かにそう言った。
「ちょっ、里奈」
 里奈は、正面から堂々と帰ろうとする。向けられたマイクを一瞥すると、凛とした声で言った。
「お父さん? 早く帰ってこないと撮りためたドラマ勝手に消しちゃうからね」
 呆然とする報道陣を前に、「俊也、行こう?」と手を差しだされる。その手を取って門をくぐると、さすがにそこまでは着いてこなかった。
「あれ、なに?」
「お父さん、ドラマ好きでさ。毎週4つも撮りためてるからすぐにHDがいっぱいになっちゃうの」
 里奈は笑っていた。
「恨んでないの?」
「んー、というか多分あの報道ウソだと思うよ。分かるもん、自分のお父さんだよ?」
 後日、報道が誤解だったと報道された。問題の渦中となった当人はマイクを向けられて、語った。
「里奈、消さないでくれよ。今日、帰るからさ」