みめこはロリータだ。本人いわく、クラシカルロリータという属性に分類されるらしい。貴族のお嬢様のような出で立ちは成る程、ハイジに出てくるクララみたいなものかと理解した。
小学生のころ、頭1つ2つぶん抜きん出た、みめこはそれだけでも目立っていたのに、徹底的に日焼けを嫌い、黒々とした髪を長く伸ばしていたことからよく「ヴァンパイアだ」とからかわれた。みめこは気にする風もなく、「言っておけばいいのよ」と気にしないものだから僕はいつも慌てて後を追いかけた。
中学と高校と、本人の一貫性は変わることなく、透き通るような白い肌と美しい黒髪に誰もが惚れ惚れとため息をついた。そうして、みめこがいきついたのがクラシカルロリータだった。
イノセントワールドというブランド名だった。新しくできた図書館は雑誌のコーナーが充実していて、みめこは何の気なしに雑誌を捲っていたと思う。そうしていきなり立ち上がって、雑誌を目の前に掲げたのだ。
「これだわ」
高校の授業が終わると、みめこの支度は始まる。制服を脱いで、真っ白い肌に申し訳程度のコンシーラーを重ねる、香りのいいパウダーをはたき、アイシャドウ、チーク、リップグロスを施す。目尻にはつけ睫毛を重ねて、髪を編みこみカチューシャをはめる。カチューシャとジャンパースカートをお揃いだ。上品なフリルとリボンの装飾された服に着替えるとみめこはようやく「外に出られるわ」と喜ぶのであった。
アパレル関係のお店なんてしまむらしかないような田舎じゃ、みめこの服装はずいぶん目立った。
「まぁ、みめちゃん。今日はまた一段とお姫様みたいだねぇ」
みめこは微笑で返していたが、僕には小声で「正しくはお姫様じゃないのよ」と教えてくれた。
みめこは好奇の目を晒されるのを良しとは思っておらす、「ここは生きにくい街だわ」と言った。十数年間生きてきて、いまさら生きにくいも何もないような気がしたが、僕は黙っていた。
初めて、原宿に行った時、ああもしかして僕が間違っているのではないかと思った。ピンクや黄色、緑に紫、とにかく派手な頭の人たちがいて、理解しがたい色の服を着て闊歩している人の姿があった。みめこは「これよ、これ!」と頬を紅潮させて、僕は僕の町では理解しがたいことが当り前に駐在している土地もあるんだなぁという感想を持った。
みめこはそこで1枚のスナップを撮られ、そのことからクラスで一躍もてはやされた。
みめこは高校を卒業したら、東京に行くという。安いところを見つけて、いいバイトを探してリボンとフリルに囲まれて生きていくわといった。
現代における、自分の居場所を見つけたようだった。

