もずくスープね -13ページ目

ダニエル・ビダル、ポール・モーリア

愛読する雑誌は、記事だけでなく、広告もまた貴重な情報源である。私にとって最も重要な愛読誌、「ストレンジデイズ」もまたしかり。ゴングの特集に惹かれて買った同誌2006年12月号に、「オーシャンゼリゼ~ベスト・オブ・ダニエル・ビダル」CD発売広告を発見。「全盛期の歌声を収録した」とある。ダニエル・ビダルのベスト盤は、これまでも流通はしていたのだが、それは80年代頃に再録音されたもので、とりわけ、私の最大のお気に入り曲「私はシャンソン」が、全然いけてないアレンジになっていたので非常に不満が溜まっていた。しかし、今回発売されたものをネットで調べてみたところ、Barclayレーベル時代のマスターを使用したオリジナル・ベストという。「それなら即買いだ」と、amazonでさっそく購入、翌日手元に届いた。


ダニエル・ビダル「私はシャンソン」は1973年の発売当時、大好きだったので、シングルレコードを買って、実は今でも持っている。ただ、なにぶん36年前のレコードで、あまり丁寧な扱いをしてなかったこともあって、今聴くと、ちょっとプチプチとしたノイズが気になる。やはりCDで持っていたいものであった。実は90年代初頭に、オールドフレンチポップスばかりを集めたコンピレーションアルバムがWAVEから発売されて、その中に「私はシャンソン」のオリジナルも入っていた。私は当然それを買ったのだった。しかし、これを、家に来た天野天街氏(少年王者舘主宰)が「貸して」と持っていってしまったのである。そして、天野氏が演出を担当した何かの公演で「私はシャンソン」をダンスの曲として使用したりした。その公演のあと、天野氏に「あれ返して」と言うと、なんとそのCDは行方不明になってしまっていた。しかも同盤はそのとき既に廃盤。これにはまいったと思った。

chanson

その後、今から数年ほど前に、林巻子さん(ロマンチカ主宰)が写真家のイリナ・イオネスコに会いにパリに行くことになり、「ついでに何かパリで探して欲しいものありますか」と言われたので、「じゃあ、ダニエル・ビダルのCDやレコードあったら買ってきてください」とお願いした。林さん、パリから戻ると、「フランスの人、誰もダニエル・ビダルのこと知らなかった」と言う。へえ~、そんなもんなんだーと思った。どうやら、その時期には日本でしか音源が出されていなかったらしい。

こうして私の中で幻と化す一方だったダニエル・ビダルが、とうとう(Barclayレーベル時代の)オリジナル音源の形でCD復刻されたのだ。素敵じゃないか(Wouldn't It Be Nice)。と「私はシャンソン」を聴きながら、喜んで踊っていたら、或る訃報が舞い込んできた。ポール・モーリアが亡くなったというではないか。イージーリスニングの第一人者、ポール・モーリア。私も好きだったポール・モーリア。人は誰でも「恋は水色」や、「エーゲ海の真珠」、あるいは「天使のセレナード」などを思い浮かべて、ポール・モーリアを偲ぶことだろう。しかし、ちょうど私の手元には、「ベスト・オブ・ダニエル・ビダル」があった。そこで、ポール・モーリア作曲の名曲「カトリーヌ」(オリジナルはロミュアルドという男性歌手によって歌われたそうである;fever_zoneさん等からの指摘による)や、「恋はどこへ」を、ダニエル・ビダル経由で聴くことによって、心の底から追悼した。ほとんどのフランス人はダニエル・ビダルを知らないわけだから、これは、ささやかなる特権的行為といってもさしつかえあるまい。


catrine

余~波~

2月のトリノ冬季五輪の余韻というか余波というのか、それは確実に続いていて、特に実感するのは、やはり巷のあちこちで「例の旋律」、引退したはずのパヴァロッティが開会式で唄い、そして何よりも荒川が金メダルを決めた「例の旋律」が頻繁に流れているのを耳にする時である。昨日などは、日本テレビ「プリマダム」の番宣スポットでも流れていたし。しかし、多くの人々はそれを「イナバウアーの歌」とか、単に「イナバウアー」と呼んだりするのである。もちろん、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」の中の「誰も寝てはならぬ」(Nessun Dorma !)というのが正しい曲名なのであるが、大衆にとってそんなことは知ったことではない。どこかの動物園では、イナバウアーを得意とするカワウソがいるとかで、その映像のBGMにもこの曲が使われていた。

逆に言えば、この曲が流れると、多くの人々は条件反射的に弓なりにのけぞってしまうのが現状だ。1960年代にイヤミの「シェー」が大流行した際には、私も含めて誰もがみんな「シェー」とやった。怪獣ゴジラでさえやったことは有名である。ところが、いまは誰もみな「イナバウアー」といってはのけぞる。演歌歌手・上杉香緒里(荒川静香似)ものけぞる。カワウソだってのけぞる。TX「おはスタ」のおはガールの一人・みづき(菅澤美月)に至っては、時間を15秒間だけ止める大技「イナバウアー」を放つのだが……左様、私は菅澤美月(13歳)にゾッコンである。客観的に自己を見つめるに、こりゃ相当にヤバイぞ、という感じだ。そもそも我が家庭には子供もいないのに「おはスタ」を見ていることが病的だ。しかし、それを止めようにも、大好きな南海キャンディーズやアンガールズらが「おはスタ」レギュラーとなり始めている今、お笑い好きの私としてはますます見ないわけにはゆかない(元々は、三谷幸喜が山ちゃんの司会代行をやったことが、この番組を見始めたきっかけだったのであるが)。これは陰謀だ。その挙句、私はどんどんみづきに耽溺してゆき、時には周囲の人に「君は、おはガール・キャンディミントの中では誰派?」なんてつい訊いてしまったりもする。「まあり(中島真亜里)派?まどか(下垣真香)派?それとも、みづき派?」 もちろん、ほとんどの人は怪訝そうな表情を浮かべるので、「ハッ、この話題はちょいまずい」と私は我に返るのである。


トリノ五輪の余波といえば、「カーリング娘。」が流行したことも記憶に新しい。彼女らについてはそれこそ「誰派?」なんて話題が、我が周囲でも飛び交っていました。ま、そうは言っても、たいていの人は「マリリン派」と答えるだけなんですけどね。

話をみづき(菅澤美月)に戻すと、最近新しく発売されたメグミルクの「恵」というヨーグルトのCMに、彼女が出演している(http://www.megumi-yg.com/megumi/cm.html )。しかし横向きで「いただきます」と言っているだけなので、「おっはー」の元気なイメージと直結しないと思っている人も多いのではないだろうか。否、多くないか。ま、いいか。とにかく、試しに、騙されたと思って、一度「おはスタ」のみづきを見て欲しい。多少は、私の騒ぐワケが納得してもらえるんじゃないかと思うのだが。(ちなみに、みづきの所属事務所は、長谷川京子や吉川ひなのや羽田美智子やポッキーの新垣結衣らを抱える「レプロエンタテインメント」http://www.lespros.co.jp/ というところです。みづきも、将来大物になりそうな予感がします。)

おはガール出身タレントとしては、ベッキーや酒井彩名、あびる優、CXの平井理央アナなどが有名ですが、他にも鈴木杏とか蒼井優なんかもおはガールだったとか(ちなみに個人的興味としては奈良沙緒理もいるが、みんな知らんでしょうなあ。「燃えろ!ロボコン」にも出てたんですが)。蒼井優といえば、フィギアスケートの中野友加里選手が蒼井優似だと数多くの人々によって指摘されているが、私もそう思っていた一人で、個人的には浅田の真央ちゃん以上に中野友加里選手のファンである。彼女のくるくるドーナツスピンは最高に美しい。かといって、じゃあ私は蒼井優のファンなのかと問われれば必ずしもそうではない、というところが不思議っちゃ不思議なのではあるが。ときに、再び話をみづきに戻すと、みづきの得意な物真似は、ふぐりすみえ、もとい、すぐりふみえ、……ええと、村主文枝なのであるが、キングコング西野が的確にツッコミをかました通り、その物真似は「バカにしてるようにしかみえない」あたりがまた最高に笑いを誘うのである。とにもかくにも、トリノの余波はいまなお続いているのであった。よ~は~。お~は~。。

クーコとリンジーをつなぐブリッジ

1970年代、ドリフの「全員集合」などに出演していたゴールデンハーフというお色気系アイドルグループが一世を風靡していた頃、似たような4人組セクシーグループで、ザ・シュークリームというのがあった。わたしは当時全く気にしていなかったのだが、ここには、清水クーコ、ホーン・ユキ、そして後に演歌歌手・北原由紀となる南麻衣子らが在籍していた。

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その中の清水クーコは、ずっと後にあのねのねの清水国明と結婚し、人気タレントとなるが、清水と離婚後、1991年にガンで他界してしまい、世間を悲しませたものだ。そのクーコが、ザ・シュークリーム解散の後に、一時リーダー格として活動していたグループが、クーコ&エンジェルスである。これもわたしは、リアルタイムで意識した記憶はほとんどないのであるが、数年前に出た「Flower Pops Vol.6/ガール・グループ天国」というコーピレーションCDに入ってた『愛のときめき』という歌が秀逸で、わたしのiPodの中でも最も頻繁に愛聴される曲となっていた(下記にて視聴可能)。
http://www.barks.jp/cdreview/?id=52014061

この非常にイカしたビートで、ちょっぴりサイケに逝っちゃてる感じの曲は誰が作ったのかとクレジットを調べてみると、作詞:チャーリー石黒・藤はじめ。作曲:リンジー・ディ・ポール。編曲:渡辺直人とある。チャーリー石黒というのは、東京パンチョスのリーダーで、森新一育ての親ともいうべき大物だが、それはともかくとして、どうやら、この曲はリンジー・ディ・ポールの歌のカバーのようだ。リンジー・ディ・ポールは、1970年代英国の人気女性アーティストで、わたしも「恋のウーアイドゥ」くらいは聴いたことがあった。『愛のときめき』の原曲のことはよくわからないが、とにかくこれは名曲なので、探してみよう、と思い、リンジー・ディ・ポールのベスト盤というCDを入手したが、これと思われる曲は無かった。まあ「恋のウーアイドゥ」は好きなナンバーなので、損をした気にはならない。で、日本で普通に入手できる音源はそのアルバムだけだったので、謎は宙に浮いたままであった。

さて、先日タワーレコードをブラブラしていると、「ブリティッシュレジェンド・コレクションvol.19/リンジー・ディ・ポール/SUPRISE(再発/限定紙ジャケット仕様)」という新発売CDを発見した。曰く、「元祖ウィスパーリング・ヴォイス!! ギルバート・オサリバンを売り出したゴードン・ミルズが、女性版ギルバート・オサリバンとして売り出したSSWのファースト・アルバムが、遂に世界初CD化。日本で大ヒットした『シュガー・ミー』収録。ボーナス・トラック7曲収録」とのこと。

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さっそく購入し、聴いてみる。悪くはないが、どこが女性版ギルバート・オサリバンなのだろうとも思う。さて、アルバム「SUPRISE」の10曲の中には『愛のときめき』の原曲はなかった。フーッと一息つき、続いてボーナストラックを聴く。11曲目『愛のつまずき』……タイトルは似ているが違う。そして、次に流れる12曲目『恋のためいき』。おっ。これ!これこれ!

原題は『 Getting A Drug 』。なんだろう、「ヤクってます」みたいな意味でしょうか?ファーストシングル『Sugar me』(全英5位)に続く、セカンドシングルで全英18位とのこと。個人的には、『Sugar me』よりこっちのほうが断然好きです。なんちゅうか、これ、雰囲気はロキシーミュージックっぽい。ロキシーミュージックに『Love is the drug』ってのもありますね、ただし『 Getting A Drug 』の曲調は『Let's stick together』に近い。どっちが古いのだろう。たぶんリンジーのほうが古そう。でもブライアン・フェリーが歌ったらキマリそう。

それにしても、ようやく原曲に巡り会えた。ホッと一安心。クーコ&エンジェルスの『愛のときめき』は、リンジー・ディ・ポールの『恋のためいき』だったわけです。いま、世の中に、リンジー・ディ・ポールの『恋のためいき』など気にしている人がどれだけいることでしょう。そして、それ以上にクーコ&エンジェルスの『愛のときめき』に思い入れのある人がどれほどいるでしょうか。そんなマニアックな2点をつなぐ、さらに稀少な回路を見出せて、非常に幸福です。イェイェイェイェッ、アーンってなもんです(←こういう歌詞が出てくるのです)。

で、この2つのヴァージョン、どっちのほうがいいかといえば、これはやはり、クーコ&エンジェルスの『愛のときめき』のほうに軍配を上げたい。こっちのほうが安っぽいセクシーさが満開。そのだささがたまりません。カラオケにいれてほしい。歌詞も編曲も素晴らしい。……なんたってわたしは、あのホリーズの名曲『バスストップ』でさえ、キャンディーズによるカヴァーヴァージョン(アルバム『危ない土曜日/キャンディーズの世界 』所収)のほうが素敵だと思ってるくらいですから、ま、そういう価値判断のセンスがあってもいでしょう。