みんなボクのこと覚えているかな。
ツトムだよ。
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さっきまではとっても苦しかったけど、
お父さんお母さんが
一生懸命に撫でてくれたお陰で、
いまはとっても楽になったよ。
一週間も何も食べなくて、
心配かけてごめんね。
さっきまでは苦しくて
起き上がれなかったけど、
身体が急に軽くなったんだ。
ボクはもう大丈夫。
もうちっとも苦しくないよ。
どこも痛くないよ。
あのね・・・。
あのね・・・。
なんか、照れちゃうけど、、、言うね。
お父さん、お母さん。
今までどうもありがとう。
いつもボクのそばにいてくれて、
ありがとう。
たくさんの愛情を、ありがとう。
メイちゃん。仲良くしてくれてありがとう。
マルちゃん、てっちゃん。
仲良くしてくれてありがとう。
久しぶりに飯舘村の風景が見たくなったんだ。
久しぶりに飯舘村の匂いをかぎたくなったんだ。
見に行ってきてもいいかな?
お父さんとお母さんは
優しくうなずいてくれたよ。
今、ボクは故郷の飯舘村に向かって
歩いているんだ。
やっぱり飯舘村はいいところだね。
誰もいない村で6年も
ご主人の帰りを待っていたのは
とても辛かったけど。
寒さに凍え、雨に打たれたのは
とても辛かったけど。
でも、でも、ボクが大好きな村だよ。
きれいな雲でしょう?
きれいなお花でしょう?
きれいな山でしょう?
さっきまで小雨が降っていたけど、
いつのまにか上がって、
きれいな虹がでているよ。
峠を超えて、いまは大雷神社を過ぎたところ。
田んぼのあぜ道を歩いているとこなんだ。
昨年よりは、少しではあるけど、
稲作を再開した人が増えてきているんだね。
稲穂がゆれる道を歩くのは大好きなんだ。
真っすぐ行って、
大イチョウの木がある丘まで行けば、
ボクが暮らしていた家が見えるはず。
虹はちょうどボクの家のあたりから天に向かって延びているよ。
真っ白い素敵な家だよ。
もうすぐ見えてくるよ。
あの丘をこえれば。
ほら、もうすぐ。
懐かしい ボクの白い家が。
見えてくるよ。