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Analog of Magic もみじとクラフトマンのblog

Analog of Magic (AoM)のブログです。
アナログ回路を中心とした話題をお届けします。

GND分離ポータブルヘッドホンアンプ【Zwei Flugel】【Eins Flugel】など各種アンプなどを販売中

バランス出力ヘッドホンアンプを設計するときに重視するところはどこでしょう。測定しない人ほどフィードバックの形にこだわる人が多いように思いますが、気のせいでしょうか。

 

hotとcoldのアンプをクロスするようにフィードバックをかける…それが理想的にできれば良いですが、ヘッドホンを駆動するアンプでこれをやるにはカットオフ周波数を低めにしないと難しいです。ヘッドホンアンプでは、小信号用のアンプほどの周波数特性は期待できません。正側と負側で信号の立ち上がり時間も厳密には違いますしね。

ひとつのアンプでhotとcold出力が出ているものの場合は位相遅れは少ないですが、入力インピーダンスを高くしにくい問題は残ります。前にワンクッションないとボリュームを置きにくいです。

 

私は、バランス出力ヘッドホンアンプのヘッドホンをドライブする部分は、低歪みのアンプをhotとcold別に置くのが良いと考えています。ただし、1ch分のアンプは同じ電源に配線します。流れ出る電流と戻ってくる電流が同じであるメリットは活かさないともったいないですからね。そのために、シングルエンド出力とバランス出力ではデカップリングコンデンサを置く位置も異なります。

この構造でもTHD+Nが著しく劣ることはないです。回路の形にこだわりたいのか、数値も音も良い物を作りたいのか。重要なのは何をしたいかだと思います。

 

 

出力が足りるならヘッドホンアンプの出力はGND分離のほうが良いと思いますけどね。

令和令和が少し落ち着いてきましたかね?

 
ごんばんにちわ、クラフトマンです。
 
 
クラフトマンはAoMのアンプを愛用しています。いくつか理由がありますが、それは…
 
 
DC漏れてたり発振しているアンプも出回っているなかで、AoMのアンプは測定もしていて安心できる。
 
ポータビリティがとても高く使っているDAPとのサイズ感がマッチしている。
 
音質を変えず正確に増幅してくれる。
 
自分たちが欲しい音質を追求した結果、広帯域でありながらピークが現れたりディップはない。この為弦の余韻や金物の打ち分けやバスの鳴りと余すところなく明瞭に出力してくれる。
 
ボーカルも強調したり引っ込んだりせず自然に入ってきますし、空間表現が箱の大きさをちゃんと再生してくれます。
 
簡単に書くとその時々の気分で曲を変えたとして、ちゃんと再生してくれるもんだから音楽を純粋に楽しめるって事ですね。
 
 
AoMのアンプはコストの問題もあって最上位の性能は持たせていませんが、出回っている中でも飛び抜けて特性の良いアンプだと思います。
 
このサイズや重量、価格や電源電圧でこの特性は生半可では出せません。
 
音質を求めた結果、特性が良くなったものです。
 
AoMの設計はもみじさんが主に担当しています。脱帽しかないですね(そのうちクラフトマン設計の何かが出てくるかも?)
 
もみじさん個人製作のアンプも数台持っていますが、高性能過ぎるのであくまでも指標のひとつにするようにしています。
 
もはやチートかなって領域ですし。
 
 
音は好みもあります。AoMのアンプが万人に受け入れられるとは思っていませんが、特に耳の敏感な方やあれこれと試してきて、沼歴の長い方など魔法のような体験をいただけると思います。

今まで色々なアンプを聴いて来ました。

 
当然売りにしている部分やデータ(提示している所はごく僅か)を参考に、目の前に開発者がいれば質問もします。
 
試聴する際にアンプの音質と、特に振る舞い方に気をつけて聴いています。
 
 
全体的に共通している事として、なんでそんなに雑な配線なんだろうと言う疑問を持っています。
 
例えば10万円付近の出力ジャックがコンパチのアンプは、ジャック周りの配線が本気か?って作りになっています。
 
また、その値段でなぜコピー品の部品を使ってるのか理解できません(商社経由由来の問題かもしれません)
 
 
3万くらいで売っている真空管ハイブリッドアンプは、試作機の練りこみが足りていませんでした。
 
開発期間も少なくほぼそのまま製品となったそうで、入力振幅由来の音割れしてしまうからボリューム上げられない製品でした。
 
結構名の通ったメーカーと思います。
 
このアンプは当時個人的にやってみようかなと思った事に近い作りだったので、期待をしたものだったのでとても残念でした。
 
 
また、高級路線の真空管アンプを複数リリースしている中の人は、なぜ真空管なんですか?の問いに答えられず言葉が出てこなかった。
 
何を目指して設計をしているのですか?
 
Alter Flugel VT で真空管を使った理由は、真空管独特の心地よい音を楽しめるアンプを作りたかったからです。
 
また、巷の真空管アンプで出力が反転してしまっているもの、入力範囲が狭い為ライン出力から信号を入力するとあからさまに音割れしてしまうものが多く出回っています。
 
 
なんでこんなに雑な製品しかないのか。
ものづくりってなんなのかなと思ってしまいます。
性能が全てでもないし、見た目や形も大事な要素でしょう。しかし、回路のウエイトが軽い製品が多いように感じてしまいます。
 
 
音の方向性も例えばこのメーカーはこんな感じの音で統一感があって、やっぱりここのメーカーの製品だなって事がいくつか思い当たりませんか?
 
これは設計力が如実に語っている部分だと思います。
 
 
何年もやっていて利得と振幅、音圧の関係性を正しく理解していないビルダーもいらっしゃいます。
 
基本って大事ではないですか?
 
少なくとも僕は基本が疎かなアンプは欲しいと思いません。
 
つまり、現状で自分のところのアンプしか選択肢になく、自分が使いたいと思えるものがないから作るスタンスになってしまいます。
 
 
AoMのアンプは再現度が高く音場を本来の広さで表現してくれます。
 
自分で持っているヘッドフォンやイヤホンで不具合がなく、スタンダードとして位置付けすると他の機器の評価をする際にとても精度が出ます。
 
エフェクター要素がないので聴き疲れしませんし、純粋に音楽を聴けるアンプです。
 
当然好きな音楽が違えば求めたい音の方向性も変わりますが、オールジャンル綺麗に鳴らせ、音も痩せたり盛られたりせず出力できます。
 
 
AoMのアンプは特性もコストも他と比べて負けませんが、小さい規模で作っていますのでケース(見た目)は弱いかもしれませんね。
 
ただ樹脂ケースの場合は軽くコンパクトで、DAPを傷つける事もなくポータビリティはとても高いです。
 
 
音の好みが合わない方も当然いらっしゃるでしょう。
 
その場合は音質ではなく好みの問題なので、アンプの性能とは別のお話です。
 
 
うちのアンプを高く評価してくれる方の傾向として、様々な機器を一通り試してきた方が選んでくれる方が多いです。
 
ちゃんと作ってあるアンプが欲しい層にこそ使ってもらいたいです。

真空管・トランジスタハイブリッド・フルディスクリートポータブルヘッドフォンアンプ Alter Flugel VT 販売開始しました。

 
 
価格は完成品 44,000円 + 送料 500円 です。
 
他のアンプと同じくご注文後、お振込いただいてから最大2週間ほどの納期を頂きます。
 
特にこのアンプは真空管を用いたフルディスクリートアンプであり、部品の選別もありますので、作製にお時間を要します事ご了承ください。
 
 
電池は単4電池2本(フィラメント用)と006P電池1本。交換はネジをはずして行う必要があります。単4電池が約70時間、006P電池(200mAh)が10時間程度もちます。
 
特性などの詳細については以下の記事を参考にどうぞ。

※記事公開日と実際の時系列はリンクしていません。4は3より前の出来事です。

 

Alter Flugel VTは真空管アンプらしさを表現するアンプですが、もう少しだけ性能を良くしたくて調整しました。

 

事情がありゲインが大きかったのでこれを少し下げました。これで使い勝手が良くなりました。またこれに伴ってホワイトノイズも小さくなっています。そして歪率も下がっています。パーフェクトウィンです。

 

今回のTHD+Nと、同じグラフ内に前回の値も書き込んだものを以下に掲載します。ただし以下のデータはすべて代表値です。真空管の個体差によりある程度の誤差が生じます。歪みはあまり変わらないみたいですけどね。

 

 

このグラフを見ての通り最大出力は変わっていません。ただしゲインが異なります。ゲインを下げたことでホワイトノイズは減りました。

 

ゲインは変更しましたが他の部分の特性はほとんど変えていません。矩形波応答と歪成分を以下に掲載します。

 

矩形波応答 約10kHz 33Ω負荷 上がアンプ出力です。

 

歪成分 上が歪成分、下が出力波形。

 

矩形波のわずかなオーバーシュートは今回もわざと残しています。

 

これで使い勝手が許容できる範囲になりました。出力も33Ω負荷で30mW以上(真空管の個体差による)取れるのでヘッドホンもかなり鳴ります。

今回の Alter Flugel VT に使用している真空管は、クラフトマンがいつかそれを使ってアンプ作ったら楽しそう!から購入し温め(箱積み)続けていたものがもみじさんの回路設計とハイブリッドして形になったアンプです。

 
今回の記事は最終的な調整を完了し、クラフトマンはこんな時に使いたいアンプになったなと思った事を書いていきます。
 
前提としてクラフトマンは乗り物を運転して移動する人なので、移動中にヘッドフォンなどで音楽は聴きません。
 
貧乏暇なしとはよく言ったもので、中々まとまって音楽に没頭する事は稀なのです。
 
とても短時間に集中して濃密に音楽を聴く方で、その時の気分などで曲や機材を選んでいます。
 
そんなクラフトマンが Alter Flugel VT を使いたいなと思う時は、以下のようなシーンがあります。
 
 
1.ちょっとリフレッシュしたい時
あーあー、なんだかなぁ…気分転換にとてももってこいです。真空管アンプの音が心地よいので、ちょっと浸ってリフレッシュしたり出来ます。
 
2.懐かしい曲を楽しみたい時
当時の音をとても良く表現してくれるので、あーこれ懐かしいなぁと強く感じられます。
 
3.意外と電子音も合います
チップチューンやシンセなどの電子音が心地よい音で入ってくるので、派手な音のアンプではないので全然聴き疲れません。
 
4.濃厚な時間を過ごしたい時
数曲だけちょっと聴いておやすみなさいしたい時にとてもベストマッチ。短い時間でも満足感が得られます。ずっと聴いていたいなとも思いますが、時間は有限なもので…全体の雰囲気は重厚感もあり柔らかい表現や艶やかな表現が出来る子なので、パーティ(AoMのアンプ)の中でも性能寄りと言うよりはムードメーカー的存在です。と言いつつも電池駆動の真空管アンプの中では作りも変わっていますが、他と比べればとても良くできています。
 
5.真空管アンプの音がするが、それ故の不便さがある
マイクロフォニックを打ち消す作りにしていないので、これが味付けとして少し残っている。が、それはそれで乙なものとして楽しめる。クラフトマンがガンガン移動中に使わないからかも知れませんが、一度聴いてみてください。(他の電池式真空管アンプには位相反転しているものも結構ありますが、それは味とは思いません。)
 
 
 
上記のシーンが成り立つために
真空管アンプが高価になる一因として、半導体と比べると個体差が大きく性能を揃えるのが大変。すごい数の真空管からペア取りすると、とてもコストが上がってしまいます。AoMでは完全なペア取りとまでは行かなくても、ある程度のランク分けをして作成します。当然組立後に測定もして左右の差が大きくない事を確認しています。1〜5の項目が成り立つ為には、ランク分けはどうしても必要な作業になりますね。
 
また、試作品との比較として回路の調整などによりTHD+Nの値が改善しています。ホワイトノイズも低減し、マイクロフォニックも少し改善しています。試聴機をお聴きの方は変化を感じ取ってもらえると思います。
 
2019春のヘッドフォン祭にお越しの方は、ぜひ一度聴きに来て下さいね!\(^o^)/

オーディオではディスクリートアンプが好きな人が多いですね。
ディスクリートアンプにはメリットもありますが設計者によって特性が大きく変わります。実際の特性を見ながら、どれほど差があるか確認してみましょう。

 


1.私がユニバーサル基板で組んだディスクリートアンプ

以前ユニバーサル基板で組んだ試作回路です。0.8V以上の部分は測定限界です。これは無負荷ですが有負荷もほとんど変わりません。
トランジスタはファイナル以外2SA1015と2SC1815。定番トランジスタでも設計次第でこれくらいの性能は出ます。各種データを取るための基板だったので少し値が良くない部分もありますが、癖が少なく良い音がします。


2.真空管・半導体ハイブリッドディスクリートアンプ

これは異色。真空管のテイストを残したアンプです。
THD+Nは大きいですが、その成分は二次歪みが主体となっています。同等の大きさで奇数次歪みが出ているものとはずいぶん音が違います。より良い設計をするには値が悪化する原因を知らなければなりません。それを知っていると狙って歪みを残すこともできるという例です。

 


3.プリント基板を頒布されているらしいディスクリートアンプ

測定されにやってきたので測ったもの。私が組んだものではありません。部品は結構高価なものが使われていました。

このアンプは半導体アンプとしてはずいぶん歪みが大きいのと、負荷をつなぐと最大出力が極めて小さくなります。トランジスタではあまり見ない回路になっているようですが、特性を落としているだけのように見えます。またこの歪み成分も偶数次が主体ではありませんからキンキンする音になる傾向があると思います。

回路を少し解析してみましたが、これはクリップも歪率もなるべくしてなっていますね。ちょっと酷いです。

 

 

上記3台はフルディスクリートですが、オペアンプとディスクリートバッファを組み合わせたアンプでも設計次第で特性は大きく変わります。ただしTHD+Nはオペアンプの優秀な歪特性と強力な負帰還によって差が見えにくくなります。過渡応答や音質への影響が大きいです。

また音質はデータに現れにくい部分でも大きく変わります。そのため技術の引き出しが多く、正確に解析できる設計者のアンプは音が良い傾向にあると思います。

 

番外編.クラフトマン作のプリント基板 オペアンプ+ディスクリートバッファ

測定点が少なく途中でやめています。THD+Nは良好ですね。0.5V付近のTHD+NはZwei Flugelとほぼ同じですが、音はずいぶん違います。

 

それでは皆様、良いものを選んでハッピーな音楽とオーディオライフを♪

平成最後の真空管・トランジスタハイブリッドのディスクリートポータブルヘッドホンアンプです。

 

 

 

 

 

前回も書きましたが設計目標は以下の6点です。

・真空管(サブミニチュア管6418)を使うこと

・音に真空管アンプらしさを残すこと

・電源はできるだけシンプルに

・入出力が同相であること

・出力は最低でも2Vp-pくらいは振れること

・音質は同種のアンプ以上を目指す

 

入力範囲があまり大きくとれないことや素子の性能が高くないことはわかっていますので、半導体を用いた高性能アンプと同じ方向は目指していません。そちらにいくのであれば私は半導体を使った方が良いですし。

ただし、まったく使えないものを作っても仕方がありませんので入出力は同相であるのは絶対条件とします。

 

 

他のアンプと比較したりベンチマークを用意して開発しても良いものは作れないと考えていますが、他の利点と欠点を知っておいて損はありません。まずはどんなものが主流か少し確認してみましょう。

 

サブミニアチュア管を用いたアンプは真空管が1本とオペアンプを組み合わせたものが多いです。電圧を増幅する部分に位置する真空管はカソードを接地し、プレートに抵抗を入れて使うことが一般的でしょう。トランジスタと違いgmが低いので電流帰還バイアスはなくても動きます。比較的gmが高い傾向がある五極管を使ったアンプでも三極管接続しているものをよく見かけます。これは6418のように直熱管が多いことが理由のひとつだと考えられます。

オーディオでは三極管のほうが音が良いと言われることが多いですが、こういったアンプで6418のような五極管を三極管接続するものが多い理由は音質ではなさそうです。直熱管はカソードを接地して使う方が簡単なのです。また三極管の音質が良いと言われるのはgmが低いためです。五極管でも適切な設計をしフィードバックをかける等して使えば、五極管のデメリットはないと思います。そもそも電池駆動のアンプでは三極管でも特性が悪いものも結構あるようです。

 

プレート抵抗は真空管にもよりますが100kΩ~300kΩ程度を用いますから、この回路の出力インピーダンスは高くなります。そのためオペアンプのボルテージフォロワのような入力インピーダンスが高い回路で受けるのは絶妙な妥協点だと思います。ただし、プレート抵抗の電圧降下の変化を出力として取り出すこの形のアンプは出力が反転してしまいます。その点だけが気がかりです。

 

もう少し部品が増えると、プレートの電圧変化をJFETのソースフォロワで受けてからオペアンプやバイポーラトランジスタのバッファに受け渡している作例も見かけます。しかしトランジスタアンプに詳しい皆様はここでも歪みが発生することがわかると思います。真空管アンプは歪率が悪いのだから気にしなくていい…ような気もしますが、それを言い出してしまうと真空管が必要なくなってしまいます。真空管の歪みを楽しむという点では、オペアンプで受ける方が好ましいのかもしれません。ただしこの場合はJFETバッファで出力インピーダンスが下がっていますので、入力インピーダンスが低めになる反転アンプで受けることができます。そうすれば入出力は同相になりますね。でも、なぜかJFETバッファが入っているのにそうしていないアンプが売っているのも見かけもったいないと思いました。

 

 

 

今回真空管とトランジスタのハイブリッドアンプを製作するに当たり、一番最初に私が試したのはフィラメントの定電流駆動です。今回電源とする006P乾電池は電圧が変動しますから、ヒーターと抵抗を直列にしたものでは値が変わりすぎます。

2本の真空管のフィラメント電源のために単四電池や単三電池を1本用意しているアンプも結構見かけます。しかし、フィラメント電源はメイン電源と共通にしておいたほうが電池交換が楽ですし、もしフィラメント電源のために別途電池を用意するのであればフローティング電源にしたいです。(今回のアンプはフローティング電源になりました。)

 

バッファは、楽でそこそこ特性が出てZweiやFierとの比較ができるという点で同じICを使いたかったのですが、ディスクリートバッファが良いと熱烈な要望がありました。プッシュプルのトランジスタバッファは無帰還で使うとあまり特性が良いものではありませんから、ディスクリートで設計するならわずかでも回路全体に負帰還をかけたい。しかし直熱管でカソード側に帰還をかけるにはヒーター電源が悩ましい。ここで負帰還をかけることを優先し、先述の実験結果はお蔵入りしてヒーター電源が左右別で電池1本ずつのフローティングにしました。

ところでよく見かけるハイブリッドアンプでは、帰還をかける場合はコントロールグリッドにかけています。入出力が反転しているからそこにかけるしかないのですが、この形だと信号と直列に大きな抵抗が入る場合が多く、雑音や音質的に不利になる傾向がありますね。非反転アンプだとカソード側にかけられますので信号と直列に入る大きな抵抗を減らせます。

 

 

以上の要素をうまく考えながら制作した今回のアンプは、5極管が電圧制御電流源であることに着目して設計しています。電圧を電流に変換し、その電流の向きを変えることで電圧増幅を1ステージで完結しています。珍しいものを作ろうとしたわけではありません。目標を達成するために設計したらこの形になったのです。

真空管アンプらしさを残すための構成にしているため電源電圧は昇圧していません。昇圧型SW電源を使うとそのノイズが出力として出てきてしまい、SNRが悪くなりますからね。この構造でも比較的大きな最大出力がとれるようにしていますので、音量不足で音が割れるということはほぼないと思います。

真空管とトランジスタのハイブリッドディスクリートアンプを作りました。これは真空管のテイストを味わうためのアンプですし、特性の良い半導体アンプとは異なる設計になっています。そのため私が制作する半導体のみのディスクリートアンプと比べてTHD+Nは2桁から3桁以上悪い値になっています。

 

特性が良いものの方が良いよね!という私と同じ思想の人はこちらをどうぞ。

Zwei Flugel https://ameblo.jp/analog-of-magic/entry-12424918829.htm

まとめてあるホームページ https://analogofmagic.web.fc2.com/

 

 

クラフトマンのように真空管にはロマンがあるよね!って奇特な方は以下続き…

 

 

今回の真空管アンプの設計目標は以下の6点です。

・真空管(サブミニチュア管6418)を使うこと

・音に真空管アンプっぽさを残すこと

・電源はできるだけシンプルに

・入出力が同相であること

・出力は最低でも2Vp-pくらいは振れること

・音質は同種のアンプ以上を目指す

 

この条件を満たせるよう制作したのがこちら。Alter Flugel VTです。

(調整中のため真空管がソケットに載っていたりします。)

 

 

このアンプのTHD+Nと歪波形は以下のようになっています。

 

THD+N 1kHz  33Ω負荷 A補正なし 400-80kHz

 

0.5V出力時の出力波形と歪み成分。

 

歪み成分を見てわかるように歪みの主成分は二次歪みです。今回求めている真空管アンプらしい音のためにはこの歪みが必要だと思います。この歪みは素子に由来する部分もあるとは思うのですが、回路の形に依存する部分も大きいと思います。

 

また、10kHz矩形波の応答は以下のようになっています。

 

10kHz 33Ω負荷 上:出力 0.2V/DIV、下:入力 0.1V/DIV

 

10kHz 0.1uF負荷 上:出力 0.2V/DIV、下:入力 0.1V/DIV

 

0.1uF単体負荷でも安定です。

この波形からわかるように、このアンプは入出力が同相です。この手のハイブリッドアンプは反転しているものも多いのでこれは結構珍しいかもしれません。

 

基板サイズと部品数の制約でプリント基板設計はZwei Flugelに劣りますが、その中で可能な限り良い音が出るような形になっています。

電源は006P電池1本とそれぞれのフィラメント用に単四電池を1本×2使用します。フィラメント電源は70時間程度、006P電池は200mAhのもので15時間以上もちます。

電解コンデンサは個体のものと従来からあるコンデンサを混ぜて使っています。本当はすべて通常の電解コンデンサのほうがレトロ感が強くて良いのですが、カップリングは固体コンのほうが良い結果が得られそうなのでこうなっています。

 

販売するかどうか、その仕方などは未定です。基板単体で欲しい・部品は変えてしまうから部品が付属しなくていいという人もいるみたいなので、私個人としては基板単体を用意してもいいかなと思っています。

 

 

 

オマケ

調整中にこんな特性にしてみたのですが、このときはわざとらしいほど真空管アンプっぽい音が出ました。

「昨今の真空管ヘッドホンアンプは1chあたり真空管1本とオペアンプを組み合わせたものばかり。低歪みのオペアンプの前に真空管を入れたのではエフェクターみたいなものになってしまうし、なによりちょっと妥協しすぎている構造のような気がするよ。」

 

そんな思いとクラフトマンが隠し持っている電池管がハイブリッドした、ハイブリッドヘッドホンアンプです。しかもポータブルではやらないつもりだったフルディスクリートになっています。

 

 

※試作途中のイメージ、ここから色々変更となりました

 

 

妙な設計が多いハイブリッドヘッドホンアンプに一石投じよう。球なのに一石ってね。

でもサイズと電源の制約がきつくて思ったようにプリント基板設計できなかったから、もし販売するなら安めにしなきゃ。技術適用が少ないならそのぶんは安くないとね。

 

真空管アンプの一部を半導体に置き換えたのではなく、半導体アンプの一部を真空管に置き換えたわけでもない。真空管のノスタルジーに浸るために設計したアンプ、お楽しみに!

 

 

 

(´-`).。oO (Zwei Flugelはシンプルに見えますけれど、半導体ヘッドホンアンプに一石どころか三石くらい投じられる設計です。。同じような設計できる人は少ないです。。。)