たたかい終えて(第170回直木賞)。 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

半年前に1000年に一度の奇跡を500年に1度まで縮め、さらにさらに今回とうとう250年にまで縮めてしまったあもちゃん、その喜びを胸に抱き選評を今回は忘れることなく発売当日に買いに走りました!

 

 

 

 

↓鳥頭あもちゃん、発売日をすっかり忘れた前回

 

 

よっぽどのことがない限り本は書店で買うことにしているのだが、そうすると大体余計な本まで買うことになるわけで、今回も色々買ってしまいました。

 

 

 

今回購入した本の中に「三体」がある。

以前から話題だった「三体」は読みたいと思っていたのだが、色々機会を逃していて、

ここまできたら文庫になってから読もう。お財布的&重量的にもヨシ!

と文庫化を待っていた。

そしてこのたびはれて文庫になったのを機に購入!

 

いや〜…目が辛い。

驚くほど文庫の字がちいせぇ。

文庫の文字ってこんなに小さかったっけ!?

 

ちっさ!

 

老眼鏡購入のお話はこちら↓

 

老眼鏡かけながら本を読むのってつらいわぁ。電車の中で読むのも一苦労。

メガネを出してかけて、文庫を出して読んで。

すぐに目的駅に着くからその前に文庫をバッグにしまって、メガネを外してしまって…。

めんどくさ!

視力2.0だった頃の私が懐かしい。もう二度と戻れないのだ、あのくっきり時代に。

 

って、直木賞選評の話だった。

そんなわけで第170回の選評について書いていきたいのだが、今回の選評があまりにちゃんとしていて驚きでした笑

これまでのトンデモ選評が懐かしい〜 ←完全に洗脳されとる。

 

↓あもる一人直木賞(第170回)選考会の様子はこちら・・

 

 

 

 

 

 

 

 

受賞記念企画として、河﨑さんは同じく北海道出身で直木賞作家である桜木紫乃さんと、万城目さんは同じく京都大学出身で変な作品を書く(コラッ笑)作家仲間としてもりみんこと森見登美彦さんと対談をしていた。

各対談も面白かったのだが、それ以上にお二人の直木賞受賞記念の自伝エッセイがそれぞれ素晴らしかった。何度も言っているが優れた作家が必ずしもエッセイがうまいとは限らなくて、あの作家さんやこの作家さんなどエッセイはイマイチという方もいる中、河﨑さんも万城目さんも素晴らしいエッセイを綴っておりました。

 

元羊飼いだった河﨑さんは当然動物にまつわるエッセイだったのだが、お茶目な話もあればなかなかエグいヘビーな話もあり、ただそれも飄々とあっさりと覚悟を決めて綴っていて、すごいものを見た思いであった。しかもちょっとコミカルで面白い。河﨑さんの性格は存じ上げないが、勝手に作品から暗くてねっとりしたエッセイを書く方だろうと思っていた(失礼すぎ)ので意外だった。

 

万城目さんは17年前の直木賞初ノミネートからの6回に渡る直木賞発表当日の話を綴っておりました。17年‼️なが〜…。ご自分でも、自分の作風が直木賞と全然違うやろ、受賞するわけないやん、とおっしゃってましたが、私もずっと、そして今回も思ってました笑

ただ私も過去の「とっぴんぱらりの風太郎」は直木賞イケんじゃねえか?と思っており、万城目さんも同じ思いだったそう。過去イチ最も直木賞に近づいた、と勝手に思い込み、勝手に緊張していたそうです。結果は受賞ならずだったわけで、万城目さんも「しんどいなあ」と思ったそうです。ちょっと泣けた。胸がキュッとなった。そのしんどさ、すごくわかるなあ。

実は私もこの作品が一番直木賞に近い!と推してたので、私もガッカリした記憶あり。

(ま、その150回は最終的には伊東潤「王になろうとした男」を推したんですけどね。そしてそちらも受賞ならず。さすが三振王あもちゃん、よく外すわ…)

 

そんなこんながありつつも、お二人の受賞は本当にメデタイ!ということで話を直木賞選評に戻し、本物の選考委員がいかに候補作を読んだのか、簡単にまとめたい(受賞作を中心に)。

候補作および受賞作は以下のとおり(敬称略、50音順)

 

▽加藤シゲアキ『なれのはて』(講談社)
▽河﨑秋子『ともぐい』(新潮社)        ←直木賞受賞!
▽嶋津輝『襷がけの二人』(文藝春秋)
▽万城目学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋) ←直木賞受賞!
▽宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)
▽村木嵐『まいまいつぶろ』(幻冬舎)

 

※ざっくり◎○△×で分けたが、選考委員の微妙な表現については私のさじ加減なのでご了承を。(選考委員は掲載順)

 

・京極夏彦 『なれのはて』 △

      『ともぐい』 ◎
      『襷がけの二人』 ○

      『八月の御所グラウンド』 ◎
      『ラウリ・クースクを探して』 ○
      『まいまいつぶろ』 △

 

意外なことにほぼ私と同じ評価であったことに驚いた。しかも前回もそうだったが、どの作品に対してもとても丁寧に読み込んだ上で選評を書いていて、あんなケッタイな風体してるのに一番まともで誠実ってすんごいギャップ萌え〜笑

私が陰ながら応援している宮内さんの作品も他の選考委員(宮内さん推しの宮部さん除く笑)より高く評価していて好印象。

そして何より私がこの選評を美しいと思ったのは今回受賞した「ともぐい」のラストシーン(陽子が熊爪を殺す)について。ここは受け取り方が大きく分かれるところでもあり、私は

女が自分(と子供)にとって役に立たなくなった男を見限った、そして男は土に帰った

と理解していて、その理解はそこまで頓珍漢なものではないと思うのだが、それを京極さんは

「人になった「熊」は人にならなかった「熊」に喰われるという、一種神話的な帰結も見事なものであり、極めて完成度が高い」

と評していて、タイトルの「ともぐい」につながるのだ、と私たちに教えてくれた。作家さんは選評で選ぶ言葉も美しい。

そして抜群に文章が巧い、使用される語句の多くに象徴的な意味を付帯させるという手法も堂に入っている、と河﨑さんを大絶賛であった。

万城目さんには「結構性も整合性も、ストーリーすらも失効し、ただ読むことがだけが面白いという稀有な仕上がりの小説」という、一見すると褒めてんだか貶してんだかわからない不思議な選評であった笑。でも最終的には羨望すら覚える、と誉めておりました。

あもちゃんゲキオシの嶋津さんについては、さまざまな事象が細やかにかつ巧みに描かれており、とても初の長編とは思えない。と絶賛するも、主人公のコンプレックスを身体性に落とし込んだことで焦点が分散してしまったのではないか、とのこと。

全体的には全候補作が受賞してもおかしくない秀作揃いだった、ととても満足していた京極さんであった。

 

 

・浅田次郎 『なれのはて』 ×
      『ともぐい』 ◎
      『襷がけの二人』 △
      『八月の御所グラウンド』 ○
      『ラウリ・クースクを探して』 ×
      『まいまいつぶろ』 ×

 

前作「絞め殺しの樹」の欠点を完全に補って余りある作品である、と河﨑さんを大絶賛。浅田氏はこの作品の主題を「天然の一部分として存在する人間」と捉え、上記京極さんの選評で挙げたラストシーン(陽子が熊爪を殺す)についても、「男女の思いもよらぬ結末も、悲劇というよりは自然の摂理として納得がゆく」と理解を示していた。私がラストシーンで感じた、宮崎駿の「もののけ姫」のラストのように地面から一気に草花が芽吹くような爽やかさと豪快さを浅田氏も感じたのかもしれない。もののけ姫は「神」殺しで、こちらは「人間になろうとしてなりきれなかった熊」殺しだったが。

嶋津さん→時代的に浅田氏も生きた時代であるがために、むむ?と感じてしまうところもあったらしい。時代考証とフィクションのバランスは難しい…。元来だらしない私からするとそれくらいええやんって思っちゃうのだが笑

万城目さん→「ベテランの芸域」と誉めておいででした。ではあるのだが作品そのものについてはあまり言及されておらず、もしかしたら推してなかったのかもしれない。

宮内さん→その淡白さゆえの話の小ささに苦言を呈しておられました。いや、その淡白さとギュッとした小ささがモヤッとグレーゾーン世界でいいんだけど〜!

村木さん→同じ歴史小説家としてなかなか厳しかった。よく知られた史実として興味深く読んだけど、徒に紙数を費やしている、同じ題材で松本清張は短編を書いとるぞ、と。き…きびしいっ!

シゲアキ→テレビドラマ風の作品、登場人物過多で個性が不明瞭、人間を書く小説には不向きな手法と一刀両断であった。いや、それくらい言ってくれる人がおらんといけません。この私ですら甘い点数をつけてしまったからね。でもこれだけのメンツが揃う中でようやくこれだけのことを言われるようになった(本当の意味で直木賞選考の土俵に上がった)のかと思うと感慨深い。

 

 

・桐野夏生 『なれのはて』 ×
      『ともぐい』 ◎
      『襷がけの二人』 ◎
      『八月の御所グラウンド』 ○
      『ラウリ・クースクを探して』 △
      『まいまいつぶろ』 ×

 

まず細々とした台所仕事の描写が丁寧で飽きない、と嶋津さんを大絶賛。そしてその後の意外な展開にも驚きつつ作者の筆力に感動したそう。

河﨑さん→生まれて生きて死ぬ、ヒトも熊も自然界の一部でしかないというシンプルさに言及し、「北海道の厳しい自然を活写し、「熊爪」という熊に近いヒトを巧妙に造型した。前人未到の山に分け入るような仕事である」と賛辞を送った。

万城目さん→作品のいい感じの肩の力の抜け具合を面白がっておりました。

宮内さん→思いのほか好感触だったことに驚き。IT大国となったエストニアの背景の説明が欲しかった、とのこと。

村木さん→あえて書かない不自然さに省略がすぎると指摘

シゲアキ→「力作であるが、構成を複雑にしたことが有機的に結びつかない」と普通ならこうする、という順当な手順を力技で無理やり違う方向に導いたことに苦言。

 

 

・髙村 薫 『なれのはて』 ×
      『ともぐい』 ○
      『襷がけの二人』 ○
      『八月の御所グラウンド』 ◎
      『ラウリ・クースクを探して』 ×
      『まいまいつぶろ』 ×

 

「適切な人間描写があって初めて作品が成功していると言えることは論を待たない。」と冒頭に書いておきながら〜、万城目作品を「人間を描いているわけではない(略)それがなんとも楽しく、理屈を全部放り出して、まさに小説が疾走」「これぞプロの技」と大絶賛。人間描写どこ行った笑!?

万城目さん以外の作品については「人間描写」中心に選評。

シゲアキ→人間描写の手抜き。時間軸も人間関係も複雑を極めた大作だが、登場人物たちはどこまでもプロットのための道具であって顔がない。とのこと。きびしっ!

村木さん→関係性だけで描かれる人物の平板さからは、小説の毒も凄みも生まれようがない。とのこと。こちらもきびしっ!

宮内さん→いま一つ小説の引力を持ちえない。人間への小説的アプローチに難がある。主人公ラウリの人間像を濃密にすることは、エンターテインメント作品として必須。だそうです。

(宮内作品の魅力はそこじゃないのに〜><;宮内推しとしてはツラシ〜)

嶋津さん→主要人物女性二人の姿が鮮明に浮かぶと言う点で、過不足ない小説の姿をしている。男性読者にはピンとこないかもしれないがその歪さが本作を小説にしている。と絶賛!

河﨑さん→主人公を人間と捉えていては読み通せない小説のため、人間が描けているか否かを問うても意味がない。(略)その筆致に圧倒される。と評価しつつも髙村さんは河﨑さんの持ち味である「退廃的な無軌道ぶりがちょっと不得手」なんだそう。厳しい髙村さんを大いに困らせたであろう河﨑さんにグッジョブ-_-b笑

 

 

・林真理子 『なれのはて』 ×
      『ともぐい』 ◎
      『襷がけの二人』 ○
      『八月の御所グラウンド』 ◎
      『ラウリ・クースクを探して』 △
      『まいまいつぶろ』 △

 

林のおばちゃん、今回の候補作は粒揃いで新鮮な魅力を持つ力作が多く、読んでいて非常に楽しかったと振り返る。そんな粒揃いの中でも河﨑さんと万城目さんを激推ししたそう。

河﨑さん→とにかく圧倒されたとのこと。またラストシーン(陽子が熊爪を殺す)について、当初林さんは「陽子=近代、熊爪=近代前」の象徴と捉え、時代の変化の表現と考えたそうだが、他の選考委員から「熊爪=熊、陽子=子供を守る牝熊」との解釈を聞いて納得とのこと。このラストシーンの寓話的解釈をめぐって、選考委員の間でさまざまな意見が交わされたそう。…楽しそうでいいなあ。

「ともぐい」含めてさまざまな読み方ができる作品は素晴らしい。と締めた。

万城目さん→日常の中に、ふわりとさりげなく非日常を入れていく技はベテランならでは。でも冒頭の短編は不要。…あもちゃんも不本意ながら同感です笑

嶋津さん→女中と奥さんという格差が、容易く入れ替わるものだというテーマのほかに、女性器のルッキズムという全く新しい主題も込められていた。

村木さん→前半は面白く読んだが後半にいくほど感動が薄れる。クライマックスがずれたのでは?

宮内さん→着眼と構成に感心するも、淡々としすぎ。

シゲアキ→わずかな間に腕を上げた。しかし物語のはじまり、たった一枚の絵に惹きつけられていく理由が最後まで納得できず。

 

林のおばちゃんの選評には概ね不本意ながら賛同したのだが、それ以上に「女性器のルッキズム」っちゅうパワーワードに卒倒するかと思った。そう言われればそうなんですが!作家さんってセンセーショナルな言葉を作るの好きね。

 

 

・三浦しをん『なれのはて』 △
      『ともぐい』 ○
      『襷がけの二人』 ◎
      『八月の御所グラウンド』 ◎
      『ラウリ・クースクを探して』 △
      『まいまいつぶろ』 △

 

嶋津さんと万城目さんを推し、河﨑さんは次点としたそう。河﨑さんを次点としたのはやはりラストシーンの解釈についてであった。唐突な展開に戸惑ったしをんちゃんであったが、他の選考委員から「熊爪も陽子も熊なのだ」という解釈の提示により、自身の読みの至らなさを恥じたそう。その潔さが好き。その解釈で読むと全てが納得でき、元々あった「自由さ」に「緻密さ」までもが加わり簡単しつつひれ伏すほかないと絶賛。文章をとおして体臭までにおってくるとも。作品とおして臭い臭い言い続けていた私と一緒で思わず笑う。

万城目さん→河﨑さんとベクトルは違うが自由すぎる作品。独特の飄々としたユーモアに満ちた作品だが、今の時代について、実は極めて自覚的に真剣に考え抜いて書かれた小説なのではないか。

嶋津さん→おおらかなユーモアに溢れた作品。市井に生きる女性の生活と人生に焦点を当てながら、説得力をもって時代のうねりを描くという試みが成功している。独特の肌ざわりと余韻が残るのはこの作者にしか書けない。読書の喜びを満喫できる、魅力的な作品。

宮内さん→登場人物の関係性が楽しく切なく描かれ、青春小説としても味わい深い。だが作中の書き手の存在が気になった。メタ構造がうまく機能しきっていないように思えた。

村木さん→前半(此宮さんのとことか)は胸に響くもストーリーの盛り上がりに欠ける。視点人物となる人の数が多く、家重と忠光の内心に踏み込みきれなかったのでは?

シゲアキ→グイグイ読めた。熱と力に満ちている。ただ「プロットどおりに話が展開している」という点が気になる。余白があまりない。プロットなどないかのように躍動させるために、作品と登場人物を制御する手綱をもう少しだけ緩めてみてはいかがか?とアドバイスを送っていた。

 

 

・宮部みゆき『なれのはて』 △
      『ともぐい』 ?
      『襷がけの二人』 ○
      『八月の御所グラウンド』 ?
      『ラウリ・クースクを探して』 ◎
      『まいまいつぶろ』 △

 

受賞作2作について選考会の様子は書くものの個人的な選評を一切書かないという斬新な選評!そして選評最後に伊集院氏のご冥福を祈るというどえらい選評…宮内さんを推してくれたらしいのでもう何書いてくれもいいんですが、できれば受賞作品2作の選評も読みたかったなあ。

宮内さん→宮内作品を評する際の自分の語彙の乏しさに地団駄を踏みたくなる。見るからに労作、というページ数を費やさずに軽やかに優しく読む者の世界を広げ得る宮内さんの筆力にはいつも感嘆するばかり。

村木さん→前半はぐいぐい読ませるのに、後半急に失速、作者も次の展開に迷っているような節が見受けられたのが惜しい。

シゲアキ→読者をもてなすための要素が盛りだくさん過ぎて、物語が進むほどにページが重たくなってゆくのが残念だった。だがこういう大盤振る舞いは創作筋力の強い若者の特権で懐かしい気分になった。

との選評を読み、「ん?シゲアキっていくつだったっけ?」と思わず調べてしまったあもちゃん。36歳だそうです。まあ若いか。

嶋津さん→例の描写(林真理子嬢の「女性器のルッキズム」のとこですよw!)のところで混乱した宮部さん、デビュー短編集の「駐車場のねこ」を読んでみたらしく、それがひどく優れた短編集だったので安心して、候補作である「襷がけ〜」に戻って読了したらしいです。…って、どゆこと笑?しかもその「駐車場のねこ」の説明が長っっっ!選評は〜どこへ〜。

そこここでユーモアが光る素晴らしい作品だが、正直男性読者には勧めにくいタイプの作品なので老若男女に読んでもらいたい直木賞には合わなかった。とのこと。へー。

宮部さん、作家としては大好きだし作品もたくさん読んでるんだけど、選評がなあ…でもまあ宮内さんを推してくれるからヨシ!

 

 

・角田光代 『なれのはて』 ×
      『ともぐい』 ○
      『襷がけの二人』 ◎
      『八月の御所グラウンド』 ◎
      『ラウリ・クースクを探して』 ○
      『まいまいつぶろ』 △

 

角田さんの評価って大体いつもしをんちゃんと同じなのよな。河﨑さん作品のラストシーンの解釈について、陽子が熊爪を殺す意味がわからん、とマイナスにしたが「陽子も獣として、人となった熊爪を始末する必要があった」という複数の選考委員の説明で深く納得したそう。ここでもしをんちゃんとほぼ同じで笑う。それ以外では熊爪のような、常識を持たず、言葉を用いず思考する人間を、言葉で描くのはむずかしいと思うのだが、作者はみごとにそれをやってのけた、と評価していた。

万城目さん→死者が登場するという設定は新しくもないし驚かないが、その驚きのなさが何より魅力的。具合のいい力の抜き加減が現実味を作っている。

嶋津さん→妙味のある小説。二人が女性器まわりのことをきっかけに距離を縮めるのも興味深い。千代ののほほんとした性格が、自身を守りもするし他者を傷つけもする、そのさりげない描き方も巧い。主従入れ替わりの描写などを経て、時代にも奪えないおおらかな関係があると描いていることに好感を持った。

シゲアキ→登場人物の感情が説明され過ぎて、凄まじい結末の割に表層的なものになった。絵の謎が***(※人名を一応伏せときます)によって語られるのも疑問。

宮内さん→引き込まれて読んだ。登場人物たちの夢が時代に潰されていくさまがリアルで胸がつまる。ただ後半があまりに性急すぎるし、再会もあっけなさすぎた。

村木さん→家重と忠光の人となりや関係のうつくしさうるわしさに心を揺さぶられるが、ではどういう人だったのかという点が不明。

全体的に候補作全部が読み応えがあり、読み手としてはうれしかったが委員としてはつらかった、と吐露しておりました。

うーん、わかる〜。純粋に楽しんで読みたいよね。私だって誰に頼まれたわけでもないのにこんな苦行なんかして、本当はホームランや三振なんて気にせず楽しんで読みたいよっっ←逆ギレ

 

 

選考員全員が候補作全部に好印象だった模様。

当初の林のおばちゃんの講評からは河﨑さんの「ともぐい」が抜きん出ていたように思えたが、選考委員全員の選評を読んでみると、嶋津さんを加えた3作品が好印象だったように感じた。

(とはいえ河﨑さんについては文句なしでしたが。)

 

つくづく嶋津さんは惜しかった。私も激推しだったんだけど。

宮部さんが勝手に触れていた嶋津さんのデビュー短編集も読んでみようかな。

 

 

 

 

 

それにしても万城目さんに対する選評が悉くベテラン扱い。つくづく遅い受賞が悔やまれる。

万城目さんの自伝エッセイ読むとさらに悔やまれる。というか胸がつまる。

そして胸を詰まらせながら宮内さんの受賞が遅れそうだなあと…さらに胸がつまる。

あ〜もう、宮内さんの作風が直木賞に向いてないんよ〜。

万城目さんと方向が違うが、直木賞に向いてないんよ〜。

宮部さん、もっと強く推してくれ〜い。あと受賞作への選評も次回はお忘れなく。

(しかしこの宮部さん、以前は受賞作しか選評を書かなかった御仁。次は何をやってくるのか〜( ಠωಠ))

 

さ、次回も(「も」と当然言っていいですよね!)見事当てて、「125年に一度」まで時間を縮めてみせ・・・・

あ、次も当てちゃったら、次の次から割り切れないことに気づいちゃったっっ笑

月単位になるまで当て続けるぞ!!と。