あもる一人直木賞(第170回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

急げや急げ!

 

でももう読み終わってるから、

あとは受賞作を決断して(単独受賞かW受賞か。。)、書くだけ・・

そう決めて書くだけ・・・それが難しいんじゃ!

 

→前回までの記事はこちら

 

 

今回の直木賞選考会もいつものように、特に読む順番も考えないまま、以下のとおり手に取った順で読んでみた。

※()内は出版社。

 

(1)宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)

(2)村木嵐『まいまいつぶろ』(幻冬舎)

(3)加藤シゲアキ『なれのはて』(講談社)

(4)嶋津輝『襷がけの二人』(文藝春秋)

(5)河﨑秋子『ともぐい』(新潮社)
(6)万城目学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋)

 

てなわけであもる一人直木賞選考会の結果を順次発表してまいります。

順位については読んだ時点でのもの。

次の記事以降で順位は上下していきます。

 

※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)

 

1位 嶋津輝『襷がけの二人』(文藝春秋)

2位 加藤シゲアキ『なれのはて』(講談社)

3位 宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)

4位 

5位 

6位 村木嵐『まいまいつぶろ』(幻冬舎)

 

◇◆

 

 

いや、嘘やん!って思ったでしょ!?

私も思った(笑)

私の中では確かに宮内さんの方が上なの。

でもおそらく直木賞受賞について冷静に考えた時、一般的にはシゲアキ(呼び捨て笑)の方が受け入れられるし、きっと評価は高い、と私は思った。

宮内さんがニッチすぎるのがいけないんだ〜。。。ニッチって使い方合ってる?

おばちゃん、カタカナ用語がわからなくってねえ・・なら使わなきゃいいのに使いたいお年頃。

 

それはともかく、読み始めた時、自分の目を疑った。

いや、これ本当に本人が書いてる?って。

今までのデキとまるで違うじゃん!ちょっとどうしちゃった!?と混乱しましたな。

正直今までの候補作は、いやいやいやまるで土俵に上がってないじゃん。

って感じだったのだが(なのに伊集院氏や北方のオジキが妙に推すからますます私の反感を買う)、推すなら今でしょ!!!

ってそういう時に限ってオジキは引退し、伊集院氏は亡くなっているという。

 

前に書いたかどうか忘れたが、シゲアキは自分の知っている世界(芸能界とか)を描いた方がいい、とずっと思っていたのだがとうとう私のいうことを聞いてくれました!←ナニサマ?

シゲアキがマスコミ世界を書いてきましたよ〜。

いや〜私の思った通りであった。

今までと全く違う読み応え!みんなが知らないマスコミの裏側!

もっと色々黒いところもあってむしろ全く違う部分もあるだろうが、よくぞここまで書いた。

架空のテレビ会社であったが勝手に日テレを想像しました笑

そんなマスコミとジャーナリストの揉め事にちょっとミステリを絡ませながら、第二次世界大戦まで絡ませてくるとか、やるやないか!!!

いや〜本当に本人が書いているのだとしたら(まだ疑ってる笑)、こんなにも上手くなるもん?と本気で驚き、感心した。

 

ただ!

すごくよくできているし、読ませるし、いい作品なのだが、途中から飽きちゃったのも事実。

おそらくその原因はずっと同じ圧だから。

押したり引いたりがない。常に一定の圧が読者にかけ続けられる。

ずっと高いテンションで事件が描かれ、同じ筆圧でず〜っと読まされる身にもなってくれい。

抜け感が全くないのもなかなか読みづらいものなのだなあ。

スッカスカでも読むにたえないが(例えば湊かなえ嬢とか)、ギッチギチでも読みづらい。

そしてグイグイ押して来られるうちに、え〜っとなんで今こうなってるんだっけ?となり、主人公たちが何を追いかけているかわからなくなってくる、という悪循環。

あと登場人物がとにかく多くて色々な人からの視点やそこからも色々なタネを撒いて話を膨らませているのだが、膨らんだ話の大きさと割に合わない無駄な種まきも見受けられた。

人物の登場のさせ方がちょっと無駄遣い。

 

あと一番ムム?と思ったのは主要人物の兄弟間の憎悪がイマイチピンとこなかった。

そんなに揉めること?的な・・

兄から弟への嫌悪もわからないし、わりとちゃんと書いていた弟から兄への憎悪もイマイチ。

頭では分かるのだが、殺人がからむとなると・・え~そこまで~?と。

まあ憎しみなんてどこから湧いてくるかわからないもんですが・・それでも・・。

 

この作品が今回の候補作の中で一番長編だと思う(ざっと厚さを眺めると)。

長さを全く感じさせなかった!と言ってあげたいのだが、ほんとごめん、長かった〜笑

とはいえ、すんごく良かったのも事実です。

いや〜人間って成長するんだなあ。初めて直木賞選考会の土俵に上がってきた、という感じ。

今までの箸にも棒にもかからない感じはなんだったん?

ちょっと候補に挙げるのが早すぎたんだと思う。それくらい文学界が切羽詰まってきているのかもしれんなあ。

 

・・てなわけで先に書いちゃいますが、私がW受賞で悶々としているのは、1つ受賞作は決まっていてもう片方がシゲアキになるかもしれんなあ・・・ということです。

ひょっとしたらひょっとするかもしれんのよ。

選考委員がシゲアキを推すかどうか。

オジキと伊集院がいたら絶対推してきただろうが、今、選考委員の顔ぶれからするとちょっと流れが違うっぽい気もする。

そして私が推したいのは別の作品なんだけどな〜。

というか、それは下の作品なんですけどね笑

 

◇◆

 

 

今回あもちゃんの中でW受賞があるなら、片方はこの作品です!

めっちゃおもろかったわ〜。

あと夜に読むと超絶お腹がすく。とにかく料理の描写がいちいち美味しそうなの!!

料理してぇ〜。

ちょっと昔に流行った「丁寧な暮らし」がそこには描かれている。

牛タンのシチューとか美味しそう〜。

まず序盤でちょっと混乱させてくるのが面白い。

主従が入れ替わるサマが面白かったな。

 

そして市井の人たちの暮らしぶりやちょっとしたあれこれの描写が本当に面白い。

上のシゲアキの作品で抜け感がない、と言ったが、こちらの作品は逆で、いいタイミングで空間が作ってある。休憩ポイントというか緩急の描写が上手い。

笑わせポイント、苦行ポイント、ほっこりポイント・・・色々な感情を産むことができる。

主人公の千代の初夜のシーンで、あまりの痛さ(笑)に旦那を蹴っとばし、その描写に腹抱えて笑った。

 

他にもそういうおもしろシーンがあったり、ご近所の余計な話ばっかりする噂好きなちょっといや〜なおばさんも出てくるのだが、これがすげ〜上手なの。

噂好きで千代にいらん事ばっか吹き込んでくるのだが、ちょっと千代にもいけないところがあり(天然でニブチン)、千代のように天真爛漫でおおらかであることはいいことだし、本当に好感が持てるのだがニブイというのは一方で罪でもあると思う。

知らず知らずに誰かを傷つけていたりする、ということをこのいや〜なオバチャンから知らされる。読者が。すんごく感じ悪いおばちゃんなのに、案外真理を言ってたりする。

この人物描写が極めて上手。

それが証拠に千代のニブイところが迂闊なところとして戦後環境が変わっても出てくる。

寮母さんがチチクリあっちゃダメでしょ><

噂になるやん!というか人目につくでしょうよ。・・と思ったら人目についたわ。

そして私が思い至らなかったこと(他の寮生たちが淫らなこと言ってくる)も描いていて、いや〜ちゃんと回収してくるなあ〜と感心した。

でも千代ちゃんも憎めなくて、初めての恋で初めての快楽だったんだなあと。

痛いだけのアレじゃない。性の悦びを知ったのだと。

 

性の悦びといえば、重要なシーンがありました。

重要でもないかも、だが。

かっこいい女中頭のお初さんとアソコを見せ合うシーン。

いや〜これ、女性じゃないと描けない気がする。

男性でもかけるかもだが、あんなにもいやらしくなく、ちょっとユーモア交えて面白おかしく描けるだろうか。

でも茶化す感じでもなくて、この人ものすごいバランス感覚に長けているんだ。

と嶋津さんに興味津々よ〜。

 

トラオ(猫)も出てくるのだが、か〜わいいの。

他にも色々とアイテムや色々な人物が出てくるが何もかもが無意味じゃない。

ただ1人!途中でステキなおじいさま(重田さん)が出てくるのだが、この人だけもうちょっとどうにかもっと上手に使えんかったか?と残念。

このおじいちゃんをどうにかしようという痕跡は見られたのだが、うまく使えないまま消えていった。あえて使わなかったのかなあ。匂わせはあったからどうにかなるか?と思ったのだが、あっさり使われてそのままフェードアウト。あまり描写じゃなかったけど私は重田さんが好きだったぞ!!もっと読みたかったよ〜。

 

こちらの作品でも第二次世界大戦が描かれていたが、重苦しくなく、それでいて最低限きっちり描写がなされていてじっくり読むことができた。このバランスの良さは嶋津さんの天性のものではないだろうか。

手に汗握る戦争描写がない感じ、時代が変わったのだと思う。そしてそうやって変わっていくことで引き続き戦争の辛さや酷さもまた伝わり続けていくのだ、と思う。

 

そんな感じであもちゃん大絶賛だったのだが、その絶賛ぶりを聞いていた汗かき夫が

「じゃあ俺も読んでみようかな」

と言った時、私は

うーん、汗かき夫が楽しめるかどうかわかんないや

と答えた。

本物の直木賞受賞があるかどうか、問題はそこでしょうな。

 

「丁寧な暮らし」や「時間をかけて料理」(レンジはないし、一般家庭にガスコンロ、冷蔵庫もない時代)の描写に結構ページを割いていて、また女性同士のたわいない会話劇、百合的な女子同士の尊いふれあい、これを楽しめるかどうか、これをどう選考委員が評価するかにかかっている。

浅田次郎さんとか好きそうなんだけどな〜。強く推してくれると嬉しいな。

強みは出版社が文藝春秋だってことでしょうか。推せ推せ〜。

 

そんなわけで、次回いよいよ結果発表です!急げ~!

明日16日の夜に続く・・ほんとギリギリやん笑