あもる一人直木賞(第170回)選考会ー途中経過1ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

ふぅ・・ふぅ・・。

なんとか間に合った(まだ何も記事書いてないけど)。

 

・・って毎回言ってる私って一体なんなん!?

1ヶ月もあるのに毎回毎回ギリギリって!!!

とさすがに今回ばかりは自分に呆れる。

 

と言っても今回は6作あったから気持ち早め(1日ほど笑)に読み始めたんだ。

それが奏功してなんとか間に合った。

さすが私、略してさすあも!

そんな感じで半年後もやらかすんやろなあ〜。ハナホジ〜。

 

てなわけで急いで帳尻合わせと参ります。

 

 

いや〜今回の候補作が思いのほかすっげ〜激戦で正直驚いた。

読む前は、またあの人がおる!!!!とイヤイヤ読んだんですけどね。

これがちょっとなかなか奮闘していて、本当にこれ本人が書いた?とか疑っちゃいました笑

正直、それぞれの作品の候補回が違えばどの作品も受賞してもおかしくないってくらいのレベルの高さ。好き嫌いはあれどすごく充実した数日でした・・(数日で6作品も読んだ私ってすごくない!?仕事もしてんのに!さすあも〜 ←言いたいだけ)

 

それゆえに、3打席連続ホームランってのは難しそうではある。さすあも弱気。

実はもう受賞作は決まってるんですけどね。

そして多分それは間違いなく受賞すると思っている。自信あり!!いつも自信あり!

ただW受賞にするか単独受賞にするか、すごく迷っていて、

さらにW受賞にするなら誰にしようかってさ。

理由は私が受賞してほしい人と、受賞しそうな人が乖離しすぎてるから。

好みを優先させるか、選考委員たちの思惑を推理すべきか。

それにしても選考委員や文学界の人たちの思惑が全く読めない!

(当初の予想通り私の頭の中の選考委員たちが大揉めであります)

とりあえず記事を書きながら、考えていきたい。

 

今回の直木賞選考会もいつものように、特に読む順番も考えないまま、以下のとおり手に取った順で読んでみた。

※()内は出版社。

 

(1)宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)

(2)村木嵐『まいまいつぶろ』(幻冬舎)

(3)加藤シゲアキ『なれのはて』(講談社)

(4)嶋津輝『襷がけの二人』(文藝春秋)

(5)河﨑秋子『ともぐい』(新潮社)
(6)万城目学『八月の御所グラウンド』(文藝春秋)
 

特に何も考えていなかったのだが、この順番で読んだらミラクルが起きた!!

直木賞選考会スタート!の記事の最後にオオタニサンのグローブにかけて

 

「野球しようぜ!」

 

と書いたのだが、最後のマキメちゃんの作品がまさに「野球しようぜ!」であった。

ミラクル!!

野球に始まり、野球で終わる。

まさに私のブログにふさわしい。

ちなみにマキメちゃんの作品の主人公はホームランを打ちませんでしたよ、と。

・・・悪い予感しかしない><

 

てなわけで順次発表してまいります。

順位については読んだ時点でのもの。

次の記事以降で順位は上下していきます。

 

※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)

 

1位 宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)

2位 

3位 

4位 

5位 

6位 村木嵐『まいまいつぶろ』(幻冬舎)

 

 

◇◆

 

 

 

やっぱり宮内さんの作品が私、好きなんだなあと改めて思う。

(前回候補作の『あとは野となれ大和撫子』でムム!?だったけどそれ以外の候補作は素晴らしかった。)

異世界感というか、リアルな話なのにどこかSF感が漂っていて、すごく無機質なのに温かい。

宮内さんじゃないと描けない、そんな独特の世界。

ものすご〜く面白く読んだ。

今現在、ロシアやその周辺国を巡って大変な事態に陥っているが、そんな複雑なお国事情に巻き込まれて育つ少年少女たち。出会い、友情を育み、政治的なことで国内外や彼らの生活が混乱し、そして別れていく。そんな少年少女たちの1人にラウリ・クースクという少年がいた。

ちょっと変わっていて、でもすごく頭のいい子。そんな彼の足跡をジャーナリストが辿っていく話。

って思うじゃないですか!?

話はそんな単純なものではなく、途中のどんでん返しに「あっ!」って言っちゃった。本当に。

いや確かにそういう話でもあるし、すこぶるシンプルに話は進んでいく。

彼(ラウリ)が生まれた故郷から話が始まり、子供時代・児童時代・学生時代・・と時系列にラウリの足跡を現代のジャーナリストが追っていく。

ラウリの昔の話と現代のジャーナリストの話、で交互しながら前に進む。

その時間の行き来はタイムマシンに乗って移動し、どこか無機質で不思議感がある。

でもグッと読ませる。

 

色々な話が語られているのに、常にその色は薄暗い灰色一色でその描写も素晴らしい。

とにかく重くて薄暗い。

いつ雨が降ってきてもおかしくない、そんな曇天色。

時々キラッとするエピソードも挟まれるのに、灰色の背景は変わらない。

そんなこと(色)どこにも書いてないのに、なぜか常に灰色の暗さが拭えないのだ。

これも描写のうまさなんだろうなあ。

全く描かれていないのに作品に色が乗っている。

すごく個性的な作家さんだと思う。日本語もちょっと面白いし。

(前もどっかで書いたと思うが宮内さん、幼少期をニューヨークで過ごしたそう。不思議な文章にちょっと納得である。)

 

そして少しずつラウリの時系列が大人時代になってくると、思わぬ事実が発覚するのだ。

いや〜「あっ!」って言っちゃったね。

まさかミステリ?要素があるとは思ってなかったので、いきなりそんな事態に陥り、

やられた〜><

と宮内さんのあまりの鮮やかな手口に、

こりゃ一本取られたね、とおでこを叩いちゃった。←リアクションが古い笑

 

しかもしかもラストもちょっと幸せなところもイイ!

無機質なSFなのに、ちょっとミステリ入っていて、そして温かなラスト。

うーん、読後感は最高でありました。

 

ただね〜。この作品が大衆受けするかと言われるとうーん、だし、面白いから読んでみて!と世の中の人たちに紹介できるか?って言われると些かためらわれるのも事実。

いや、面白いんですよ!面白いの。ほんと。

ただやっぱりちょっと難しいんだな〜。

もちろん描かれている内容は全く難しくないのだが、これを面白がれるかどうか好みがすごく分かれる。

 

きっとしをんちゃんは宮内さんに好意的だと思う。

それ以外の選考委員が好意的に読んでくれるかどうか、それがちょっとアヤシイ〜。

 

◇◆

 

 

 

こちらの作品もすごく面白かったです!

ただいかんせん、他の候補作が強かった。

別の回だったら結構いいとこ行ってたと思われるが、ちょっと時期が悪かった。

てなわけで6位です。

でも面白かったんだよ〜。

一番好きだったのは、徳川家重と正妻の此宮(増子女王)さんとのエピソード全般。

可愛かったなあ〜。

史実かどうかは知らんが(歴史に疎いもんで)、あそこが一番上手に描かれていて、思わずホッコリニッコリしちゃった。もう孫の可愛い恋愛を見守るおばあちゃんの気持ち。

あとは大岡越前のとことか良かったよね。

大岡越前といったら一般的には加藤剛かもしれんが、この小説内で「忠相(ただすけ)」と描写され、それが松平健演じる上さま(暴れん坊将軍)が「忠相」と呼ぶ声で再生されるもんですから、横内正の大岡越前で私はこの作品を読みました笑!←時代が〜。

とにかく前半は素晴らしかった!!!もう文句なし!!

ただ後半が〜。イマイチ。

最後も無理やり終わらせた感が〜とにかく残念!

そしてこれが時代小説の辛いとこなのだが(前も書いたことあるが)、いくらフィクションで色々描いても、点在する「史実」という中継地点は絶対通過しないといけない。

そこを通過するためにはどうしても今まで拡大解釈して描写し、色々盛って描いてきても、なんとしても一旦強引におさめてその中継地点を通過して、また次の中継地点までの間に盛って〜

・・を繰り返すうちにどうしても無理が生じるんだよね〜。

例えば主人公やその周囲の人間の性格の一貫性がなくなるとか。

私は史実とか疎いので、実際家重がどういう人間だったかとかこの時代にどういう事件があったとか人間関係などはまるで知らないが(学校の授業で習ったこと以上のことは知らない)、それでも感じるの、その強引さが。

これが自然に描けた時こそ、きっとスンバラしい小説になるのだと思う。

多少強引であっても、読者を無理やりにでも納得させるような記述・描写があればなんとかなったかもしれないが、この小説にはその一捻りがちょっと足りなかった。

あとちょっと気になったのが、文章の不安定さ。

語り手がわからなくなる時があった。

これ、今誰のセリフ?どういうこと?

となること数回。

お庭番(隠れた存在)のセリフ(心中)だから急に挟まってきたってこと?

いやそれにしても急に人物が入れ替わったりする?

とかセリフ描写や人物の入れ替え方にもう少し工夫があったほうがわかりやすいと思います〜。

ただそれでもやっぱり面白かったし、村木さんには今後に期待!ってことになるでしょう。

 

てなわけで次回、いよいよあの方の登場です!・・続く。急げ~!