あもる一人直木賞(第149回)選考会ー途中経過1ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

梅雨があけ、夏本番。
連日30度を超えるようになった今、ようやく元気を取り戻してまいりました。
先週までの梅雨による体調不良が嘘のよう。
晴れの国の岡山女あもるの季節である。

頭が痛いよう~、起きれないよう~、だるいよう~、
下痢してるよう~(→これは梅雨とは無関係だ)
と、ぐずぐずしていたのが嘘のよう。

あもる一人直木賞選考会、元気100倍、一人淋しく絶賛開催中である。
現在、3作品目に突入中。

あれあれ?絶賛開催中のわりには遅くね?
と思ったそこのあなた!!!!

スタートは好ダッシュを決めたものの、
梅雨による体調不良(ノロい(鈍い)の呪い)でノロノロ。
こういうときは、ノロいのペースに合わせ、あえて読みにくいものから手にしたのだ。
断じて言い訳ではない。

私の今回の作戦は、
読みにくい→読みやすい→読みにくい・・・
の交互で読んでいく、通称「テレコ作戦」である。

てなわけで、
現在、3作品目(読みにくい)に突入中。
ところが、この「読みにくい」と踏んだ作品が結構読みやすい。しかも意外にもおもしろい。
迫り来る締切日を前に、嬉しい誤算。
そしてこのテレコ作戦、私の気まま・わがまま性分に見事にハマり、
大した苦もなく、楽しく読み進めております。

というわけで、このまま楽しい選考会で終わるのか、苦行に変わってしまうのか、
「あもる一人直木賞選考会」途中経過の発表である。

今のところ・・・

1位 
2位
3位 宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」(早川書房)

ちょっと離れて・・・

4位 桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社)
5位 
6位

である。

意外や意外、桜木紫乃がまさかの4位。
前回ノミネート時(第147回)は、
あもる一人直木賞選考会での1位を獲った作家でもあるのに!!
 →参考記事『あもる一人直木賞(第146回)選考会ー結果発表・統括ー

もっと意外なのは、宮内氏が3位と大健闘。
直木賞っぽいのは桜木氏の作品の方なのだ。
にも関わらず、なぜ宮内氏のほうが上位かと申しますと・・・

おもしろかったから

の一言に尽きるのであります。

前回ノミネート作『盤上の夜』では、理解しづらい世界観、とっつきにくい文章、が
門戸を狭くしていた。
ああいう世界が好き、というコアなファンはできるであろうが、
しかし分かりにくい文章がそんなコアなファンも遠ざけがちだったかもしれない。

今回の『ヨハネスブルグの天使たち』では、
それらの欠点(?)を見事に修正してきているのである。
完全に直木賞を獲る気で来ています。
やる気、元気、イワキ!

しかもその修正っぷりが完璧すぎて、あもちゃん、こわいよ。
近未来ゲームをRPGでプレイしているような感覚で描かれているため、
SF苦手な女子(というか、主に私)にも読みやすく、
なのに、宮内氏の独特の世界観、が全く崩れていない。
読み応えとしては充分だ。

幼い男女が、少女たちが空から降ってくる「夕立」を毎日見る情景を、
最初の章と最後の章に置いてくるあたり、やられた~という気分になった。
第一章から読み進め、描かれる戦闘やテロによりなんともいえない、
モヤモヤした気分になっている中、
最後の章で最初と似たシーンが出てきたときは、あっ、と心に少し波がたち、
全く違う国の情景であるにも関わらず、おかえり、と言われたような気になり、
切なくも懐かしい感覚を味わった。
SFの要素だけでなく文芸としての要素からも作品を研磨し、深い色合いに仕上げている。

人間が書かれていて、平和や戦争について考えさせられ、
親子愛、男女愛、家族愛・・愛についてもてんこもり。
人間が書かれていない、な~んてアホなことなんて言わせない、隙のなさ。
なのに直木賞なんて言葉を口にはしてはいけないようなピリッとした空気感。

SFは苦手だが、私、この作品は好きだったなあ。
宮内氏は圧倒的に男性ファンが多そうだが、この作品によって女性ファンも増えそうである。

だのに~、な~ぜ~、3位なのか~。
それはズバリ!

直木賞っぽくないから。

ズコー!
直木賞を獲る気で来ている、と言いながら、直木賞っぽくない、とはこれいかに。

私の記憶が確かならば、直木賞作品でSFだったことはないのではないかしらん?
(と思い、調べたところ、1作品だけあった(景山民夫『遠い海から来たCOO』))

しかし調べなくとも読んでいけばわかる直木賞の傾向、
それは、推理小説&SFは授賞しにくい、ということである。

てなわけで、残りまだ4作品もあるわけで、
直木賞には大変不利なSF作品を引っ提げてのご登場の宮内氏作品は
ひとまず3位という無難な位置の椅子にお座りいただいた。
(しかし今後の作品次第では、授賞させることはやぶさかではない。
 というか、SF作品をあえて書いて直木賞に真正面から戦いを挑むあたり、
 私、そういう姿勢が嫌いじゃないの。)

そして宮内氏の鎮座まします3位の椅子から少し離れた4位の椅子にお座りいただいたのが、
桜木紫乃氏、『ホテルローヤル』である。

これは宮内氏と真逆の評価であった。

直木賞っぽい!
前回ノミネート時の欠点であった、
俳句でいう切れ字、的な、話の変換点がないうえ、文法もおかしいため、
表現が理解しづらく、時系列が把握しにくい、という点を
宮内氏同様、完璧に修正してきていた。
大変読みやすい作品になった。
が、宮内氏と違い、その代償として、
『ラブレス』で描かれていたダイナミックさを失う結果に。
確かにうまくなったんだけどね。
文章もうまくなったし、きっちり時間軸を定め、読者が迷子になることもない。
しかし、惜しいかな、
こちらが呼吸のタイミングを逸し、呼吸困難に陥ってしまうほどの激しい筆致が一切なし。

暗闇の池に、ポツポツと小石を投げ入れているような、
そんな暗くて不気味な世界を丁寧に描いているのだが、
私は、桜木氏の描いた、下手だろうが雑だろうが、ぐわっと胸ぐら掴まれるような、
でっかい話が好きだったんだけどな~。
ほっかいどー、でっかいどー。→あ、桜木氏は北海道出身だそうです。

くらくても、湿っぽくても、どろどろでもいいのだが、
とにかくこの作品、おもしろくなかったの。
そこから心動く何かが少しでもあればよかったのだが、私の感情が一糸乱れなかった。
次回、また頑張ってほしい。
・・ってまだ結論出てませんけど!

上記で推理小説&SF小説が直木賞を獲りづらい、と書いたが、
もう一つの傾向として、短編小説が獲りにくい、というのもある。
この傾向はぜひ打破していただきたいもの。

宮内氏と桜木氏、ともに短編小説(オムニバス形式で純粋な短編小説とも言いがたい)での
ノミネート。
本来ならば健闘を祈りたいところだが、どちらも今回はダメかなあ。

宮内氏は次回作も大いに期待したい。まだまだステップアップできる余白がある。
桜木氏は『ラブレス』でも書いたが、あの作品で頭打ちになる可能性が・・・

というわけで、以上、2作品についての暫定順位が決まった。
今回は前回と違い、あもちゃんの苦手なジャンル時代小説が1作品のみ!
残り4作品、怒濤の追い込みとなるか!

ちなみに今、読んでいる3作品目はこのまま最後まで頑張れば、
桜木氏の作品は軽く抜く勢いであります。

果たして残り4作品に、ダントツトップ作品が登場するのか!?
はたまたダントツドンケツ作品が出てくるのか。
大いに楽しみなのである。

選考会、続く。