あもる一人直木賞(第149回)選考会ー途中経過2ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

飲み会、そして週末に演劇、連休明けにしばし東京を離れる、という
突如、降って湧いた強行スケジュールに、あわてふためきながらも、
着々と読み進めているあもる一人直木賞選考会。

前回の記事でも書いたとおり、
私の今回の作戦は、
読みにくい→読みやすい→読みにくい・・・
の交互で読んでいく、通称「テレコ作戦」である。

読みにくいと踏んだ3作目が思いのほか読みやすく、
そして4作目は計算どおり読みやすく、順調に進んでいるのである。
嬉しい誤算。
かなり順調であります。
あと1.2作品。←現在、5作品目残り数十ページ。

しかしここで問題発生。
本物の直木賞発表日までに読了するのはもはや確実なのだが、
問題は選考会結果の記事が発表当日に間に合うかどうか、である。
あもちゃん、本物の直木賞の発表日(17日)までの数日間、東京にいないの。
つーことは、それまでに結果発表しとかないとさ、
後だしじゃんけんになっちゃうじゃ~ん?

佐藤藍子ばりに、
私も◎◎が直木賞を獲ると赤ちゃんの頃からそう思ってました。
みたいになっちゃうじゃん?

佐藤藍子化しないためにも、あと数日、ひたすら読んで書いて、さらに書く予定。
さ!急いでいってみよ!
一人絶賛開催中、あもる一人直木賞選考会途中経過である。

今のところ・・・

1位 
2位 恩田陸「夜の底は柔らかな幻(上・下)」(文芸春秋)
3位 宮内悠介「ヨハネスブルグの天使たち」(早川書房)
4位 湊かなえ「望郷」(文芸春秋)
5位 桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社)
6位 

である。

意外や意外、湊かなえがまさかの4位。
絶対、ドンケツだと思ってたのに(笑)

3位と4位についてはかなり悩んだ。
僅差で宮内氏が3位になったのは、ただの好み。未来への期待。ただそれだけ。
湊氏が3位でもちっともかまわなくてよ。
結論としては、どっちが3位でもいいが、どちらも今回の直木賞授賞はない。

3位と4位が混沌としている中、1つ頭抜け出したのが、ベテラン恩田陸。
まさか、こんな上位に鎮座ましましているとは!
絶対、枠外だと思ってたのに(笑)→湊氏とは別の理由で。

恩田氏、直木賞なんてもう欲しくないんじゃないの~?と思っていた私だったが、
今作品を読んで考えを改めた。
直木賞、やっぱりくれるなら欲しいようだ。
そりゃまあ、くれるんなら欲しいわな。
私だってくれるならそりゃ欲しい。
なんも書いてないけど。

まずは結果として4位になった湊氏であるが、
彼女の作品は『告白』しか読んだことが無い。
あとドラマで『贖罪』を見た。
いずれも、うーん・・・
ドラマはともかくとして、『告白』については嫌悪感しか残っていない。
インパクトを狙ってるのは重々承知。
しかもデビュー作のわりに、文章レベルも高い。
でも、なんかこう、私の中の触れてはいけない部分を逆撫でされた気分で
とにかく印象が悪い作家であった。

今作品もそんなナイーブな部分をガシガシ逆撫でしてくる。
とある島(おそらく広島県の因島。でも作品内では仮名。)を舞台に、
いろいろな人間模様をシンプルな刃でグイグイとえぐるように描いていく。
短編6篇で構成されているのだが、そのうちの1つ、「雲の糸」なんて、
途中までヒーヒー言いながら、早く終わって~~~~~と思いながら、読んでいた。
もう、いろんな意味で苦行。
それなのに、今回はなぜ高評価だったのか。
おそらく、えぐった後のケアが見事であったから、であろう。

とっても簡単な文章で、易しく、シンプル。
そのシンプルな刃で、複雑な田舎の人間関係をえぐっていく手法はギリギリである。
その刃の鈍い輝きは、シンプルがゆえに恐怖である。
田舎出身の私には恐怖倍増でもある。

しかしえぐったあとに、現実的なケアがなされる。
自己解決であったり、目に見える愛であったり、優しさであったり。
そうは言ってもさ~、というところもないことはなかったが、
それでも湊氏が出した、それぞれ6編の結果には優しい目で見守ることができた。

結論が優しかったから、というのが高評価の原因であるのは間違いないが、
さらにもう一つ。
上記でもすでに述べているが、描写の手法がおそろしくシンプルなのだ。
そのシンプルなまっすぐな表現の中で、どんでん返しが行われたり。→『海の星』
高層ビルやネオンやおされなショッピングモールなんて無い田舎を書くにふさわしい単純さ。
突き詰められたシンプルさが、ちゃんと練られていることに気づくのであった。

田舎もん どこまでいっても 単細胞 (田舎モンあもちゃん、心の俳句)

そんな単細胞(コラッ)小説『望郷』と、趣を全く異にしているのが、
恩田陸「夜の底は柔らかな幻(上・下)」である。

こら、参った。
相変わらずの妄想小説なのだが、これがおもしろいほどのめりこめる。
私のツボの一つ、民俗学、に見事にハマっちゃったのだ。
現実にある、日本という国、田舎では当たり前に存在する宗教的行事(お盆とか)など。
そんな基本的な常識世界に、仮想世界を薄く、薄く、丁寧に重ねて行く恩田氏。
その作業は、もはや神の領域。
実際、ホトケ、が出てくるんですけどね。

普通にキンキラキンのホトケが地中から登場しちゃったら、
どえらいスケールのでかい話になっちゃって、読者が置いていかれるのが普通。
でもそうはならないのが恩田氏のテクニック。
日本人には、祖先や目に見えない霊魂、自然への畏怖がどこかに必ずある。
その繊細な部分をうまくあぶりだし、読者の意識下の理解を助けているのだ。

生けるものの世界と黄泉の国の境界線。
その境界線上の世界を、気味悪く、不気味に、それでいて圧倒的な魅力で描き出す。
これ、一応、SFってことになるんでしょうか??
ファンタジー?
いずれにせよ、直木賞を大変獲りづらい分野ではあるが、
内容が内容だけに(日本人の宗教観念を民俗学視点から描いている)
この作品だと獲れるかもしれない、と大きく期待できる。
だから2位。

2位~?
ここまで絶賛しといて、2位。
別に1位でもいいんですけどね、残り2氏が、伊東潤氏と原田マハ氏なのである。

あもる一人直木賞(第149回)選考会ースタートー」でも述べたとおり、
両氏の一騎打ちじゃないか、とにらんでいるわけですよ、あもちゃんは。

よって、両氏を残した状態で、
恩田氏を1位にするには、あと一押しが足りない。
文藝春秋から出てる、ということは大きな一押しでもあるのだが・・・

というわけで、以上、4作品についての暫定順位が決まった。
残すところ、あと2作品。
おそらく伊東氏、原田氏はダントツドンケツにはならないと思われる。
(私の好みだから。力量のある作家さんだから。)

残り2作品についての感想はまとまっていないが(1作品はまだ読んでないし)
今までの4作品の印象として、
ダントツドンケツというのがなかった代わりに、
抜きん出てこれがぜったい獲りそう!というのもなかった。
残り2作品が4作品同様、こんな感じだと、どれを1位にするか、かなり迷うだろう。

そしてもう一つ気になったこと。
ゲームっぽい作品、か、映画化しやすい作品、の2種類に分けられる。
ということである。

言葉から映像を紡ぎ出すのではなく、映像から言葉を紡ぎ出している感じ。
また一歩、あもちゃん、時代の歩みに取り残された。
ぽつねーん。

一人寂しく、選考会、続く。