『指輪物語』三部作(6冊)は本棚にどっしり。3度の大整理でも残した。仕事が忙しく、育児や家事に追われながらも時間を見つけて読む時は、ファンタジーの世界、別世界でひと時を生きられた。読み過ぎると時間不足にアタフタになるけれど。

もう1冊、4枚のトールキンの描いた絵地図と解説の本がセットの『トールキン〈中つ国〉地図『指輪物語』世界を旅する』も、映画のおかげでこれまで以上に楽しめそう。

トールキンの『指輪物語』3部作のうちの第1部。

「ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間」 

https://warnerbros.co.jp/movies/detail.php?title_id=58760

「三つの指輪は、空の下なるエルフの王に/七つの指輪は、岩の館のドワーフの君に/九つは、死すべき運命(さだめ)の人の子に/
一つは、暗き御座(みくら)の冥王のため/影横たわるモルドールの国に/一つの指輪は、すべてを統べ/一つの指輪は、すべてを見つけ/一つの指輪は、すべてを捕らえて/くらやみのなかにつなぎとめる。/影横たわるモルドールの国に。」

ホビット庄のビルボ・バギンスが手に入れて、110歳になった今、ホビット庄から最後の旅に出る。魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)は、指輪を甥のフロド・バギンス(イライジャ・ウッド)に譲れという。

ガンダルフは、フロドに指輪をモルドールの火の山に投げ込めと言い、フロドは旅に出る。そして次々に仲間が加わり9人の旅となる。そしてモルドール側の兵士や怪物たちとの凄まじい戦いが繰り広げられる。

迎え撃つ旅の仲間は、ガンダルフの叡智、アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)の誠実、勇猛、エルフの王子レゴラス(オ-ランド・ブルーム)の美と弓を射る軽やかさ、ゴンドールの立て直しを切実に願うボロミア(ショーン・ビーン)、ドワーフのギムリ(ジョン・リス=デイヴィス)は武骨な猛者。

旅の途中で出会う女性たちの美しさ。エルフのアルウェン(リヴ・タイラー)の激しさを秘めた瞳。ロスロリアンの女王ガラドリエル(ケイト・ブランシェット)の透明感のある美しさ。観客をもホッとさせてくれるひと時。
エルフ語を聞けたのも嬉しい。語学に長けているトールキンは新語を作り上げたのだ。

私がこの物語で好きなのは、ホビットたち。メリーとピピンのご迷惑コンビは危険な場所で呑気に食事の火を焚いたり、うっかり触って井戸の奈落に落として音を立てたりと、ドジっぷりも見事。

このホビットたちの友情、ことにサム(ショーン・アスティン)のフロドへの愚直なまでの責任感と誠実な友情には胸を打たれる。

ガンダルフは洞窟を抜ける時に奈落に墜落してしまうし、ボロミアも戦死する。指輪をモルドールの火の山に投げ込んで封じる旅は、いったい続けられるのかしら。


「旅の仲間」の最後では7人となり、それもメリーとピピンはオークにさらわれ、アラゴルン、レゴラス、ギムリの3人が救おうとし、フロドとサムの2人が前に進むという。

3部作がこの秋に続けてくるのは嬉しい。全作IMAXですって。



なぜ、ビルボもフロドも指輪を持てるのか。指輪はすさまじい権力の象徴。指輪自体が持ち主に権力への欲望をそそるところが魔法なのだろう。

旅の仲間たちもエルフですら一瞬、その欲望に負けそうになる。引退してエルフの国で穏やかに過ごすビルボでさえ、指輪の魅力に抗い難い一瞬を見せる。

それでもホビットたちは権力への欲望が少ないからこそ指輪を託されたのだろう。
聖書のイエスの言葉「あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である」を思い出す。
(ルカによる福音書9章48節)

「権力欲は一切ない」と言い切れる人は、ほとんどいないのではないかしら。権力に大小はあるけれど、例えば何か上手く行かない時、皆がまとまれば…と思うこと。そこに権力への憧れが潜むような気がする。たとえ目的がどんなに良いことであろうと。
権力を使わずに、権力から逃れ、自由な思考と自らの選択ができますように。

トールキン自身を知りたいなら、この映画「トールキン 旅のはじまり」。少年時代の思い出に、『指輪物語』の原点を見つけ出すのも楽しいです。