仁義なき戦い 広島死闘篇 （十）「水飲ましてつかあさい」

　『仁義なき戦い　広島死闘篇』

映画　　トーキー　100分　カラー

公開日　昭和四十八年（1973年）四月二十八日

製作国　日本

制作　　東映京都

企画　　日下部五朗

原作　　飯干晃一

脚本　　笠原和夫

撮影　　吉田貞次

録音　　溝口正義

照明　　中山治雄

美術　　吉村晟

編集　　宮本信太郎

音楽　　津島利章

記録　　田中美佐江

出演

菅原文太（広能昌三）

千葉真一（大友勝利）

梶芽衣子（上原靖子）

名和広（村岡常夫）

成田三樹夫（松永弘）

松平純子（バーのホステス）

北村英三（石田栄輔）

室田日出男（中原敬助）

八名信夫（浅野卓也）

北十学（国定清次）

宇崎尚韶（野中雄二郎）

大木晤郎（須賀政男）

国一太郎（浜田隆吉）

中村錦司（倉光俊男）

志賀勝（寺田啓一）

広瀬義宣（神谷英司）

野口貴史（岩見益夫）

白川浩二郎（助藤信之）

堀正夫（景浦辰次郎）

唐沢民賢（新聞記者）

秋山勝俊

川谷拓三（岩下光男）

北川俊夫

笹木俊志

木谷邦臣

藤沢徹夫

福本清三

松本泰郎

大矢敬典

宮城幸生

森源太郎

波多野博

酒井哲（ナレーター）

矢奈木邦二郎

片桐竜次（川口芳夫）

岩尾正隆（植木）

松田利夫

小田真士

古関達則

西村泰治

司裕介（弓野修）

高木亜紀

美川玲子

橋本房枝

穂積かや

熊谷武

浪花五郎

細川純一

大林一三

広瀬登美子

高石郁子

大城泰

小坂和之

西山清孝

鳥巣哲生

前川良三

和田昌也

小池朝雄（高梨国松）

北大路欣也（山中正治）

監督　深作欣二

☆☆

千葉真一＝JJサニー千葉＝和千永倫道

名和広→名和宏

北村英三＝喜多村英三

北十学＝北斗学

深作欣二＝ふかさくきんじ

☆☆
平成十年（1998年）八月十三日新世界東映

平成十五年（2003年）八月三十一日シネ・

ヌーヴォにて鑑賞。

この二時以外にも映画館で鑑賞している

☆☆
　演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。東映様にお

かれましては、お許しと御理解を賜りますよう

お願い申し上げます。

☆☆

関連記事

『仁義なき戦い　広島死闘篇（一）

焦げ飯の義』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12092932225.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（二）

腕時計と青竹』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12105280769.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（三）
「恰好つけにゃあならんですけん」』
http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12109110836.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（四）
「立場つけいや」』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12154696614.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（五）

「出せや」』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12141788219.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（六）

質屋の男達』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12155349856.html
『仁義なき戦い（七）電話を取る』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12190099660.html
『仁義なき戦い　広島死闘篇（八）

ドアを見る眼

本日菅原文太八十三歳誕生日』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12190997475.html

『仁義なき戦い　広島死闘篇（九）

「これは返しますけん」』

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12218854125.html

　山中は靖子との仲を村岡に許される

が、殺人マシーンである彼の射撃術に

注目した村岡はヒットマンとしての辣腕

を振わせ、勝利の乾分の寺田・川口・余

田を射殺させるが、山中は警察に逮捕

され、無期懲役の刑を受ける。

　勝利は景浦辰次郎親分を暗殺し、大胆

にも記者会見を開いて、自身の行為は「や

くざの伝統」であると開き直る。

　愛人とのトラブルから服役した高梨は山

中と再会する。正治は村岡が靖子を再婚

させようとしていることを聞いて愕然とする。

　　村岡は山中は無期の身であり、待てない

と強調するが、靖子は「待ちます」と愛を語る。

「美代はどうするんない？無期の父親持って？」

と村岡は娘の将来も思えと、叔父・大叔父の

家族愛から、山中は死んだ者と思えと語る。

　山中は自らの血を注射器で抜い飲んで吐き

喀血したと見せて脱獄する。

　村岡は松永に靖子を呼び戻すように指示

する。

　村岡組事務所に脱獄した山中が四十五口

径レボルバーを持って現れ、靖子と再会し号

泣する。

　　山中「親父さん。儂をぶち殺してつかあ

　　　　　　さい。」

　高梨の話を聞いて、自身と靖子の仲を裂こ

うとした人が村岡と思い込んで、親分を撃とう

としたことについて、山中は恥じ入って泣く。

　松永は、山中に対して、無期懲役の身で、

靖ちゃんを二十年待たすことは残酷だと言い

聞かせる。

　刑務所の暮らしは生き恥を晒すものとする

山中は、勝利との戦いに命を燃やそうとして、

彼を探しに出る。

　一方勝利は岩下光男を捕えて嬲りものにし

て、船上で無残に殴り倒す。

　　勝利「山中は何処なら！？」

　　光男「ほんまに知らんのです！」

　　　光男「水飲ましてつかあさい」！

　　　勝利「おう、飲ましちゃるけん。」

　勝利はロープにつないだ光男を海に放り込

んで引きずりまわす。

　無人島で光男を縛りあげて、射撃の練習を

兼ねて、銃を乱射して楽しむ勝利。

　光男は悲鳴をあげて射殺される。

　中原は勝利の蛮行に震える。

　村岡は光男の死体を確かめに行って、勝利

に襲われる。

　山中は勝利を追い詰めて、狙撃し足を撃っ

て、中原に制止される。

　勝利や浅野の残虐行為に中原は恐れを抱

いて休戦を申しいれるが、松永は彼を刺殺す

る。

　松永の通報で、勝利は逮捕される。

　勝利は「こん糞ポリ」と警官に怒るが、流石の

彼も遂に捕縛される。

　バーで広能は山中に、「靖ちゃんと暮らすよ

うに」とアドバイスするが、村岡への義理を感ず

る山中は、「親っさんを置いて」靖子と娘美代と

三人での暮らしはできないと自身の胸中を述べ

る。

　ホステスが山中に電話がかかってきたこと

を知らせる。

　☆殺人マシーン山中の純粋さ☆

　山中は村岡の命令に従って生きて、靖子と

の愛を貫こうとするが、警察に逮捕されて無期

懲役の身となる。村岡は叔父としての愛から

靖子に別れるように諭す。

　靖子は拒絶する。ここでも名和宏の名演に

胸が熱くなる。

　高梨の言葉を聞き、脱獄した山中は靖子と

再会し、村岡を疑ったことを詫び、「これで儂

をぶち殺してつかあさい」と泣いて純粋な気持ち

がそのまま正直に出る。

　村岡はこの時高梨の粛清も意識した。

　松永の「留守のおなごの守りをすること程難

しいことはない」として、「靖っちゃんの幸せ」を

考えることこそ、「ほんまの愛情」やろと説得

する。

　映画ファンで成田三樹夫に憧れない少年は

いなかった程だと、昭和四十年代から平成初

期の時代を自分は思うのだ。

　成田さんの大きさは凄い。言葉を越えている。

　山中は刑務所暮らしは生き恥を晒すような

もので、勝利との戦いをさせてくれと語る。

　勝利は光男を監禁して嬲り殺しにする。

　川谷拓三の捨身の演技は、芸の極みである。

　田中美佐江氏のトークショーで「拓ちゃん。こ

の時のびてたんよ」と教わった。

　命がけの演技は圧巻というより、芸道の鑑で

ある。

　「水飲ましてつかあさい」の悲鳴に、本作の

命があり、暴力を語り描いて、暴力の残酷さを

明かしているのである。

　山中が勝利を撃つシーンの迫力も凄まじい。

　両者の決着がつかないことも魅力的である。

　バーで山中に靖子との暮らしを進める昌三。

　抑えた演技の文太が渋い。

　山中正治に全てを賭ける欣也の闘魂も熱い。

　笠原和夫・深作欣二はやくざ社会に捨石に

されつつある山中を思う広能の苦悩を静かに

見つめる。

　狂言回し・語り手的位置にある昌三だが、第

一作の純粋さを思うと、冷静にやくざ社会での

立脚地を見る親分になったことが窺える。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌