小忍ばざれば則ち大謀を乱る(論語)
些細なことにいちいちかかずらわってはいけない。大事のまえの小事、小さい我慢ができなければ、大きな目標を達成することができないという意味である。これで思い出されるのが、韓信の故事である。
韓信は、漢の高祖劉邦に仕えた将軍だが、若いころは定職にもつかずぶらぶらしていた。ある日、普段から韓信をバカにしていた与太者が因縁をつけ、「格好ばかりは一人前だが、肝っ玉のほうはからきしだろう」とからんできた。見物人が集まってくると、与太者はますます図に乗って、「度胸があるなら俺を刺してみろ。それが怖けりゃおれの股をくぐれ」という。
韓信は、默って与太者の股をくぐった。彼には大きな志があって、その志の前に「ならぬ堪忍するが堪忍」と辛抱したのだという。
人生には、腹の立つことがたくさんある。しかし、そんなことにかかずらわっていたのでは、肝心の目標を達成できない。逆にいえば、大きな目標があれば、そうした些事に一喜一憂することもないということだろう。できれば、同じ忍ぶにしても、歯をくいしばって耐えるのではなく、淡々と対処したいものだ。(守屋洋著「中国古典一日一話」より)
テーマ:読書
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