光の街で、愛はどこまで真実でいられるのか 


夜の漢江。

光る橋の下を、黒い水が流れている。

川の南。
成功という名の街、江南。

その光のどこかで、
誰かが嘘をついている。


登場人物

キム・ガヨン(29)
長い黒髪に薄化粧。
どこか影をまとった瞳。
会計士資格を目指しながら、静かに生きている。

ソ・ドジュン(32)
大手企業勤務。整った身なり、穏やかな物腰。
感情をあまり表に出さない。


第1話「落とした記憶」

夜の漢江。
橋のライトが霧に滲む。

川の向こうには、光り続ける高層ビル群。
成功という名の街、江南。
だが、川の水は黒い。

ガヨンは坂道を下りていた。

傘越しに揺れる橋の光。
濡れたアスファルト。
一定の足音。

長い黒髪に、雨が静かに落ちる。
薄化粧の横顔は、どこか遠い。

ふと立ち止まる。

バッグの中を探る。

ない。

呼吸が、わずかに乱れる。

フロッピーディスク。

今では誰も使わない、
古い記憶媒体。

それが、ない。

橋の近くの横断歩道。
男が、小さな黒い物を拾った。

掌に収まるそれは、
時代から取り残された形をしている。

顔を上げる。

少し先を歩く女性の後ろ姿。
長い黒髪。細い背中。

なぜか、懐かしさを覚えた。

胸の奥が、かすかに軋む。

彼は歩き出す。

「すみません。」

ガヨンが振り返る。

視線が重なる。
その瞳は、静かすぎた。

「これ、落としましたよ。」



つづく

第2話以降は、noteにて連載しています。


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