アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その23
ウルマコ層の主な生物相
今日は、②のヴェネズエラ、ウルマコ層化石を紹介しよう。昨日のマップの★付近が産地だ。極東の島国でも知れる著名なブツに、ストペンデミス(スチュペンデミス)がいる。大阪の海遊館にレプリカの展示があって、その大きさで入場者のド肝を抜く客寄せになっている。
模式種のストペンデミス・ジオグラフィックスは、甲羅の長さ2.4メートル、頸椎(首の骨)化石から推測される首茎が1メートル、それプラス巨大亀頭で、全長は4メートルに達したようだ。
ウルマコ湿原には、巨大ビーストがウジャウジャいた。ウルマコ古生物学者の愛称、ギニアジーラ(Guinea-zilla)、すなわち「ギニア・ピッグ(テンジクネズミ=モルモット)のゴジラ」、がフォベロミス・パターソニーである。推定体重は、700キロあって、けっこう長い間、史上最大のネズミとされていたけど、2008年にウルグァイで記載されたジョセフォアルチガシア(推定1トン)に、その王座をノックアウトで倒された(笑)。
レッドテールキャット(RTC)属の絶滅種、ナッシーもウルマコ層産である。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その22
ペーバス湖時代からアクレ湖時代の生物
アンデスの隆起でできた巨大な沼沢地(proto-Amazonian Mega-Wetlands)には、異常なほど多種のワニが生息していたことが知られている。ペーバス湖には、多様化して面白い食性をもった、グナトゥスクス・ペーバセンシスがいた。こいつは、貝類を専門に食っていたグルメと考えられている。一般ワニ風の鋭く尖った歯でなく、殻砕きに適した歯形状を持っていた。
ペーバス湖時代から少し時代が過ぎると、プルース・アーチ辺りで分水嶺になっていた河川群が、まとまって西に流れ始め、現代型のアマゾン・モデルが完成する。
この時代、すなわち新生代中新世の中頃のアマゾン上流には、アクレ湿地帯があった。湿地帯は、古代オリノコ河のほうまで広がっていて、コロンビアでは、①ヴィジャヴィエーハ層など、ヴェネズエラでは、②ウルマコ層などという堆積物が積もった。そしてブラジルでは、③ソリモンエンス層と呼ばれる堆積物が広範囲に堆積した。
まず①のコロンビア化石を見てみよう。★地域からは、多くの化石が知られていて、ラ・ヴェンタ動物群(La Venta fauna)と呼ばれている。サルの化石も多く、極東島国の古生物屋サピーも研究に参加している。
哺乳類、爬虫類、鳥類も色々と記載されているけど、魚類化石も豊富だ。
この時代のピラルク化石も発掘されている。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その21
アマゾン上流部の堆積物について
順番だったらソリモンエス盆の西方に広がるアクレ盆のお話しになるんだけど、ソリモンエス盆に隣接するいろいろな堆積物のお話しを少し砕いていこう。中生代末期ころの古アマゾン河は、太平洋方面あるいはカリブ海方面、すなわち西方向や色々な方向に分散して流れていたという説は、かなり支持されている。
アンデス山脈が隆起し、太平洋側の出口が閉ざされたころ、丘陵に沿って巨大なペーバスという湖沼群ができた。この時代、今のアマゾン上流からヴェネズエラ方面や南ブラジルのほうまで超巨大な湿地帯が広がって、それをブラジル地質学ではスーパー・パンタナルと呼んでいる。
怪人がイキトス・アジトに潜伏していた時期、何回かペーバス層の化石を拾いにいった。源泉となった論文は、「アマゾンの琥珀の中の昆虫」という資料だった。
★を記したタミシャクという町のごく近くのアマゾン本流岸がコハク・ポイントである。
イキトスからタミシャクまでボロい定期船、あるいは乗り合い高速ボートがある。タミシャクは、シケた町で、ボロいペンションで何日か泊まったことがある。
この崖は、たいへん多くの淡水貝化石が層になっていて、怪人は古代ワニの甲板も拾った。
このタミシャクの町の前には、大型のナマズが多い。ドラドキャット、ゴスリニア、ゼブラキャットもたくさんいた。淡水イルカもウジャウジャいて、大型ナマズが網にかかると、ガツガツと食いにきてた。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その20
ソリモンエス盆について
一応、昨日でアマゾナス堆積盆地の解説を終えて、今日からその西方に広がるソリモンエンス盆のお話しに入る。おおむねプルース・アーチの西、イキトス・アーチの東の区域である。以前に挙げた図を、もう一度載せて確認してもらおう。
このソリモンエス盆には、古生代や中生代の層があるんだけど、マクロ・サイズのパッとした化石の報告が見当たらない。現在、この地層群で話題になっているのは、ブラジル最大規模の良質の天然ガスの埋蔵である。
ソリモンエス盆で、「宝石&化石」のネタ知見がないので、得意の余談をブチかましてゴマかそう(笑)。熱帯魚のワイルド・ディスカス愛好家なら、天然ガスを掘ってるコアリという地名をご存知でしょ? 野生のブルーとグリーンの亜種が分布する境界線にあって、変わった個体も出現することで知られている。
蝶の標本の愛好家で、空飛ぶ宝石の異名をもつアグリアス属の珍種に、ヒューイットソン・ミイロタテハがいる。喉から手が出るほど欲しがっているマニアもいるに違いない。もともとこのベアタ種の亜種は、これまたディスカスで有名なテッフェというところが模式産地である。ところが、天然ガス調査から採掘が始まって密林が開拓されたのが要因で、コアリ付近からも新しい標本が市場に出回るようになった。
まあ、こんな感じでソリモンエス盆を余談でゴマかしておこう(笑)。次回から、もっと上流地域の堆積物のお話しに進めていく。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その19
アマゾナス盆の中生代・2
アマゾナス盆の中生代白亜紀層は、たいへん広範囲に分布しているんだけど、化石の報告となると残念ながら、たいへ~んに少ない。古~い文献に、アルテール・ド・ション層産の琥珀(コハク)のカケラの白黒写真が載っていた。
コハクってのは、ご存知、樹木から湧き出た樹脂の化石である。そいつがあるってことは、陸性あるいは淡水性、もしくは沿岸性の地層があるってことになる。この時代、陸地には大小さまざま、多種多様の恐竜たちが徘徊していた。グランデ怪人は、いつの日か、アマゾン地方で世界的な「恐竜の墓場」の発見を大いに期待している。その可能性を示唆するブツがアマゾナス州のノーヴァ・オリンダ・ド・ノルチで発見され、プライスによって報告されている。
この化石は、地表で掘られたブツではない。石油探索で掘られたボーリングのコアから見出されたものである。ボーリングの穿孔地点が、単発にあった恐竜化石にピン・ポイントでドンピシャと当たる確率って、ものすご~く低いと思う。ってことは、その辺のそこかしこに膨大な量の骨が埋まっている、すなわち「恐竜の墓場」規模の化石層が地下に眠っているのではないだろうか? そんなのが人知れず、どっかの地表付近にあるということは、不可能ではな~い。そう、たとえば、シングー下流域。もちろん、理想郷はアジトに近いのがベスト。
マップの大部分を占める薄緑色の地域が、クレタシアス(白亜系)とされている地盤。●がアルタミラ市で街道を東北東に行くと、ヴィットリア・ド・シングー町がある。★をつけたのは、シングー下流河畔の崖のあるところ。
この辺りにたまに隊員を連れて釣りに行くことがあるんだけど、化石を探したことは、まだない。アマゾナス盆の白亜系の上に乗っているのは、新生代第三紀層だけど、目だった化石がない。その上に乗っている第四紀層は、現在も堆積中である。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その18
アマゾナス盆の中生代・1
古生代の次の大きな区切りは、もちろんメソゾイック(中生代)である。古いほうから、トライアス(三畳紀)、ジュラシック(ジュラ紀)、クレタシアス(白亜紀)の3つに区分されている。この中生代の白眉イベントは、もちろん恐竜の大発展である。
アマゾン堆積物からは、三畳紀化石が知られていない。だから、ここでは南ブラジルで産した古代初期恐竜の画像を載せておく。
アマゾン堆積物からは、ジュラ紀化石もまた知られていない。この時代のブラジル化石も多くない。だから、ここでは隣国の宝庫アルゼンチンのジュラ紀恐竜の画像を載せておく。
三畳紀~ジュラ紀ころ、玄武岩質の溶岩がアマゾン地方に貫入している。シングー河畔アルタミラ市の北の丘にも、そういう起源の輝緑岩が分布している。さて、アマゾナス盆から知られている中生代層は、末期の白亜紀だけである。
白亜紀の堆積物は、アルテール・ド・ション層と呼ばれている。
アルテール・ド・ションを和訳すると、「大地の祭壇」だろうか? 地層の名前の基になったのは、パラ州サンタレン市から30kmと至近にある村の地名だ。タパジョース河畔に、たいへん美しい砂浜があって、観光名所にもなっている。今年の9月、怪人は熱帯魚観察チームを率いて、ここに行く予定になっている。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その17
アマゾナス盆の石炭紀
今日から古生代の石炭紀のお話しに入る。湿潤で大気の酸素濃度が高くて浮遊が楽になった。そこで、テラ(地球)史上で始めて生物が空中に進出できた。翅をもった昆虫である。両生類の進化も著しく、爬虫類につながる竜弓類、哺乳類につながる単弓類も現れた。
アマゾン堆積盆地の石炭紀系には、ファーロ層、モンテ・アレグレ層、イタイトゥーバ層、ノーヴァ・オリンダ層下部などがある。この中で特に化石が多産するのは、イタイトゥーバ層である。細粒砂岩、頁岩、ドロマイト、石灰岩の中に、三葉虫、ウニ、腕足類、コケムシ、二枚貝及び巻貝などの化石が多く知られている。
「タパジョース水系、イタイトゥーバ層産の腕足類」という論文で、USAコロネル大学で博士号を取得したのが、ニューヨーク州生まれの古生物学者オービル・アルバート・ダービーである。彼はブラジル古生代の生物研究に多大な貢献を残している。結局ブラジルに帰化し、リオ・デ・ジャネイロで没しているが、今年は彼の没後100年に当たる。彼が研究した石炭紀の腕足類の一部を紹介しよう。
ご覧のように、イタイトゥーバ層の腕足類化石は、けっこう保存状態が良好である。
化石産地は、アマゾンの南岸である。ポイントは怪人も知っているので、そのうちにヒマできたら行ってもいいなぁ、なんて夢想している。
石炭紀の次の時代は、古生代の末であるペルム紀である。アマゾナス盆のペルムは、ノーヴァ・オリンダ層上部なんだけど、塩分濃度が高かった環境とされ、化石に乏しいんでここでは追求しない。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その16
アマゾン河南岸のアマゾナス盆のデボン紀
この緋色の研究、ナンバー09で記したようにアマゾナス盆の古生代層は、北と南に帯状に露出している。古生代層の分布図(赤くした部分)を載せる。
ナンバー10~15では、アマゾン河の北岸で露出する古生代シルル紀~デボン紀の化石のお話しを書いた。今日は南岸で発見されている化石を紹介する。怪人がアジトに潜伏しているのも南岸である。そのシングー河畔のアルタミラ付近の地質図を見てみよう。
北岸と同じように、シルル紀のトロンベッタス層群、デボン紀のマエクル層とエレレ層&クルア層の順になっている。●がアルタミラ市、★が現在工事中のベロ・モンチのダムの地点である。発電ダムのできる場所は、ちょうど古生代層の分布しているところだ。
アマゾンの博物学者のグランデ怪人は、工事のため地表を剥いで岩盤が露出すると、古生代の化石が発見されるだろうという予見を持っていた。工事地区は、一般者の入場は禁止であるからして、怪人本人は探しに行っていない。
しかし、最近ニュースが入った。ダム工事をやっているノルチ・エネルジア(北伯電力公社)が、2800個の化石標本をベレン市のエミリオ・ゴエルディ博物館に寄付したというお話しである。記事には、4億1900万年前と記してあったから、シルル紀トロンベッタス層群のブツである。
それほど保存が良好ではないみたいだけど、まだ研究前だから、詳細な化石内容は、よく判らない。工事が終わって、現場が静かになったら、化石採集に行くのもありだ。水没しちゃうのかな?
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その15
エレレ層の上位にあるのが、クルア層である。時代は、デボン紀の最後のほうと考えられている。西のほうから進入した海だったらしい。上部に淡水成らしい層があって、植物化石がでる。
昨日と同じような画像だけど、モンテ・アレグレ近郊のドーム地質図を見よう。薄緑がクルア層のバヘリーニャ・メンバーと呼ばれる岩層である。
★をつけたところに、イングレス・デ・ソウザという村がある。1970年代、この付近に多量のウラン鉱石があるのが知られた。
20世紀の初頭、このイングレス・デ・ソウザ村付近の放射能値が大変高いことがニュースになった。その後、あまり話題にはなっていないようだけどね。さて、化石には関係ないけど、モンテ・アレグレ州立公園というのがある。その一帯に、炭素14測定で、1万年くらい前の住民が描いたらしいという岩絵がたくさん残っている。
モンテ・アレグレまで現在、サンタレンから高速ボート定期便が就航していて、3時間かからないで行くことができるようになった。今年の8月末、9月中旬にサンタレン方面での仕事が決まっている。ついでに、高速ボートでモンテに渡って、三葉虫化石を訪ねる「デボンの旅」も悪くないなぁ、と思っている今日この頃の怪人である。
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アマゾンの地質地史&宝石と古生物・その14
アマゾナス盆のデボン紀中期・エレレ層
マエクル層の上位にあるのが、エレレ層である。一昨日の地質図でマエクル層に接しているピンクっぽい色の地域に露出している。
細粒砂岩に頁岩をはさむ岩相が主で化石が豊富と記述されている。
ウミユリの化石もたくさんでる。
一昨日の地質図のエリアの下のほう、モンテ・アレグレ市の近郊を拡大した地質図を下に挙げよう。
古生代デボン紀の岩層が、ご覧のように楕円形に分布していて、地質学のほうでは、モンテ・アレグレ・ドームと呼ばれている。断層活動によって隆起してできたものだ。ここにも、ピンクっぽい色の地域、すなわちエレレ層がある。
ここからも、化石が掘られている。腕足類の石燕だ。
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