南米・鳥獣虫魚・探遊 -29ページ目

タパジョース河の博物と熱帯魚・その9

2015年9月は、アルテール・ド・ション付近に数日以上も通った。熱帯魚水中写真の愛好家さんのご案内だったのだけれど、怪人も陸上や水中の写真をいくつも撮った。以前のこと、プロのカメラマンさんと長期アマゾン旅行をしたことあるんだけど、彼と同じようなシーン画面に安いコンデジを向けると、あからさまに嫌な顔をされた。もちろん仕事やってんだから、それは充分に理解はできる。で~も、彼との機材差のお値段は何十倍も違うし、写真って感性で撮るもんじゃないかと思っていたんで、な~んだか引けた。

今回の隊員さんは、気のよいアマチュア(腕はプロ)、気兼ねなしにやらせてもらった。ありがとうございました。さて、イガラッペに枯れて黄色っぽい葉っぱが漂っていた。しかし、その植物片は、水中でサスペンドを保っている。慧眼な澄んだ瞳をもった怪人が、正体を見逃すはずはなぁ~い! 



漂う枯れ葉?


リーフ・フィッシュであ~る。過去に巻き網で何度も採集したことあるけど、野生の状態の生態を間近でみるチャンスは、たいへんに難しい。隊員さんに声をかけて撮影してもらう。



リーフ・フィッシュの水中撮影に夢中


リーフ・フィッシュってのは、スズキ目ポリセントルス科に分類される魚だ。しかし、テラ(地球)上にポリセントルス科の魚は、たったの2種しかいない。もう一種のポリセント・リーフは、アマゾンからギアナ地方の汽水に近い淡水の住人だけれど、リーフ・フィッシュはアマゾン全域の広範囲に生息している。両種とも、イガラッペに適応している。



アピストグラマ・アガシジ「サンタレン」成魚♂


どこのイガラッペでも、アピストグラマ・アガシジの「サンタレン」って小型シクリッドがたくさんいた。

観察していると、面白いことに気がついた。中型の未成魚から亜成魚たちは、数匹~10数匹で群れを組み、餌を探して回遊している。しかし、完全に成熟した♂は♀を確保するため、テリトリーを持って孤立しているのだろう、その群れに加わっていない。



若いアピストグラマ・アガシジの群れ


ラーゴ・ヴェルデ(緑の湖)ってとこに注ぐイガラッペで観察していたら、若いアピストグラマ・アガシジの回遊群の中にディクロッサス、すなわちチェッカーボード・シクリッドがポツンポツンと混じっている。しかし、これもまた未成魚である。チェッカーボード未成魚だけの群れの回遊もあった。



若いチェッカーボードの群れ


ドワーフ・シクリッド類って色気がつく前は、温和で協調性が高いんだね。サピーのガキにゃ、生意気なヤツが多いけどね。


続く


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その8

サント・アントニオの急流から下流は、氷河時代が残した溺れ谷となり、川幅はたいへんに広くなる。これはシングーのベロ・モンテの急流の上下と同じパターンである。そして下流側は、タパジョース河と本流の合流地点が大西洋から遥か700キロも離れているにも関わらず潮汐がある。すなわち、本流の大西洋吐き出しから、タパジョースまでの勾配は、きわめ~て緩い。



川幅広大なタパジョース最下流


アマゾン本流との合流点にあるサンタレン市から舗装道路で1時間弱ほどのところにアルテール・ド・ションという町がある。「大地の祭壇」ってな意味だろう。ここは、16世紀ころまでタパジョ族と総称されるインディオ村があった。17世紀の鉄人博物学者のベイツも訪れて昆虫採集をやっている。現在のアルテール・ド・ションを有名にしているのは、サイレというお祭りだ。



サンタレン空港でやっていたサイレ宣伝ショー


2015年9月にサンタレン空港に到着したとき、ロビーで民族衣装っぽいダンス・ショーをやっていた。あぁ、そうだったっけ。サイレ祭りは、9月の開催だったけね、と思い出した。このお祭りは、宗教(カトリック)から端を発して、ドンチャン騒ぎにメタモルファーさせるのが極めて得意なブラジル民族が捏造したもので、期間中にカーニバル的なチーム対抗戦がある。チームのマスコットは、カワイルカちゃん。タパジョース下流に生息している2種、すなわちボート(アマゾンカワイルカ)とトゥクシー(コビトイルカ)の2組に分かれて衣装や山車やアレンジを競う催しがある。



ボート組とトゥクシー組


アルテール・ド・ション付近で、博物怪人が思い出すことと言えば、この近郊で始めて生きたユカタンビワハゴロモを観たことだなぁ。ブラジルでは、ジャキチラナンボイアと呼ばれて、超強力な毒針で刺す虫と恐れられている。ペルー・アマゾンで、小型のビワハゴロモを採っていたとき、現地のインセクト・ハンターから指されると痛いゼ、って教わったことがあったけど、ユカタンビワハゴロモも刺されると痛いのかも知れない。



ユカタンビワハゴロモ


ジモピーは、これに刺されたら致命傷だけど、一番近くにいた異性にキス(セックスじゃなきゃダメという説もある)すれば、助かると信じている。実にウレシイ虫じゃあないか!



今回拾ったカミキリムシ


昨年9月は、アルテール・ド・ション付近の灯火に飛来した黒いカミキリムシを1匹だけ拾った。まあ、前にも何度か採集したことある普通種だけどね。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その7

イタイトゥーバの街からモーター・ボートで1時間ほど遡ると、サント・アントニオという急流がある。



サント・アントニオ急流のフィッシング


この急流の上下で魚族の棲み分けが見られる。たとえばピーコックバス類だ。急流の下流には、シクラ・モノクルスがいるんだけど、上流側にはいない。モノクルスってのは、イエロー系のピーコである。イエローの系統の特徴は、胸ビレの後ろに黒い斑紋があることね。この系統は、小型(大きくても3キロ)である。



タパジョース下流のモノクルス種(イタイトゥーバ市場で撮影)


変わって下流にはいないけど、上流側には、シクラ・ミリアナエがいる。ミリアナエは、ブラジル高原系統のピーコで、胸ビレの後ろに黒い斑紋がない。この系統は、中型(5キロくらいまで)に成長できる。



タパジョース上流のミリアナエ種


急流の上下に共通して、シクラ・ピニーマ類がいるんだけど、上下で模様が微妙に違う。ピニーマってのは、ジャイアント・ピーコックバス系で、大型(10キロに達する)に成長することができる。



タパジョース下流のピニーマ種(イタイトゥーバ市場で撮影)



タパジョース上流のピニーマ種


大きな急流を境として魚種が入れ替わるという現象はよく見られることだ。急流が魚族の交流の妨げになって個体群が孤立し、独自の方向に進化するからである。




サント・アントニオの急流のアルマータス・カショーロ


それにしてもアルマータス・カショーロってのは、ギアナ高地、ブラジル高原、アンデス斜面と、どこでもみんな同じだね。地域変異というのが見えない。これは本種が強力な遊泳力と広範囲なミグレーション能力を持っていることの証明みたいなもんだ。それに比べて、ピーコックバス類は、けっこう定着性が強くて、引越しはそれほど好きじゃないと考えれば良いかな。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その6

イタイトゥーバのちょっと上手に右岸からジャマンシン川という支流がタパジョースに合流している。ここは、熱帯魚の淡水エイのマニアならちょっち知られた流れ。極東の島国では、クロコダイル・スティングレイとして知られ、現地ではアハイア・ジャポチーって呼ばれる美麗種である。



クロコダイル・スティングレイ


この美しい淡水エイの発見者は、怪人の旧友ダダー(ダリンタ)である。アハイア・ジャポチーという名の造作したのも彼の所為だ。ちなみにジャポチーってのは、リクガメ(陸亀)のことであるね。模様の感じからイメージしたものだろう。ところが、極東に飛んだら、いつの間にか亀が鰐に化けた(笑)。ちなみに、アマゾン流域に真正クロコダイル類のワニは生息していない。南米のクロコダイルは、ペルーの海岸線の某所に細々と生き残っているオリノコクロコダイルだけよね。



リクガメちゃん


このジャマンシン川の魚族は、まだ研究が遅れている。たまに無法稼業のフィッシュ・ハンターが熱帯魚採集をやっているみたいで、少数だけど極東島にも入荷(たとえば、アピスト・“ギガスⅡ”とか)があるようだ。



奥地でのレアンドロ博士たちの採集シーン


怪人の友人である魚類学のレアンドロ博士は、この地方のエクスペディションをやったことがある。

このエクスペディションで、ド珍のパイク・シクリッドなどゲットしている。



ジャマンシンのド珍パイク・シクリッド


レッド・ピーコックバス(ツクナレ・フォゴ)によく似たシクラ属もジャマンシンに生息している。



ジャマンシンのレッド風ピーコックバス


オリジナルのツクナレ・フォゴがいるサン・ベネジット川にあるフィッシング・ロッジって、利用のお値段が高いことでよく知られている。この類似ピーコなら、もうちょっちお安く狙えるかも知れないね。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その5

マット・グロッソ州の都クイアバは、16世紀ころから発達したバンデイランチスという私設の奥地・お宝探検隊が先鞭をつけた。アラグァイア水系で砂金産地を探したことで知られるビックードことマヌエル・ピーレス・デ・カンポスの息子、アントニオが、17世紀の終わりころクイアバ近郊で砂金を発見して、そこに町を作った。資材を補給できる足場に最適なクイアバを基点として、その後ガリンペイロたちが北上し、タパジョース水系を踏破した。



ムンドゥルクス族の干し首トロフィー


17世紀から18世紀、タパジョース流域の広域に、ムンドゥルクス族という先住民部族が勢力を持っていた。現在でもその末裔が、居住している。同族はアマゾン先住民の中でもっとも勇猛というキャッチがあって、戦争大好きだったとされている。彼らの有名な所為に、敵戦士の首をちょん切り、それをミイラ化させたトロフィーがあった。怪人は一時期、アクセサリー製作に励んでいたことがある。その中でもっともパワー溢れるブツだったのが、ムドゥルクス族の干し首のモチーフ。ボンバダ・テルちゃんにプレゼントしたことあるけど、現在は手元に一つもないのが寂しい。また作るかなぁ?



コリドラス・ビファシアータス


タパジョース水系の熱帯魚コリドラスで最近まで幻だった、ビファ(ビファシアータス)というのがいる。支流のクルル川、7°45'S, 58°00'W辺りに生息してたものが1972年に記載されたけど、業界には現れなかった。往時流行っていた珍コリドラス趣味マニアが金に糸目をつけないことに乗じて、インディオ保護地区まで不法に分け入って採集を試みた日本人もいたね。現在では、少量がマーケットに流れている。



エレモテリウム(全長4メートル)の骨格


コリ・ビファの産地から少し下った辺りは、ブラジルで最大級の砂金産地で鳴らした。そのベースとなった町がイタイトゥーバというところ。一頃は、町のタクシーは当時の高級車であるワーゲン・サンタナばっかり。人殺しと娼婦で溢れた危険地帯と言われていた。怪人は、何回か熱帯魚採集と釣りでこの付近を歩いたことがある。この付近の博物で特筆すべきは、アマゾンでは珍しい大型の地上性ナマケモノ、エレモテリウム化石の発掘だね。



アグリアス・ペリクレス


もう一つ、ド珍品の蝶が、イタイトゥーバ付近に分布している。アグリアス・アミドンに似ているペリクレスってヤツ。一回、採ってみたいなぁ。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その4

タパジョースの上流に、サン・ベネジットという支流がある。ここにタイマアスーというフィッシング・ロッジがあって、世界中に宣伝をかけている。ここのメダマの一つは、ツクナレ・フォゴ(炎のツクナレ)と呼ばれるレッド・ピーコックバスである。読んで字のごとく、色彩にたいへん赤みが強い。



ツクナレ・フォゴ


怪人は、本種を未記載新種と考えていたんだけど、現在はシクラ・ミリアナエというヤツの亜種として扱われている。



レッド・ピーコックバスのいるサン・ベネジット川


サン・ベネジット川には、現地でパクー・デ・ボハッシャと呼ばれるウチアリティクティス属のセラサルムス科の魚が生息している。岩盤に生えるカワゴケソウを常食としていて、それをエサにして釣る手法も確立している。



サン・ベネジットのウチアリティクティス


同じセラサルムス科の一員のトメテス属、アクノドン属と容姿が似ていて、幼魚のときなど魚神グランデですら、その区別が難しい。ウチアリティクティスってのは、タパジョースの支流にあるウチアリティの滝付近で始めのサンプルが採集されたことに起因している。



素晴らしい景観のウチアリティの滝


その他のサン・ベネジット川の釣りターゲットは、タライロンとジャウーが挙げられる。後者は、激流の底の大岩を隠れ家にしているパワー・キャットである。



サン・ベネジットのジャウー


ちなみにジャウーは、最強の博物探検家と賞賛されるフンボルトが記載した。学名は、スペイン語圏の南米で呼ばれていた現地名、スンガロからもらって、ズンガロだったんだけど、長いことパウリセア・ルトケンスとかパウリセア・ルエットケニになっていた。しかし、現在はズンガロ・ズンガロが正しかったことに帰結している。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その3

タパジョースの源流は、マット・グロッソ州の北部にある。怪人は、同州の庁所在都市のクイアバに数年ほど住んでいた。この時代に、源流部をずいぶんと探索して歩いた。特に支流アリノス川の水系は、何度も足を運んでいる。ここを代表する魚は、大型のタライロンである。怪魚ハンターのボンバダ・テルちゃんも好きな領域であるのだけれど、この地方の欠点は、現地でピウンと呼ばれる刺すブユが多いこと。たいへん痒い。



ピウンってのは、こんな虫


タパジョースの上流地帯の特徴は、乾期の水が素晴らしく澄んでいること。丘陵地帯には湧水部もあり、そこから流れだすスプリング・クリークに潜ると透明度に感嘆の声をあげる。



アリノス水系スプリング・クリークの水中写真


タパジョース水系の上流部は、珍水草であるホシクサの種類が多い。ある遊水地には、ドワーフ系の可憐な種がたくさん自生していた。



遊水地のホシクサ


マット・グロッソ州の北端に近いアルタ・フロスタ(高い密林帯という意味)というところには、魔人Mと熱帯魚探索に入ったことがある。コリドラス類のいわゆる“ガラナ”と呼ばれる系統を何種類も採集することができた。



“ガラナ”系のコリドラス


アルタ・フロレスタでの思い出で残っているのは、ブラジル・アマゾン地方には多くないヘラクレスオオツノカブトを観たことである。おそらく亜種のオシデンタリスだったのだと思う。その後、オシデンタリスは、ペルー・アマゾンで再び見ることができた。



気持ちよさそうなオシデンタリス亜種のヘラクレス


タパジョース支流の源流部の小さな町の街灯に飛来していたアクテオンゾウカブト♂約11cmを拾ったこともあった。アジト事務所でしばらく飼育していたんだけど、オレが旅行不在から戻ってくると、そいつがいない! 



アクタエオンゾウカブト♂


死んで臭かったから、ポイっと捨てましたぁ。 と、社員に笑って言われてしまった。文献にあるアクテオン分布地図から外れた場所の個体だったので、もしかしたら新亜種かも?、なんて思っていたから、死んだら標本にしようと思っていたのにぃ……


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その2

怪人が始めてタパジョースに足を踏み入れたのは、もう30年くらい前になる。半年ほどの間、河口部のサンタレンに住んだことがあるのだ。このころはまだ魚族探索は余りやっていなかった(釣りはしてた)。代わりに熱心にやっていたのは、昆虫採集である。博物学の文献で知っていたアステロペ・サフィラ(昔は、カリテア・サフィラと呼んでいた)、すなわちマボロシアカネタテハを自分の手で採集できたのはウレシかった。非常に美しい蝶である。



マボロシアカネタテハ(上が♀、下が♂)


本種は、バタフライ・マニアの間、学者さんの間でも、もう少し大型のタテハチョウである珍蝶アグリアス属が模様を擬態している、って説が神格化されまかり通っている。たしかにマボロシアカネタテハ♀の翅表は、アグリアス・ナルキッサス・タパジョナス♂にたいへん良く似ている。♂は、アグリアス・ファルキドン・パウルス♂に極似している。



アグリアス・ナルキッサス・タパジョナス♂


アカネタテハ属は、食樹のせいで体内に毒っぽい成分物質を持っているんで、鳥が好んで食わないとされている。その模様をアグリアスたちが真似たという考え方が根拠だね。



アグリアス・ファルキドン・パウルス♂


マボロシアカネタテハを採集したとき、マニア&学者たちの定説になっている神話に、怪人の脳裏で疑問が生じた。怪人は、オビドスでアグリアス・ナルキッサス採集、ジュルチーってとこでアグリアス・ファルキドン採集の長期旅行をやったことがあるけれど、アグリアス属ってのは、密林の樹冠、すなわち超高いところを高速でビュビューンと飛翔する蝶である。ところが擬態されている筈のアカネタテハは、低木林の林床に近い低空をフワフワ飛んでいたじゃないか! これって、何か可笑しくない? もしかしたら神話的な定説は、机上の空論じゃあないんですかい?



アマゾン北岸のモルフォ・ヘクーバ(上)と南岸のモルフォ・キッセウス(下)


現在の恐ろしい川幅を誇るアマゾン中流部の本流は、地球温暖化によって海水面が上昇したことに起因している。1万年くらい前の氷河期は、おそらく目もくらむような谷底を流れていたから、風に乗って南岸から北岸、あるいは逆に、ある程度の飛翔力のある昆虫は、渡ることができたと考えられる。しかし、現代では、その交流は叶わない。同じ先祖から始まって、隔離の時代に別個に進化した蝶は数多い。たとえば、北岸のモルフォ・ヘクーバは褐色。キッセウスは淡い青になった。



フチグロマルバネアカネタテハ♂


アカネタテハ類も同様に、北岸のオビドスには、フチグロマルバネアカネタテハが生息しマボロシアカネタテハはいない。


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タパジョース河の博物と熱帯魚・その1

昨年の9月、タパジョースの下流に何日か滞在した。熱帯魚観察チーム(と言っても、隊員はお一人)の催行だったんだけど、そのお話しをちょっち雑誌記事にもしようかな?、とも考えているんで、詳しい報告を、ここでブログでは進めない。そんなわけで、徒然なるまま、思いつくまま、勝手に身勝手に、大いなるタパジョースの博物&熱帯魚ことを小連載で記してお茶を濁しておく。



タパジョースの流域マップ


タパジョースってのは、ブラジル高原に端を発するアマゾンの3つの大型支流の一角を占めている大河だ。3つってのは、西からアラグァイア・トカンチンス水系(地理学上は、アマゾン支流とされてないけど……)、シングー水系、そしてこれ。3者に共通するのは、先カンブリア代の古代岩盤を下っていること。岩盤が硬いということは、土砂の流入が少なく、水が澄む傾向が強いんだけども、もっとも濁りがあるのは、アラグァイア河で中流に大きな平原があり、四国ほどの大きさの川中島バナナルがある。湿地帯は、乾期に泥が堆積する。増水すると、その柔泥が流れに流入するのだね。シングーの最源流地帯にも、アラグァイアほど広くないけど、平野部があって水がやや濁る傾向がある。タパジョースは3者の中でも水の透明感が強い。その理由は、流域全体に盆地のような低地、すなわち湿地帯というような環境が皆無であるからだ。



タパジョースの急流景観


グランデ・オガワは、シングー水系を極めるという大志、生涯のライフ・ワークに精進している。特に魚族は、できるだけ正確になるべく多数を記録したい。東に並んでいるタパジョースは、シングーの姉妹関係にあると言える。過去にあった上流部での河川争奪によって、2つの水系に魚族交流があったことは、間違いない。だから、けっこう似たような魚が両方にいる。



クイーンアラベスクプレコ


一例を挙げれば、まずプレコ類。シングーにはインペリアルゼブラ、ダップルドインペ、キングロイヤルペコルティア(キンペコ)の3種のヒパンシストルス属が生息しているが、タパジョースには、クイーンアラベスクって御大層な名前の同属魚がいる。



両河川に生息するアイマラ・タライロン


その他にも同種、近似種は枚挙にいとまがない。そんな訳でグランデ・オガワには、タパジョースの魚族はシングーと比較するための大事な資料と思っている。


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アクアライフ誌

一昔前まで、極東の島国には、アクアライフ誌、フィッシュマガジン誌、楽しい熱帯魚誌、などの専門誌があった。しかし、不況の荒波にもまれ、アクアライフ誌以外の雑誌が休刊や廃刊に追い込まれた。西欧諸国では、極東の島国は熱帯魚最前線国の一つと認識されているのだけど、西欧アクアリストたちは、ニッポンに専門誌が一つしかない現状に驚きを隠せない。



伝説の1993年6月刊行アクアマガジンの表紙写真撮影は、グランデさん


むかし昔、魔人M大兄がやっていたアクアマガジンには、ずいぶんと記事を書いた経験があって、楽しい熱帯魚にもちょっちだけ書いたことはある。フィッシュマガジン誌からは原稿依頼はあったことあったけれど、断った。現在のグランデ怪人は、アクアライフ誌の執筆人の一人と、編集部に認識されている。ときどきしか書かないけどね……



アクアライフ誌2015年11月号の表紙


昨年の11月号には、「壇蜜さんインタビュー」が載っている。オジさんたちの憧れ、愛人にしたいランク・ナンバー1。美人の彼女は、プレコ飼育愛好家なんですね。メガクラウンプレコのお値段が、4年くらい前の彼女の月給とほぼ同額というのは笑える。ちなみに同誌には、怪人の「武装した水の狼」というコラムが載っている。



コスチュームは、ブラックモーリーのイメージ・コスプレだってさ


今月号(2016年2月号)にも怪人の記事が載っとるぞ。お題は、「シングーの美麗キリーフィッシュ」だ。アルタミラ周辺に生息する3種のキリー採集記だ。



アクアライフ誌2016年2月号の表紙


立ち読みは、ご法度じゃ。買って読んでちょうだい。


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