シケた世の中に毒を盛る底辺の住民たち -2ページ目

シケた世の中に毒を盛る底辺の住民たち

リレー小説したり、らりぴーの自己満足だったり、シラケムードの生活に喝を入れるか泥沼に陥るかは、あなた次第。

これは、俺の自伝だ。
この世に生を受けてからの38年間、全ての出来事、考え、思い、あらゆることを、ここに記す。
自伝なんてたいしたものにならないのかもしれない。
ただ、周りの誰もが諦めている、俺がニートから脱却するまでの軌跡を、何らかの形で残したいだけだ。
もしかしたら、一生ニートのまま、この自伝を延々と続けなければならない可能性もある。
その時は、その時だ。ニート日記として楽しんでもらうのも手だろう。
俺は、この自伝を書き始めることによって、自分を試す旅に出ようとしている。
名も知らない誰かが、その勇気だけでも、世界のどこかで讃えてくれるなら、成功と言えよう。

世界には、他にも俺と同じ状況で苦しんでるやつも、いるだろう。
いや、もしかしたら、好んでニートを続けているやつもいるかもしれない。
俺は、どちらかと言うと、劣等感や背徳感、 後ろめたさを感じながら日々生きている方だ。
決して、好んでニートを続けてきたわけではない。
ただ、この場を借りて懺悔したり、自分がニートであることを悔やむつもりもない。
ただ、自己表現したいだけだ。
親の金で飯を食い、ネットを使い、買い物をし、世間では中年と言われる年齢にまで育ってきた、
そんな俺が、たまりにたまった自我を発散させられる場所は、やはりネットしかないのだ。

また、前置きが長くなった。
人に誤解されたくなくてあれこれ説明したくなる性分なので、これからも大目に見てやってほしい。

それではまず、俺の少年時代のことから思い返すとする。


福井県の東尋坊近くの小さな町で産声をあげた俺は、笑助と名付けられた。
人を笑って助けてやれるような、おおらかで器の大きい人間になってほしかったのだろう。
そんな両親の期待とは裏腹に、俺は、人見知りが激しく、笑うことも少ない、人を助ける勇気もないような少年だった。

小学校低学年の頃は、学校の登下校でさえも親がいないと泣き出し、授業中も、母親手作りのターザンを模した布のキーホルダーを握り締めて離さなかった。
確か、その頃小学生に大人気のアニメキャラクターだったように記憶しているが、その半裸の男を俺はあまり好きではなかった。

俺が好きだったのは、他のアニメに出てくるシンタローという不甲斐ないキャラクターだった。
おかげで、ひらがなより早くカタカナを覚えたのだ。
世間的には不人気なキャラだったようで、シンタローのぬいぐるみはどうしても見つからず、いつもおもちゃ屋さんで泣き怒りしていた。
喜んだり笑ったりする以外の喜怒哀楽は、激しかったように思う。

唯一の習い事として、放課後にピアノ教室へ通っていたことが今でも不思議だが、
それももちろん、母親についてきてもらっていた。
ト短調の暗い曲が好きで、発表会のお題だった魔女の宅急便を気に入り、熱心に練習したところ、
なんと、入賞することができた。

今思えば、俺の人生で一番輝いていた瞬間だった。
その時も、心配した母親が、舞台に立つ前、指にシロツメクサのリングをはめてくれたのだ。
それがあったから、安心して弾くことができたのだろう。

そんな俺には当然、友達などほとんどできなかったが、たった1人、親友と呼べる友人がいた。

それが、まー君だ。


まー君は、近所の団地に住む、4人家族の長男で、確か年の離れたお姉さんがいた。
そのせいか甘ったれで弱虫で、まー君といる時だけが、この俺が珍しく、リーダーシップを発揮できる時間だった。

極度の人見知りで、知らない人に話しかけられるとすぐ母親の後ろに隠れてしまうような少年だった俺が、
まー君と仲良くなったきっかけは、ひょんなことから、俺がまー君の秘密を知ってしまったからだった。


ある日、近所の公園で一人、アリを探していた俺は、椿の植え込みの陰で、葉っぱでお尻を懸命に拭いている少年に出くわした。
普段なら絶対に自分から話しかけたりしない俺が、思わず、
「何で、お尻拭いてるの?」
と聞くと、その少年は、静かに泣きじゃくり始めたのだ。
最初は戸惑った俺だったが、少年の汚れたパンツを見て、黙って自分の家から替えのパンツを持ってきてやった。

それが俺とまー君の出会いだ。

お尻を拭いた葉っぱを土で埋め、汚れたパンツを公園の水道で洗わせ、親に気付かれないよう家の洗濯機に放り込むよう指示した。

一仕事終えたまー君に笑顔がこぼれると、俺は、本当に生まれて初めて、心の底から大笑いした。
笑って人助け、できたような気がしたからだ。

それが確か2年生の春だったから、それから小学校卒業までの5年間は平穏な日々が続いた。

人見知りは相変わらずだったが、親がいなくても泣かなくなった。
そしてピアノは、特技と言えるほど上達していった。


そのまま、大人になっていれば、なんて思うこともある。
でも、過去を悔やんでもしょうがない。
それは、この何十年間、常に思い知らされてきたことだった。


いよいよ、一番思い返したくない部分まで、俺の記憶を遡ってきてしまった。
ただ、この部分を語らずして、今の俺までたどり着くことはできない。
腹をくくろう。


今の俺の土台を形成したのは、中学に入ってすぐの、ある事件がキッカケだった。

「ホントは炭火焼肉屋がやりたかったんだ!!」


走っているはずなのに、

タムラさんの腹はなぜか揺れていなかった。


走り方も、変だ。

追いつこうというより、やたら下腹部にだけ力を入れて、

おなかを突き出している。


なぜだ。

そんなにも、見てほしいのか。



俺は思い出した。


そして、今までのことを振り返った。



つかれきった上司に誘われて座った席は、生臭い臭いに

腐った面子。


なのに、好物は腐らないドライきゅうり。



やけに主張してくるくそのっぽ。

そういえば、名古屋出身で中日ファンだった。



そして、唯一人といえる形を残した俺とブヒ江。


ホルモンの専門店。

ホルモン館。

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俺はすべてを悟った。



これは上司からのメッセージだったのだ。



この3年間、正直俺は自分の人生に真正面から立ち向かっていなかった。


上司はそんな僕をいつも叱咤激励してくれた。


そして、自分のことをこうも言っていた。

「俺は今、家族を持とうとしている。だが、男としての夢もある。

 早くお前が一人前になってくれたらなぁ。」



今回の出来事は、スカウトだったのだ。


そして、あの席に座ったメンバーはすべて仲間であり、従業員。



僕は立ち止まった。



上司:「そうだよ、やっとわかってくれたかい?」


いつの間にか緑ではなくなっている。


アン「あなたの力が必要なのよ。」


タムラさん:「僕たちはもう麻痺してるから、また食中毒騒動を起こしてしまうからね。」


クソノッポ:「すんまへん、わてからもお願いしまっさあ。あんさんのそのなんでもかぎ分ける能力が必要なんす」


小西さん:「自分どうなん?」


ブヒ江:「「こんな風な形で伝えるなんて、私は反対だったんだけど。でも、お願いします。」



おお、なんだこれ。

ドラマじゃないですか。


でも、リアルなのか。。


ブヒ江。。


俺は意を決した!


俺:「条件が三つある!!飲んでくれるなら、やってやる!」


  「ひとつ、ブヒ江は俺にくれ!!」

  「ふたつ、社長はタムラさんじゃなくて、俺がやる!!」


  「最後に、ホルモンは捨てるもんじゃねぇ、いるもんや!!」



・・・


・・



2週間後、三田に新しい焼肉店がオープンした。


「新鮮な豚肉とドライきゅうりの専門店★ブヒ江★ 3号店」


厨房には僕とブヒ江とタムラさん。


最近のタムラさんの口癖はこうだ、


「ホルモンはいるもんや!なぁ社長!」


どうやら、まだブヒ江を取り返したいのか、僕に内緒でホルモン館を

復活させようとしている。



店内には、クソノッポと小西さん。


元上司とアンちゃんは今は新婚旅行中。


ブヒ江は一日中甘いもの、ビール、油物を食べている。

なのに、いつもやせてて、常連さんには看板娘と評判だ。


そして、女性客からは、私もブヒ江さんみたいにきれいになりたーい!!


こんなとき、決まって彼女は言う。

「うちの豚肉を食べれば、あなたたちも絶対ぷりっぷりの豚肌になれるわよ★」


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さぁ、人類ブヒ江計画の始まりだ!!




「さあさ、ゆっくりしてってくれよ。」

ホルモン館とは、タムラさんの店兼、住処らしい。
皆で中へ入ると、魚の青臭い匂いが充満していた。

「最近、ようやく河原から移転してきてね。33にもなれば、頭も乾きにくくなるし。」

カッコいい顔をして語るタムラさんに、僕は最大の疑問を投げかけた。

「ホルモン館なのに、メニューに肉がないようですが・・・?」

するとタムラさんは、いつも張り上げている声をさらに大きく張り上げ、叫んだ。

「きゅうりは米!沼魚はホルモン!沼地は銀座!!」

最後がよく分からなかったが、要するに、
人間世界でいうところの游玄亭のようなものだと言いたいようだ。
また、川魚はタンらしい。
タンよりホルモンの方が、タムラさんにとっては上のようだ。

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周りを見ると、家の中にも多種のフリスビーが散乱しており、皆食いついていた。

「オレはスタンダードに黄色かな!」

「私はこのひび割れてるやつ♪」

「アンちゃんにはこの巻き毛がついてるのが似合うよ~」

上司はすっかり河童としてのプロ意識を持ち始め、
頭を常に濡らしておくコツだとかをアレコレアドバイスしていた。

クソノッポは早速屋根に穴を開け、小西さんは目をギョロつかせてゲームに没頭している。



その時、部屋の隅に置いてある藻の束を
夢中で口に掻き込んでいるブヒ江が目に入った。

まだ人間の姿をとどめている彼女にホッとしたと同時に、
余りある食欲を目の当たりにして、思わず性欲を掻き立てられてしまった。


すると突然、今まで影の薄かった薄毛の小西がとんでもないことを提案した。

「ねえ皆、河童ゲームしない?」

河童ゲーム?お前らがやるゲームは全部河童ゲームだろうよ。

「せっかく、婚活パーティで出逢った男女なのに、それらしいこと1つもしてないじゃない?」

上司をアンちゃんに取られて気分を害しているのか、
小西はとにかく、男との触れ合いを求めていた。

「いいねえ!割り箸ある?」

人間世界で言うところの王様ゲームのようだ。

タムラさんがブヒ江に熱視線を送りながら、この提案に賛同している。
放っておくわけにはいかない。


「よーし、皆、ひいて!」

割り箸をひくと2番だった。

「おれ、河童やわ。」

クソノッポが河童と書かれた割り箸を持っているが、他のより長い。

「じゃあ、1番と2番で、きゅうりゲームやれや!」

「えーまじぃ。」

アンちゃんが1番のようだ。きゅうりゲームって何だ?!
困惑していると、きゅうりをくわえたアンちゃんが、僕の顔に近付いてきた。
死にたい・・・


と、その時、上司が水かきのついた手で僕を殴った。

スパーーーーーンッッッ


いい音が鳴った。


「オレのアンちゃんにちゅうでもぶちこんでみろ、お前、絶対昇格させてやんねえぞ!!」


ここでパワハラ?!
と思う間もなく、小西もぶち切れた。


「なによ、アンちゃんアンちゃんって!!私だって、ピンクのタバコ吸ったり
かわいく見えるように頑張ってるんだからあ!!」


小西は泣きながら薄毛をかきむしり、さらなる薄毛となった。
そこへクソノッポやタムラさんも参戦し、いつの間にか殺し合いになっていた。









気がつくと僕は、沼地に足を取られながらもブヒ江の手を握り、逃げ出していた。

あんな河童の巣窟にのこのこ行ったのが間違いだった!!

僕は人間世界でブヒ江と幸せになるんだ!!


必死で走りながら後ろを振り返ると、

水かきのついた扁平足でするするっと沼地をスケーターのように

突進してくる河童が目に入った。


目を凝らすと、
いつの間にかグラサンをかけ、ふんどし一丁になったタムラさんの腹には、

何か書いてあった。

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休日は大体起きるのが夕方頃の俺にとって、朝9時集合はかなりの苦痛だった。


しかも河童の巣窟に行かなければならない。


逃げ出したかった。


ただ、もうほとんど人間と言えない生物になってしまった上司が、あまりに


必死に誘ってくるので仕方なく駅に向かった。


待ち合わせ場所につくと、昨日の河童の席のメンバーが勢ぞろいしていた。


「遅いよ!!10分遅刻だよ」


「俺なんて30分前から来てたよ」


「私なんて昨日帰らずに待ってたのよ」


「いやいやそれなら僕なんて・・・」


みんなぐいぐい前に出てくる。若手芸人みたいだ。心底うざい。



カッパエクスプレスでの移動中、僕の隣には事のキッカケを作った河童上司が


いた。仕切に昨晩の情事を自慢げに話している。


どうも解散後、アンちゃんとしっぽりイッたらしい。


・・・それにしても臭い。話どころではない。


元々、お風呂に入っていないのか、牛乳を拭いた後、放置されたぞうきんの


ような臭いがする人だったが、それとはまた違う臭さだ。

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¥367
文具のお店ステーショナリーラピス

周りの席を見渡すと、みんなそれぞれ楽しんでいる。

ふと、あまりに興味がなさすぎてみんなの名前を知らないことに気付いた僕


は、全員のあだ名を付けようと提案した。


当然、みんなぐいぐい食いついてくれた。



至る所がロングさん = クソノッポ

弾けんばかりのナイスバディ = ブヒ江

落ち武者 = アンちゃん

飛び出る目玉 = 小西さん

きゅうりが似合うタムラさん = タムラさん

唯一、人間の姿を留めている俺 = フラレ虫


改めて見ると、尋常じゃなく濃いメンツであり、自分がその一員だという


のが恐ろしい・・・



そうこうしている内に、目的地に到着し、タムラさんの自宅まで更にバスを


乗り継いだ。



バスを降りて歩き始めてからぼちぼち1時間経過する。


かなり山深くまで来てしまったが、一体いつ着くのだろうと思っていると、


アンちゃんとイチャイチャベタベタ気持ち悪いタムラさんが振り返り、得意げに


「到着したよ」と叫んだ。


沼地のそばにひっそりと佇む一軒のお店。「ホルモン館」という看板がかかっている。


店の周りにはなぜか無数のフリスビーが散乱していた・・・


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¥80
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「それは、ドライキュウリだ。

 水につけるとこ~んなにでかくなる。」


タムラさんは両腕を広げながら僕に説明した。

きゅうり
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約10倍といったところか。


「自分で渡した方がいいんじゃないっすか?」


僕は、そんな役目はごめんだと思いながらそういうと、

タムラさんは顔を赤らめて、僕にお願いしてきた。


「いゃいゃ、お願いしますよ~。」



僕は仕方なく、そのドライキュウリを持って豚さんのテーブルに向かった。

不思議なことに、豚さんのテーブルのお皿は真っ白だった。
皿の横には、セロリが残されている。


僕は、先ほどの美しい女性を見つけた。名札には、『ブヒ江』と書かれている。


なんでこんなに美しい人がコンカツしているのだろう…

ブヒ江の服の上からでも感じられる体の曲線、外国人のようなナイスバディに、

すっかり性欲を掻き立てられていた。



ブヒ江は、同じ席の『さば江』の話に飽きていたようだった。


ブヒ江は話の区切りのいいところを待っていた僕の方を見た。


僕が、タムラさんからドライキュウリを渡せと頼まれたことをどう説明しようか迷っていると、


ブヒ江は、「わぁ~、ありがとう。ドライキュウリを私にくれるの~?」


ブヒ江は、心から喜んでいるようだった。ドライキュウリの効果は僕の想像以上だった。



「お話しましょ。」

そう言って、ブヒ江は、何も動物の名前がついていない個別テーブルに連れ出した。


僕は河童のテーブルを見た。

上司はどんどん体が緑になりながらも、黒髪の剥げ落ちた落ち武者の『アンちゃん』と一緒に

どんどんいい感じになっていた。


その奥でタムラさんがこっちを見ていた。
メガネが反射し、目の表情は読み取れなかったが、怒っているに違いない。


僕は、慌ててブヒ江さんを河童の席へ連れていった。

その時、今日は、馬のテーブルに座っていたクソノッポの男が
何故か河童の席に移動していた。


「やばいで。タムラさん怒っとる。」といった。

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僕は、改めてドライキュウリはタムラさんからの贈り物であることを説明した。


「まぁ、そうだったの。」とブヒ江は嬉しそうにドライキュウリに水をかけていた。

タムラも、嬉しそうに「黄桜」を飲み干した。


そして、ブヒ江に向かって

「明日、おらの家に遊びにくるか~?」

と言った。



ブヒ江は、困ったように僕やクソノッポを見ながら


「み、みなさんと一緒なら、い、いいですよ。」

と言った。


「いいね~!」

目玉が飛び出しそうな女が言った。


すっかり体が緑になり、手には水かきまでできてしまった上司も
何かに吸い寄せられるように、


「僕たちもご一緒させて頂きますよ。ねっ。」

と、アンちゃんの肩を抱いていた。


その日は、程よい頃合で、ジョン・マリオット浜田が会を締めくくった。
なぜか、ねずみのコスチュームを着ていたが、会場の反応はいまいちだった。


翌日、河童の席にいた人々は朝の9時に秋葉原駅に集合し、
「カッパエクスプレス」に乗って、タムラさんの住むと言われている
駅へと向かうことになった。


「よう、またせたな」

土曜日夕方5:00、僕たちは新宿で待ち合わせた。


上司はポロシャツにジーンズとラフな格好で、颯爽とあらわれた。


「行こうか。」


いつにない兄貴風を吹かせ、上司は僕を会場に案内した。
会場はイタリアンのパーティールームだった。


30過ぎの男性は私服になると途端にみずぼらしく見える奴が多い。
高そうな服を着ている人もいたが、どこか無理した感じがしていて、
そういう意味では、この上司はまだマシな方だと思った。


全部で30人程いるだろうか。


男と女と割合は半々で、そこそこ綺麗な人もいる。

期待は膨らんだ。



「レディース・エーン・ジョントルメーン♪」


定刻6:00、司会のジョン・マリオット浜田がステージに現れた。


「ミナサーン、きょうはようこそイラッシャいましたぁ~。」


「ウケツケでくばったカードの~、ウラにかいてある~、テーブルせきに
 ツいてクダサイヨ~♪」


カードの裏には”河童”と書いてあった。偶然、上司も同じだ。



僕たちは河童の席をさがした。
あたりを見渡すと、「うさぎ」や「くまさん」のテーブルがあった。


受付で目をつけたすこしぽっちゃり目の同い年くらいと思われる女の子は、
「ぶたさん」のテーブルに居た。


少し悔しくなりながらも辺りを見渡すと、異様な雰囲気のテーブルが一つあるのを見つけた。





そこには、顔が緑色の男と、黒髪の剥げ落ちた痩せこけた女、目玉の飛びでかけた短髪で薄毛の女がいる。


・・・河童のテーブルだ。

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「・・・ようこそ」


そう言って、やけに紳士的だが、顔が緑色の男がぼくにコップ一杯の水を差し出した。
指間に水かきが付いており、受け取ったコップはぬるっとした。
テーブルの上には川魚の死骸が散乱しており、同じイタリアンの店とは思えない。


「あなた、おいくつ?」


目玉の飛び出かけた女は、ぎょろりとした目で上司に聞いた。
声を出すと一層目が飛び出てしまい、頭は不毛地帯の様だ。
タマゴを産みそうな顔だ。


「・・・33です。」


上司は答えた。完全に声がおびえ切っている。


「あら、としうえ。タムラさんといっしょ。 うぷぷゥゥ・・・」


女はほくそ笑んだ。どうやら、僕に水をくれた、顔が緑色の男はタムラと言うらしかった。
その笑みの向こうで黒髪の剥げ落ちた女が一心不乱にきゅうりをシャグシャグとかじっていた。
貞子の様な女だ。



おそろしい席に来てしまった。



「シバシ、ごかんだ~ん♪」


そう言い残し、マリオット浜田は魔法のようにステージから消えた。


ぼくは開始と同時水を飲み干すと、トイレと言って席を離れた。





「大丈夫ですか?」


トイレでやけにクソノッポの男に声をかけられた。
天井に頭が突き刺さりそうだ。


「いや、私もね、前回河童のテーブルが当たってね。
 見てくださいよ、これ。」


クソノッポの男は頭を下げると、見事に脳天が禿げていた。
指には水かきがついている。


「ホラね」


そう言って、クソノッポの男は頭をあげると、頭が天上に突き刺さった。
さっきより身長が伸びたらしい。
鼻から上が天上に刺さって見えなくなったが、下の口で男は言った。

「気をつけたほうがいいですよ、あなたも。」


そういうとクソノッポの男は、また頭を下ろし、手洗い場の蛇口の下に頭を入れ、
水を頭にかけ出すとノッポは叫びはじめた。


「あぁぁァ~、アあぁ~!」



僕は逃げ出した。






僕は上司が心配になり、パーティールームの河童のテーブルに戻ろうとした。

テーブル付近に行くと、河童のテーブルではなにやらゲームをしている。



「にきび」  はいはい


「幼虫」  はいはい


「膿」  はいはい


「井戸」  はいはい


・・・


上司は溶け込んでいる。まずい、顔が深緑色になっている。
髪も薄くなり、円形どころのさわぎでなくなっている。



「手首」  はいはい



「言った。」 上司が流れを遮った。どうやらタムラが負けたらしく、黒いタールの様な

液体を飲み干した。

鼻をつんざく異臭が辺りにたちこめた。



おどろいたのが、上司の肩に黒髪の剥げ落ちた女が寄り添っているではないか。

女は時折上司の方を見つめると、うっとりとした表情をしていた。

上司の目はぎょろりとしており、髪の剥げた女の髪を撫でる指間に水かきが見えた。


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どうやら、完全に河童のテーブルの住人と化してしまったようだ。
あの女と恋に落ちたらしい。


目の飛び出た女は、今にも眼球の飛び出そうな熱視線で上司の方を凝視していた。
どうやら、やきもちを焼いているらしい。
目があうだけで妊娠してしまいそうだ。



タムラは苦い顔で、手鏡を見ながら頭にローションを塗っていた。


「おい、こっち来てよ」


タムラは僕に声をかけた。
僕は心からおびえ切り、タムラの横に座った。



「気になる人がいるんだ。」


そう言うとタムラは水かきのついた指で豚のテーブルを指差した。



・・・ぼくが目をかけていた女の子だ。


タムラはやけに男前な顔で僕に言った。
頭のローションは人間で言うところのワックスのようなものらしかった。



「おめぇ、これ・・・渡してきてくれねぇかな?」


ぼくは、タムラからしなびたきゅうりを受け取った。


俺は派遣社員27歳、性別男。


三田にある某IT企業のブループ会社に派遣、早3年経とうとしている。

お酒は飲めるけど美味しいとは思わない。

外にでてあれこれするより、定時後は真っ直ぐ

一人暮らしの家に帰り、
「ジョンプ」、「アガジン」を読みながら近くの自販機にあるドクターペッパー

を飲む。これは昔からの習慣であり、誰にも邪魔されない至福の時間。

★コカ・コーラ社★ドクターペッパー 500mlペット (24-48)
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あとはゲームではもっぱら、RPG派。時間の流れがゆっくりしてるところが良い。

新作を出す度に映像等が進化してくるFFシリーズより、2等身のドラクエの方が昔からある感じで
馴染み深く断然、"カワイイ"。

とはいえどもゲームにどっぷりはまる事はない。 中毒性はなくキリのいいところでさっと止めれる。冷静というか無気力なのだ。


よく言えば、最近世間で支持され騒がれつつある、いわゆる「草食系男子」。悪く言えば「無気力男子」

会社では(まあ家でも)性格が大人しいでいか自己主張がないからなのか、社員の皆ににもペットの様に扱われ、内心、

「バカにしてんんのか?いつか俺がお前らの天下を取ってやる」

と心の中では反抗しつつも、表面場ではにこにこ。。 高圧的なののの言い方に時より

殺意を覚えるが、・・・実際はなにもしない。

出る釘は打たれるじゃないが、27年生きてきてみて分かった事、人間関係のいざこざ程、先がみえなく

面倒臭いものはないと悟ったのだ。


そんな自分に、6つ上の上司(自分にとっては主任にあたる先輩)
から、とある誘いがきた。

なんと『婚活』そう、今話題の「お見合いパーティ」なのだ。 

勿論そんなもの行った事はない。

なんせ酒が飲めないのだから。


そして、・・・女は面倒臭い。


昔、高校時代に

帰宅部の自分を、その冷めたところが「好き」とかなんとか言われた、1コ下の後輩はいたが、
漫画やゲームよりより、リアルな女というものに興味を抱いてみた俺は、断る理由もなくむしろチャンスと
思い、付き合ってみた

一通り友人のアドバイスや漫画等のマニュアル通りにその期間は頑張ってみたものの

3ヶ月目にして、SEXが冷たいだとか、キスが義務的だとかで、彼女がよく泣いていたあげく、
1週間後にも泣いて「別れましょう!」と大粒の涙をいくつも流しながら言われ、

泣く程別れたいなら止めては可愛そうだという判断でとりあえず自分のもぅ少し付き合いを続けてきたい気持ちは押し殺し、最後にそっとおでこにキスをして、別れてみた。   

  2日後、偶然彼女との再会は、なんとまぁ校門にバイクで待ち構えていた
茶髪ロン毛チャラ男の車の後ろ席にかけよりまたがる女。 まさしくそれは俺の元彼女。確実に自分と目が会った瞬間彼女は
一瞬悲しそうな表情を自分に向けたがすぐに出迎えてくれた新彼氏のでこに
キスをし、「行きましょう♪」と声高らかに言ぃ、バイクの『ブゥオ~ーッ』て音で去っていった。


この時、ただでさえ、人間関係が苦手なのに女心内を理解
するには相当ハードルが高いとみた。面倒くさいと少し思ってもしまった。
そして、この事件(?)を機に俺は女よりも自分の趣味(スポーツ観覧だとか、
漫画、ゲームだとか)を適当にして27年間生きてきてしまったのだ。 いや、人間は心代わりする
いきものだが、自分の趣味は裏切らない(だろう)とその時、悟ったのであろう。



話は戻り、会社の上司の言い分はこんなだった。「俺はもう33歳、今迄、仕事、遊びともに一通りやってきったが、次
の査定で部長から許可がおり上手くいけば主任になる。そこで丁度彼女とも別れた今、仕事で役職が上がり成功してる今のうちにここでひとつ決めておきたいんだ」「若いうちの婚活はモテルぞきっと!ものは試し。是非気分転換に行こう 会費は出すから俺に付き合え」と。


 彼に彼女がいた事は本人から聞いていたが、(喫煙所でいつも誇らしげに彼女に自慢を聞いていたので)別れた事はこの「婚活」の誘いで初めて聞いた。なんとなく理由迄は決けぬ
雰囲気ではあったが、彼の頭皮の横の部分がうっすら10円状に白くなってるのを、、そう、いつでも明るくプライドが高い情熱的な上司は実は十円ハゲになる程実は人生に切羽詰まってきている事を俺は知っていたのだ。 


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「おい!プアカー男!!」

「やや!お父さん、ちょっと遊んでかない?50分3000円だよ!!」

「いやいやいや、オレだよ!!CHINMO-YAの店長だ!!」

「チン毛??HAHA!!お父さん言うねえ・・・って、お前!!、もーやぢゃん?!!」


ようやく気付いてくれた。
第三寮宮城での数年で、オレは相当人相が変わったようだ。

「オ、オレじゃねえよ?!お前がいねえ間に、ユウゲンが勝手にやったんだよ!!!

まあ、許可したのはオレだけど・・・乗ったのもオレだけど・・・そそのかしたのもオレだけど・・・

とにかく、怒るなって!!!TOMIYOSHIもアンもPティPティでちゃんと雇ってるし!!」

このプアカー野郎!!!

とにかく、レッド野郎に事情を聴く他ない。PティPティに入り、奥の重厚な扉を開くと、ヤツはいた。



「おおー!やっと帰ってきたか!!待ってたぜ!!!」


「人の店をこんなピンクゴールドにしておいて、よくそんなこと言えるな!」

「まあ聞けよ。オレ、いいこと思いついたんだよ。」

ユウゲンの"いいこと"はだいたいロクなことがない。

「オレの中華料理への情熱はどうしてくれるんだ!!」


ここ数年の間に、オレはいつの間にか寡黙な熱い男になっていたようだ。

「だから聞けって!オレはただのキャバクラ店なんて作る気はねえんだ。

お前のいない間に、世界大恐慌がやってきたんだよ。

このご時世じゃ、どんな極上の女でも、置いてるだけじゃあ誰も金出さねぇ。

男も女も皆で自我を発散させて、この不況を乗り越えられるような、そんな陽気な店、作りてえんだ!

そこで、お前の出番だ!!!」


にやりとした、ユウゲンのエロい微笑に、オレはハッとした。



・・・

ユウゲンの提案にヒントを得て、すぐさま第三寮宮城に帰ったオレは、
すっぽんやらマムシやらMDMAやら、とにかく精力活性に良さそうなものを鍋にぶち込み、1週間煮込み続けた。

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そしてできたスープに麺を絡め、一口すすった、その瞬間!!!


・・・うおおおおおおお!!!!!
オレは隣にいた亀の尻をおもむろにつかんでいた。そして・・・

この後のことはとてもキツくてブログに書ける状態ではなかった。

しかし、この威力は絶大だ!!!!

てんてんめんの、完成だぁーーーー!!!!

亀も顔を火照らせ、無言で頷いている。


そしてやってきたスペシャルメニューの日―――

食べ終わったそばからリョーセイは皆、ニシカワグチとか言う街まで走っていく。

その異様な空気を嗅ぎ取ったピンクタバコが、「仲間はずれはイヤや」と言いながら、くちびるの厚い男を伴って食堂へやってきた。
いつもカップ麺ばかりの奴らがついに、食堂でオレの飯を食ったのだ!!


・・・そして数時間後、やけに上気した、しつこいがスッキリとした顔の2人を見ることができた。

体もちゃんと機能したようで、健康そのものだ。



「私の役目はもう終わりね。」

一緒に奴らの様子を見ていた亀が、涙を浮かべて微笑んでいる。

「私、あなたを理想の旦那にするために未来から来たの。

あなたは私と結婚しても女遊びばっかりで、CHINMO-YAを大きくする気もなく現状に満足してるだけ。
空気を読んだ料理を作らせることで、"なんかでっかいこと"を実現させようとしたのよ。
でも、きっともう未来のあなたは、夢を実現させているはず。」


未来?

未来で、オレと亀は一緒になっているというのか・・・?


「じゃあ、私は未来に帰るわね。机の引き出し貸して。」


「いやー、よくわっかんねーけど、とりあえず、もっかいやろうぜ。」


「・・・イオナズン!!!じゃあ、未来のあなたが待ってるから・・・。」

そう言って、亀はするりと引き出しに入り、去って行った。
オレに全治1週間のケガを負わせて・・・




~~~亀の帰った未来~~~

「パパ、また遊ぼうね!」


くちびるの分厚い子どもが、似た顔をした母親に抱かれながらオレに手を振っている。


「あなた!!またラオスピーナをはらませてたのね!!!」


ラオスで有名人となったオレは、亀に怒られながらもたくさんの分厚いくちびると、もちろん魅力的なお尻も堪能しながら、日々PティPティ、もといCHINMO-YAの経営に尽力している。


あれから、女の子と一緒にてんてんめんを食べて即本番、という陽気な流れがウケ、どんどんリピーター客をつかんでいった。女の子の定着率も良く、どんどんチェーン展開していった。


その後、「足りない時のちんもーはん」「スッキリ後の安眠豆腐」等、人気メニューも着実に増やしていき、
ついに、世界進出するまでにPティPティは成長していったのだ。


「お前からやろうぜって言ってほしくて、模様替えしたりメッセージ書いたりして仕向けたつもりだったのに、全然気付かずに急にバックれるし、本当どうなるかと思ったけど・・・でもオレら、"なんかでっかいこと"しちゃったな!!」



CHINMO-YA loves LAOS


ユウゲンと煌々と光る看板を見上げながら、異国の地でオレらは互いの功績をねぎらった。


ちなみに、世界進出の記念すべき1号店として、ラオスに決めたきっかけは、些細なことだ。


ラオス布 ななめかけバック
¥1,870

「故郷の少子化問題を、解決したい。」(第三寮宮城在住・くちびる厚男の手紙より)



                                                END

                                                ^^^^^


スペシャルメニュー


一口に言っても容易ではない。


なんせこの数年間、僕は「ちんもーはん」しか作っていない。


スペシャルメニューというからには、今までと違う何かを出さなければ


ならなかった。


そこで僕は、ここにきてからずっと考案していた「てんてんめん」を


完成させるべく、本気で研究することにいた。


そうは言いつつもなかなか新たな閃きが生まれない。


どうしたものか・・・思い悩んでいるうちに大変なことに気づいてしまった。


そう!!


あまり気にしていなかったが、ここに来てから一度も外出していない!!


それどころか、外がどうなっているのかすらほとんど知らない!!


テレビはあるが、リモコンがなく、GAORAしか映らないのでかろうじて、


スポーツ情報だけは把握できると言う状況だった。



ことの重大さに徐々に危機感を感じ、新メニュー「てんてんめん」の完成


の為にも、久々に街に繰り出すことにした。


亀に事情を説明。説得に1週間以上費やしたが、ついに納得し、ルーラで


街まで送ってくれることになった。


・・・



久々に東京に帰ってきた。


すぐに六本木に向かいたい気持ちをぐっと抑え、まずはCHINMO-YAの状況


が気になり、急ぎ確認に向かった。


みんな元気だろうか。


店長の俺が急にいなくなって困っただろうな。


中性的な顔立ちの片言店員:アンはよく河童と間違えられていたし、


コック長と言う名のつまみ食い専門店員:TOMIYOSHIは鯖江と間違えられていたし・・・


特にプアカー男が心配だ。


ほんと女にだらしないし、目を離すとすぐ店の割り箸を王様ゲーム風に配っていて


客からのアンケートに「生理的に受け付けられない」とまで書かれていたからな。


岡本吉起の王様ゲームカード
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そんなことを考えながら、内心では皆に会えることを楽しみに、スキップスキップ


ランランら・・・ん?


ん?


んん!?



店がない



どういうことだ!?


数年ぶりだから場所を間違えたのかと思い、辺りを確認したがやはり間違いない。


僕のCHINMO-YAがなくなっている。


その代わりにOffice街に全く似つかわしくない、きらびやかなピンクゴールドに


彩られた店が立っていた。



店の名前は「PティPティ」。



ふと、店の前でボーイ風の男が、目の前を通過するサラリーマンを見つけては、


仕切りに50分3,000円を謳い文句に店に連れ込もうとしている。



いや待て!!


そのボーイ風の男、よ~く見ると・・・間違いない!!プアカーだ!!!!


自分をあきらめるにはまだ早い 人生で大切なことはすべて歌舞伎町で学んだ/手塚 真輝
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あんのクソ野郎!!・・・

亀にルーラを唱えられた僕は、亀の背中に乗ったまま、8回ほどバウンドしてようやく目的地に到着した。


1アップしていた…

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大きなホテルのような建物の入り口には、日の丸の国旗が掲げられていた。

入り口の看板には、『第三寮宮城』と書かれていた。


中に入ると、妙に薄暗かった。



坊主頭で、顔色の悪いひょろりとした男がパンツ一丁で、僕を出迎えてくれた。


妙にタバコ臭い、前髪が巻き髪の男がカップラーメンにお湯を入れて、階段を上っていくところが見えた。


さらに、くちびるが妙に厚い男もいた。




ここの住民は、みんな健康状態が悪化しているようだ…




「もーやさんは、自分の店を開きたいのよね。

ここにいる人達の為に、毎日、料理を作って欲しいの。あなたの住めるお部屋もあるし、大浴場もあるのよ。

お願い…」



僕は、毎日、そこで暮らすリョーセイと呼ばれる人々の為に、亀と二人で料理を作ることになった。


朝と晩に、自慢の「ちんもーはん」を作りまくった。




坊主頭で、顔色の悪いひょろりとした男がパンツ一丁でいつも「ちんもーはん」を食べにきたが、ピンクのタバコの男も、くちびるのぶ厚い男も、何故かいつも、カップラーメンを食べていた。

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何とかして、あいつらに俺の「ちんもーはん」を食べさせ、健康な生活にしてやる。



そう思いながら、数年が経過しようとしていた…



亀も、出会った頃のぷりっとした面影はどこかにいき、やせこけた頬で、新人のリョーセイに僕の作った「ちんもーはん」を大盛りによそっていた。



僕は、そこで「ちんもーはん」を作り続ける間に妙に寡黙になり、新人のリョーセイの「ごちそうさまでした~!」という声がしても、聞こえないフリをするようになっていた。




「このままではいけない。何かが違っていた。」


僕は、亀のため、ピンクタバコのため、くちびるのために、シェフのスペシャルメニューの日を作ることにした…