北海道 霧が湧き立つ摩周湖
舟木一夫が出合い演じた時代劇⑥
「大河ドラマ」
―後半に第119回「オードリー」―
本題に入る前に―。七十二候の39候、立秋の末候「蒙霧升降(ふかききりまとう)」の始まる頃です。「蒙霧(もうむ)」はもうもうと立ち込める濃霧、「升降」は昇降のこと。高温多湿の夏の大地が冷やされ、地上や水辺から深い霧がまとわりつくように立ち込める季節の意味です。残暑が厳しい中でも、朝晩の空気にひんやりとした涼しさを感じるようになります。北海道の釧路、摩周湖、広島県の霧の海、兵庫県の竹田城跡などは夏の霧がよく発生することで知られています。濃い霧の中を歩いていると、雨が降っていないのに木々の葉や枝に霧の粒があたり水滴が落ちてくることがあります。「樹雨(きさめ)」と言います。夏の季語です。
兵庫県 竹田城跡
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本題に入ります―。舟木一夫さんはこれまでに4つのNHK大河ドラマに出演しています。今回のブログのシリーズ①でお伝えしました1964年の「赤穂浪士」(四十七士の一人・矢頭右衛門七)をはじめ、1966年の「源義経」(平経盛の末っ子・敦盛)、1971年の「春の坂道」(徳川二代将軍秀忠の子・忠長)、1997年の「毛利元就」(架空の人物・椋梨景勝)の計4本です。最初の3つの大河ドラマにはそれぞれ舟木さんが出演した記念の曲「右衛門七討入り」(作詞・西沢爽、作曲・遠藤実)、「敦盛哀歌」(作詞・村上元三、作曲・古賀政男)、「春の坂道」(作詞・泉羨太郎、作曲・古賀政男)がリリースされています。
赤穂浪士・大石内蔵助の長谷川一夫
「赤穂浪士」には、大石内蔵助に大映の看板俳優・長谷川一夫、妻・りくに映画女優の山田五十鈴、吉良上野介には新劇界の重鎮・滝沢修さんをはじめ、歌舞伎界から七代目尾上梅幸、八代目坂東三津五郎、新劇から宇野重吉さんら各界の大物ら豪華な顔ぶれが揃いました。ブログにも書きましたように、長谷川さんを担ぎ出すためにNHKの芸能局長らが大映の永田雅一社長を何回も訪ねて口説き落としました。四十七士を全員揃えての吉良邸討ち入りをいつ撮るかが最も難航しました。人気俳優、歌手らのスケジュールが合うのは8月14日と15日の2日しかなく、真夏に討ち入りシーンを撮影することになりました。
2回目は「源義経」です。舟木さんが平敦盛役で出演することが決まるとすぐ、NHKには「歴史では敦盛は死ぬ運命だけど、舟木一夫は絶対に殺さないで下さい。約束してくれないと、母も私も食事がノドを通りませんから」というものから、「NHKともあろうものが大河ドラマにまた人気歌手を利用するとは何事ですか」などという電話や投書が殺到しました。そして、「一の谷合戦」で敦盛が熊谷次郎直実と一騎打ちの末に首を斬られて戦死すると、「あれほど死なすなと多くの視聴者から言われていたのに、なぜ殺してしまったんだ」などと、それまでの2倍以上の抗議の電話や投書が寄せられました。
当時は歌手のレコーディングには作詞家、作曲家らが立ち会っていましたが、「敦盛哀歌」の時は作曲の古賀政男さんが所要で立ち会えなかったため、古賀さんは後でテープを聴いて驚きました。音が一か所間違っていたのです。調べてみたら、舟木さんに渡されていた譜面に誤りがあったのを、舟木さんが譜面通りに歌っていたことが分かりました。古賀さんはのちに「早速、舟木君から電話があって、本人には責任がないのに、まるで自分がミスしたように謝っていたのをよく覚えています」と語っています。舟木さんは歌手生活15周年記念大全集をリリースする際に「敦盛哀歌」を録音し直し、約10年ぶりに“正しい「敦盛哀歌」”が誕生することになりました。
3作目の「春の坂道」の記念曲のレコーディング・スタジオには作曲した古賀政男さんが和服姿で現れました。本番の掛け声がかかり音録りが始まり舟木さんが歌い出すと、古賀さんは突然懐から白扇を取り出して即興で日本舞踊を踊り始めました。真剣に歌っている舟木さんは全く気づきませんでしたが、周りにいたスタッフらは「何が起こったのか!?」と思わず息をのんだと言います。古賀さんはずっと踊り続けたため、さすがに舟木さんも途中から気づきましたが、何事もなかったように歌い続けました。後で関係者に聞いたところ、古賀さんは舟木さんの歌声に思わず興が乗って踊り出したということらしく、よほど気分が良かったのか初めての出来事でした。
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美月が映画作りへの情熱を思い出して涙
119回。トラこと虎之助(菊池隆則)は幸太郎(佐々木蔵之介)に、日本に戻って来て居場所はあるかと相談します。トラは錠島(長嶋一茂)やクリキン(舟木一夫)との決闘シーンを思い出しながら、横にいた美月(岡本綾)に「俺の宮本武蔵を忘れたんか。二刀流や」と話し、幸太郎に「チャンバラがやりたくなった」と言いますが、幸太郎は香港でダメになるまで頑張った方がいいと答えます。
美月は「皆な迷っていた。私も揺れている」と思い、映画作りに情熱を燃やしていた昔のことを思い出して、一人部屋で涙します。それを見た愛子(賀来千香子)は滝乃(大竹しのぶ)に会いに行きます。愛子は二人の子供の現状を思い、これが自分の望んだ子供たちの姿なのかと考えながら、「今の私は昔の思い出の中にしす生きていられない」と話し、滝乃に「私たちが結婚する前に、春夫さんと滝乃さんに何があったのか知りたい」と持ち掛けます。
美月は一人で「パパはオードリーはオードリーらしく生きていくように言ったけど、私らしい生き方って、何?」と自問自答します…。
クリキンvsトラの決闘の回想シーン
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舟木一夫2024年コンサートスケジュール