痛いのはイヤだね。

/夏のモノ洗濯に出し了とする

/秋茄子は嫁と一緒に食べるなり

/巷間は病の人や秋桜

/しばらくは梯子の人と秋の空

/摘まみ菜の行列育つ秋の雨

/点滴やよい子にしてる百日紅

痛いのはイヤだね。けふは訪看さん二人がかりでば様の定置針の交換。なにしろ血管が細く頼りなく、一度目はば様が「痛い ! 」と激しく腕を動かしてしまい失敗する。サラサラのお薬を使用しているのでたちまち皮下が紫色に出血する。「生身魂、拳を強く握りしめて」───四人がかりで励まし宥め押さえつけてなんとか無事に完了しました。外は小雨。庭にはまだ百日紅が咲いています。ば様の兄さんが植えてくれたものです。「何かあったらすぐに電話くださいね」と、食事の摂取量が減ってゐる。食事は最期は細胞が嫌がるようになったらそこでお終いですと、年寄りにはなんにでも楽観はあり得ない。

 

倉石智證

秋はかなし色に───

/点滴の落ちる見てゐる間遠なり胸のあたりの雲霽れやらぬ

/秋愁ふ晴れのち曇りのち雨にばばを残して東京サ行く

/秋雨や亭主単身赴任なり高井戸あたりまた渋滞す

/甚六の休みになれば糸切れた凧の如くに上野界隈

/心配の尽きぬばかりか溜まりゆく

これが親子かそんなに呑むな

/希望めく君が代蘭の穂逞し

/ばーさんの偽熱に紅いほてりほてり寝所に誘ふ傾眠でなく

/祈ること多くなりけり父妣に花差し上げて水取り替えて

哀しい時は雑草を抜きにいくのがいいのサ。黙って俯いて畝間に屈む。小松菜、春菊、菠薐草に野良坊菜。みんな黙っているけれどぼくを見てゐる。ぼくは指を汚して雑草を引き抜いてゆく。おまいさんは何で雑草なんだね、と問いが続く。そしておまいさんたちは何で野菜なんだろうねと味方ででもあるやうに問いかける。みんな一生懸命じいっと黙ってゐる。なんでんかんでん三千世界、一物一艸みな哀しいことには悲しいのだ。

 

倉石智證

ば様を病院へ。

秋の空は信用ならん。翩々と渺渺と。モアで畑二枚片付けてさて朝食。昨晩からのば様のお熱が下がらない。病院へ行くことになった。車に乗っけてやっとこさ。陽はうらなりに力なく、車椅子は発熱外来へと回された。10:30である。個別の病室でずっと静かに待ってゐる。尿採取はオマルで。採血は痛がるば様を4人で宥め励まし抑えてやっとぎりぎりの量を。1時間後、検査結果を説明してくれる若い女性のDrは、全部を診てみたいと云ふ。CRP定量の数値が異常であるとのことだ。ば様には再度痛い思いをさせて造影剤と生理食塩水を点滴する。CTスキャンの結果が待たれる。「わかりました」。肺炎と云ふことだった。心配していたコロナは陰性であった。抗生剤100㏄と生理食塩水500㏄の点滴が続けられる。4時半になった。

秋の雲は気まぐれである。

夕暮れて畑の頭上に広がる雲におーいとばかりにただ手を合わす。

 

倉石智證