林檎の摘果。
また高梯子の人になる。
林檎の木の下に行けばなにか分かるかもしれない
林檎の木の下にはなにか埋まっているとか
林檎の花びらは未だに清楚で
だから林檎の実が余計に生ってしまふと
林檎の木の下に行って空を見上げ
梯子を立てる人になるのだ
今さらながら、りんご可愛いや
それを鋏を入れて摘果をすれば
ああ、故郷を思い出す
おふくろに甘えたい酸っぱい匂いと
山方から来る風と
川の方から来る風と
葉叢を清(さや)かに騒めかせ
ははそはの母の腕(かいな)が木の枝に伸びれば
胸乳(むなち)の甘い香りが
実生の蒼い林檎の物語となって
卒業子は家を出て行く
あゝ、幾たびが罪障の
あゝ、それだから林檎可愛いや
倉石智證