燕とおじさん。

燕が廻旋していったな/おじさんは不寛容になったのかな/おじさんの不機嫌な顔/作業場の小暗い奥でも/畑の雑草のなかでも/齢をとったなぁ/だから無口になって/畑から抜け出るやうによろけて/道に椅子を出してきて腰を掛けた/まるで王様のやうで/腹を突き出して呆ける/腰も痛いんだってね/抜き差しならない/で、おじさんは伸び放題になった雑草の前で/たうたうため息をついて/あ~、思いっきり不機嫌になって/それだからついつい不寛容になった/濡れ燕が村道を廻旋していった/もう家の屋根の下には飛び込めないんだ

 

倉石智證

句作───

葱坊主に添えて。

/キスしませうか花と花の鉢合わせ

/グラサンをかけて山緑いよゝ濃き

/驚きや雲立ち上がる九条かな

/仕合わせなネギボウズさへ不穏かな

/モスクワにネギボウズなど並べたし

/ドレミファドン♪(音符)にも似てネギボウズ

/天ぷらにいいてふ話しネギボウズ

/雲に聞く達者かなぁと葱坊主

/電話して予約眼科に水晶体故郷の山緑濃きなり

/放棄地にアスパラ採りに歩み入り

/レバニラの韮を採りにと畑へと

/芍薬の次を待たるゝ蕾かな

/南瓜見てじゃが芋を見て皐月朔

イラン人の方の句作。

「イラクのかも/イランのかも知らず/越える雀」と元兵士。

「涼しさや/わが身を扇ぐ/隣の旅人」(「現代詩手帖」2月号)

 

倉石智證

五月の山に登りましょうか気鬱が霽れるやもしれませんね。

/ロシナンテ畑に置けば孤独だな刈れドきり無し青生す草に

/紅(べに)点す青の空には庭石楠花

/花腐(くた)し躑躅寄り添ふ石灯籠

/芍薬や往かうかとも想ふ帰らうか

/芍薬の天辺欠けたか気に掛かる

/かーさんの林檎の摘果云ひつのる

/摘果せしサンタローザに脚立たて

/ヤブカラシ我関せずと畑の中

/青梅や徐脈頻脈こもごもに

/鬱の空階段上がりクリニック妻に不調な降圧剤はも

/一欠けた巡り廻って回覧板Telラインで不在悲しむ

■また同期のやうな仲間友達が逝去した。

/五月の山に登りましょうか

気鬱が霽れるやもしれませんね

 

倉石智證