松手入れ開始。

金木犀。

ば様に金木犀の香を。

秋果調う。

/今年また時節は前へ松手入れ

/ブルーシート広げて上る脚立かな天下の秋を松天辺で

/風渡る金木犀や百姓家

/金木犀香も黄金めく樹下にゐて

/鯖焼くや秋果調うころとなり

/地の香奠裔の南瓜の藪から坊

/秋野菜天ぷらにして汁のもの

/小松菜にバッタ泊まらす翠かな

/葡萄樹の里にも紅葉兆すかな

/里芋のひと夏過ぎてまた芽吹き

/試し掘りうれしこはさの半分こ

/お着物や繻子の音して夏ゆけり

 

倉石智證

金木犀が咲いた。

/芋名月すっかり雲に隠れけり

/お気楽や風が無くとも薄の穂

/松に来て松が枝松葉扱(しご)きけり

/秋明菊日に翳(かざ)しけり明きらけく

/金木犀妻の一声「咲いたわよ」

/点滴台返す花野の末(うれ)にまで

/白斑病鞘の容変葱の畝

(うどん粉病の薬剤を撒いたが)

/バイタルを聞いて見舞いの20分慌ただしくも手を握りたる

/何の用か石に乗りたる式部かな

/艶めける式部に鳥の御用かな

/シャベルカー石突き崩す音遠く秋ののたりや人のひとりや

/妄想や蝉の声聞く真夜更けて

/秋海棠小さい秋見つけた庭手入れ

 

倉石智證

 

ば様、入院へ。

/畝一条立てて種蒔き病院へまさかそのまま入院だとは

/穂薄のゆれてばーさん入院す

/肺炎や写真の影の濃く薄くスクロールするいや増す不安

/何度でも血を採ってばば奮闘する

「♪青葉茂れる」口に歌いて

/皮下出血紫色にそのままに針挿す場所の追い詰めらるる

/窓開けて帰りの車ばば不在なにかは秋の風透きとほる

/入院と一声聞かばがっくりと簡易ベッド処置室の壁

家に帰って来ても座敷、医療ベッド、食堂…

ばーさんの不在を大きく主張する。

 

倉石智證