秋はかなし色に───
/点滴の落ちる見てゐる間遠なり胸のあたりの雲霽れやらぬ
/秋愁ふ晴れのち曇りのち雨にばばを残して東京サ行く
/秋雨や亭主単身赴任なり高井戸あたりまた渋滞す
/甚六の休みになれば糸切れた凧の如くに上野界隈
/心配の尽きぬばかりか溜まりゆく
これが親子かそんなに呑むな
/希望めく君が代蘭の穂逞し
/ばーさんの偽熱に紅いほてりほてり寝所に誘ふ傾眠でなく
/祈ること多くなりけり父妣に花差し上げて水取り替えて
哀しい時は雑草を抜きにいくのがいいのサ。黙って俯いて畝間に屈む。小松菜、春菊、菠薐草に野良坊菜。みんな黙っているけれどぼくを見てゐる。ぼくは指を汚して雑草を引き抜いてゆく。おまいさんは何で雑草なんだね、と問いが続く。そしておまいさんたちは何で野菜なんだろうねと味方ででもあるやうに問いかける。みんな一生懸命じいっと黙ってゐる。なんでんかんでん三千世界、一物一艸みな哀しいことには悲しいのだ。
倉石智證






