これも 愛 なのでしょうか ?
訊いたわたしを さとすように ほほえんだ
私のこと、仕事のことを少し * 散文 / essay
短いことばの群れ * 詩 /words
それぞれの一齣 * 或る愛 / love
テーブルを挟んで * 食事 / restaurant
連作目次 * あのころ / youthful days
外から伝えたい * 外 / mobile
Is this LOVE? * 一覧 / all随想 130510
目の前のことに追われて、後回しにしていた大事なことなど
ずいぶん前から気になっていたくせして
実行に移していなかったことをする。
「今」になってようやく、そのタイミングが巡ってきた感じ。
まだ繋がっているかな、まだ憶えていてくれているかな。
会ったこともない。顔も知らない。声を聞いたこともない。
それなのに私を「友達」と呼んでくれた、あの人に繋がれ。
昔でいう、ペンフレンド。遠いところに住んでいる、仲間。
数日前の夢に登場した、昔とてもお世話になった先輩。
通りすがりのちょい役ではなく、主役級で現れたので
何か意味があるのかな?と思っていたら
今朝、道端ですれ違った。不思議なこともあるもので。
ご無沙汰している友人の挙動をFacebookなどで知る。
会っていないのに、活字と画像で情報を共有しているせいで
まるでブランクを感じない気がする。でも
いよいよ再会するときはやっぱり声が上ずってしまうんだ。
だらしなく時間を貪って無駄遣いしている
そんな日々も時には必要だけど
ぬるま湯で戻したあとは、浸かりっぱなしじゃいけない。
仕切り直して、いきましょう。
気付いているかな
横切るたびにきれいだと思っていた道
眺めてばかりじゃなくて歩いてみよう
この春の初挑戦はたかだかそんなことだったけれど
歩いてみると、思ったより距離があるとか
色んなチューリップが植えられているとか
小さい羽虫が群れているとか
水路に鯉と稚魚が泳いでいるとか
橋の下に人が住んでいるとか
それまで知らなかったことが分かった
ときどき岸の反対側にはぐれたままになると
向こう側にいる人との隔たりを
そんなに傍にいるくせに不安がり
駆け寄って手を繋ぐ
そういう気持ち、気付いているかな
それまで知らなかったこと
色々知りたい
歩いたことのない道
もっと歩きたい
一緒にいるからなんだって
気付いているかな
ブーフーウー
すてきな煉瓦の家を見かけると
つい眺めてしまうのは
子どもの頃に読んだ「3匹のこぶた」のせい
藁の家は吹き飛ばされたもの
木の家は燃えちゃったもの
でもね煉瓦の家なら飛ばされないし燃えないよ
逃げてきたこぶたも一緒に暮らせるよ
重い石をコツコツ積み上げて
時間をかけて作りあげたんだもの
不確かなものと確かなものの
実際は、ほとんど不確かなものだらけ
だけどほんの僅かでも
確かなものに近づけたいから
地道に煉瓦を積んでいく
「なるなら、3匹目のこぶたがいい」
幼心にそう思ったの
三分咲き
丈の短い、祖母がくれたコートを着ていました。
裏地には虫食いの穴がぽつぽつ開いていたし
襟も袖口も擦れて薄くなっていたけれど
年季の入ったその冬服が好きでした。
春になっても、満開にはまだ少し早い頃
日が暮れると急に肌寒い気配が足元に漂いはじめます。
なんとなく、好きな人がいました。
三分咲きの並木道で立ちどまり
なんとなく寄り添って、なんとなく指をからめ
なんとなく抱きすくめられ、なんとなく口づけたのです。
けれども、それっきりになってしまったのは
全部なんとなくで、適当だったからなのでしょう。
コート越しに感じた煙の匂いとぬくもりは
あっという間に風がさらっていきました。
本気になる前の蕾は咲かぬまま
冬色の服と一緒に仕舞っておきました。
たかがそれだけ
忘れられない存在は皆、名言を残していった人ばかり。
その言葉が忘れられないから、その顔ぶれも忘れられない。
伝えられた口調や場面だとか
書かれていた文字の形など
自分の気持ちを揺さぶったメッセージは色褪せないまま
答えが見つからない問いかけも、幾つかあって
何年経っても、問いかけてくる。
逢いたいと思う人がいる。
どうして、また逢いたいんだろう
久しぶりに話したい、聞いてほしいことがある気がする。
でも、静かにお茶を啜って
たまに「ふふ」と微笑みあうだけで十分すぎることも知ってる。
私はここにいて、それなりに頑張ってます
其方もお変わりなくお元気そうで、何よりです
見ればわかるか、ふふ。
いつだったか、言っていたこと
その答えが、まだ分からないんですよ
何年も経ってるのにね、ふふ。
たかがそれだけ、でもそれだけ。
それだけのために、時間を作り
それだけのために、逢いに行く。
1枚どうぞ。
11月
かつて一つのプロジェクトで突走った大切な同志たちと再会して
久しぶりに、乾杯しました。
当時のことを一部始終思い出すとき、きまって少し切なくなります。
一生懸命やっていたけれども未熟で、
何年か歳を取った私からすると、あれこれ思い浮かぶことがあるからです。
それから、当時のタイムラインの一つに、
後の自分の考え方に、大いに影響する
意味を持った日があったことに気付きます。
この日私は、通りすがった店でチョコレートを2枚買いました。
なぜ2枚買ったのかというと、両方とも私の好きな味だったからと
その日自分が逢う人の中に、もしチョコレート好きの人がいるならば
1枚あげようと思いついたからなのですが。
そこに意味など無く・・・
いいえ、意味など無い・・・そういうと少し嘘になります。
同じものを半分にして、これはいいねと頷いてもらえたら
それだけで幸せな気がして、想像すると楽しく思えました。
私が手にしていたのは、チョコレートの形をしているだけで
言葉や文字と同じ、ツールでしかありませんでした。
ドアを叩くノックの音。薄暗い部屋を照らすスイッチ。
そんな、自分勝手なサインが込められていたのかもしれません。
宴はつづき
激しい雨と風が落ち着いたと思ったら、星が顔を出してきました。
心がしんしん静まっていくのを感じました。
ああ、昔も今も、ちっとも変わらないじゃない。
成長したと思うなんて、驕りでしかなく
私には微々たる力しか、なかったのに。
力不足なのは事実。それならちっとも悔しくはない。
悔しくはないけど、ベストはきっちり尽くさないとダメだってこと。
出来ることを精一杯にやるしかない、それだけは分かったんだ。
人は何かが欠けると不安になりますが
そもそも、不安になるほど所有する必要があるのかと
何事かを必死になって抱えていた腕の力が抜けていきました。
テラスのブランケットにくるまり間抜けな顔で
ふにゃふにゃ笑っていました。
もうすぐ2012年が終わります。
今年は本当にギリギリまで、働いてしまいました。
時間も力もギリギリで、めいっぱいでした。
でも、楽しかった。そう思えるから結果オーライです。
かたまり
「先におふとん入ってて。」と言ってから、
少しキッチンを片付けていたら
思ったより時間がかかってしまった夜。
すっかり眠りの世界にいる人を起こさないように
そっと毛布をあげて洞穴に滑り込むと
ひとの形をした、温かいかたまりが
背中を丸めて寝息を立てていました。
その輪郭に沿うように身を寄せ、抱きしめてみます。
静かに上下する、大きなかたまりが「そこにいる」ことが嬉しくて
つい、口もとが緩み笑ってしまいます。
「くっくっく」と必死に声を立てず目じりに皺をよせて。
しっとりとしたあなたの匂いが本当に好きで好きで
条件反射で笑ってしまうのです。
じっくりぽかぽかと伝わる温度さえも
逃したら勿体ないほどいとしい。
このぬくもりはここにしかありません。
生きている、眠っている、そこにいる、ああ良かった
たからものなのです。あなたは、私の。
100人目のわたし
おかしな夢を見た
目覚めてすぐに
それはありえないと思ったあと
“絶対にありえないとは言い切れない”とも
ほんの少しだけ思った
あなたと私の恋が
夢で見たような展開を見せる確率は
果たして1パーセントあるだろうか
99人の私が右の道を進むところで
100人目のわたしは
ふいに左に折れてしまう
他人からすればいばら道でも
その先にあるハッピーエンドを
選ぼうとするかもしれない
しあわせかどうかを決めるのは
その100人目
この私、かもしれないのだ
にちようび
ふたりして何の予定もない日曜日
敷いたばかりのラグでごろつき
マンガを読んでお菓子を食べて
小魚とアーモンドのアーモンドばかり残って
ぼろぼろ屑を散らかす無頓着さに口をとがらす
早い日暮れにシャツを取り込み
濡れたベランダに小雨が降っていたことを知って
冷蔵庫の片付けみたいな料理をして
ありあわせの献立なのになぜか美味しい
最低限のことしかしていないのに
いつもよりふたりで話せた日曜日
明日の準備が少し
ゆううつになるね
レインコート
見るからに仕事人。
オシャレも恋もプライベートもデキる女、という先輩に憧れていた。
服は当然、靴もバッグもセンスが良くて、
大振りのアクセサリーにも負けていない。
どれも、きっととても良い物だと思うけれど
モノはただのモノとして彼女を引き立てる役でしかない。
それはたぶん、本人が何より一流の
「ブランド」を持っていたからなのだろう。
別に、同じになりたいわけじゃない。
それでも一つだけ、真似してみようと思ったのが
レインコートだった。
先輩と一緒に、外出をした日は大雨で
彼女はベージュのレインコートを着ていた。
書類鞄を抱えて、エナメルのハイヒールで闊歩する。
傘からはみ出した肩から
丸い雨粒がすべり台を転がるようにぽろぽろ落ちていくさまが
見とれてしまうほど優雅で、美しかった。
あれから
天気予報を見て、紐をきゅっと結ぶと
衣擦れの音が幸先の良いサインに聞こえる。
レインコートを着る日は、特別になった。
私は雨の日が嫌いだったけれど
コンディションの悪い日にだけ登場する上等なコートがあったなら
ひょっとしたら好きになれるような気がした。
厚い雲さえ味方につけてしまえる、そんな気がした。



