【夕顔396-2】和歌の掛詞☆見分け方☆
イラスト解釈では
源氏物語イラスト訳で出てきた古文の
入試対応オリジナル問題を掲載しています☆
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を賜り、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。
ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、五条にひっそり住まう夕顔の君に恋をし、彼女を廃院に誘いますが、夕顔は物の怪に襲われ急死してしまいます。失意の中、喪も明け、光源氏はかつて関係のあった人妻の空蝉へ、そして一夜の逢瀬であった軒端荻へと、想いを馳せつつも、夕顔の四十九日を迎えました。
【今回の源氏物語】
忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて、
「泣く泣くも今日は我が結ふ下紐を
いづれの世にかとけて見るべき」
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☆ 古文オリジナル問題~和歌の掛詞~☆
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忍びて調ぜさせたまへりける装束の袴を取り寄せさせたまひて、
「泣く泣くも今日は我が結ふ下紐を
いづれの世にかとけて見るべき」
問)傍線部の和歌の説明として最も適当なものを選べ。
1.「結ふ」は、袴の紐を結ぶのと、髪の毛を結い上げるの掛詞である。
2.「世」は、現世のこの世と、光源氏の夕顔との男女の仲との掛詞である。
3.「泣く泣く」は、光源氏が悲しみで泣くのと、夕顔が亡くなったことの掛詞である。
4.「とけ」は、袴の紐をほどくのと、光源氏と夕顔がうちとけることの掛詞である。
5.「見る」は、夕顔と逢うことと、「~してみる」という補助動詞との掛詞である。
古文の入試問題文のなかには、
和歌がよく含まれます。
和歌は、31音という極めて短い拍数の中で
自分の心情を吐露しなければならないため
さまざまなルールが施されます。
その最もポピュラーなのが、掛詞です。
掛詞とは、
同音異義語の景物(もの)と
詠み手の心情とを、掛け合わせて詠む
和歌修辞です。
掛詞は、基本平仮名で書かれていることが多いですが、
そうでない場合もあるため…
よく出るものは、
一覧にして、覚えてしまいましょう。
【掛詞☆一覧】
■あふ(逢ふ・逢坂)
■あき(飽き・秋)
■いく(行く・生野)
■いなば(往なば・因幡)
■うし(憂し・宇治)
■うらみ(恨み・浦見)
■かる(離る・枯る)
■たつ(立つ・竜田山)
■ながめ(眺め・長雨)
■なみ(無み・波)
■ひ(思ひ・火)
■ふみ(踏み・文)
■ふる(降る・経る・古る)
■まつ(待つ・松)
■よ(世・夜)
■よる(寄る・夜)
■わく(分く・湧く)
※詳しい一覧はアメンバー記事にて☆
今回は、
「解く」という言葉自体に
2つの内容が掛けられています。
【とく(解く)】
【自動詞:カ行下二段活用】
①帯や紐が自然にゆるくなる。ほどける
②恨みや心のわだかまりがなくなる。晴れる
③うちとける。くつろぐ
④公職から離れる。解任になる
【他動詞:カ行下二段活用】
①帯や紐など結んであるものをゆるくする。ほどく
②髪のほつれなど櫛でなおす。とかす
③結びつけてあるものを取りはずす
④謎や問題の答えを出す
*『全訳古語例解辞典(小学館)』より
こういう、多義的古語の場合は、
物理的な、紐をほどくという意味のほかに
男女の仲がうち解ける、といった
和歌の心情に触れる部分も重ねられています。
掛詞、と言えないかもしれませんが
上の選択肢なら、これが最も適当ですね。
この四十九日の機会に
光源氏がこっそり作らせておいた袴の紐を結んで
寺に寄進する場面でしょう。
光源氏が、奉納のため、下紐を結びながら、
自分の心情も重ねて
来世で、この紐をほどきたい
来世で、あなたとうち解けたい
という気持ちを詠んだのでしょうね。
1.「結ふ」は、袴の紐を結ぶのと、髪の毛を結い上げる(×)の掛詞である。
2.「世」は、現世の(×)この世と、光源氏の夕顔との男女の仲(△)との掛詞である。
3.「泣く泣く」は、光源氏が悲しみで泣くのと、夕顔が亡くなった(×)ことの掛詞である。
4.「とけ」は、袴の紐をほどくのと、光源氏と夕顔がうちとけることの掛詞である。
5.「見る」は、夕顔と逢うことと、「~してみる」という補助動詞(△)との掛詞である。
ちなみに
「見る」は、「逢う」という意味も重ねていますが
「とけて見る」は補助動詞ではありませんよね。
【答え】…4