【夕顔295-2】古文常識「念仏」
センター試験まであと97日☆
このイラスト解釈では、毎回1問ずつ、
古文の問題を載せています。チャレンジしてみてねっ!
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を名のり、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。
ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、五条にひっそり住まう夕顔の君に恋をし、彼女を廃院に誘いますが、夕顔は急死してしまいます。部下の惟光(これみつ)に後始末を命じ、光源氏は憔悴しきって内裏にも出仕できず、惟光と夕顔の葬儀へと出向きます。
【今回の源氏物語】
御燈明の影、ほのかに透きて見ゆ。その屋には、女一人泣く声のみして、外の方に、法師ばら二、三人物語しつつ、わざとの声立てぬ念仏ぞする。
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☆ 古文オリジナル問題~古文常識「念仏」~ ☆
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御燈明の影、ほのかに透きて見ゆ。その屋には、女一人泣く声のみして、外の方に、法師ばら二、三人物語しつつ、わざとの声立てぬ念仏ぞする。
問)傍線部の解釈として最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
1.僧たちは夕顔の供養に身が入らなかったが、それでもことさら声を大きく誦経していた。
2.女の泣き声がうるさいので、わざと声を大きく立てた念仏を唱えて祈祷していた。
3.本格的に経を唱えず、声をひそめて行う無言念仏で、葬送前の供養をしていた。
4.それほど特別な誦経の声も出さず、僧たちはいろいろ雑談しながらの念仏だった。
5.僧たちは、見ず知らずの夕顔のために、本心からお経を唱えているわけではなかった。
古文の読解で、特に意味が取りにくいのは、
今回のような、仏教用語の入ってくる場合でしょう。
たしかに、注釈がついている場合も多いですが、
現在の価値観とは離れていることもあり、
なかなかイメージが湧きにくいですよね;;
平安時代は、仏教的な価値観が浸透していたため、
王朝物語の中にも、当然のようにして
その価値観や仏教用語が入ってきます。
今回は、光源氏が山寺に到着したときの様子ですが、
まず、お堂のすき間から、
御灯明(=神仏をまつる灯火)がもれ出ているのを見ます。
誰かが、中で供養しているのでしょう。
すると――
女の泣き声が聞こえてきます。
おそらく、泣いているのは、
夕顔という主人を亡くした侍女、右近でしょうね。
すると外の方に――
法師たちが2、3人、なにやら話をしています。
「物語す」というのは、「何か話をする」と訳すと
しっくりくる場合が多いですよ!
そして――
なにやら、念仏を唱えているようです。
しかも、ちゃんとした、本格的な誦経でなく…
【念仏(ねんぶつ)】
【名詞】
…心に仏の姿や恵みを思い浮かべ、仏の名を唱えて仏に祈ること。特に、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を唱えること
「ねぶつ」とも。仏教語
※Weblio古語辞典より
基本的に、念仏というのは、
声をあげて、死者の成仏を願って行うもの。
しかし、葬送の前には
このように声をひそめて行う「無言念仏」というのがあるそうです。
宇治拾遺物語などでも、
葬儀の前に生き返った、なんて話もよくありますが…
もしかしたら、葬儀の前に、よみがえるかもしれない――
でも、蘇生する可能性のある者も、
念仏の声を聞くと、その声を恐れて
蘇生できなくなるかもしれない――
そのような願いもこめてお粉触れ「無言念仏」
現代では、あまり考えられない風習ですよね;;
【解答】…3