制度普及が大きな課題に

 相次ぐ台風襲来による農作物被害への対応で、農家の保険となっている農業共済制度の役割が注目される一方、加入状況は低迷しているのが実態だ。八重山郡農業共済組合によると、農家の共済加入率はサトウキビで35%程度、台風15号で大打撃を受けた水稲は45%程度にとどまっており、半数以上の農家が被害補償を受けられないことに。今後、地球温暖化などにより台風が大型化するとの予測もある。共済制度の重要性が高まるとみられ、同制度の普及が課題となってきそうだ。


 組合によると、農作物共済事業のうち、2007年産サトウキビで有資格農家1745戸のうち624戸しか加入しておらず、加入率は35.8%(石垣市28.3%、竹富町67.8%、与那国町49%)。

 水稲は07年産2期作に限ってみると、有資格農家133戸に対し59戸で加入率は44.4%(市41.3%、竹富町75%)にとどまっている。水稲共済は自然加入という強制加入制をとっているが、半数にも満たない。いずれの共済も石垣市の加入状況が悪い。

 低加入率の要因について関係者は「農家に掛け損という意識が強い」と口をそろえるが、農家にとっては「掛け金が経営を圧迫する」として加入に躊躇(ちゅうちょ)するケースもあり、「共済は万一の場合に備える相互扶助」と理解を求めてもなかなか浸透してないのが、実情のようだ。


 ハウスなど園芸施設共済については農家の掛け金負担50%のうち4分の1を県・市町村で助成している。他の作物にも拡充を求める意見が出ているが、被害視察で10日来島した仲里全輝副知事は「県も市町村も財政状況が厳しく、むつかしい」との見解を示した。

 組合の出地政行参事は「近年は大型台風が襲来している。自然災害への備えとして全農家に加入してもらい、災害の際には共済の恩恵を受け、再生産に結びつけてもらいたい」と話している 

 同組合は、06年度の共済事業全体で農家負担掛け金1億3186万円に対し、3億1815万円の共済金を支払っている。


【農業共済】
 国の災害対策の政策保険として「農業災害補償法」に基づき実施。内容は農作物(水稲)、家畜、畑作物(サトウキビ)、園芸施設、建物の各共済。

農家が掛け金を出し合って共同準備財産をつくり、災害による損害が出たときに共済金の支払いを受ける仕組み。国は水稲で50%、サトウキビで55%を負担。災害時の損害に対して加入農家はそれぞれ単収の7割(水稲)、8割(サトウキビ)の共済金を受けることができる。