千葉県野田市の第三セクター・農業生産法人「野田自然共生ファーム」がこの秋、25年ぶりに復活させた田んぼで「ふさこがね」を初収穫した。企業から買い取った土地をビオトープ(多様な生物のすむ空間)として保全しながらの農業生産。とりあえず3ヘクタール、8.3トンと少ないが、今後さらに広げて、荒れた里山に息を吹き込む計画だ。


 法人は昨年9月、市と農家が出資して立ち上げた。大規模なビオトープ構想の舞台は、同市江川地区。希少猛きん類のオオタカやサシバが空に舞い、田んぼやレンコン畑が広がっていた湿田地帯だ。


 同地区は大手ゼネコンが宅地の開発計画を立てていたが頓挫し、荒れ地になっていた。転売などで乱開発される恐れがあることから同法人がこれまでに29ヘクタールを買い上げた。さらに4ヘクタールを購入する計画。今回復田したのはその一部で、栽培した「ふさこがね」は県の奨励品種「ちば28号」の愛称だ。同法人はこれをブランド米として拡大する考えを持っている。


 現時点の構想では買い上げ地のうちの16ヘクタールを「保全エリア」として動植物の保護・保全用地に充て、4.5ヘクタールを「市民農園エリア」、残る12.5ヘクタールを「ブランド米エリア」にする。


 再整備した用水路では蛍やメダカ、ドジョウが爆発的に増えたのを確認。同法人取締役の伊藤敏弘さんは「自然が戻る喜び、農業の楽しさを実感している」と話す。

 復田では試験的に除草剤だけを使い、減農薬・無肥料で育てた。同法人は有機質肥料だけ使った「蛍やメダカがいる、豊かな自然で育った米」をイメージにブランド米作りに取り組む予定だ。

掲載日:07-10-08 農業新聞