最近、教育関係者や個人事業主の方から
「出版の営業が来た」「本を出さないかと言われた」
という話をよく聞くようになりました。

実際、私のもとにも
教育をテーマにした書籍企画のご提案が届きました。

今回は、そのやり取りを通じて見えた
自費出版・共同出版というビジネスの実態について、
塾という立場から整理してみたいと思います。

※特定の出版社や個人を批判する意図はありません。
あくまで「仕組みの話」です。


「共同出版」とはどういうものか

一般に説明される共同出版は、次のような形です。

  • 著者が一定の費用を負担する

  • 出版社が編集・校正・表紙デザインを行う

  • 書籍はAmazonなどで販売される

  • 印税も支払われる

  • 著作権は著者に帰属する

一見すると、
「自費出版よりも安心」「商業出版に近い」
と感じる方も多いと思います。

しかし、重要なのは
この仕組みが、どのような収益構造で成り立っているかです。


共同出版のビジネス構造

多くの共同出版では、

  • 初期費用:30〜50万円前後

  • 印税:5〜10%

  • 印刷:オンデマンド(在庫を持たない)

という形が一般的です。

ここで冷静に考える必要があります。

出版社の収益は、
本が売れるかどうかに関わらず、初期費用でほぼ確定する

つまり、出版社にとっての主な顧客は
「本を買う読者」ではなく、
**「出版したい著者」**なのです。

これは良い悪いの話ではなく、
そういうビジネスモデルだということです。


なぜこの仕組みが成り立つのか

共同出版の営業が成立しやすい背景には、
次のような心理があります。

  • 一度は本を出してみたい

  • 「著者」という肩書きが欲しい

  • 教育や仕事の実績を形に残したい

  • 出版社が関わることで安心したい

特に、教育業界では
「本を出している=すごい先生」
というイメージが、今も根強く残っています。

そのため、
出版が目的になってしまうケースも少なくありません。


現在の出版環境との比較

一方で、現在は
誰でも簡単に出版できる時代でもあります。

たとえば電子書籍の場合、

  • 初期費用はほぼかからない

  • 印税率は高い(条件次第で50〜70%)

  • 出版までのスピードが早い

  • 内容や表現の主導権を著者が持てる

つまり、

「出版すること」自体のハードルは、
すでに非常に低くなっている

この前提を知らずに
共同出版の話を聞くと、
判断を誤りやすくなります。


共同出版が向いている人もいる

誤解のないように言えば、
共同出版が完全に悪いわけではありません。

次のような方には、向いている場合もあります。

  • 名刺代わりに1冊欲しい

  • 売上は重視していない

  • 出版プロセスを経験したい

  • 自分で作業する時間が取れない

この場合、
費用は「広告費」「経験料」と割り切ることができます。

問題になるのは、

本来は別の選択肢がある人が、
それを知らずに選んでしまうこと

です。


私自身が今回見送った理由

今回の出版提案を見送った理由は、
単純なものです。

  • 本名とは別名義で、電子出版を継続的に行っている

  • 企画・制作・公開を自分の判断で進められる体制がある

  • ブログや動画、文章プラットフォームで検証を重ねている

この状況で、
初期費用と条件を考えると、
合理性が合わなかった、というだけの話です。


塾として大切にしたい視点

塾の仕事も、出版の話も、
本質は似ています。

  • 「形」よりも「中身」

  • 「肩書き」よりも「実力」

  • 「一発」よりも「継続」

保護者の方が
「どこの塾か」ではなく
「何をしてくれる塾か」を見るように、

出版も
「どこから出したか」ではなく
「何を伝えているか」が重要です。


結論

共同出版という仕組みは、
正しく理解すれば、選択肢の一つになります。

ただし、

  • 出版が目的になっていないか

  • 費用に見合う意味があるか

  • 他の方法と比較したか

この3点は、必ず立ち止まって考える必要があります。

教育も出版も、冷静な判断が一番大切

この話が、
どなたかの判断材料になれば幸いです。

「今の塾でいいのか」
「別の塾に行った方がいいのか」

これは、多くの保護者・生徒が
一度は考えるテーマです。

この話をするとき、
私はよくこんな例えを使います。

 

解任ブーストの話

プロ野球やプロサッカーで、
いわゆる「解任ブースト」と呼ばれる現象があります。

  • 監督が変わる

  • 一時的にチームが強くなる

  • でも、1か月ほどで元に戻る

よくある会話です。

「一瞬だけ強くなるやつだよね」
「緊張感が生まれるんだよ」
「じゃあ1か月おきに解任すればいいじゃん(笑)」

……もちろん、冗談です。

ただ、この構造、
転塾とかなり似ています。

 

転塾で起きていること

塾を変えると、

  • 環境が変わる

  • 先生が変わる

  • 空気が変わる

結果として、
緊張感が一度リセットされます。

すると、多くの場合、

  • 勉強量が増える

  • 集中力が上がる

  • 成績が一時的に伸びる

つまり、
すぐに効果が出やすい。

でも、この緊張感は長く続きません。

  • 慣れる

  • 緊張感が薄れる

  • 元のペースに戻る

そして、

「また合わなくなった気がする」
「効果がなくなった」

となり、
再び転塾を考える。

これは、
終わりのないイタチごっこになりがちです。

 

塾と生徒の関係は「監督とチーム」

塾と生徒の関係は、
監督とチームの関係によく似ています。

ここで重要なのは、

「緊張感があること」を前提に設計しないこと。

緊張感は、
どんな環境でも必ず消えます。

  • 怒られるからやる

  • 見張られているからやる

これを前提にすると、
緊張感が消えた瞬間に、学習は崩れます。

 

本当に見るべきポイント

本当に見るべきなのは、ここです。

緊張感がない状態でも、どこまでやれるか。

  • 怒られなくてもやるか

  • 管理されなくても続くか

  • 自分で自分を律せるか

そこまで育てる設計になっているか。

それが、
塾選びで一番重要なポイントだと考えています。

 

だから、うちは最初にこう聞きます

今の塾を辞めて、
うちへの転塾を検討されている方には、
最初にこうお聞きします。

「安易にリセットしようとしていませんか?」

というのも、
私たちの塾は最初から、

  • 緊張感がない前提

  • 管理が永続しない前提

で、カリキュラムも運営も組んでいます。

つまり、

転塾ブーストが効きません。

……なんということでしょう。

 

緊張感は永続しない

ふと思い出します。

ジョゼ・モウリーニョ
ですら、
チームに緊張感を保てるのは、せいぜい2年と言われています。

それを、

  • 塾で

  • 毎日

  • 何年も

維持し続けようとする方が、
無理があるのかもしれません。

 

最後に

転塾が悪いわけではありません。
環境を変えることで、立て直せるケースも確かにあります。

ただし、

  • 緊張感に頼る

  • リセットを繰り返す

このサイクルに入ると、
根本的な解決にはなりません。

塾を選ぶときは、
ぜひこう考えてみてください。

「緊張感がなくなった後、この塾は何を残してくれるか」

そこが見える塾なら、
簡単には崩れません。

ここまでの記事では、
「自律型学習」や
「マイクロマネジメントの弊害」について書いてきました。

その上で、
今日は少しだけ本音の話をします。

小学生に「完全な自律」は、正直かなり難しい

まず前提として。

小学生の段階で、
本当の意味での自律型学習ができる子は、
正直、ごく一部です。

多くの子に完全放任をすると、
だいたい次のことが起きます。

  • 楽なことばかり選ぶ

  • 必要のないことに時間を使う

  • 大人の目がないと遊んでしまう

  • 「やった気」だけで時間を潰す

これは能力や性格の問題ではありません。
発達段階として、自然な反応です。

だから、中学受験では「少しだけ」管理を入れます

そのため、私たちの中学受験指導では、

  • 完全放任
    ではなく

  • 最低限のマイクロマネジメント

を、あえて取り入れています。

目的は一つ。

「どこかしらには、確実に合格させる」こと。

  • 学習内容の取捨選択

  • ペース配分

  • やるべきことの明確化

これらをこちらで設計し、
土台だけは崩れないようにする。

これは管理のための管理ではなく、
安全装置です。

ただし、全員に同じことはしません

ここが一番大事なところです。

すべての子に、
同じ管理をかけるわけではありません。

経験上、

  • 学力

  • 思考の成熟度

  • 失敗から修正できるか

これらを総合的に見て、

「この子は、放した方が伸びる」

と判断した場合は、
意図的に放任に近い状態に切り替えます。

具体的には、

  • 修道中学校

  • 広島学院中学校

  • ノートルダム清心中学校

  • 広島大学附属中学校

このあたりに現実的に合格可能と判断した子は、
管理を大幅に緩めます。

なぜなら、
そのレベルを目指す子に、
細かい指示はむしろ邪魔になるからです。

マイクロマネジメントは「悪」ではない

誤解してほしくないのは、ここです。

マイクロマネジメント自体が、
絶対悪なわけではありません。

  • 年齢

  • 段階

  • 目的

これを無視して使うから、
問題になるだけです。

  • 小学生の「合格確保」には有効

  • 中高以降まで引きずると致命的

この線引きを間違えないことが、
一番重要です。

私たちが一番避けたいこと

私たちが一番やりたくないのは、

  • 小学生で管理漬け

  • 自分で考えないまま合格

  • 中高で一気に失速

このパターンです。

だから、

  • 小学生:最低限の管理で土台を作る

  • 中学以降:徐々に管理を外す

  • 高校:自律しないと回らない設計

こうやって段階的に育てます

結論(本音)

中学受験で、
多少のマイクロマネジメントを使うのは、

  • 子どもを信じていないから
    ではなく

  • 子どもの発達段階を現実的に見ているから

です。

そして、
「放した方が伸びる子」は、
ちゃんと放します。

全員に同じ教育をしない。
これが、私たちの一貫した方針です。

「自律型学習を取り入れたい」
「子どもに任せる力を育てたい」

そう考えるご家庭は、年々増えています。

しかし同時に、
自律型学習がうまくいかない家庭も、はっきり存在します。

それには、いくつかの共通点があります。

そもそも「自律型学習」とは何か

自律型学習とは、
「放置」でも「好き勝手にやらせる」ことでもありません。

  • 目標を立てる

  • 計画を作る

  • 実行する

  • 結果を振り返る

  • 修正する

このサイクルを、
本人が回せるようになることです。

大人がやるのは、
管理ではなく、設計とフィードバックです。

自律型学習が失敗する家庭の共通点①

「成績が落ちること」を極端に恐れている

一番多い原因は、これです。

  • 模試で下がった

  • テストで失敗した

  • 一時的に結果が出なかった

その瞬間に、

  • 口出しが増える

  • 管理が強まる

  • 外部サービスを足す

こうして、
自律の芽を親が自ら摘んでしまう

自律型学習は、
最初に「不安定な時期」が必ずあります。

ここを耐えられないと、成立しません。

自律型学習が失敗する家庭の共通点②

「任せているつもりで、信用していない」

口ではこう言います。

「本人に任せています」

しかし実際には、

  • 勉強内容をチェック

  • やり方に逐一口出し

  • 結果が悪いと即介入

これは任せているのではなく、
責任だけを子どもに押し付けている状態です。

子どもは敏感です。

「どうせ失敗したら怒られる」
「どうせ後から修正される」

そう感じた瞬間、
考えることをやめます。

成績が落ちるのを恐れる親ほど、なぜ成績を落とすのか

理由はシンプルです。

失敗できない環境では、成長が起きないからです。

  • 試す

  • 失敗する

  • 原因を考える

  • やり直す

この一連の流れが、
成績を伸ばす唯一のルートです。

ところが、

  • 失敗=悪

  • 成績低下=即修正

という環境では、
子どもは「安全策」しか取らなくなります。

結果として、

  • 難しい問題に挑まない

  • 思考を止める

  • 指示待ちになる

短期的には安定しますが、
長期的には確実に伸びなくなります。

親・子・塾の「責任転嫁ループ」

自律型学習が崩壊するとき、
よく起きるのがこの構図です。

  • 親:「塾に任せている」

  • 塾:「ご家庭の方針次第」

  • 子:「言われた通りにやった」

誰も考えない。誰も決めない。

この状態が続くと、
学年が上がるほど、立て直しは難しくなります。

だから、私たちはこうしています

私たちの塾では、
自律型学習を「きれいな理想論」として扱いません。

具体的には、

  • 計画は必ず本人に立てさせる

  • 失敗は止めない

  • ただし、必ず言語化させる

  • 親には「見守る役割」を明確に伝える

成績が一時的に下がることもあります。
しかし、

  • 自分で修正できる

  • 環境が変わっても対応できる

  • 高校・大学で失速しない

そういう力が、確実に残ります。

最後に

成績を守ろうとして、
成績を壊してしまう。

これは、教育現場で何度も見てきた現実です。

本当に守るべきなのは、

  • 今回の点数
    ではなく

  • 点数を生み出す力

自律型学習は、
覚悟のいる選択です。

でも、その覚悟を持てた家庭ほど、
最終的には一番安定します。

もし今、

  • 管理に疲れている

  • 任せたいのに怖い

  • このままでいいのか不安

そう感じているなら、
一度、立ち止まって考えてみてください。

やり方は、変えられます。

マイクロマネジメントとは何か

 

マイクロマネジメントとは、
本来は本人が判断すべきことまで、
周囲が細かく指示・管理し続ける状態を指します。

教育の現場で起きるマイクロマネジメントは、たとえば、

  • 勉強内容をすべて親が決める

  • 勉強時間・方法・順序まで逐一管理する

  • 結果が出なければ、すぐに外部(塾・教材)を足す

一見すると「手厚い教育」に見えますが、
実態はまったく逆です。

子ども側に起きること

マイクロマネジメントされた子どもは、
一時的には楽になります。

  • 考えなくていい

  • 判断しなくていい

  • 失敗しても「言われた通りにやった」と責任転嫁できる

しかし、その代償は大きい。

  • 自分で計画を立てられない

  • 失敗の原因分析ができない

  • 修正・改善ができない

つまり、
自律型学習の回路が育たないのです。

親側に起きていること

親のマイクロマネジメントは、
「教育熱心」ではなく、別の要因から生まれます。

  • 子どもを信用できていない

  • 未来に対する見通しがない

  • 自分の不安や後悔を、子どもに投影している

管理することで、

  • 「やっている感」が得られる

  • 自分のエゴを正当化できる

  • 結果が出なければ他人のせいにできる

しかしこれは、
子どもの人生を使った不安処理にすぎません。

教育現場で起きがちな弊害

教育業界全体を一括りにするつもりはありません。
ただ、構造として起きやすい傾向はあります。

  • 小中で「塾がないと勉強できない状態」を作る

  • 管理と指示で成績を“維持”する

  • 自律を育てないまま高校へ進ませる

その結果、

  • 高校で自走できない

  • 学習量は増えるが、質が上がらない

  • 最終的に大学受験で失速する

これは、個人の失敗ではなく、
構造の問題です。

責任放棄が連鎖する「平凡な悪」

歴史を振り返ると、
恐ろしい悲劇の多くは、
悪意ではなく思考停止から生まれています。

たとえば
アドルフ・アイヒマン
が象徴する「平凡な悪」。

  • 自分は指示に従っただけ

  • 仕組みがそうなっていた

  • 誰かが考えているはず

こうした責任放棄の積み重ねが、
取り返しのつかない結果を生みました。

教育でも同じことが起きます。

  • 親は「塾に任せた」

  • 塾は「家庭の方針」

  • 子どもは「言われた通り」

誰も考えない。誰も責任を持たない。

これが、マイクロマネジメント教育の顛末です。

だから、私たちは真逆をやっています

私たちの塾では、
「自律型学習を促しています」という言葉を、
スローガンではなく設計思想として扱っています。

やっていることは、すべて公開できます。

  • 勉強計画は、必ず本人に立てさせる

  • 失敗の原因分析を一緒に行う

  • やり方は教えるが、決定権は渡す

  • 管理は最小限、フィードバックは最大限

短期的には、
成績が不安定に見える時期もあります。

しかしその先で、

  • 自分で立て直せる

  • 環境が変わっても学べる

  • 大学以降も伸び続ける

そういう生徒を、私たちは何人も見てきました。

最後に

管理で成績を“作る”ことはできます。
でも、管理で人生は作れません。

教育の目的は、
「誰かに管理されなくても進める人間を育てること」
だと、私たちは考えています。

もし、

  • 今のやり方に違和感がある

  • 管理し続けることに疲れている

  • 子どもが自分で動かないことに悩んでいる

そんなときは、一度立ち止まってください。

やり方は、選べます。