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[機内食がまずく感じる原因はノイズにあった]

(slashdot.jp  2010年10月17日)(kazekiri による掲載)

(音の味部門より)


eggy 曰く、
食事中の環境音は、味覚や歯触りに影響するとのことが明らかになった
らしい。
(本家記事:BBC)


英マンチェスター大学のAndy Wood氏がユニリーバと行った実験において、
目隠した参加者48人に、ヘッドホンから流れる静けさとノイズのいずれかを
聴きながら、ビスケットといった甘いものや、ポテトチップスといった塩気の
あるものを食べてもらい、ホワイトノイズの中で食事した場合に感じる甘さ、
塩っぱさ等の様々な味覚、及び歯触りを調べた。

その結果、ノイズが大きい時は味覚が減少するものの歯触りが増すことが
分かり、機内食が一般的に味気ないとされ、ケータリング業者が味付けを
濃くしてしまう現象を裏付けることとなった。

また、好きな音を聴いている時の方が食事中の満足度が高くなることも
分かったという。


一度、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンをかけて機内食を食べて
みたいものだ。
驚く程の満足度を得られるのかもしれない。





http://slashdot.jp/idle/article.pl?sid=10/10/17/083219

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[苦さの効用]

(北海道新聞  2008年)


<胃腸の動き高める>
苦味はとても不思議な味覚です。
もちろん苦味は嫌な味覚です。
赤ちゃんに苦いものを与えると、身震いして嫌がりますね。

ヒトの正常なからだのしくみを解く生理学では、苦味は異物、毒物など
食べ物に有害なものが含まれているというサインとみなしています。
だから、子どもが苦いものを極端に嫌がるのは当然のことなのです。


苦さをはかる標準物質としては、キニーネというマラリアの特効薬を使い
ます。

これはカクテルに使うトニックウオーターの苦味のもとでもあります。
そういえば、これを使うジントニックはほのかな苦味が魅力的ですね。

それになんといっても「ビールは苦味が利かなければ!」
そういうわけで、大人になると、なぜか苦味を好むようになります。
コーヒーやお茶の例を挙げるまでもありません。

苦いと自然と顔をしかめる反射が起こりますが、ビールを飲むとみんな顔を
しかめながら喜んでいますね。
適度な苦味は、他の味覚を引き立てる作用があるようです。
でも、苦味を好むようになるにはかなりの経験が必要です。
苦味はまさに「大人の味」なのです。


ところで、ヒトは苦味を感じると、胃腸の運動が高まるという反射が存在
します。
実は、この反射を利用しているのが苦い胃薬で、苦味剤と呼ばれます。
苦味剤は、実験的に胃に直接入れても胃腸運動は全く変化しません。苦味を
感じることが大事なのです。
ですから、苦い胃薬をオブラートに包んだり、苦味を感じないうちに
のみ込んだりしては、効果がないのです。
胃薬もしかめっ面をして、大人ののみ方で──。





(とうせ・のりつぐ:札医大医学部長)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[竹が主食ナゾ解けた!? パンダ、肉への味覚失う…
                      国際チーム・遺伝子解析]

(読売新聞  2009年12月15日)


ジャイアントパンダが、肉食のクマ科に属しながら竹を主食にしているのは、
進化の過程で肉の「うまみ」を感じる味覚を失った可能性が高いことが
わかった。

ジャイアントパンダの遺伝情報を解読した北京ゲノム研究所などの国際
チームが解析したもので、英科学誌ネイチャー電子版に14日発表した。

国際チームは3歳のメスのパンダを対象に、全遺伝情報の約94%を解析。
肉食動物特有の消化酵素の遺伝子はあったが、植物繊維のセルロースを
分解する酵素の遺伝子はなかった。

竹の消化は、腸内の微生物の働きで行うと考えられる。

「甘み」「苦み」など基本的な味覚の遺伝子のうち、肉に豊富な「うまみ」を
感じる遺伝子が機能を失っていた。
味覚が変化し、手に入れやすい竹を主食に変えた可能性があるという。






http://osaka.yomiuri.co.jp/science/news/20091215-OYO8T00343.htm

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[男性がインフルや風邪の症状に弱いのには理由がある?]

(HealthDay News  2017年12月11日)


インフルエンザや風邪といった呼吸器感染症の症状はつらいものだが、
特に男性はその症状を大げさに訴える傾向があると感じている医師や女性は
多いのではないだろうか。

しかし、男性が呼吸器感染症の症状に弱いのは、ただ弱虫だからではなく、
男性は実際に女性と比べて免疫系が弱く、症状が重くなりやすいからでは
ないかとする研究論文が発表された。

この論文は毎年ユーモラスなテーマの研究論文を集めることで知られる
「BMJ」12月11日オンライン版のクリスマス特集に掲載された。


この論文を執筆したのはニューファンドランド・メモリアル大学(カナダ)の
Kyle Sue氏。

英語圏では軽い風邪の症状でも「インフルエンザに罹った」と騒ぎ立てる
男性を揶揄する際に“man flu(男性特有のインフルエンザ)”という言葉が
よく使われる。
同氏は今回、動物およびヒトの複数の研究をレビューし、“man flu”に
科学的根拠があるのか否かについて検証した。

その結果、ある香港の研究では、女性よりも男性の方がインフルエンザによる
入院リスクが高いことが示されていた。
また、インフルエンザを含む呼吸器疾患を発症した場合の合併症リスクは
女性と比べて男性で高いことを示した研究もあった。

さらに、複数のマウスの研究において、男女の性ホルモンの違いがインフル
エンザの症状の重症度に関係している可能性が示されているほか、ヒトの
研究でも男性と比べ女性ではインフルエンザ発症時の免疫反応が強いこと、
また男性ホルモンの分泌量が多いと免疫反応が抑制されることが示唆されて
いるという。


Sue氏は、さらに詳細な検討が必要であることを認めつつも、「男性が呼吸器
症状に弱いことには、ある程度の根拠はある」と述べ、「インフルエンザの
治療も性差を考慮する必要があるかもしれない」との見方を示している。


さらに、同氏は「女性よりも男性の方が若いうちに心血管疾患を発症しやすい
として、男性には早期から心血管疾患のスクリーニングが実施されているにも
かかわらず、なぜ男性が風邪やインフルエンザの症状でより苦しんでいると
問題視されるのだろうか」と疑問を投げかけている。


一方、米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のEbbing Lautenbach
氏は、今回の論文について「われわれが共通して抱いている印象を裏付ける
データが、実際にどの程度あるのかを調べたという点は素晴らしい」と評価
した上で、「女性と比べて男性では呼吸器感染症への免疫反応が弱いという
ことは証明されているわけではない」と指摘。
性差が本当に存在するのか、もし存在するならどのような機序で性差が生じる
のかについて、今後さらなる研究が必要だと強調している。





http://www.healthdayjapan.com/



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[麻薬持ち出し、保管庫にカード情報で記録 セコムが発売]

(朝日新聞  2018年1月11日)


麻薬や向精神薬の持ち出し、ばっちり記録します――。
警備会社のセコム(東京都)は、解錠した人や日時を記録できる医薬品の保
管庫を発売した。

乱用につながる薬の紛失が医療機関で相次ぐなか、誰がいつ薬を持ち出した
かの確認に役立つという。


山梨県の病院で昨年、睡眠導入剤約3万7千錠の紛失が判明。
長野県や鹿児島県の病院でも、大量の向精神薬の所在がわからなくなった。

医薬品の紛失や在庫数が合わなくなる事例は各地でみられるが、大半は
未解決のままだ。


昨年12月に発売された「セサモMBX」。
幅と高さ30センチ、奥行き25センチで重さは約9キロ。
手術室などの棚に収納するほか、壁に固定もできる。

薬剤部から届いた1日分の麻薬などの保管を想定する。
金属製のカギとICカードを使い解錠する。
国内で普及するICカードに対応し、解錠した時間や使われたICカードの情報を
記録する。

1台12万1千円(税別)。
カギを使わずにこじ開けられたときのセコムへの通報や、監視カメラと連動
して扉が開いた時に周辺を録画するサービスも追加できる。




(福地慶太郎)





https://www.asahi.com/articles/ASKDP4K36KDPULBJ00D.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[口内細菌がつくる脂質が動脈硬化の原因に?]

(あなたの健康百科  2018年01月12日)


肉やバターなどの食品に含まれる脂質が動脈硬化の原因となることはよく
知られているが、口内細菌から生成される脂質もまた動脈硬化を引き起こす
可能性があると、米コネチカット大学の研究者らがJ Lipid Res(2017; 58:
1999-2007)で報告した。

この研究が進めば、歯周病と心臓病との関連が解明される可能性がある。



<患者のアテロームから細菌由来の脂質を発見>
動脈硬化にはいくつかの種類があるが、その多くは動脈の内側にアテローム
(脂肪を含む細胞などが溜まった柔らかなこぶ)ができる。

研究グループは、頸動脈内膜剥離術を行った動脈硬化症患者から採取した
アテロームを分析し、バクテロイデス門というグループに分類される細菌に
由来する脂質を発見した。
この細菌は特異な脂肪酸を生成するという。

近年、アテローム動脈硬化症の原因として免疫細胞と炎症の重要性が注目
されている。


研究者らは今回、バクテロイデス門の細菌由来の脂質の解析結果を踏まえ、
仮説を立てた。
「アテローム動脈硬化症の形成過程では、血管の壁に沈着した脂質を
免疫細胞が異物と見なして取り除こうとするため、血管壁で炎症が起きる。
一方、バクテロイデス門の細菌由来の脂質については、免疫細胞が細菌の
侵入と誤認してしまい、血管の壁では二重に炎症が起きることとなる」

バクテロイデス門の細菌は通常、口や胃腸の中に存在し、条件がそろえば
歯肉炎などを引き起こすが、この細菌自体が血管内に侵入することはない。

しかし、バクテロイデス門の細菌が生成する脂質は容易に細胞壁を通過し
血流に入っていく。


同氏らは今後の検討課題として、細菌由来の脂質が蓄積している部位を正確に
特定する必要性を挙げている。
「アテロームの中には細菌由来の脂質が蓄積しているが、正常な動脈の壁には
蓄積していないことが確認できれば、細菌由来の脂質はアテロームの形成と
関連しているという確証が得られる」としている。






http://kenko100.jp/articles/180112004475/#gsc.tab=0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[こんなにも面白い医学の世界 第19回 ジェットコースターのあとの頭痛]

(レジデントノート  2016年4月号掲載)


僕が週1回当直している病院は、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン®
のそばにあることで、なかなかユニークな患者さんがこられます。
昨年のハロウィン・ホラー・ナイトでは、ゾンビに扮したスタッフが
お客さんに突き飛ばされ、肩関節脱臼で搬送されてきたのですが、肩を下げて
痛そうに歩く姿はリアルに怖いものでした。

このようなテーマパーク特有の患者さんのなかには、ジェットコースターに
乗ったあとに嘔気や気分不良のほか、頭痛を訴える方がいるのですが、これは
roller coaster headacheと呼ばれ、注意が必要です。

ジェットコースターは、もちろん十分な検証に基づいた安全基準が厳しく
定められていて、安全性は保障されているはずです。
頭部に加速度計をつけた健常人にジェットコースターに乗ってもらって
データをとった報告がありますが、Gの力だけでは頭に影響はなく、ジェット
コースターは通常のスポーツ、例えばサッカーのヘディングと同様、あるいは
それ以下のリスクしかない、とされています。

しかし、実際にはこれまでにジェットコースターの直接的な影響が考えられる
硬膜下血腫、くも膜下出血、髄液漏出症候群などの報告があり、影響は無視
できないようです。
いずれも、機械的な脳の振動、および血圧の急上昇が原因の1つだろうと
いわれていて、硬膜下血腫については架橋静脈の過伸展が推測されています。


近年、ジェットコースターは最高時速240 kmまで高速化していますし、
高低や傾斜角度はますます激しくなっています。

どことは言いませんが、日本からも同一施設からの報告が3例報告されて
いて、これはやはり危険を承知で乗るものなのでしょう。

ジェットコースターに乗ったあとに頭痛を訴えた患者さんは、外傷がなくても
頭部CTを撮っておく必要があるでしょう。
画像で異常がなくても、片頭痛のような症状が続く患者さんも報告されて
いて、画像では指摘できない微細な病変があることも推測されます。
またこれらの患者さんはすべて頸部痛を訴えていることも重要で、だいたい
1時間後から10日までに症状が現れています。


年齢制限や「既往がある方はご遠慮ください」と書いてあっても乗りたい人は
乗りたいでしょうし、これを自己責任というのでしょう。
ジェットコースターが意外と危険な乗り物であることは認識しておいて
いいのかもしれませんね。





https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115667.html



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[あなたの処方せん:/29 頭痛/5止 体操、つぼ刺激で症状緩和]

(毎日新聞  2010年11月12日)


片頭痛などの慢性頭痛を予防・緩和するために、日常生活の中でもできる
ことがある。

例えば体操。
「頭痛体操」は、正面を向き、頭を動かさないで両肩を水平方向に大きく
回す。
首の筋肉のストレッチになり、こりや疲れが和らぐ。
頭痛体操は椅子に座ってもできる。
両ひじを曲げたまま両肩を前後に回す「肩こり体操」も、緊張型頭痛の軽減に
有効とされる。

五十嵐久佳・神奈川歯科大付属横浜研修センター横浜クリニック教授は
「パソコンを40分間使うごとに3分間体操をするなど、自分のペースで
こまめにほぐすとよい。ただ、片頭痛の発作中は痛みがひどくなるため、
やめた方がいい」とアドバイスする。

また、首の後ろの髪の生え際にある左右のつぼを押すと、頭痛や肩こりに
効く。
片頭痛には、こめかみ付近を刺激するのも効果的と言われる。


食べ物も関係がある。ビタミンB2は片頭痛を和らげることが知られており、
大豆製品や乳製品、レバーなどビタミンB2が豊富な食品を取るとよい。
また、豆類や海藻類に多く含まれるマグネシウムが不足すると脳の血管が緊張
しやすく、痛みに敏感になる。


一方、頭痛が起きた場合は、痛む個所や時間、程度などを日々記録する
「頭痛ダイアリー」が推奨されている。
日本頭痛学会の坂井文彦理事長(埼玉精神神経センター)は「頭痛の情報は
自覚的で医師に正しく伝えるのが難しい。頭痛ダイアリーは患者の状態を
医師と共有するのに有用で、問診と組み合わせれば的確な服薬指導に役立つ」
と話す。
頭痛ダイアリーの様式は同学会ホームページから入手できる。




(福永方人)



http://mainichi.jp/select/science/news/20101112ddm013100018000c.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[軽視できない女性の片頭痛、子供の乳児疝痛リスクも上昇 米研究]

(あなたの健康百科  2012年2月28日)


一般に、男性よりも女性で頻発するとされる片頭痛。
遺伝傾向が強く、家族歴(近親者がその病気にかかったことがある)を持つ
人が8~9割にも上るとの研究報告もある。

米国神経学会は公式サイトで、女性の片頭痛に関する2つの研究報告について
紹介。
片頭痛を持つ母親から生まれた子供では乳児疝痛(※)発症リスクの上昇が
認められ、片頭痛の女性ではうつ病発症リスクの増加が確認されたという。

いずれも、第64回米国神経学会(4月21~28日、ニューオーリンズ)で
詳細が発表される予定だ。



<乳児疝痛リスクが2.5倍>
米カリフォルニア大学頭痛センターのAmy Gelfand氏らによると、健康な
新生児がミルクなどを飲んだ後に激しく泣くのは、摂取物による胃腸障害が
原因と考えられてきたが、50年以上にわたる数々の研究では関連が確認されて
いないという。

そこで、同氏らは、乳児疝痛がピークを迎えるとされる生後2カ月の定期
健診時に、初産の女性154人を対象に面接を実施し、母親の片頭痛の既往と
子供の乳児疝痛の関係を検討した。

その結果、乳児疝痛の発症率は、片頭痛の既往がない女性の子供では11%
だった一方、片頭痛の既往がある女性の子供では29%と、約2.5倍高いことが
分かったという。

成人の片頭痛患者は子供の頃に嘔吐や目まいに悩まされた経験を持つ人が
多いというが、今回の研究結果からGelfand氏らは、乳児疝痛がこうした
小児周期性症候群の初期症状ではないかと推測している。



<本人のうつ病リスクは40%増加>
一方、米ブリガムアンドウイメンズ病院のTobias Kurth氏らは、うつ病が
認められない女性3万6,154人を
  (1)前兆のある片頭痛
  (2)前兆のない片頭痛
  (3)過去に片頭痛あり(1年以内を除く)
  (4)片頭痛がない
の4群に分類し、片頭痛とうつ病発症との関連を検討した。
(1)~(3)の該当者は6,456人(18%)だった。

平均で14年間追跡した結果、3,971人(11%)でうつ病の発症が認められた。
片頭痛のない人と比べ、片頭痛経験者ではうつ病発症率が約40%高かったと
いう。
なお、前兆の有無による差は確認されなかった。

Kurth氏らは「片頭痛とうつ病発症の関連を検討した中でも最大規模の研究の
1つ」とし、今回の結果が、うつ病の発症リスクや予防について医師が片頭痛
患者と話すきっかけになってほしいと訴えている。



<※乳児疝痛>
生後3カ月頃までの子供が夕方に激しく泣き出し、あやしても泣きやまない
ことが数日間続く症状。
原因は、発作性の腹痛と心身症の両面が考えてられているが、きちんと解明
されていない。
「乳児コリック」「3カ月コリック」「夕暮れ泣き」とも呼ばれる。





http://kenko100.jp/news/2012/02/28/01

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[こんなにも面白い医学の世界 第27回 美容院卒中症候群]

(レジデントノート  2016年12月号掲載)


前回の「中華料理店症候群」に続いて今回も少し変わった名前の疾患をご紹介
します。

理容室ではシャンプーのとき顔面を下にした状態になりますが、美容院では
仰向けになりますよね。
この仰向けで首を反らす姿勢は意外と危険だというお話です。


1993年にアメリカ内科学会雑誌に,仰向けでシャンプーを受けている人が、めまい、吐き気、手足のしびれや頭痛などの症状を起こす症例が報告され、
美容院卒中症候群(Beauty parlor stroke syndrome)と名付けられました。

原因は頸部過伸展位による椎骨動脈の狭窄、閉塞による椎骨脳底動脈領域の
循環不全があげられ、これに続発した脳虚血の症状であると説明されて
います。
椎骨動脈は左右に2本あるため、どちらか一方が完全閉塞しても全く症状が
現れないことが多いのですが、もともと左右のどちらか一方が発達している
のが普通で、よく発達している方が閉塞すると症状が現れやすいといわれて
います。


ただ、これについては疑問を呈する意見もあります。
2002年に過去に美容院でシャンプーのときにめまいなどの脳卒中症候群の
症状があった25人の被験者を、美容院と同じ頸部過伸展位で脳血流を測定した
ところ、脳血流の低下は認めなかったそうで、椎骨脳底動脈領域の循環不全を
直接証明することはできていません。


実は、この椎骨脳底動脈領域の虚血に関しては、他にもいろいろな姿勢や
活動で起きることが報告されています。

有名なものにStendhal syndromeがありますが、これはイタリアの
フィレンツェの壁画や天井画を見た観光客に至福感とともにめまい、失神が
起きるという疾患で、以前は美しいものを見たための精神的反応と信じられて
いましたが、絵画を鑑賞するために長時間首を反らせることによる同じ
メカニズムが推測されます。

他にも、ヨガや術中のポジショニングによって脳梗塞が起きた例も報告されて
おり、この姿勢の危険性を念頭においておく必要はありそうです。


私が以前に当直で働いていた病院はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの
近くにあり、ジェットコースターなど激しい乗り物に乗った後にめまいや
吐き気を訴える患者さんが多く来ました。
全例にMRIを撮るかは議論の余地がありますが、頸部の過伸展や回旋後の
脳血管障害を疑えば、詳細な病歴聴取と頭部MRI/MRA検査を行うべきかも
しれませんね。
疾患のなかにはいろいろ面白いニックネームがついたものがありますが、
知っていなければそれを疑うこともできません。


https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115780.html


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[スタンダール・シンドローム]

(Wikipedia)


スタンダール・シンドローム(The Stendhal Syndrome)は、フランスの
作家スタンダールが、1817年に初めてイタリアへ旅行した時に、
フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂の内部のジオット等のフレスコ画を
見上げていた時に、突然眩暈と動揺に襲われしばらく呆然としてしまったと
いうことから、1989年、イタリアの心理学者グラツィエラ・マゲリーニが
同様の症状を呈した外国人観光客の例を数多く挙げてこのように命名した
もの。


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