[口内細菌がつくる脂質が動脈硬化の原因に?]
(あなたの健康百科 2018年01月12日)
肉やバターなどの食品に含まれる脂質が動脈硬化の原因となることはよく
知られているが、口内細菌から生成される脂質もまた動脈硬化を引き起こす
可能性があると、米コネチカット大学の研究者らがJ Lipid Res(2017; 58:
1999-2007)で報告した。
この研究が進めば、歯周病と心臓病との関連が解明される可能性がある。
<患者のアテロームから細菌由来の脂質を発見>
動脈硬化にはいくつかの種類があるが、その多くは動脈の内側にアテローム
(脂肪を含む細胞などが溜まった柔らかなこぶ)ができる。
研究グループは、頸動脈内膜剥離術を行った動脈硬化症患者から採取した
アテロームを分析し、バクテロイデス門というグループに分類される細菌に
由来する脂質を発見した。
この細菌は特異な脂肪酸を生成するという。
近年、アテローム動脈硬化症の原因として免疫細胞と炎症の重要性が注目
されている。
研究者らは今回、バクテロイデス門の細菌由来の脂質の解析結果を踏まえ、
仮説を立てた。
「アテローム動脈硬化症の形成過程では、血管の壁に沈着した脂質を
免疫細胞が異物と見なして取り除こうとするため、血管壁で炎症が起きる。
一方、バクテロイデス門の細菌由来の脂質については、免疫細胞が細菌の
侵入と誤認してしまい、血管の壁では二重に炎症が起きることとなる」
バクテロイデス門の細菌は通常、口や胃腸の中に存在し、条件がそろえば
歯肉炎などを引き起こすが、この細菌自体が血管内に侵入することはない。
しかし、バクテロイデス門の細菌が生成する脂質は容易に細胞壁を通過し
血流に入っていく。
同氏らは今後の検討課題として、細菌由来の脂質が蓄積している部位を正確に
特定する必要性を挙げている。
「アテロームの中には細菌由来の脂質が蓄積しているが、正常な動脈の壁には
蓄積していないことが確認できれば、細菌由来の脂質はアテロームの形成と
関連しているという確証が得られる」としている。
http://kenko100.jp/articles/180112004475/#gsc.tab=0