僕の部屋に、大越刑事から電話が入った。
その前に、もう一度、例の金田親子がいると思われるアパートへ向かった。車の中で、録音を聞いた。間違いなく、徳野茂美の声であった。
「おそらく、真奈美か徳野から、金田親子のいるアパートへ電話が入ると思う。必ず、動きがあると思う。別の刑事が張り込んでいるから、逃げても無駄だ・・・」と、大越刑事が言う。
思った通り、アパートのドアが開いて、男と女が出てきたという。
タクシーを呼んで、マニラ市内のほうへ向かっているというのだ。
それを、今、追尾しているという。
「分かった。見逃すな・・・」と、大越刑事。
「やはり、動きがありましたね・・・どこに行くのでしょうか?真奈美の家に行くことはないと思いますが」
と、僕が聞くと「はい、関係者には、全て刑事がついていますから、大丈夫です。どこに行くのかは分かりませんが、とにかく、そのタクシーを探しましょう・・・」
マニラ市内へ向かっていたタクシーは、マニラ市内には入らなくて、ケソン市のほうへ向かっている。
僕たちの車は、ケソン市に入る手前で、そのタクシーを見つけた。
2台の車が、タクシーを追う。タクシーは、どこへ向かうのであろうか?
●丁度、その時分、日本でも、おかしなことが起こっていた。新藤が、テレビのニュースを見ていた時のことである。
圏央道のあきる野市内で、車の車両火災が起き、その映像が流れていたのだ。
車の後部が映像で、流されていたのだが、はっきりと、スカイラインGTRと確認できた。
運転していた人は、身元確認できていないということだ。残念ながら即死だということであった。
新藤は、何かを感じたらしく、管轄外であるが、多摩西部署に聞いてみることにしたようだ。
丁度、出口刑事が夜勤ということで署内にいた。
「出口さん・・・調べてほしいことがあります。今日の、圏央道でスカイラインの車両火災があったのですが、運転していた人を教えてほしいのです。まさかとは?思いますが・・・例の事件に関係が・・・」
「分かりました。関係ないといいのですが、早速、調べて連絡します。事務所でいいですか?」
「はい、お願いします。それと、新開刑事から何か連絡はありますか?雪田社長からは、マニラに着いた日だけ電話があっただけですが・・・」
「はい、昨日、連絡がありましたよ。何でも、意外な展開になったようです。私も、詳しいことは分かりませんが、予期していないことだというのです。早く、知りたいと思っていますが・・・?」
「何やら、面白いことになっているのかもしれませんね。後、4日で戻る予定ですが、解決の糸口が見つかったらいいですね・・・」
と、新藤と、出口刑事の会話であった。
それから、15分して、出口刑事から連絡があった。
「新藤さん・・・運転していた人は、車の輸出業者の人でした。海野幸秀といいます。年齢は、56才。東京都立川市在住です。・・・管轄の刑事が話してくれました」
「輸出業者・・・ですか?匂いませんか? 偶然にしても・・・」
「もう少し、調べてみます・・・何か、関係があるかもしれません・・・」
出口刑事は、そう言って電話を切った。
後で、分かるのであるが、この海野という男は、御手洗の取引先の業者であり、御手洗の指示で、スカイラインGTRを集めていたのだ。しかし、御手洗が死んだ後も、車を探しているとは考えにくい。
何か、他のルートからの依頼であろうか。
翌日、事故の原因が分かった。科捜研が調べていたのだ。
思ったとおり、一連の事件と同じ細工による発火によっての爆発事故だと断定されたのだ。
出口刑事は、管轄の秋川南署に行き、ことの詳細を調べてみることになった。
この事件も、金田の仕業ではないのか・・・しかし、金田は、フィリピンにいる。
フィリピンにいる金田は、東京の車に細工することは不可能なのであった。
と、いうことは、金田には共犯がいることになる。その共犯は、日本にいるのだ。
御手洗、倉重、浅田、そして、海野・・・海野という男の過去を調べてみると、何と、御手洗が、フィリピンにいた時に、同じ会社ではないが、一緒に仕事をしていた仲間なのであった。
誰が、海野を殺害したのであろうか?
●この件については、後に、出口刑事から、新開刑事へ連絡が入ることとなる。
一方、フィリピンでは、金田親子が乗っているとみられるタクシーが、ケソン市の一軒の家の前で停まった。
その場所を見た僕たちは、驚きの声をあげた。
何と、ビビアンの家なのだ。タクシーから、二人が降りる、そして、ビビアンの家に入った。
薄暗い道の上なので、顔を確実に確認してはいないが、女のほうは間違いなく、井上八千代であった。
男のほうは、女の後ろに隠れているので、この距離からでは確認できない。
この男が、金田純一郎なのであろうか?
僕たちは、思案した。ここで、踏み込むことは簡単だ。大越刑事が「とにかく行ってみましょう。ここにいても何にもなりません。会って、確認すべきです・・・」その一言で、ビビアンの家のドアを叩いた。
「はい、誰?」と、ビビアンの声。
大越刑事ではなく他の刑事が、何やら、話している。
すると、ドアが開き、ビビアンが顔を出した。
どうやら、近所の者だが・・・ということを話したようだ。
ビビアンは、大越刑事の顔を見るなり、とっさにドアを閉めようとしたが、強引にドアを開けた。
そして、なだれ込むように、僕たちは、部屋の中に入ったのだ。
そこには、井上八千代と知らない日本人の男がいた。どう見ても、その男は、写真の金田純一郎ではない。
何故だ?純一郎ではないということは、彼は・・・どこにいるのだ?