この金田親子がいるのではないかと? アパートは、別の刑事が見張ることになった。

車は、30分ほどして、ホテルに着いた。

真奈美は、徳野の部屋に入ったきり、一歩も外へ出ていない。間違いなく、この部屋の中にいる。

部屋の前に、大越刑事と他の2人の刑事がいた。

僕たちは、僕の部屋で待つことにした。

ドアを叩く。中から、徳野の声がした。

「誰ですか?」

「マニラ警察です・・・ちょっと、ドアを開けて下さい・・・」

「警察?・・・何でしょうか?・・・」

「市内で事件がありまして・・・その、調査に協力してもらいたいのです・・・開けて下さい」

ドアは、ゆっくりと開いた。そして、ドアを半分開けたまま、廊下に出てきた。

「事件ですか?何か、私に・・・」と、徳野は尋ねた。

「すいません・・・大山さんですよね。市内で起きた事件で、犯人がこのホテルに隠れこんだという情報があります。それと、日本人の女だという目撃者もいたので、日本人の方に協力してもらっています。何か、変わったことはありませんか?いえ、あなたを疑っているということではありません。年からしても、目撃情報とは違っていますから・・・。とにかく、一度、部屋の中を拝見させてもらえませんか?捜査に協力してもらいたい。皆さんにお願いしていることです」と、大越刑事は、ゆっくりと静かに尋ねた。

「はい・・・それは、かまいません・・・ただ・・・」と、言葉が途切れた。

「ただ・・・何でしょうか?何か都合の悪いことでも・・・」

「いえ、友人が来ていますので・・・ちょっと、待って下さい・・・」と、部屋の中に戻った。

「はい、入って下さい。何も変わったことはないですが・・・」

大越刑事と2人の刑事は、部屋の中に入った。

ソファーには、真奈美と思われる女が座っていた。

「日本人の方ですか?」と、真奈美に尋ねた。

「はい・・・」

「失礼ですが・・・パスポートはお持ちですか?大山さんも・・・捜査の一環ですから・・・」と、いきなり尋ねた。しばらく、二人は、困ったような顔をして・・・

「・・・私は、ベニーノ・真奈美といいます。日本人ですが、マニラに住んでいて、国籍もフィリピンです」

「真奈美さんですか・・・お住まいは?」

「マカティの、ベニーノビルの最上階ですが・・・調べてもらえば、すぐに分かります・・・」

刑事は、メモをする素振りをした。

「大山さんは?大山さんも、フィリピン在住ですか?」

「・・・いえ・・・あのぅ・・・偽名です・・・本名は、徳野茂美といいます。いつも、宿泊する時は、この名前なのです。すいません・・・」と、一応、申し訳なさそうに答えた。

「そうですか・・・大山という名前で、ホテルに登録してありましたから・・・いえ・・・偽名でもいいのですが、念のため、パスポートを見せて下さい」

徳野は、バスポートを大越刑事に提示した。

2時間前は、どこにいましたか?」

「二人とも、この部屋にいました。どこにも行っていません」と、徳野は答える。

「それで、この部屋は、徳野さんが泊まっているわけですが、真奈美さんは何時に来られましたか?」

「・・・3時間ぐらい前だと思います・・・」と、徳野の顔を、チラリと見た。

「真奈美さんは、3時間前に来られました。間違いはありません・・・」

「嘘を言ってはいけませんよ・・・ホテルのフロントの人間が、2時間前に来るのを見ているのですよ。本当のことを言ってくれないと、余計な嫌疑が・・・」

「すいません・・・2時間前でした・・・」と、真奈美は、下を向いた。

「それならば・・・2時間以上前には、どこにいましたか?」と、尋ねると、徳野が、逆に聞いてきた。

「何の事件ですか?何か、私たちに関係があるのですか。どうも、疑われているような・・・」

「麻薬の密売です・・・それと、疑われるようなことをしているではないですか?偽名といい、時間も誤魔化しているし・・・最初から、本当のことを話してくれたなら、何の問題もなかったのですよ・・・」

大越刑事の声が大きくなっていた。

「・・・それは、そうですけど・・・ひどいじゃないですか?何もしていないのに・・・」

「何もないなら、最初から本当のことを話して下さい。そうじゃないと、署まで来てもらうことになります。よく、考えてから言って下さい。嘘をつくと、また、嘘をつかないといけなくなります。疑っているわけではありませんが・・・信用できなくなります。それとも、聞かれては困ることでもあるのですか?そうでなければ、本当のことを話してもらえませんか?調べれば何でもわかりますよ・・・」

「それはそうですが・・・・・」と、徳野は、静かになった。

「で、真奈美さん・・・その前は、どこにいたのですか?」

「友人の家です。マニラ空港の傍の・・・」

「失礼ですが・・・何という名前の友人ですか?」

「・・・私の、親戚です・・・日本から観光旅行に来ています。井上といいます。私の借りているアパートに住んでいます。ホテルよりも、お金がかからないし、前も、何度か来ています。そこに、いました・・・」

「そうですか・・・念のため、アパートの住所を・・・」と、言うと。アパートの住所を言った。

それを、別の刑事がメモしている。そのアパートの住所は、すでに分かっていたのであるが、間違いなく、同じ住所であった。

「協力、感謝します。で、徳野さんは、いつ、日本に帰られますか?」

「明日の予定です・・・」

「協力ありがとう・・・・」

と、大越刑事は、部屋を出た。勿論、その間のやり取りは、録音されている。