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 「笑顔になるための246のことば」

  悲しみを乗り越える時に・・・

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日本と違って、セブ市内を抜けると、完全に暗闇の道になっていた。多分、行く手の右には、昼間なら広大な海が見えるのであろう。さらに・・・真っ暗な道を走る。

皆、無言である。が、10分も走ったところで、岩崎弁護士は、眠ってしまったようだ。



大きないびきをかいている。



こんな時に、眠ることができる神経の太さがないと、弁護士という職業にはなれないのではないかと思った。

30分も走ったであろうか・・・

車の中の無線から、金田純一郎と思われる男が外出したという報告があり、刑事が尾行しているという。




金田純一郎だけが、ホテルを出たという。

このホテルには、裏口があるが、従業員専用ということで、一般客が出入りすることは出来ない。



出入りするためには、フロントの奥の事務所からでないと無理だという。

客は、フロントの前を通らないと外出が出来ない構造になっていた。

非常口もあるが、一箇所しかない。そこにも、刑事が張り込んでいた。

僕たちの乗った車は、スピードを上げた。まるで、高速道路のようだ。

信号も何もない暗い道だ・・・・ただ、ひたすら走る・・・

岩崎弁護士は・・・ひたすら・・・眠る・・・いびきの音が・・・リズミカルなのを笑ってしまった。

新しい情報がもたらされた。

金田純一郎は、レンタカーに乗り、ホテルを出てセブ市方面へ向かっているという。

とすると、僕たちの車とすれ違う可能性が出てきた。

僕たちの車は、ホテルまで10分のところにいたのだ。

「大越さん・・・白い、カローラでしたよね?」と、僕が聞くと。

「はい、白いセダンです。しかし、対向から来ても、ヘッドライトしか分かりません。すれ違った瞬間に分かると思います。もし、すれ違ったならUターンして追いかけますか?」

「そうですね・・・ダナオ署の車も尾行しているから、逃がすことはないですよね?」

「えぇ・・・日本人には負けませんよ・・・私たちには土地勘がありますから・・・」と、運転している刑事が言ったようであった。

すると、新しい連絡が入った。

金田純一郎の乗っている車を見失ったということである。

何でも海岸線の道をそれて、海のほうへ向かったのであるが、その林の中で見失ったという。

確かに、暗闇であるが、車のライトを見ていたなら見失うことはないと思う。

僕たちの車ともすれ違っていない。ということは・・・どこに行ってしまったのであろうか?

ダナオ署の刑事たちは、必死で探しているという。10分が経過した。

僕たちの車は、ホテルに着いてしまった。

純一郎は、どこに行ってしまったのか?

大越刑事からの依頼で、海岸線の道沿いには検問がしかれた。

ホテルに着くと、ホテルのはからいで部屋を準備してくれることになった。

それにしても、金田純一郎は、どこに行ってしまったのだろうか?

ダナオ署の車が尾行していることに気づかれてしまったのだろうか?






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「なぁ・・・雪ちゃん・・・もう無理だよ・・・交通防犯ビデオにも写っていないし・・・どこを探したらいいんだ?・・・」と、岩崎弁護士が、俺は疲れたよと、言う。

「・・・諦めません・・・必ず、見つけます・・・大越さん、防犯ビデオの調査は、全て終わっているのでしょうか?」

「いえ・・・まだです。島の北東側はまだです・・・南側は、全て調査しましたが、写っていませんでした。北東側に期待するしか・・・」と、大越刑事。

「もし・・・写っていなかったなら・・・手立てはないということですか?」と、岩崎弁護士。

「はい・・・そうなります・・・しかし、必ず見つかると信じています。防犯ビデオ以外でも口コミがあります。セブ島にある全てのホテルや、レストランに入ったなら通報があると思います。待つしかないです・・・」

外は暗闇になっていた。警察署の中からはセブの市内が見渡せる。



暖かな色のライトが街を覆っていた。



この島のどこかにいる? 金田純一郎とフランコは、山根かおるを狙っている。

夜の10時になろうとしていた・・・

刑事部屋に一本の電話が鳴った。

大越刑事が呼ばれた。

何やら、話し込んでいる。しばらく話した後に、僕たちのところにやってきた。

「雪田さん・・・山根かおるの足取りが分かりました。セブの北東側にある、ダナオという町のホテルに宿泊しています。ホテルからの通報です。それと、気がかりなことがあります。そのホテルには、日本人とフィリピン人の二人連れが同じ部屋に宿泊しているというのです。名前を確認しましたが、金田という名前ではなく、金井という名前です・・・おそらく、金田ではないかと?・・・それと、レンタカーのナンバーも一致しました。間違いないとは思いますが・・・」

「そうですか・・・で、ここからだとどれぐらい時間がかかりますか?」

「車で・・・一時間はかかると思いますが・・・行ってみますか?」

「はい、すぐにでも・・・岩ちゃんも行くかい?・・・」と、岩崎弁護士に尋ねた。

「一時間・・・まぁ・・・仕方ないか・・・行くよ・・・ここにいても仕方ないし・・・まだ、ホテルもとってないし・・・俺一人じゃ・・・・何も出来ない・・・」と、同行するという。

ダナオ警察は、数人の刑事を張り込ませるということであり、動きがあったなら、すぐに連絡をしてくれるという手はずになっていた。

僕たちは、海岸線の道をダナオの町へ車を走らせた。








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大越刑事は、急遽、セブ島に向かうことになった。

「雪ちゃん・・・真奈美の取り調べは俺がやる・・・セブ島へ大越刑事と向かってくれないか?」と、新開刑事。

「一緒に行かないのですか?」

「もしかしたら・・・純一郎たちは、マニラに戻ってくるかもしれないから残るよ・・・それと、茂美と真奈美の取り調べもある。とにかく、雪ちゃんは向かってほしい・・・早くしないと、殺人が・・・」

「分かりました・・・大越刑事に同行します・・・」と、席を立とうとすると・・・岩崎弁護士が・・・

「俺も行く・・・いいか?」と、言うのだ。

僕は「茂美さんは・・・いいのですか?傍にいたほうが・・・」

「いや・・・どうせ・・・夜に、ゆっくりと・・・セブ島か・・・美しいらしいなぁ・・・」

と、相変わらずだ。どうせ、フィリピンに来たのであるから、観光気分になっていると思った。

特別、迷惑でもないし、岩崎弁護士も同行するという変な形になっていた。

■ 六章 追跡 

僕たちは、大越刑事とセブ島へ向かった。

セブ空港の傍の、山根かおるの店の前に着いた。

シャッターが降りて、中の様子は確認できない。セブ中央警察の刑事からも相変わらず所在は確認できないと報告をうけた。

セブ空港から、飛行機に乗ったということもないという。

必ず、この島のどこかにいると思われる。

また、車が爆発したという報告もなかった。

山根かおるの友人という女性にも尋ねたのだが、何も知らないという。

その友人から、山根の過去のことが少し分かった。

20年前に、セブ島に移り住み、土産物店を出したということだ。

空港の傍の出店には多額の資金が必要になるのだが、かなりの資金があったという。



自宅も、店の上に構えたということであった。

おそらく、資金源は、御手洗晋からなのであろう。

セブ中央警察の刑事から、純一郎が空港の傍でレンタカーを借りたという情報が入った。



トヨタのカローラセダンであった。

レンタカー店の店員に尋ねると、二人の男が借りたということで、二人の写真を確認してもらうと、間違いないということであった。

セブ島、全島に、カローラが手配された。

一方、山根かおるの乗っているであろうと思われる車のナンバーも特定された。

市内にある交通防犯ビデオを、しらみつぶしに調べてみることになった。


ただ、やみくもに車で走っていても時間の無駄である。

セブ中央警察へ、僕たちは向かうことになった。

岩崎弁護士は、車の中から、外の景色をカメラに収めている。

仕事で来ているのに・・・何とも悠長な人である。




茂美の弁護士としてフィリピンに来たのであるが、完全に観光旅行気分だ・・・



岩崎弁護士という人は、そんな人なのである。長い付き合いだから・・・僕には分かる・・・

とにかく、二人を探すしか手はないのだ。

交通防犯ビデオの解析が進む・・・

一方、マニラ署では、真奈美の取調べが始まっていた。

取り調べ担当は、新開刑事である。

「真奈美さん・・・あなたも関係していたのですね?」と、新開刑事がゆっくりと口を開いた。

「はい・・・弟のことですから・・・小さいころから、弟の栄一と一緒に苦労してきました。栄一は、私にとっての宝です。早くに両親を無くしたので、私が母親代わりだったのです。その栄一が殺されたということは、どれほど悲しいことなのか分かりますか?私は、八千代さんから、栄一殺しの犯人を聞きました。何としても栄一を殺した犯人を見つけて殺したいと思ったのです・・・」

「あなたには・・・地位や名誉もある。そのあなたが・・・何故?・・・」

「理解できないかもしれませんね・・・私にとっては・・・子供と同じなのです。小さいころ、私がいじめられている時に、必ず、守ってくれました。親のいない子供は、いじめられる時代に育ったのです。二人して、何度、死のうかと思ったこともあります。私たちの親は、事業の失敗で自殺しました。その後、引き取る親戚もないままに、孤児院へ入ったのです。そんな二人の堅い絆が分かりますか?石を投げられたり・・・水をかけられたり・・・通っていた学校では、言葉にできないほどのいじめを毎日受けていました。私にとっての栄一は、自分の子供であり、分身なのです。その栄一が殺されたということは、私も殺されたということと同じなのです・・・」

「・・・それは、殺人とは関係ない・・・確かに、真奈美さんにとっての栄一さんは宝物だったかもしれない・・・しかし、それだからと言って殺人を認めることにはならない。人には法律という元で生きている。あなたのような考えだとしたら、この世の中は無法地帯になる。気持ちは分かるがね・・・」

「・・・他人が、どのように思ってもいいのです。警察も何もしてくれない・・・八千代さんも茂美さんも同じ考えです。純一郎も・・・和義も・・・そして、フランコも・・・私たちだけでいいのです。同じ、辛情で結ばれているだけで・・・私は、どうなってもいい。できたなら・・・栄一のところに行きたい・・・栄一の死後、私の人生は、どうでもよくなったのです・・・私の人生は・・・終ったと・・・思ったのです・・・」

「それほどまでに・・・栄一さんのことを・・・」

「二人だけの姉と弟です。他人には理解できないと思います・・・・」と、新開刑事の目を見た。

栄一と真奈美の二人には、他人が推測する以上の深い絆があったのであろう。

幼くして親を自殺で失い、孤児として生きてきた。そして、お互いに社会的に認められるようになった時に、弟の栄一が殺害された・・・・

一方、セブ島での調査は、何の進展もないままに夜になろうとしていた。







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「殺された、アンジェラスが倉重に会って商談したのです。アンジェラスという男は、御手洗と同じように金のためなら何でもする男でした。この業界は広いようで狭いのです。運よく、アンジェラスは、過去に倉重との知らない秘密の取引があったのです。私と純一郎さんは、それを利用しようと思ったのです。普通は、純一郎さんが表に出ることはありません。アンジェラスが表向きの社長という形でした。外人相手の場合には、外人のほうが便利なことも多いのです。浅田も倉重も、大きな利益のためなら、簡単に誘いに乗ってきました。御手洗も同じです。金に目がくらんだ獣たちは簡単でした・・・」

「それで・・・スカイラインGTRを高値で買うという条件で、高速道路を走らせたということですね?事前に、仕入れた車の置き場所を確認しておいて、爆発させるための細工をした・・・直接の細工をしたのは・・・純一郎一人ですか?それとも・・・和義くん・・・あるいは・・・フランコ・・・?」

「純一郎さんです。彼が一人で車に細工したのです。それと、フランコは、ただ、同情していただけだと思います。純一郎さんや、和義を兄のように慕っていました。血はつながっていませんが、何かを感じていたと思います・・小さいころに、栄一さんに助けられたことを・・・」

徳野茂美は、僕の問いかけに素直に答えていた。

「そうでしたか・・・それと・・・先日、殺害された、海野幸秀について聞きたいのです。何故、御手洗が死んだ後にも、スカイラインGTRを仕入れていたのですか?御手洗が死んだなら、取引はなくなったと思うのですが?それも・・・茂美さんの計画ですか?」

「はい、海野は、御手洗たちと同時に殺害しようと思っていましたが、急にフィリピンへ観光旅行に行ってしまったのです。仕方なく、別の日に殺害しようと・・・それと、御手洗が死んで困るのは海野です。車の仕入れができないのです・・・だから、御手洗の愛人であった私が、引き続き仕入れるように指示したのです。海野も、金のためなら何でもする男です。私の一言で、仕入れることになったのです。御手洗たちが殺されたことは、警察が発表していないので、何の疑いもなく・・・」

確かに、警察としての発表はしていない。ただの、車の事故として発表されただけであった。

そのころ、フィリピンにいた海野にとっては、茂美が伝えた御手洗の死しか知らなかったのである。

「茂美さん・・・あなたは恐ろしい人だ。そんな怨念が長い間続いているということは・・・僕には信じられない。あなたのような人が、何故、こんなことをするのかが・・・僕は、あなたを信用していた・・・だから、とても悲しい。もっと、考えるべきだったと思う。本当に残念でなりません・・・」

僕の言葉で、徳野茂美は、机に伏せて泣いた。

徳野茂美の取調べは、午後にも行われることになった。

続いて、ベニーノ・真奈美の取調べになる。

相変わらず、山根かおるの所在は不明であったが、マニラ署の調べで、山根かおるの家は発見することができた。

マニラではなく、セブ島のセブ空港の傍で、日本人観光客相手の土産物店を経営しているという。

セブ市というところは、フィリピンでは、ダバオ市についで、3番目の大きな市である。

日本人の観光客も多く、風光明媚な美しい街であった。

セブ中央警察の刑事が、山根かおるの店に行ったのであるが。店は、閉じられていて、シャッターには、3日間休むという張り紙が貼ってあったらしい。

2階の自宅にもいないようであった。

近所の人に尋ねると、いつも使っている車がないという。

どうやら、車で出かけているらしいのだ。

それよりも、セブ空港で、御手洗純一郎と、フランコの姿が、防犯ビデオに写っていることも分かった。

間違いなく、二人は、山根かおるを追って、セブ市にいるのだ。

そして、殺害するチャンスを狙っている。狙っているというよりも、実行しているのかもしれない。








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「なるほど・・・そういう関係だったのですね。しかし、御手洗とは縁が切れなかった?・・・」


「ええ・・・生活のためでした。どんなに嫌な男でも、金を持ってきてくれるのですから、別れるのは尚早だと思っていたのです。それが、不幸の始まりだったのです・・・」


「そして・・・栄一さんを殺した男だということが分かったと・・・そういうことですね・・・」


「はい、丁度、八千代さんが、候燐長と出会ったのも、そのころでした。私は、それを聞いてから、御手洗に対しての殺意が日毎に大きくなっていく感覚に囚われ続けたのです。御手洗が栄一さんを殺害しなかったならと・・・そして、私の体を我が物のように漁っている御手洗の顔を見るたびに、殺意は更に大きくなっていったのです。私の横で寝ている男は、私が心から愛した人を殺した男だと・・・私の心は葛藤しました。今、ここで殺そうか・・・・・・しかし、ここで、殺すということは、必ず、私が疑われる・・・と・・・御手洗も完全犯罪を遂行したと思っているのですから、私も同じような形で殺害しようと思ったのです。それを八千代さんに相談したのです。最初は、八千代さんは躊躇しました。しかし、私が説得したのです。八千代さんが何と言っているかは知りませんが、私の気持ちのほうが殺意ははるかに強かったのです・・・ですから、私が計画を・・・」

「・・・茂美さんが、殺害の計画を立てて、八千代さんに話したということですか?」

「はい、私です。殺害方法も、私が考えました・・・最初は、八千代さんと付き合いのある、香港の闇ルートを使おうと思っていましたが、御手洗も同じような組織と付き合いがあることが分かり、誰の力も借りないで殺害しようと決めたのです。息子たちも、その意見に賛成してくれました。しかし、女二人では無理だと言うのです。完全犯罪を実行するための計画は、純一郎さんが考えてくれました。彼は、車の知識がありますから、車の事故に見せかけて殺害しようということになったのです。それから、数日後・・・計画は決定しました。息子の和義も、電子部品の製作会社にいたことがあるので、タイマーを作ったのです・・・」

「そこまでは、八千代さんの話と同じですね。次に聞きたいことは、スカイラインGTRを仕入れることについては、純一郎が決めたことですか?」

「いえ・・・私です・・・御手洗は、利幅の大きな車しか興味を持っていませんでした。スカイラインGTRならば、輸出業者にとっては、人気もあり大きな利益になるので、簡単に誘いに乗ってくるのではないかと・・・それと、純一郎さんは、昔、日産のディーラーで整備士をしていました。日産の車についてのメカニック知識に精通していましたから、スカイラインGTRに決めたのです。別に、トヨタでもホンダでもよかったのですが・・・」


「僕は、何故? スカイラインGTRにしたのかということを、ずっと疑問に思っていたのです。あのような車は、安全性に対しては完璧なのです。それを、いとも簡単に細工するということは、よほどの知識がないと無理だと思っていたのです。それで、疑問が解けました・・・それと、倉重の居場所は、どうして分かったのですか?浅田は、前にも聞いたように、御手洗の下で動いていたから、殺害することは簡単だったでしょう?」


「倉重は・・・八千代さんが・・・八千代さんからの情報でした。倉重は、バイクの輸出をしている、ウィーというマレーシア人とも知り合いでした。運よく、そのウィーと八千代さんが取引をしていたのです。私たちは、倉重を探すのには苦労しましたが、ウィーの知り合いだということで発見できたのです。そして、群馬にいるということが分かりました。それで、八千代そんが、ウィーに、スカイラインGTRを探している商社があるということを言うと、倉重を紹介してくれたのです・・・これで、御手洗、浅田、倉重の3人が確定したのです・・・浅田は、御手洗の下で働いていましたが、御手洗を通さずに、スカイラインGTRを仕入れてくれれば大きな利益になると誘いました。誘ったのは、実は、私です・・・浅田は、私に好意を持っていましたから、簡単に返事をしてくれ、うまくいったなら、利益の20%をくれるとまで言いました。簡単な男でした・・・」

「・・・倉重に話したのは誰ですか?」








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 かあさんの裁縫箱と、とうさんのライター



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新開刑事に目配せをして、続いて、僕が尋ねた。

「茂美さん・・・悲しいですね。あなたも関係していたということが・・・僕は、最初は、あなたのことを疑っていました。でも、事件が核心に迫ると、逆に信用していたのです。あなたは、こんなことをするような人ではないと・・・僕は、僕に対して、最初に、あなたを疑ったことを恥じたのです。ビジネスの上においても、これから長い付き合いになると喜んでいたのです。どうして・・・早く、自首しなかったのかということが悔しくてなりません。早く、話していてくれたなら、連続殺人は起きなかったかもしれないのです。親として、子供の犯罪を止めることが一番大事なことではなかったのですか?和義くんたちに発覚しても、もう少し勇気を持っていたなら、こんな大きな殺人事件にはならなかったはずです。あなたには、親の資格はないと思います。八千代さんも同じです。親ならば、何としても止めて欲しかった・・・」と、茂美の目を睨みつけた。

「全て・・・私が悪いのです・・・子供たちや、八千代さんを、本気でその気にさせたのです。そして、真奈美さんも・・・30年前に、私は、栄一さんと結婚の約束をしていました。栄一さんは、フィリピンでの仕事に愛想をつかしていましたから、日本に戻って、もう一度新しい人生をやり直したいと考えていたのです。本当かどうかは、今となっては確認する術もありません。でも、私は信じていたのです。私にとっては、栄一さんが全てでした。丁度、おなかの中には、和義を授かっていました。この子が生まれたなら、栄一さんは必ず、結婚してくれると信じていました。もし、八千代さんとの離婚ができなくてもいい・・・最悪、この子と二人で暮らしていこうと決めていたのです。それが・・・栄一さんが事故で死んだということを聞いたのです。私は、何をする気も失せてしまいました。そして、生まればかりの和義を連れて、田舎に帰ったのです。それからは、苦労の連続でした。田舎に帰ると、父なし子を産んだ女として、村の人からは白い目で見られました。それでも、5年は、歯を食いしばって男相手の淫らなホステスとして頑張りました。手元に残った、少しのお金で東京に戻ったのです。そして、銀座のクラブで働くことになったのです。栄一さんがいてくれたなら・・・どんなにか幸せであったでしょう。いえ、結婚しなくともいいです。彼がいてくれるだけでいいのでした・・・」

「茂美さん・・・苦労したのですね・・・でも、殺人が許されることはありません。男に身を売って、和義くんを育ててきたことは大変だったと思います。でも・・・殺人が許されることはないのです・・・どんな理由があったとしても・・・」

「そうですよ・・・茂美さん・・・雪ちゃんの言う通りだ。それで・・・御手洗とは、どこで・・・」

と、新開刑事が尋ねた。

「銀座のクラブです。私が勤めたクラブの常連でした。店で会っているうちに、私が車に詳しいということを喜んでくれました。そして、愛人にならないかと・・・そして、車の会社の手助けをしてくれないかと・・・確かに、私は、栄一から車については色々と聞かされていましたから、普通の女の人よりも詳しかったと思います。私の過去を隠していたので、金田栄一という名前も言うことはなかったのです。御手洗も、フィリピンでのことは何も話してくれることもありませんでした。殺人を犯しているということの後ろめたさがあったのかもしれません。ですから、お互いに金田栄一という名前を知ることはなかったのです。御手洗は、金にものを言わせて、何人も愛人を作っていました。が、私は、生きていくうえに御手洗が必要だったのです。お金を貯めて、御手洗と別れて、まっとうな仕事を見つけて・・・和義と、普通の生活がしたかったのです・・・ただ、それだけなのです」

「それで、仕事の関係で、井上、いや・・・元の金田八千代と知り合ったのですね?・・・」

「はい、そうです。そして、純一郎さんとも知り合いました。これが運命だったのでしょうか。今となって、思うと、殺された栄一さんが、私に御手洗と金田さん親子を会わせてくれたと思っているのです。しばらくは、八千代さんや純一郎さんとの楽しい日々でした。お互いに、主人を事故で亡くしたという境遇が、女としての同情そして友情を与えてくれたのかもしれません。私は、八千代さんに主人は事故で死んだと言っていたのです。・・・八千代さんとは、同情・友情というよりも、辛情という言葉を使うようになりました。二人だけの言葉として・・・」

僕は、「八千代さんも使っていました。辛い人生を送ったものだけが理解できる、辛情という言葉・・・その言葉が、あなたたち二人の絆になっていったのかもしれません・・・それで、八千代さんのところで、和義くんが働くようになったというこですね?」

「はい、和義は、電子部品の会社にいましたが、根っからの車好きでした。父親の血を引いていたのかもしれません。それで、東京の車関係の貿易会社よりも、気心のしれた八千代さんの博多の会社で働くようになったのです。私としては、和義と離れて暮らすことの寂しさもありましたが、月に5回は、東京への出張があったので、その時が一番の楽しい日となっていました。それに、私が寂しいだろうということで、御手洗の相手をする日を避けて、純一郎さんの家にも呼んでくれました。和義の東京出張の時は、純一郎さんの多摩市の家に泊まっていたのです。御手洗は、嫉妬心のある男ですから、私の家に他の男が入ることを嫌っていましたから・・・」

新開刑事は、僕が話したほうがいいと小声で囁いた。僕のほうが茂美は、心を開いてくれると思ったのだろう?










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「やっぱりそうか?徳野という名前を聞いて、もしかしたならと思っていたけど、本当にそうだったのか・・・しかし、偶然というものは不思議だよな・・・雪ちゃん?・・・」

「驚きましたよ・・・岩ちゃんがいるとはね・・・しかも、茂美の弁護だよね・・・相手にとっては不足はない・・・って言うことか? しかし、お互いに嫌だよ。で、茂美の話は聞いたの?」

「ある程度はな・・・あっ、そうだ・・・もう一人殺害される予定だと言っていたが?・・・」

「茂美も話したんだな?・・・山根かおるという女だろう?今、フィリピン全土を調べているよ・・・で、これから、茂美の取調べに入るけど・・・?」と、僕が言うと。

「岩崎さんも・・・同席したらどうですか?」と、新開刑事が言った。

「通常は・・・ないが・・・まぁ・・・聞かせてもらおうか?雪ちゃんもか?」

と、尋ねるので、僕も同席させてもらうことにした。

徳野茂美と、警察の取り調べ室で顔を合わせることになった。

つい、先日までは、僕の心の中に淡い恋心を芽生えさせてくれた女なのだ。

不運としか言いようがない・・・

こんな形で対面するということは、全く、予期していないことだ。

真奈美の弁護士も、刑事部屋にやってきた。

どうやら、真奈美も全てを自白するという気持ちになっていたようだ。

実行犯ではないから、とりあえずは、参考聴取という形になると、大越刑事が言う。



確かに、直接、手は下していないから、純一郎や和義の犯行の動機の確認となる。

フィリピン国内にいるであろうと思われる、純一郎とフランコの所在は、以前として不明のままだ。

山根かおるの所在も不明だ。

マニラ署は、フィリピン全土の警察へ緊急通達を出していたのであるが、全く不明のままであった。

僕たちには、あせりの色が顔に現れていた。この時間に、もしかしたなら?・・・山根かおるが殺害されているのかもしれない。それも、車の爆発という、卑劣な手段で・・・

そして、茂美の取調べが始まった。

「大半は、和義くんから聞いています。あなたの息子が、栄一さんの子供だとは驚きました。そして、共謀して御手洗たちを殺害した・・・ということは間違いありませんね?」と、新開刑事が尋ねた。

「はい、間違いはありません。八千代さんと二人だけで実行しようと思っていたのですが、子供たちに知られてしましました。どんなに説得しても、子供たちは言うことを聞かずに、手を出してしまったのです。一番恐れていたことが現実となったのです。もう、引き返すことはできませんでした。和義と純一郎さんとは、心友なのです。異母兄弟という不思議な関係が、そうさせたのかもしれません。ただ、金田栄一が殺害されたということが発覚しなければ、何もない普通の友人だったと思います。異母兄弟ということを知らない時は、皆、幸せな日々でした。確かに、香港の闇ルートとの付き合いはありましが、本当に幸せでした。八千代さんから聞いていると思いますが、何も知らないほうが良かったのです。和義が金庫の中の箱さえ見なければ・・・」と、瞳の奥は、霧のかかった湖のように霞んでいたように見えた。

「それで、殺害方法について伺う?どうして、このような手の込んだ殺し方をしたのですか?和義くんは、純一郎に頼まれたと言っています。それに間違いはないですか?あくまでも、純一郎が主犯だと?・・・」

「はい、和義は、純一郎さんの手助けをしたのです。年も2才年下ということもあって、純一郎さんには不思議となついていたのです。ですから・・・父親を殺されたということが分かった時に、純一郎さんからの依頼を断ることは出来なかったと思います。和義は利用されたのです・・・」

「茂美さん・・・母親として和義くんを庇う気持ちは分かる・・・しかし、和義くんは、自分から殺害に協力したと言っていますよ。あなたの言うことは、母親としての気持だけです。八千代さんも同じようなことを言っていました。親なら、子供を庇う・・・当たり前のことですが、ことは殺人事件です。あなたの気持ちを聞いているのではない・・・私は、真実を知りたいだけなのです・・・そこを、しっかりと考えて下さい。あなたを信用して、必死になって動いていた雪田くんのことも考えて下さい。雪田くんは、最後の最後まで、あなたを庇っていました。あなたは、嘘をつくような人じゃないと・・・」と、新開刑事が、ゆっくりと茂美の肩に手を置いた。

「・・・すいません・・・私は、警察の捜査状況が知りたくて、雪田社長に近づきました。警察へ、爆破されてた車のことを聞きに行った時に、偶然に、探偵のようなことをしている中古車屋さんが、引き取ったらしいと聞いたのです。確か、課長の小川さんという人でした。私が、しつこく聞いたので、何の問題もないだろうということで、雪田さんのことを教えてくれたのです・・・」

あの、多摩西部署の、頑固者の小川課長だ。




女に、だらしないという噂は聞いたことがあったが、徳野茂美のような美人には弱かったのだろう・・・







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確かに、警察の落ち度はあったのもしれない。警察が、しっかりと再調査していたなら、こんな悪夢のような事件は起こっていなかったのかもしれない。

大きな司法の壁を目の前にして、何も出来ないのだろうか。

あだ討ちという言葉は、現代では死語になっている。しかし、人間の本能としては、決して死語になっているとは思えない。人は語ることはないが、被害者遺族の心の中を大きく覆うほどのしこりを残しているのだろう。

被害者遺族でないと理解することができない、大きな闇が心の中にある。

それは、司法では解決することはできない。司法というものは、決して・・・そして・・・永遠に解決することはできないと思った。

徳野和義は、知りえる限りのことを自白した。実行犯ではないが、共犯ということになる。

これから、徳野茂美の取調べが始まることになった。



その前に、昼食ということでマニラ署を出た。



新開刑事は、フィリピンの料理が好きになっていた。僕としては、驚くしかないが、人というものは不思議なものだ。つい、数日前までは、日本食が一番だと言っていた新開さんが、フィリピン料理の虜になってしまっていたのだ。僕は、仕方なく、フィリピン料理の店に付き合うしかない。それにしても、ラーメンが食べたい・・・

丁度、そのころ、徳野茂美の依頼を受けた、岩崎雄一弁護士がマニラ空港に到着していた。

これから、タクシーで、マニラ警察へ向かっていた。

僕も、新開刑事も、岩崎弁護士が、マニラ署にやって来るとは、思ってもいなかった。

昼食を終えて、マニラ署に戻ると、日本から茂美の弁護士と、真奈美の弁護士が来ているという。



お互いに別室で話しているということを聞いた。

「茂美さん。岩崎と言います。弁護士会より来ました。大方の内容は、署の警官から聞いていますが、あなたは、この殺人に関与したのですか?」と、岩崎弁護士は尋ねた。

「はい・・・もう、全てお話していいと思っております。私たちの計画は、90%実行できました。私は思い残すことはありません。後は、司法に身を委ねようと思っています。ベニーノ・真奈美さんも同じ考えです。隠すことなく、何でもお話します・・・」

90%?・・・どういうことですか?」

「・・・まだ・・・一人・・・」

「ということは・・・もう一人を殺害するということですか?」

「はい・・・もう・・・殺されているかもしれません・・・」

「何だって?誰なんですか?それと、どこで?・・・」

「フィリピンです・・・山根かおるという女です・・・」

と、聞くと、岩崎弁護士は、部屋を飛び出して、刑事部屋へ走った。

岩崎弁護士が、ドアを開けた。

そして・・・

「何なんだ・・・何で・・・ここに雪ちゃんがいるんだよ?・・・新開刑事も・・・?・・・・何だ・・・」



僕も驚いてしまった。マニラ署の刑事部屋で、岩崎弁護士と鉢合わせになったのだ。








■勝汰章の著作刊行本


 「笑顔になるための246のことば」

  悲しみを乗り越える時に・・・

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■まぐまぐランクイン ページの右 http://www.mag2.com/m/0000239491.html


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そして、10分後に、面白い結果が出たのだ。


各チームの代表に文を読んでもらった。

全てのチームに共通していることは、そんな世界には行きたくないし、どんな世界だろうとしても今は行きたくないという文なのだ。

つまり、推測することさえしたくないという気持の現れであろう。

中には、ディズニーランドならいいとか、美味しい料理がいっぱいある世界ならいいとかというものもあったが、大半は、行きたくないというものだ。

子供ながらも、死の国というものは、興味があることに違いないのだが、できるなら行きたくないという結果が出た。

「皆さんの考えは分かりました。今は行きたくないということですね、でも必ずいつかは行かないといけない。行く時は、病気で行くか、何かの事故で行くか、自然に行くかの3つしかないのです。自然というのは、もうそろそろこっちの世界に空き部屋ができたからいいですよという神様の招待です。自分勝手に行ったなら、どうなるかというと、空き部屋はないし、誰からも挨拶もしてくれないし、何年、何十年も立ったままで空き部屋が出るまで待たないといけないという世界なのです。誰も相手にしてくれない世界でずっと待つのだそうです。これは、お寺の住職になったら自然と分かることです」と言う。

お寺の住職しか死の世界は分からないという何とも不思議な話であるが、子供たちは一生懸命に聞いている。

子供ながらに面白い話ということであろうか。

「つまり、勝手に死んだりしたら、今よりも辛い世界でひとりぼっちになってしまうのですよ、これが死の世界ということです、あなたのことを愛しているお父さんやお母さんの許可なく行ったりしたら、更に辛い世界だということは分かりましたか・・・」と子供の顔を見渡しながら聞いている。

半数以上の子供たちが、大きな声で、はいと答えた。

「よい返事です。どんなに辛いことがあっても、勝手に行ってはいけない世界なのですから、よく考えて下さい。誰かを悲しませて死の世界に行くということは、自分が一番惨めで、辛い経験を必ずするということです。人は誰でも時期が来たなら必ず死にます。その時に行くことが一番幸せになれるし、あなたの愛している人も最高に嬉しいのです。死の世界というものは、死に方で決まってしまうのですよ」と諭すように話しかけている。

子供たちがどこまで理解したかは分からないが、命という大切なものを語るのではなくて、死というものは、どういうことなのかということを教えているのだろう。

大人にとっては、そんなバカなという感覚であるが、小学生ならこのような話が理解しやすいのかもしれない。

住職は「あなたの命は、あなたのものであっても、あなたのものではない。あなたのことを愛している人がいる限りは、あなただけのものではない。愛してくれている人の命と一緒なのです。あなたが、勝手に死んだりしたら、愛している人の命も奪ってしまったことになるのです。勝手に死ぬということは、そういうことなのです。」と少し強い口調で話した。

私は、これを伝えたかったのだと思った。そのために死の世界という複線を張りながら話していたのだと思った。

よくいう、命は大切なものという言葉は、耳にタコができるほど聞いている。

当たり前なのである。しかし、自殺はいけないとかと言っても、今いる状況から抜け出したいと思う子供にとっては、馬の耳に念仏なのかもしれない。

このような話のほうが、理解して納得できるかもしれないと思った。

あなたの命は、あなたのことを愛している人がいる限り、あなただけのものではない。

勝手に死ぬということは、あなたを愛している人の命も奪うものなのだ。

私も、完全に納得してしまった。

この、住職はいいことを言うではないか、裕子ちゃんのお父さんは大したものだ。酒好きで、いいかげんな人だと息子は言っていたが、どうしてどうして素晴らしい人ではないか。

さらに、住職は続けた「あなたの大事にしている、犬や猫が死んだらどう思いますか。とても悲しいでしょう。中には新しい犬や猫を買う人もいるでしょう。でも、あなたの一番好きだったものは最初のものだったはずですよね。2番目に買った同じ種類のものとは違いませんか。生き物には、完全に同じものは存在しません。あなたの替わりは、どこを探してもないのです。あなたのことを愛している人は、今のあなた、将来のあなたのことを心から愛しているのです。何度も言いますが、あなたが勝手に死ぬということは、愛してくれている人の命も勝手に奪っていることを心に留めておいて下さい。そして、どんなことでもいてです、僕に相談して下さい。僕は、いつでもお寺にいます。あなたのためにお寺にいます・・・」と言って、少し涙を流していた。

その涙が、子供たちの心に届いたようだ。何人かの子供の目も赤くなっている。

保護者の中にも、ハンカチで目頭をぬぐっている人もいる。

簡単な話だが、何か心に響くものがある。

この住職も、過去に何らかの経験をしたのかもしれない。その経験が言葉となって、溢れているように感じた。

と、保護者から大きな拍手が起こった。子供たちよりも保護者のほうが感動している。

子供に話す時は、難しいことは要らない。親として経験したりしたことを素直に伝えればいいのではないか。

人の言葉の受け売りは必要ない。親として愛しているということを素直に伝えればいいのだ。

教室の中は、大きな拍手が続いた。担任の先生も泣いている。

子供と、先生と、保護者が一体となった瞬間だと思う。

住職は、少し照れながら、娘の裕子ちゃんのところに行き、軽く肩を抱いた。

裕子ちゃんも感動したのであろう。大粒の涙を流している。自分のお父さんは素晴らしい人なんだと自覚したに違いない。

人の心をうつ言葉は、華美であることは必要ない。自分の素直な気持を伝えるだけでいい。

私も、久しぶりに心が洗われた経験をした。

人生ちょっとの、さじかげん

前編終わり









■勝汰章の小説の、かあさんの裁縫箱と、とうさんのライターが

まぐまぐ 文芸・アートのデイリーランキングにて

第3位になりました。




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