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 かあさんの裁縫箱と、とうさんのライター



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■勝汰章の著作刊行本

 「笑顔になるための246のことば」

  悲しみを乗り越える時に・・・

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■勝汰章のHP http://katsuta.yu-yake.com/




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新開刑事に目配せをして、続いて、僕が尋ねた。

「茂美さん・・・悲しいですね。あなたも関係していたということが・・・僕は、最初は、あなたのことを疑っていました。でも、事件が核心に迫ると、逆に信用していたのです。あなたは、こんなことをするような人ではないと・・・僕は、僕に対して、最初に、あなたを疑ったことを恥じたのです。ビジネスの上においても、これから長い付き合いになると喜んでいたのです。どうして・・・早く、自首しなかったのかということが悔しくてなりません。早く、話していてくれたなら、連続殺人は起きなかったかもしれないのです。親として、子供の犯罪を止めることが一番大事なことではなかったのですか?和義くんたちに発覚しても、もう少し勇気を持っていたなら、こんな大きな殺人事件にはならなかったはずです。あなたには、親の資格はないと思います。八千代さんも同じです。親ならば、何としても止めて欲しかった・・・」と、茂美の目を睨みつけた。

「全て・・・私が悪いのです・・・子供たちや、八千代さんを、本気でその気にさせたのです。そして、真奈美さんも・・・30年前に、私は、栄一さんと結婚の約束をしていました。栄一さんは、フィリピンでの仕事に愛想をつかしていましたから、日本に戻って、もう一度新しい人生をやり直したいと考えていたのです。本当かどうかは、今となっては確認する術もありません。でも、私は信じていたのです。私にとっては、栄一さんが全てでした。丁度、おなかの中には、和義を授かっていました。この子が生まれたなら、栄一さんは必ず、結婚してくれると信じていました。もし、八千代さんとの離婚ができなくてもいい・・・最悪、この子と二人で暮らしていこうと決めていたのです。それが・・・栄一さんが事故で死んだということを聞いたのです。私は、何をする気も失せてしまいました。そして、生まればかりの和義を連れて、田舎に帰ったのです。それからは、苦労の連続でした。田舎に帰ると、父なし子を産んだ女として、村の人からは白い目で見られました。それでも、5年は、歯を食いしばって男相手の淫らなホステスとして頑張りました。手元に残った、少しのお金で東京に戻ったのです。そして、銀座のクラブで働くことになったのです。栄一さんがいてくれたなら・・・どんなにか幸せであったでしょう。いえ、結婚しなくともいいです。彼がいてくれるだけでいいのでした・・・」

「茂美さん・・・苦労したのですね・・・でも、殺人が許されることはありません。男に身を売って、和義くんを育ててきたことは大変だったと思います。でも・・・殺人が許されることはないのです・・・どんな理由があったとしても・・・」

「そうですよ・・・茂美さん・・・雪ちゃんの言う通りだ。それで・・・御手洗とは、どこで・・・」

と、新開刑事が尋ねた。

「銀座のクラブです。私が勤めたクラブの常連でした。店で会っているうちに、私が車に詳しいということを喜んでくれました。そして、愛人にならないかと・・・そして、車の会社の手助けをしてくれないかと・・・確かに、私は、栄一から車については色々と聞かされていましたから、普通の女の人よりも詳しかったと思います。私の過去を隠していたので、金田栄一という名前も言うことはなかったのです。御手洗も、フィリピンでのことは何も話してくれることもありませんでした。殺人を犯しているということの後ろめたさがあったのかもしれません。ですから、お互いに金田栄一という名前を知ることはなかったのです。御手洗は、金にものを言わせて、何人も愛人を作っていました。が、私は、生きていくうえに御手洗が必要だったのです。お金を貯めて、御手洗と別れて、まっとうな仕事を見つけて・・・和義と、普通の生活がしたかったのです・・・ただ、それだけなのです」

「それで、仕事の関係で、井上、いや・・・元の金田八千代と知り合ったのですね?・・・」

「はい、そうです。そして、純一郎さんとも知り合いました。これが運命だったのでしょうか。今となって、思うと、殺された栄一さんが、私に御手洗と金田さん親子を会わせてくれたと思っているのです。しばらくは、八千代さんや純一郎さんとの楽しい日々でした。お互いに、主人を事故で亡くしたという境遇が、女としての同情そして友情を与えてくれたのかもしれません。私は、八千代さんに主人は事故で死んだと言っていたのです。・・・八千代さんとは、同情・友情というよりも、辛情という言葉を使うようになりました。二人だけの言葉として・・・」

僕は、「八千代さんも使っていました。辛い人生を送ったものだけが理解できる、辛情という言葉・・・その言葉が、あなたたち二人の絆になっていったのかもしれません・・・それで、八千代さんのところで、和義くんが働くようになったというこですね?」

「はい、和義は、電子部品の会社にいましたが、根っからの車好きでした。父親の血を引いていたのかもしれません。それで、東京の車関係の貿易会社よりも、気心のしれた八千代さんの博多の会社で働くようになったのです。私としては、和義と離れて暮らすことの寂しさもありましたが、月に5回は、東京への出張があったので、その時が一番の楽しい日となっていました。それに、私が寂しいだろうということで、御手洗の相手をする日を避けて、純一郎さんの家にも呼んでくれました。和義の東京出張の時は、純一郎さんの多摩市の家に泊まっていたのです。御手洗は、嫉妬心のある男ですから、私の家に他の男が入ることを嫌っていましたから・・・」

新開刑事は、僕が話したほうがいいと小声で囁いた。僕のほうが茂美は、心を開いてくれると思ったのだろう?