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「山根さん・・・しっかりして下さい・・・あなたしか語ることができないのです。これまでのいきさつを話して下さい。あなただけです・・・それが、あなたに残された最後の仕事だと思って下さい。僕たちは、真実を知りたいのです。20年以上前からの真実を・・・・」と、僕は優しく問いかけた。


ここからは、山根かおるの記憶の回想になる。

どこまでが本当のことなのかは、誰も分からない?・・・そして、山根かおるは、ゆっくりと話し出した。

22年前に、私は、御手洗晋の会社に入りました。そして、1年後には愛人になったのです。お金の問題もありましたが、精力的に会社運営をしている姿を好きになったのも事実です。そのころには、金田栄一さんや倉重さんも同じ会社で働いていました。事業は順調だったのですが、欲の塊の御手洗は、裏のルートで大金をつかもうと画策していたのです。御手洗の命令に逆らうことはできません。特に、倉重さんや浅田さんは金に目がくらんでいて、非合法なことでもやっていました。しかし、金田栄一さんだけは、御手洗に早く止めるようにと言っていたのです。でも、御手洗は聞く耳を持ちませんでした。それから、数ヶ月して、栄一さんは会社を辞めるということを御手洗に話したのです。御手洗は、栄一さんを止めましたが、栄一さんの気持ちは強くて・・・」と、目を伏せた。

「結局、栄一さんは辞めたのですか?」

「はい、御手洗は、しぶしぶ承諾したのです。しかし、御手洗には別の考えがあったのです。私は、その考えの内容を聞いて愕然としました。栄一さんが辞めるとなると、もしかしたなら裏の仕事・・・つまり、密貿易ですが、それが発覚するのではないかと?強欲で疑い深い御手洗にとっては、栄一さんの口から何か洩れるのではないかと思ったのです。そうなると、御手洗は、栄一さんの存在が疎ましくなってきたのです。倉重や浅田にも相談したようですが、結局、御手洗が、栄一さんを殺害しようという決定をしたのです。そのことは、3人だけの秘密にしていたようです。私は、何も聞かされていませんでした。栄一さんが辞める前の日に、御手洗が栄一さんの退社祝いのパーティーを開くというのです。その日、初めて殺害するということを聞かされました・・・」

「それで、かおるさんも同意したのですか?」と、僕は強い口調で尋ねた。

「そんなことはありません・・・私は、反対しましたが、御手洗からは、お前も賛成しないと栄一と同じことになるぞ・・・と、脅かされたのです・・・反対することはできませんでした・・・御手洗の愛人でしたが、心のどこかでは栄一さんへ好意を持っている自分がいたのです。真面目で何にでも真剣な栄一さんのことが・・・」

と、顔を手で覆って、また、泣き声になっていた。

警察船は、マニラ港の岸壁に近づいている。

一旦、山根かおるの取調べは中断して、マニラ警察署内で始めることになった。

マニラ署には、徳野茂美、ベニーノ真奈美、井上八千代、徳野の息子の和義が留置されている。

何か不思議な因縁を感じた。








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大越刑事は、マニラ湾にあるボートターミナルへ警察車両を緊急配備している。

しかし、どこに向かっているのかは分からない。

必ず、ボートターミナルに接岸するとは限らない。

岸壁の近くで、海に飛び込まれ、岸壁をよじ登られたなら完全に逃亡されてしまう。

すると、突然、漁船から一人が海に飛び込んだ・・・・

僕は、双眼鏡で見ていたので、それが誰だか分かる・・・

・・・山根かおるだ・・・山根かおるが海に飛び込んだのだ。

そして、そのまま漁船は、マニラ湾の中央部へと走っていた。

突然・・・大きな爆発音とともに、その漁船は、粉々に飛び散っていた。

何ということだ。

漁船が爆発したのだ。

僕たちは、目の前で起きたことが信じられなかった。というよりも、自爆したのだろうか?

自爆・・・自殺・・・偽装・・・自殺かもしれない?

とにかく、漁船が粉々になった海域に着いた。その前に、海上に浮いていた山根かおるを救助した。


その海域には、船の残骸が浮いていた。

そして、その中に人間が着ていただろうと思われる服も浮いていた。

しばらく、警察船は、その海域を捜索したのであるが、人の気配はない。

船の残骸と、燃料の燃えた臭いが鼻をつくだけであった。

金田純一郎と栄一の親子は、自殺したものと考えられる。

何という結末なのだ。最悪の結末となってしまった。

ただ、唯一の証人として、山根かおるの尋問が船上で始まった。

「山根かおるさんですね・・・私は、雪田、こちらは多摩西部署の新開刑事と、マニラ警察の大越刑事です。話を聞かせて下さい・・・」と、僕は真っ先に尋ねた。

「とんでもないことに・・・こんなことになるなんて・・・」と、泣き崩れていた。







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「大越さん・・・新開さん・・・予想がはずれてしまいましたが、これで、確信を持つことができましたよ。船長までが、グルだと全く予想すらできませんでした。かなり、大掛かりな闇の組織がいるということは・・・」

と、僕が言うと。

「俺たちの予想を超えていたな・・・純一郎と香港の闇組織とはかなり太いパイプで繋がっていたのかもしれん。しかし、船長まてが・・・ということは、停泊している客船から、階段でも降ろして、乗り込むことになると思う。ヨンゲオ号に横付けされたなら一巻の終わりだ。急ごう・・・まだ、漁船は見えないのか?」

「見えないようです。ヘリからの報告だと、15分ぐらいで見えるようになると言っていますが・・・」

と、大越刑事が答えた。

確かに、遠くの澄み渡った空に小さなヘリが飛んでいるのが確認できる。

おそらく、その下を漁船は走っているのだろう・・・

数分後、僕たちの乗っている警察船からも、その漁船が確認できるようになった。

白波をたてて高速で走っている。

警察船も、その白波の方向へ向きを変えた。

単なる漁船だと思っていたのだが、普通の漁船の速度ではない。

警察船の船長が、叫んだ・・・・

「エンジンが大型のハイパワーに載せかえられています。おそらく、密漁するために馬力の大きなエンジンに載せかえられています。この船よりも早い・・・」

「なんだって・・・追いつけますか?」と、大越刑事も叫んだ。

「こっちも、フルパワーですが、相手は、トン数が少ないうえに馬力が大きいので追いつくのが精一杯かもしれません。他の警察船も応援に呼んでいますが、あの漁船に追いつける船はないと思います。それにしても、何という速さなんだ・・・この船は・・・!!!」と、船長は驚いていた。


密漁船ということで、警備隊の船よりも、さらに大きな馬力のエンジンを積んでいるという噂は聞いたことがある。



日本でいうならば、北朝鮮や韓国の密漁船が、そのように改良していると、テレビのニュースで見た記憶がある。


その漁船も、密漁船と同じようにエンジンを改良していたのだ。

海上で、車のカーチェイスと同じような、船同士のチェイスになろうとしていた。

停船命令を何度も出したが、相手からは銃撃される。

残念なことに、こちらからの銃撃はできない。

もし、ヘタをして漁船に当たると、沈没してしまう恐れがあるのだ。

岩崎弁護士は、さっさと船内に入って身をかがめている。こんな時は特に早い人だ。

ヨンゲオ号が見えてきた。このままなら、ヨンゲオ号に横付けされてしまう。

すると、ヨンゲオ号が、静かに碇を上げて、動きだしたのだ。

どういうことだ、純一郎たちを待つことはないのか?


ヨンゲオ号が動き出したことによって、純一郎たちの乗っている漁船は向きを変えた。


今度は、マニラ港へ向かっている。ヨンゲオ号は、大きな白波をたててマニラ湾から遠ざかろうとしている。



もはや漁船を助ける気はないようだ。

警察船は、漁船を追って、マニラ湾の中へ入っていった。

しかし、馬力の差で追いつくことはできない。




段々と、その距離は離れていく。このままなら、どこかのボートターミナルへ接岸されてしまう。

僕たちは、かなり焦っていた。






何ということだ、また、取り逃がしてしまうのか?







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「自殺・・・ここまで逃げているのだから、自殺はないでしょう?それに、金田栄一や山根かおるもいるのだから、死ぬことはないと思いますが・・・栄一やかおるにとっては、死ぬほどのことはないと思います。ただ、純一郎は、4人も殺害しているのだから、自殺の可能性はあるかもしれません。それが心配なのです・・・」

と、僕は、不安な本心を言った。



その言葉に皆は無言で頷いた。警察船は、岸壁から海上に向かった。

一方、そのころ、ビビアンの家には刑事が入って家宅捜索をしていた。

ビビアンの旦那は、素直に捜索に従っているという。

そして、事情聴取も始まっていた。

「金田を逃がす手はずだな?」と、刑事が聞く。

「はい、その予定でした。しかし、ここには来ません・・・電話があり、船で直接に行くのです・・・」

「どこに行くのだ?」

「客船です・・・マニラ湾の・・・」

「何という客船だ?・・・」

「ヨンゲオ号・・・」

「何?・・・ヨンゲオ号か・・・間違いないか?」

「間違いありません。私は、その船に乗せるまでのエージェントです。船はヨンゲオ号です・・・」

「マニラ第一岸壁に停泊している、リンユイ号ではないのか?」

「違います。マニラ沖に停泊している、ヨンゲオ号に間違いありません。船長に連絡もしてあります。昼に出航の予定です・・・」

何ということだ、マニラ沖に停泊している、ヨンゲオ号なのだ。

第一岸壁の、大型客船のリンユイ号ではない。

しかも、ヨンゲオ号の船長も、逃亡させるための闇の組織の一員なのだ。

ヨンゲオ号は、中型の客船であり、一昨日は、マニラ第二岸壁に停泊していた。

出航は、昨日なのであったが、何でも機関の点検のために、出航を遅らせたという情報が入っていた。





おそらく、純一郎たちの身柄を確保するために、出航を遅らせたのではないだろうか?

思わぬ展開に、僕たちには驚きが沸きあがった。

ということは、その漁船は、ヨンゲオ号に向かっていることは間違いない。








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しかし、ここで待つということの、じれったさがあったのであった。

無駄に時間が過ぎている。ビビアンの家を張り込んでいる刑事からの連絡もない。

間違いなく、純一郎たちはマニラかマニラの近くにいて様子を伺っていると思う。




今度こそは、何としても取り逃がすわけにはいかない。

皆、真剣な眼差しで客船を見張っていた。

すると、大越刑事のもとに電話が入った。

ミンドロ島の警察から、一隻の漁船を日本人に売ったという男が分かったということだ。

何でも、破格な値段で買いたいということで、その男は承諾して漁船を売ったということである。




通常の中古価格よりも数倍も高い値段だ。

間違いない。金田純一郎たちだ・・・

その男の話からすると、5時間前だという。

そうすると、マニラ湾あたりに着くとすれば、1時間後だと予想できた。

僕たちの緊張はいっそう高まっていた。

さらに、その男からの話だと、3人が船に乗り、1人は、乗らなかったということである。



おさらく、その1人は、闇のルートの中国人であろうと思われた。

ミンドロ島では、その中国人の似顔絵をもとに捜索が行われているという。

3人は、間違いなくマニラへ向かっている。そして、客船に乗ろうとしているに違いない。

その連絡をもとに、空からの捜索も開始されることになった。

海上をマニラ方面へ向けて走る、一隻の漁船を探すことになった。

しかし、何十隻という船が行きかっているので、そうは簡単に見つけることは難しい。

それから、30分も経過したであろうか。大越刑事のもとに連絡が入った。

それらしき漁船を発見したということだ。空からの捜索が功を奏した。

さらに、緊張感が高くなる。

「新開さん、雪田さん・・・マニラ湾方面へ向かっている漁船が発見されました。空から停止を求めるアナウンスをしたのですが、停止命令を無視して高速で走っているということです。これから、警察船を出しますが、一緒に乗りますか? それとも、ここで待機しますか?」と、大越刑事が尋ねてきた。

「警察船に乗りましょう・・・ここで待っていても仕方ないと思います。純一郎たちも追跡されていることに気づいていますから、もしかしたなら、マニラではないところに向かうかもしれません。そうしたなら、ここにいても仕方ないと思います・・・」と、僕は答えた。

新開刑事も同じ考えだと言う。

僕たちは、急いで警察船の停泊している岸壁に向かった。

岩崎弁護士も、一人残されることが嫌だということで同行することになった。

空の警察のヘリコプターからの連絡で、停止を完全に無視してマニラ方面に向かっているという。

ヘリコプターは、漁船の上空を旋回しながら、何度も停止命令を出していたらしい。

しかし、近づくと、銃撃されたということであった。

ヘリコプターからも機関銃を発射できるのであるが、3人の身柄を殺さずに確保するという命令が出ていたので、どうしようもなく、ただ、上空から漁船の行く先を見守るしかないという。

「雪田さん・・・3人は必死で逃げているようですね。しかし、このままなら完全に包囲できます。相手は、ただの漁船ですから、こちらが何隻もの船で囲い込めば動くことはできなくなります。時間の問題でしょう・・・」

と、大越刑事が言った。

「そうならばいいのですが・・・相手も必死ですから、何が起こるか分かりません。何となく心配ですよ?・・・」

と、僕は、何か漠然とした不安を感じていた。

「雪ちゃん・・・大丈夫だよ・・・昼間だし、どこへ逃げても無理だよ。ねぇ・・・新開さん・・・」

と、岩崎弁護士が、いつものように暢気な態度だ。

「それは分からない・・・気を抜いちゃ駄目だよ・・・とにかく生きたままで確保したい。死んだなら何にもならない・・・まさか、自殺することはないと思うがね?・・・」と、新開刑事が言った。

僕は、自殺という言葉に敏感に反応していた。






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変装でもしていたならば見つけることは難しい。

さらに、金田栄一と山根かおるの顔は誰も知らないのだ。

ただ、日本人というだけであった。

「岩ちゃん・・・それ当たりかもしれないよ・・・僕たちは、ビビアンのことだけに夢中になっていたよ。そして、必ず、客船に乗るということ・・・逆に考えてみたならば、船をマークしていたほうが間違いはないよ。海上ならば、警察の船を待機しておいたほうが有利だし、昼間なら見逃すこともない。空からだって追跡できる。大越さん・・・どう、思いますか?・・・」

「・・・岩崎さんの言うことのほうが的確かもしれません。ジョセフの話で、ビビアンのことばかりになっていました。時間がないのですが、もう一度、検討してみましょう。2隻の船のうちの1隻は、マニラ第一岸壁に停泊している。そして、出航は、午後の3時。そして、マニラ沖に停泊している客船は、昼の12時に出航する。しかし、その船は乗船できない。ただ、停泊していて時間がきたなら出航する。ということは、マニラ第一岸壁の船が怪しいということになると思います。ビビアンのほうは、他の刑事たちが張り込んでいますから、私たちは第一岸壁に行ってみましょう。乗船窓口で待機していたほうがいいかもしれません・・・」

「そう思います。必ず、陸路・・・車で来るとも限らないと思います。第一岸壁の傍に船をつけて、それから客船に乗り込むことも考えられますよ。そうであるならば、完全に盲点をつかれるとこです。時間がありません。早く行ってみましょう・・・」

僕たちは、第一岸壁に向かうことになった。

たまには、岩崎弁護士もいいことを言う。僕たちの盲点を岩崎弁護士は探していたのだろうか?

「岩ちゃん・・・お手柄かもしれないよ・・・昨日のドジの汚名挽回だな・・・」と、僕が言うと。

「まぁ・・・こんな俺でも役にたつこともあるさ・・・弁護士とは冷静なんだよ・・・」

「冷静・・・ん・・・まぁ、今回は、逮捕できたらということだよ。まだ、認めないよ・・・ハハハ」

「なんだよ・・・アイデアを提供したのにな?・・・雪ちゃんは厳しいよ・・・」

「まぁ・・・結果だけだよ・・・確かに、岩ちゃんの言うことは認めるから、岸壁に向かっているんじゃないか。その点は、誉めておくけど・・・」

「まぁ、長年の弁護士経験がものを言うことを目の前で見ることになると思うけどな・・・」

と、何の根拠もないくせに、意外なほどの自信を持っていた。

何の根拠もないのに・・・・

僕たちは、ほどなくしてマニラ第一岸壁の客船の傍に着いた。事前に何人かの刑事は張り込んでいたのであるが、マニラ警察の方針としては、ビビアンの家に重点をおいていたから、何かのんびりとした雰囲気であった。

客船に乗り込む人をチェックしているわけでもなく、ただ、船を見ているだけの刑事たちであった。

「大越さん・・・これじゃあ、何にもなりませんよ・・・僕は、客になってもいいですから、船内に入りたいと思っています。チケットを買ってもいいですか?一般人なら問題はないと思いますが・・・」

「・・・それもいいとは思いますが、船内を探すということですか?」

「はい、もうすでに乗船しているかもしれませんよ。そしたら、何の意味もない・・・今いる客だけでも調べてみたいと思います・・・駄目でしょうか?」

「こんなに大きな船ですよ。一室、一室調べていくということですか?それは無理ですよ。私は、まだ、マニラに着いていないと思います。どんなに早くても、1時間以上後になると思っています。それと、今、別の刑事が、乗船している人をチェックしていたのですが、日本人の3人組みはいないということです。4人かもしれませんが、それもいないということです。出航までには、7時間もあります。まぁ、あわてないで待っていたほうがいいと思いますが・・・」

僕は、あせっていた。確かに、大越刑事の言うことのほうが正論だと思う。







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貿易関係の商社では、闇のルートとの付き合いがあることは聞いていたが、こんなに身近に存在しているとは驚きであった。


通常の貿易よりも、リスクは大きいが、大きな利益を確保することは容易である。

金に目のくらんだ奴らならば、人間としての理性を失ってしまうのかもしれない。



知らず知らずのうちに、入っていってしまい、最後には抜け出すことさえ出来なくなる。

そして、利用できなくなったなら、闇から闇へと消されてしまう。

哀れな末路になるということを知っているのだろうか?

金に目の眩んだ奴らの最後は、そんなものだと思う。

僕たちは、まんじりともせずに朝を迎えた。岩崎弁護士は、そんなことは関係ないというように眠っている。



マニラ警察の刑事部屋に一本の電話が入ったのは、朝の7時であった。

大越刑事が電話に出た。

「皆さん・・・金田の足取りが分かりました。ミンドロ島の漁船をチャーターしています。かなりの大金を漁船の船主に払ったということです。小さな漁船だということですが、マニラまでなら問題なく行けるということです。おそらく、2,3時間のうちにはマニラ近郊の港に着くと思われます。ただ、どこの港かということは全く不明ですから、大きな港には警官を派遣させていますが、小さな漁港に接岸したなら発見は難しいと思います。」

「大越さん・・・それでは、ビビアンの家が最後の頼りになるということですか?」と、新開刑事。

「そうなりますね。それも、3人がビビアンの家に向かうという推測です。もし、違う場所に行ったなら完全にお手上げです。しかし、香港に向かう客船は、2隻しかありません。その2隻をマークしていたなら問題はないと思います・・・」と、楽天的な感覚であった。

僕は、この楽天的な感覚に何度裏切られただろう・・・完全には信用できない・・・そして・・・

「大越さん・・・2隻の客船には乗船できないのでしょうか? 何か特別な権限で・・・」と、僕が尋ねた。

「難しいのです。相手は中国です。大使館の許可・・・つまり、中国政府の許可がないと・・・無理です」

「国際手配されている殺人犯がいるのに無理なのですか?」

「無理です。フィリピンと中国とは、犯罪についての共同した形はないのです。中国政府が許可しない限り、船内の捜索はできません。仮に、私たちが客として乗船したとしても、逮捕権はありません。ただ、見ているだけになります。国家間の取り決めなのです。どうしようもない・・・」と、諦めていた。


どうしようもない・・・どうしようもない・・・か?


そうならば、何としても船上ではなくて、フィリピンの国内、つまり、陸上で逮捕するしかないのだろう。

「待つしかないな・・・雪ちゃん・・・」と、新開刑事が言う。

「僕たちも、ビビアンの家に行きましょうか?ここで待っていても仕方ないと・・・」

「しかし、ビビアンの家に行くということも確定ではないし、それよりも、ここで連絡を待っていたほうがいいと思うけどな・・・へたに動いても、何にもならないと思うよ。それよりも、マニラ港に近い、ここにいたほうがいいと思うが・・・」

「そうですね。あせっても仕方ないですよね。相手の動きが分からないままに動いて、とんだドジをしてきましたから、今度は、どんと構えていたほうがいいかもしれませんね。岩崎弁護士のように・・・」

と、岩崎弁護士を見ると、何やら、マニラ湾の地図を開いて見ている。

そんな地図を見ても何も分からないのに、何をしているのかと尋ねると。

「なぁ・・・雪ちゃん・・・マニラ湾を見ているとな、沢山の大きなボートターミナルがあるんだよ。それに、ケソンから近い場所にも、いっぱいある。こんなに広いところで、見つけることができるのかい?いや、仮に、ケソンから車で来て、それからボートに乗るとしたらの話だが・・・こんなに広いエリアだと難しいと思うけど・・・それよりも、マニラ沖にいる船の傍で待機していたほうがいいと思うけど・・・」と、何だか言い出した。

「えっ・・・何だって? そんなにボートターミナルがあるのかい?」

「ほら・・・こんなにあるんだよ・・・」と、僕たちに地図を見せた。

確かに、無数のボートターミナルが存在していた。僕たちは、大きな間違いをしていたかもしれない。

ビビアンの家に行くことだけを考えていた。しかし、そうでないとすれば、どこかの港から、マニラ湾の中の無数のボートターミナルへ直行したほうが楽だし早い。

それに、唯一、顔が分かっているのは、金田純一郎だけである。








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「・・・すまん・・・付いていくよ。何もしないから・・・一人にしないでほしい・・・こんな田舎で一人にされても困るし・・・邪魔しないから・・・」

「・・・約束するな?本当に邪魔しないと・・・」

岩崎弁護士は、すまなさそうに大きく頷いた。

僕たちは、セブ警察の計らいで、ヘリコプターでマニラへ向かうことになった。

航海の専門家によると、3人が乗っている船は、長くても5時間程度の燃料しかないと言う。



必ず、どこかの島で燃料補給をするか、他の船に乗り換えるしかない。

または、個人が所有している飛行機に乗るしかない。

しかし、この時間であるから、飛行機という線は薄い。

それならば、明日、飛行機に乗るしかないと思う。それよりも、早く、僕たちはマニラに着かないといけないのだ。

後に、マニラ警察の調べで分かったのであるが、4人はミンドロ島というところに着き、そこで、別の漁船に乗り換えてマニラの近くの港に着いたということであった。フィリピンの全ての飛行場には警察の手が伸びている。

だから、飛行機ではなく、漁船に乗り換えたということであろう。

4人というのは、漁船を操縦している中国人も含めてだ。

そして、陸路、マニラ市内に入り、ビビアンの家に行く予定だったと思われる。

僕たちは、その日の未明にマニラ警察へ着いた。

岩崎弁護士は文句を言うこともなく、静かにヘリコプターに乗っていた。

マニラ署に着くと、いつものようにソファーに寝転び、眠ってしまった。




どこにいても簡単に眠ることができる特技なのかもしれない。



僕は、そんな岩崎弁護士を少し羨ましく思った。

新開刑事も、待っていてくれた。僕たちの行動が逐一、新開刑事にも伝えられていたのだ。

「雪ちゃん・・・大変だったな・・・どうやら、最終局面が近づいた感じがする・・・で、奴らは?」

「えぇ・・・間違いなくマニラへ向かっていると思います。船を乗り換えるか、燃料を入れてくると思いますが、こんな深夜には燃料を入れる場所はないということですから、別の船をチャーターしていると思います。そして、マニラに近いどこかの港に着くと思います。そして、車でビビアンの家に行くと・・・それと、明日のマニラ港から出航する香港行きの客船はありますか?」

「あぁ・・・マニラ署の刑事が調べてくれた。一隻だけある。香港経由の上海行きだそうだ。おそらくその船に乗ると思うが・・・不安な点が一つある・・・マニラ沖に停泊している別の船もあるということだ。その船は、マニラ港には着かずに、明日の昼に香港へ出航するらしい。それと、どちらの船も中国船籍だ。簡単には捜索することはできない。何でも中国政府の許可がいるらしい。その許可を中国大使館へ打診しているのだが、今のところは何の返答もないということだ。返答がないとなると、やっかいなことになる。船内捜索ができない。今のところは、こういう状況だよ・・・とにかく、もどかしいよ・・・」

「そうですか・・・それで、ビビアンの家には、刑事が張り込んでいるのでしょう?」

「張り込んでいるし、全ての幹線道路にも検問がしかれている。どっちにしても逃げられないと思うが・・・」

「今度は大丈夫でしょう・・・いくら何でも・・・ね・・・」と、僕が大越刑事を見ると。

100%・・・完璧な体制ですよ・・・安心してください・・・」と、胸をはった。

大越刑事から、捜査体制を聞かせてもらったのであるが、マニラ警察の面子をかけての体制だと思った。

マニラからケソンへ向かう道の、全てには検問がしかれ、裏道にも刑事の乗った車が待機していた。

ビビアンの旦那の行方も、つかんでいた。

日本から戻っていて、数日間は、家でのんびりするということまで分かっていた。

そして、確かに、旦那は家にいることが確認されていた。

まさか、ビビアンの旦那が、闇の組織の手下だとは誰も思わなかった。

おそらく、ビビアンも息子も知らないのだろう。







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しかし、マニラ以外の港でもいいのではないか? 他の小さな港のほうが安全ではないか?

わざわざ、人目のつくような場所よりも、人目のない田舎の港で別の船に乗り移ったほうが安全だと思う。

何故、マニラなのか?

「雪田さん・・・おかしな話ですね?」と、僕の考えていることを読んだのであろうか、大越刑事が尋ねてきた。

「大越さんも、同じことを考えていたのですね・・・マニラにこだわる何かの理由があると思います。危険を承知でマニラへ行くということは・・・何だ、何の理由が・・・」

「不思議です・・・香港ルートからの船ならば、他の港でも関係ないはずです。雪田さん・・・もしかしたら・・・正式な航路の大型船に乗るのではないでしょうか?警察は、闇の船を捜すことに必死になる。しかし、3人は正式な航路の船に乗る。それが盲点かもしれません。そして、その船が出港するまでの間は、ビビアンの家に身を隠している・・・ホテルなどは、警察がマークしていますから。ビビアンの家だとしたならば、聴取も終わっているので、完全に盲点ですよ・・・雪田さん・・・?」と、大越刑事が言う。

「僕もそうだと思いまいす。大越さんと同じです。逃亡しているように見せかけて、最後は正式に出国する。そして、香港に着く前に、何らかの方法・・・例えば、海に飛び込み、その身柄を闇ルートが助ける。こういうことは考えられませんか?」

「はい、そうかもしれません。船は一旦、出港したなら、誰も検閲するとこはできません。仮に、船長の権限で、逮捕することは可能なのですが、名前も偽名でしょうから難しいと思います。さらに、フィリピン船籍の船ならば、話は早いのですが、中国船籍の船ならば、簡単にはいきません。公海上ならば、なおさら難しい・・・」

「それですね・・・こうしているわけにはいきません。早速、マニラ警察に連絡して、ビビアンの家に張り込んで下さい。それと、僕たちもマニラへ行きましょう。3人が乗っている船が、どこにいるかよりもマニラへ入ったほうが早いと思いますが・・・?」と、僕は、大越刑事に尋ねた。

「はい、その推理が当たるといいのですが・・・それにしても、手の込んだことをするものです・・・」

「何?これからマニラに行くのか?今夜は、ゆっくりしようよ・・・」と、岩崎弁護士が言う。

「岩ちゃん・・・別に付いてこなくてもいいよ。また、ドジでもやられたら日本人して恥ずかしいよ・・・」






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どうやら、海に飛び込んだ男の身柄が確保されたようだ。

その男は、まぎれもなくジョセフであった。

岸壁の端っこにしがみついていたらしい。

ジョセフは、数人の刑事に取り囲まれるようにして、こちらへ連行されてきた。



海の中にいたせいで全身から海水の匂いがしている。

完全に憔悴しきっている顔になっていた。



大越刑事の前にくると、へなへなと座り込んでしまった。

一人の刑事が全身をチェックしたが、どこにも怪我はないようである。

大越刑事が口を開いた。

「金田たちは、どこに行こうとしているのか?全てを話してもらおう・・・」

「・・・知りません・・・どこに行くかは・・・ただ、船の上で、マニラへ向かうということは聞きました。でも、ここからマニラまでは、あの小型の船では無理です。だから・・・どこか近くの港に行くのだと思います。私は、それ以外のことは知りません・・・」と、蚊の鳴くような力のない言葉であった。

「そうか・・・それと、中国人との関係は?」

「詳しくは知りませんが、香港の闇ルートの手下の人だと聞いています。純一郎さんと取引があるのだと思いますが、私は初めて会った人です。それ以外は・・・」

「先に逮捕された中国人も同じことを言っていたな・・・なんでお前は純一郎たちの逃走を助けたのか?」

「国際手配されているとは知りませんでした。私の家に電話があって、船を出してほしいということだけでした。単に、遊覧をするのかと思っていたのです。純一郎さんとは付き合いもあったので、何の疑いもなく承諾したのです。ただの観光かと・・・」

「本当にそれだけなのか?本当は、逃走していることを知っていたのじゃないか?嘘をつくとさらに罪は重くなるぞ・・・」

「最初は何も知りませんでした。セブ港で警察の船に囲まれて逃げることになって初めて知ったのです。あの3人は追われていると・・・それまでは何も知りません・・・信じてください・・・」

「嘘は言っていないな・・・雪田さん・・・何かジョセフに聞きたいことはありますか?」

と、僕に目をやった。

「少しだけ聞いてもいいですか?ジョセフ・・・日本語は話せるらしいが?」

ジョセフは、ゆっくりと頷いた。

「よく思い出してほしい。船の上で、3人が話していたことを何でもいいから思い出してほしい?」

しばらくジョセフは目を閉じて考え込んでいた。

そして・・・

「さっきも言ったようにマニラへ向かうということと、それから香港へ向かうということです。それ以外は・・・」

「マニラへ行って、それから香港だということだが、船で行くと言っていたのか?それとも飛行機か?」

「船です。飛行機はリスクがあるから、マニラ湾のどこかで別の船に乗り込むと言っていました。マニラから香港までだと小型の船では無理ですから、中型か大型の船になると思います。どんな船なのかも知りません。ただ、香港の闇ルートを手配しているから簡単に行けると・・・聞いています」

「それ以外は、何も聞いてないのだな?もっと、思い出してくれないか?どんな小さな会話でもいいから・・・」

「・・・確か・・・何か女性の名前を言っていました。初めて聞く名前で・・・ビビ・・・ビビ・・・何とか・・」

「ビビアンじゃないか?」

「はい、そうです。ビビアンです。その女の旦那が何とかとか・・・聞いた気がします。ビビアンです・・・」

ビビアン・・・すでにマニラ警察を釈放されている。そのビビアンだとすると、旦那も協力者ということになる。

僕たちは、ビビアンの聴取は行っていたが、旦那のことは全くマークしていなかった。

もし、旦那も協力者ならば、純一郎たちの逃亡の手助けをするのかもしれない。



純一郎たちは、どのようなルートかは知らないが、マニラへ着いて、それから香港へ行く。

その途中での手はずを仕切るのが、ビビアンの旦那ではないかと推測した。