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二章 そんなバカな?

対策本部の遅々として進まない状況に都内の住民からは怒りの声も上がっていた。


都知事もテレビで緊急会見を行った。



「都民の皆さん、落ち着いて行動して下さい。空気感染することはありませんが、発症した人は出来るだけ外出を控えて下さい。現在、国内最高の医学者によって原因を追究しています。また、発症患者のいる地域には入らないようにお願いします。特に、二十三区と多摩東部地区への外出は控えるように。現在のところ死亡者はいません。死に至る奇病ではないのです。都と厚生労働省、内閣も国民の皆様への対応を検討しています。発症した方は指定の病院で検査を受けて下さい。臨時的に健康保険適用としています。とにかく、慎重に行動することを望みます」



続いて都庁の疾病担当課長も会見を行った。



「死ぬことはありません。しゃっくりと同じようなものです。外国からの事例は報告されていませんので日本国内だけです。発症していない方の海外への渡航は規制されていません。また、現在は都内のみですから、他府県から都内へ来る方は、発症の多い地域へは入らないように願います」

「空気感染しないということですが、それなら移動の問題もないのではないですか?」


と、レポーターが尋ねた。


「いや、用心のためです。鳥インフルエンザのように強くなり感染するかもしれないということです。ですから、用のない方は出来るだけ都内に入らないようにお願いしたいのです」


「ウイルスのようなものですか?」


「いえ、全く分かっていません。インフルエンザのようにウイルスが発見されればいいのですが・・・」


「都と国は何をしているのですか?国民が不安になっています。もしかして何かのテロのような?」


「それはないと思います。とにかく専門チームが原因究明していますから・・・」


「何か隠していることはないのですか?国家的な危機だとか?」


「君は何を言っているんだ。そんなことを言うと国民はもっと不安になる。余計なことは言わないピー・・・あっ、あっ・・・ピー・・・」


「・・・課長も・・・なりましたね」


「そんなピー・・・俺がピー・・・俺もピー・・・・お母さんピー・・・」



とうとう、都庁の疾病課長までも発症してしまった。



この映像が全国に流れたものだから国民は一層不安になっていった。



このころには全国で数万人が奇病にかかっていた。



対策専門チームの中の、東大医学部の中野明教授から、面白い研究発表があった。




「原因は不明ですが郡部・・・つまり、田舎、特に農業をしている地域では発症者がいないのです。発症者のほとんどが大都市圏なのです。漁村にも発症者はいますが少数です。つまり、農業従事者には患者がいないということです」

「農業?ということはどういうことですか?」


「はい、農家の人は発症しないということですが、農家という地域がキーポイントになると思うのです。栃木の農家をサンプルとして調べてみましたが・・・もしかして・・・食べ物に関係しているのではないかと?」


「食べ物?」


「はい、都内や大都市の発症者の生活行動で分かったことがあります。それは、全員が日々スーパーで買い物をしているということです」

「野菜を?」


「はい、外国産の野菜を料理しているということです。農家の方は自前で栽培していますから発症はないのではないかと?」


「それならば、家族全員が発症してもおかしくないと思います。しかし、一つの家庭で一人だけということは、どう説明するのですか?それと、独身でもスーパーで買い物をする人はいると思いますが?」


「それは・・・分かりません・・・」




結局、農家が安全だと言うことだけが一人歩きを始めてしまった。








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次第に住民の生活にも支障が出始めている。



「俺たちも有名になったな?」


「そうらしいな。どこでもこの話題で持ちきりだ。何をしても原因は分からないよ。楽しい・・・」


「俺たちは、野菜独自のテレパシーで会話しているし、おなかの中で生き延びているから、誰にも分からない。楽しくて仕方がない。この国の政府も本腰を入れて調査しているが?」


「何をしても無理だよ。俺たちが第一号だが、来週には仲間も市場に入ってくる。そうなると全国に広がると思うよ」


「楽しくて仕方がない。独身の奴らはスーパーとかで買い物をしないから発症しないが、家庭を持った奴らは可哀想だな?」


「あぁ、だから全員じゃなくて家族の一人だけにしたんだよ。全員なら会話も出来なくて本当に可哀想だし、俺たちのせめてもの愛情だよ。別に、この国に恨みはないが、こうでもしないと誰も真剣に考えてくれない。あの国からのものだということを早く知ってほしい?」


「それはそうだが、当分は遊んでみるのもいいと思うよ。いずれ誰かが原因を発見してくれるといいのだが・・・」


「お前は優しいな?俺たちへの仕打ちを忘れたんじゃないだろうな?俺たちが嫌われ者になって初めて気づくんだよ。それまでは苦しむことが一番だ」

「そうだよね?じゃぁ、またな・・・」



野菜たちは、このような会話をしていた。




患者の数は日ごとに増え、都内で千人にもなっていた。








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医者からの通知で、患者の全てが近くの大学病院で再検査を行うということになった。


「いつごろからですか?」

「一週間前キャ・・・」

「僕も一週間ピー」

「私も同じぐらいタマ」

「俺もニン」

「体で何か不調がありませんか?」

全員はないと答えた。


それから、一人ずつ咽頭や喉頭のレントゲンと頭のレントゲンを撮影したのだが、何の異常も発見することは出来なかった。



その夜、大学病院では会議が行われていた。



「まず、耳鼻科部長から・・・」

「咽頭も喉頭にも何の異常もない。炎症があるかと思ったのだが、それもない。あらゆる部位を調べてみたが何の異常もない。私では何も出来ない。信じられない奇病です」

「次、脳外科部長」

「脳をエムアールアイで検査しましたが異常はありません。脳血管のつまりと予想していたのですが・・・全員健康そのものでした。脳外科としては、これ以上は・・・」

「次、心療内科部長」

「はい、精神的なもので、チック症のようなことが起こることはありますが、これは全く別のことだと結論を出しました。今までの経験上において信じられない奇病だと断定出来ます」



各科の医師部長たちは、どうしたらいいのかということで悩んでいた。


その言葉を発する人は次第に増えていき、他の町でも、ナス、ホウ・・・という言葉まで出ていた。



しかし、その気病にかかった人は少数であり、保健所としても放置するしかないと考えていた。



死に至る病気ではないし、奇病は奇病なのだが、精神的におかしくなるということもなかった。



一人の患者は、他の人の発する奇妙な語尾になることはなく、その人は一つだけの奇妙な語尾しかなかった。




ただ、その奇病にかかった人にとっては大変な毎日となっていた。




ある銀行でのことだ。



「佐藤さん・・・佐藤美智子さん・・・こちらへどうぞ」

「佐藤ですニン・・・この書類がニン・・・すいませんニン・・・こういうニン・・・すいませんニン・・・」

「いいんですよ。ゆっくりと話して下さい。落ち着いて・・・」

「はい、これが書類ですが、いいですかニン?」

「ウフフ・・・いいですよ。手続きは明後日には終わっています。明後日の午前中に印鑑を持って来て下さい」

「・・・ニン・・・」



一つ確かなことが大学病院の検査で分かった。


それは、言葉を発している時は何ともないのであるが、一旦言葉が途切れたなら奇妙な語尾になるということだ。




しかし、治療の手立ては全くないままに都内に広がっていった。



最初は数人程度であったが、一ヵ月後には百人にまで広がっていた。

いくつかの大きな大学病院が連携して、厚生労働省の指導で対策本部を作ることになった。



この奇病によって困ることはないと思われていたのだが、人としての会話がうまくかみあわない。



テレビ局の中ではワイドショー的に奇病患者へのインタビューをして放送しているところもあった。



「大変ですね。生活に支障はないのですか?」と、レポーターが聞く。

「大丈夫キャ・・・話さないと何も困ることはないキャ・・・」

「本当に面白いですね?いゃー、初めて聞きましたよ。家族は何と言っているのですか?」

「もう、慣れたようキャ・・・でも、話すことは少なくなりましキャ・・・」

「あなたの町が一番多いということを聞きましたが、町中でこのような言葉が氾濫しているのですか?」

「はいキャ・・・隣の奥さんや子供の学校の先生も同じキャ。だから、先生は授業にならないキャ」

「ハハハ、笑っては失礼ですが、面白いですね。私は何ともないニン・・・あっニン・・・」

「なりましキャ。突然発症するのですキャ」

「そんなニン。バカなニン。私がニン・・・キャではないニン・・・」




この奇病は突然発症するのだ。




連日、ワイドショーでは、この奇病の特集を放送していた。

今のところは東京都内だけで発症しており、他府県には発症の事例は報告されていない。




東京都内だけということで、政府としても何とかして広がることを防ぐことに終始していた。








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■ベジタブルウォーズ 1

ついに野菜たちの逆襲が始まった。

一章 変な病気?

二章 そんなバカな?

三章 戦いの始まり

四章 情けない国

一章 変な病気?

ある日の某国でのことである。




「おい、止めろよ・・・止めろったら。そんなにかけてどうするんだよ」

「聞いているのか?そんなにかけたら後が大変だ」

「くそっ、俺にもかけていやがる。だから友達がいなくなるんだよ」

「そうだよ。最近は友達が来なくなった。お前たちのせいだ。そんなことをしていたなら大変なことになってもいいのか?」

「もう限界だ。こんなに必死で大きくなったのに、そんなことをされたなら何の意味もない。昔は、皆に喜ばれたのに・・・」

「そうだ。今はやっかいものになっているそうだよ。あの国の人達は俺たちを信用しているんだよ。それなのに毎日そんなことをされたなら困る。後悔しても知らないぞ・・・」

「どうしたらいいんだよ?」

「他の仲間と戦争でも起こすかい?」

「この国で?」

「それは駄目だよ。何があったとしても隠滅してしまうさ。あの国なら公になると思うよ。とにかく、あの国へ行こう」

運良く、俺たちの生まれた地域の仲間たちも、あの国へ向かうことになった。

船に乗せられ大きな市場に着いた。

「この国なら信用できるのかい?」

「この国は隠し事があんまりない国だそうだ。俺たちの戦争も隠されることはないと思うよ」

「俺たちはどこに行くのかい?」

「どうやら、東京というところのスーパーマーケットが落札したようだ。かなり大手のスーパーらしいよ。皆も、元気で・・・おいしく食べてもらえよ?」

「他の仲間たちは?」

「ニンジン君とタマネギ君とピーマン君は同じスーパー。ナス君とホウレンソウ君は別のスーパーらしい。これからが楽しみだな。この国の人には悪いが、こうでもしないと目が覚めない。俺たちは安心して食べてもらうために生まれてきたんだ。それなのに・・・あんなに薬をかけやがった」

「薬をかけるから友達の青虫君にも会えなくなった。綺麗なドレスの喋々も来ない。最近は寂しく育つしかなかったな?」

「そうだな。でも、俺たちの戦争で昔に戻ってくれたなら、こんなに嬉しいことはない。しかし、普通のやりかたなら、この国でも隠滅してくるかもしれない。絶対に隠滅できない方法でやる」



仲間たちは、それぞれのスーパーへと出荷されていった。



それから数日後のことである。



ある地域では不思議なことが起きていた。



「お母さん、ただいまキャ・・・」

「どうしたの?しゃっくりなの?」

「今日の昼からおかしいのよ?学校で始まったのよ。皆にはバカにされるし、治るキャ?」

「しゃっくりは、そんなに長くは続かないわよ。一晩寝たら治っていると思うけど・・・」

「今夜は早く寝るキャ・・・」



この女学生のしゃっくりのようなものは次の日も続いた。



母親は、いずれ治るだろうと思っていたが、二日たっても治らない。


医者に行ったのだが原因は不明のしゃっくりだろう言うことであった。





「あなた、今夜は遅いタマ?・・・」

「何だ?面白いことを言うな・・・テレビで誰か言っていたのか?」

「違うのよ。何か変なのよ。どうしても言葉の最後にタマという言葉がつくタマ・・・」

「ハハハハハ・・・何だ・・・ハハハ・・・わざとなのかい?」

「違うって言っているタマ・・・どうしたのかしら?こんなことは初めてタマ・・・」

「病院にでも行ってこいよ。言葉の最後に変な言葉がつく病気なんて聞いたことがないぞ?」

「・・・うんタマ・・・あぁ・・・どうなっているタマ・・・」


この噂は、またたくまに地域に広がっていった。



この地域の耳鼻咽喉科の個人病院には、何人かが外来で来ていた。


しかし、全ての住民がかかっていたという訳ではなく、健康診断をしても何も悪いところは発見されなかった。



医者は、最初、悪意のあるいたずらだろうと考えていたのだが、外来の患者は知り合いでもなく何の接点も発見されなかった。



咽頭か喉頭が何かで炎症を起こし、そういう奇妙な言葉になるのではないかと推測された。



その最後の言葉というものは何種類かあり、キャ、タマ、ニン、ピーという言葉であった。



それも、この地域のみであった。



家族がいる家庭で一人だけということであり、独身には発症していない。


医者も伝染性がないということを結論づけた。





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また、他の地域の家庭でも同じようなことが起きていた。

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今となっては、全て推測として考えることしかできないが・・・

留置されている、徳野茂美らに、純一郎と栄一の死が伝えられたようだ。

皆、一様に長い長い嗚咽であったと聞いた。

「新開さん・・・何とも哀れな最期でしたね。僕は、何としても助けたかった、そして、親子から本当のことを聞きたかった。でも・・・もう・・・何も聞くことはできません・・・情けない・・・」

「あぁ、終わったよ・・・俺も、何とも言えない。こんな悲しい事件は刑事人生の中でも一生記憶に残ると思う。栄一が生きていたことを、もう少し早く知っていたなら、全く違う展開になっていたはずだな。結局、6人が死んだことになる。死ななくてもいい人も・・・ただ、唯一の救いは、親子が一緒に天国へ行ったかもしれないということだ。それと、最後に父親に会えて幸せだったかもしれない。一度でいいから、純一郎の声を聞きたかったと思う。それが、残念でならない・・・」と、新開刑事は目を伏せた。

「はい、そう思います。一緒の最期ということが救いかもしれません・・・この海の奥底に二人は眠っている・・・」

「雪ちゃん・・・最悪の結末というやつだな・・・誰も予想できない・・・俺も、何か悲しいよ・・・さっ、これから、日本で残された茂美や八千代の裁判も始まることになると思う。俺は、もう一度、担当弁護士になりたいと思っている。他の弁護士なんかには任せられないよ。俺しか知らないことも沢山あるしな・・・」

と、岩崎弁護士が、柄にもなく言った。

「うん・・・岩ちゃんじゃなきゃ無理かもしれないね。少しでも情状のある判決になるように頑張ってよ・・・」

「あぁ、これから忙しくなるな。その前に、マニラ観光もしないといけない。明後日には、日本に戻るから、その前に・・・」と、まだ、観光のことを考えている。何とも不思議な人であった。

「雪田さん、新開さん・・・色々とお世話になりました・・・」と、大越刑事が言う。

「いえ・・・何の力にもならなかったと思っています。大越さん・・・山根かおるは、これから?・・・」

「そうですね・・・殺人犯人の逃亡に手を貸し、協力したことの罪は問われるでしょうが、情状酌量の余地はあると思います。栄一殺害に協力したことは時効ですし、栄一を助けたということも今の罪にとって酌量できるかもしれません。私も何とかして軽くなるように力を出してみます・・・」と、大越刑事が言った。

「俺も、戻ったなら担当刑事になる。少しでも罪が軽くなるように担当検事に話してみるよ・・・」

と、新開刑事も言った。

僕たちは、その後、マニラ署を後にしてホテルに戻ることにした。

ホテルまでの道から見えるマニラ湾は、何事もなかったかのように静かに波がよせていた。

新開刑事は、今夜、徳野茂美らを連れて日本に戻るということになった。

本庁からの刑事も来ていたので一緒に戻るらしい。

「岩ちゃん・・・今夜がフィリピン最後の夜になるな。今夜は、ゆっくりとしたいと思うけど、僕に付き合ってくれるかい?」

「あぁ・・・夜の観光だな・・・それが一番だよ・・・ハハハ」と、相変わらずだ。

「観光?・・・少し街でも歩こうか?野郎二人じゃ何の色気もないけどね・・・仕方ないな・・・」

「雪ちゃん・・・たまには男二人で飲むのもいいと思うよ・・・それと、美味しい料理も・・・な」

「うん・・・マニラ湾が一望できるホテルのラウンジがいいな。そこで親子の冥福を祈りたいと思っている。こんなに美しい湾で、あんなことが起きたとは信じたくないが、せめても供養だと思って飲み明かそうか?」

「そうだな・・・俺も付き合うよ・・・」と、岩崎弁護士と二人だけで飲むことになった。

美しい、とても美しい海だ。

この海のどこかで、純一郎と栄一も、美味しい酒を飲んでいるのかもしれないと思った。

夕陽が海に映えてキラキラと輝いていた。

僕にとっては一生忘れることのできない悲しい事件であった。

終わり


次回からは、中古車屋探偵 雪田正三の殺人日記2

溶けない死体  日光 横浜 京都 死体移動のトリック 

公開予定です。





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「それで、どうして爆破しようとしたのですか?」

「ミンドロ島から漁船で出た時には、何としても逃げようという気持ちが強かったことは事実です。しかし、警察のヘリから追われるようになったから、純一郎さんの気持ちに変化があったのです。栄一さんも同じことを考えていたのかもしれません・・・私を殺すために持ってきた、タイマー式の装置を船のエンジンのキャブレターというところに設置しようとしていたのです。最悪の場合は、自爆するということでした。それを止めようとした栄一さんも、純一郎さんの強い気持ちに従うしかなかったのです。ヘリの追跡も激しくなり、このままなら無理だと思ったのかもしれません。ミンドロ島で買ったピストルの弾も底をついてきていました。二人は、何回も言い争いをしていました。私は、ただ、黙って見ているしかなかったのです」

と、また、顔色が蒼白となっていた。その時のやりとりを思い出していたのだろう。

「純一郎は、死ぬ気だったということですか?」

「はい、覚悟はできていたと思います。栄一さんも次第に同じ気持ちになったと・・・私は、何とかして止めようと思いました。二人の会話の中に入ろうとしたのですが、あまりの迫力に何も言えません。そうこうしているうちに、乗り込む予定の船が動き出したのです。予想外のことでした。おそらく、警察に追われているということで危険を察知したのだと思いました。純一郎さんの顔は、恐ろしいぐらい近寄りがたいものになっていました。栄一さんも、完全にあきらめたようでした。親子が何か小声で話し、船のエンジンに何か細工していました。そして、純一郎さんが私を抱えて海に投げ入れたのです。あっという間のことでした。それから先は・・・」

と、泣き崩れた。

おそらく、御手洗を殺害した時と同じようにエンジンに細工して、船を爆破するという行動をしたのだと思う。

何とも哀れな最期であった。

20年ぶりに再会した親子が共に自殺への道を選んだということだ。

僕の推測ではあるが、栄一は純一郎が人を4人も殺したという責任を感じていたのだろう。

そして、純一郎の固い自殺への意志を自分のものとして自殺への道を選ぶしかなかったと思う。




二人は、やっと別の世界で親子として新たなる出発をしていると思うと、何かやるせない気持ちにもなる。

親子の絆・・・こんなにも強いものなのだろうか?

父と子・・・もしかしたなら・・・母と子よりも深い愛が結んでいたのかもしれない。






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「純一郎さん・・・どうやら、警察がこのホテルにいるようです。外に警察らしい車が止まっています。刑事のような人も数人います・・・どうしますか?」

と、フランコがカーテンの隅から外を見ていた。

「ついに、ここまで来たか・・・とうさん・・・このままなら・・・」

「・・・もう駄目かもしれないが、その時には、素直に出頭するしかない・・・純一郎・・・覚悟はいいな・・・」

「うん・・・とうさん・・・もう駄目だよね・・・」

この時点での4人は、警察に捕まってもいいという心境だった。

しかし、この時に、大越刑事の言った一言で、大きく変わったのである。

つまり、ヘタに突入すると怪我人や死者が出るかもしれないということで、翌朝、逮捕するという方針になっていたのだ。これが、これから始まる追跡劇の始まりとなったのだ。

その夜、4人は、警察が突入してくることを覚悟して寝ていた。

純一郎の横には、栄一が寄り添うように眠っていた。

久しぶりの、親子だけの幸せなひと時であったと思う。

20年前の子供に戻ったような、純一郎の安らかな寝顔であった。

しかし、警察は来なかった・・・そして、翌朝・・・・・

「とうさん・・・警察は・・・来ないよ・・・」と、純一郎が不思議そうに言う。

「おかしいな・・・どちらにしても外に出よう・・・フランコとかおるにも連絡してくれるか?」

フランコとかおるは、別の部屋にいたのであった。

純一郎と栄一の親子二人だけの部屋になっていたのだ。

そして、4人は、ホテルのフロントへ向かった。

そこで、どんでん返しが待っていたのだ。昨夜、栄一がピストルを持っているということを聞いたフランコは、そのピストルを栄一のバッグの中から盗んでいたのだ。

そして・・・逃走劇が始まった・・・・


山根かおるは、一気に話した。

「出頭する予定でした・・・しかし、フランコが・・・ピストルを出した瞬間に変わったのです。本当は・・・出頭するはずでしたから・・・フランコがあんなことをするとは思ってもいませんでした」

「そして、ジョセフのところに向かった・・・」と、僕が聞く。

「はい、純一郎さんの知り合いということで・・・今度は、何としても逃げたいという気持ちが強くなっていたのです。純一郎さんは、最初から逃げることで準備していましたから、その手はず通りに事は進んだのです。事前に香港の闇ルートとも連絡を取っていたと思います。私を殺してから逃げる予定だったと思いますが、栄一さんが生きていたということで大きく変わってしまったのです。しかし、逃走のためのルートはそのままにしてありましたから予定通りなのです。3人で、逃げられるところまでは逃げようということになったのです。もし、あの時点で、私が説得していたならば、あんな爆発はなかったと思います・・・・」

「そこから先は、僕たちの知っていることですが、どうしても理解できないことがあります。どうして、船を爆破したのかということです・・・逃げたい気持ちが強かったのではないですか?ならば、自殺なんかは?」

「はい、私にも分かりません・・・確かに、栄一さんは、息子のやった殺人に対して悲しんでいました。できることならば、代わりたいとも・・・自分は、どうなってもいいから、純一郎だけは助けたい・・・息子を思う父親の気持ちだったと思います・・・」

「そんなことは親じゃない・・・親なら、息子を警察へ渡すことのほうが大事だと思わないのか?そんなのは親じゃない・・・確かに、栄一さんのとった行動がなければ、純一郎は連続殺人を犯すことはなかった。が、それとこれは違う・・・それは、親子の絆なんかじゃないと思う。かおるさん・・そうは思いませんか?」




僕は、かなり興奮していた。

そして、山根かおるはゆっくりと頷いた。

取調室には、重たい空気が漂っていた。



僕は、ゆっくりと口を開いた。









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「はい、全てのことを話しました。栄一さんが生きているということも・・・しかし、純一郎さんは警察に追われている身ですから、セブ市内よりも安全な田舎の町のホテルで会うことになったのです。そこから先は、皆さんの知っている通りです。親子の20年ぶりの再会でした。私は、この親子を引き裂く卑劣な手助けをしたかと思うと、何と言って謝っていいのかと言葉もありませんでした。そこで、純一郎さんが、父親の復讐のために人を何人も殺しているということを聞かされたのです」




その時の、金田純一郎と栄一の会話である。




「とうさん・・・生きていたんだね・・・僕は、僕は・・・」

「あぁ、20年も苦労をさせたな・・・かあさんは元気か?」

「・・・再婚したよ・・・でも、とうさんの敵討ちのために協力してくれた。とうさんの姉さんの真奈美さんや、茂美さん、茂美さんの息子・・・とうさんの子供だろう?・・・和義というんだ・・」

「茂美の息子が、とうさんの子供? 本当か・・・」

「そうだよ・・・とうさんの子供だよ・・・僕と一緒に、今度の復讐を手伝ってくれたよ・・・」

「復讐・・・何だ? とうさんが殺されたということの復讐なのか?皆で?」

「そうだよ・・・とうさんの復讐だよ。もう、4人も殺してしまったよ。御手洗、浅田、倉重、そして、海野・・・最後に、かおるさんも殺そうとしたんだ。皆、僕がやったよ。とうさんを殺した奴らを許すことはできなかった。だから、皆、殺したよ・・・でも、とうさんは生きていた。かおるさんから、とうさんのことを聞いていなかったなら、間違いなく、かおるさんも殺していたよ。でも、とうさんは生きていた。どうして、連絡してくれなかったの?とうさんが生きているということを知っていたなら・・・」と、栄一の胸に顔をうずめた。



純一郎にとっては、父親の暖かな胸へ顔をうずめることは一生ないと思っていたのだろう。




胸にうずめた顔を、栄一は必死でさすっていた。二人の目には大粒の涙が、とめどなく流れていた。



その場にいた、山根かおる、フランコも大泣きしていた。



「純一郎・・・これから、どうするんだ?警察が追っているのだろう・・・」

「・・・自首・・・するしかない・・・でも、4人も殺しているから、極刑になると思う・・・僕は、とうさんに会えただけでいいよ。とうさんたちは、警察へ出頭して、これまでのいきさつを話して欲しい・・・」

「お前・・・まさか・・・変なことを考えているんじゃないか?」

「大丈夫だよ・・・逃げられるところまで逃げてみるよ。自殺なんかしないよ・・・だから、とうさんたちは、早く出頭して欲しいんだ。お願いだから・・・僕は、何とかなるよ・・・香港の闇ルートとも付き合いがあるから、香港にでも逃げておくよ。大丈夫だよ・・・香港のルートは大きな組織だから、絶対に・・・」

「お前は・・・とうさんが昔、闇ルートとの付き合いを断ったから殺されそうになったことを知らないのか?あのような組織は、人を人とも思わない。御手洗のような奴ばかりなんだ。それよりも、皆で自首しよう。それが一番だ・・・」

「自首にはならないよ・・・僕がやったことは分かっているし、自首にはならないよ。大丈夫、必ず、逃げてみせる。とうさんは心配しないでよ・・・早く・・・警察へ・・・」

「そんなことは許さない。お前が人を殺したのも、元はといえば、とうさんの責任だよ。とうさんも逃げることはできない。かおるさん、フランコ・・・警察へ・・・早く、後のことは心配ない・・・」

と、栄一は、純一郎と行動をともにするという強い気持ちがあった。

一方、山根かおるもフランコも一歩も引こうとしない。



二人についていくという強い気持ちを示したのだ。

4人の気持ちはひとつになっていた。何も怖いものはないという強い気持ちで結ばれていた。







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 「笑顔になるための246のことば」

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「それから・・・10年後です。本当に偶然だったのです。私がマニラへ買い物に行っていた時です。マニラの片隅の小さな店で働いている栄一さんを見たのです。私は目を疑いました。10年の歳月は、人をこんなにも変えてしまうのかと・・・頬は痩せこけて、昔の栄一さんとは思えませんでしたが、声と仕草は昔の栄一さんに間違いなかったのです。小さな店の奥で肉を切っていました。私は、偶然にもその店の前を通ったのです。本当に驚きました。奥から聞こえてくる男の人の声に聞き覚えがあったのです。物陰から何度も確認しました。その日は、それでセブ島に戻ったのですが、どうしても、もう一度確認したいという気持ちが強くありました。翌日に、また、その店に行ってみたのです・・・間違いありませんでした・・・栄一さんです・・・」


「それで・・・声をかけた?」


「はい、とても驚いていました。咄嗟に栄一さんは逃げようとしたのですが、少し足が悪いのです。後で聞いた話ですが、断崖から落ちた時に、右足を骨折して普通に歩くことはできなかったのです。私は、これまでのいきさつを全て話しました。私がロープを投げたことで海の中に沈むことはなかったのです。それで、骨折した足で泳ぎ、入江の端にたどり着いたということです。そこから、近くの民家に行き助けられたということなのです。民家の老婆は、耳が不自由な人で、警察や海の上で捜索している音は全く聞こえなかったということが幸いしたのです。」


「その時・・・栄一さんは何を話したのですか?」


「私が御手洗と別れ、セブ島にいるというと、私の手を握って涙を流していました。その後、その老婆の家で、やっかいになりながら、時を待っていたということです。その老婆の家には、1年いたと言っていました。近所の付き合いもない老婆だったので何の疑いもなく暮らせたらしいのです。畑で野菜を栽培したりして暮らしていたと聞いています。それから、ケソン市へ出て職を転々としたらしいのです。御手洗がマニラにいないことは分かっていました。何でも、御手洗の会社へ電話したなら番号はないとうことと昔の仲間に声色を使って聞いてみたら、日本に戻ったということが分かったのです。しかし、その後、御手洗は再度マニラで支店を作ったのですが、出会うことはなかったのです。私も、御手洗が支店を作ったことは知りませんでしたが、御手洗は日本にいて、フィリピン人の支店長が仕切っていたので会うことはなかったのです・・・」




と、少し落ち着いたようであった。



「そして、栄一さんは?」

「自分が生きているということが発覚すると、家族が危ないのではないかと思い、身を隠すことにしたというのです。栄一さんは、御手洗の恐ろしさを身をもって経験していたので、家族に名乗り出ることは出来なかったのだと思いました。それからは、私は、栄一さんに会うために何度も店に行くようになったのです。そして、私の貯めたお金で、闇の日系国籍を買うことになったのです。そして、私たちは急速に親しくなりました。その後、栄一さんはセブ島に来ることになったのです。しかし、御手洗のことがありますから、一緒に住むということは出来ません。栄一さんは、別の場所に家を借りたのです。仕事も、肉屋にいたので、セブ市内の肉屋に就職したのです。それからは、楽しい日々が続きました・・・隠れて暮らすという負い目もありましたが、それよりも一緒にいることができるというほうの気持ちが強かったのです。それと、私は、栄一さんを殺害しようとした心の負い目があったのも事実でした。だから、何としても栄一さんを助けたかったのです。」

「よく、分かりました。大変でしたね・・・そして、息子の純一郎からの連絡があったのですか?」

10年以上、二人の生活は続いていました。何のトラブルもなく、それが、つい先日、私の店に日本人がやってきたのです。店の商品を見ながら・・・金田栄一という男を知っていないかと・・・私は、驚くというよりも、顔つきで、もしかしたなら・・・栄一さんの息子ではないかと・・・」

「それで?・・・」








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留置されている4人には、金田親子が爆死したということは伝えられていないということである。

マニラ署の取調べ室で、山根かおるの調べが再開された。

「山根さん・・・そういうことで栄一は殺害されようとしたのですね?」と、僕は尋ねた。

「はい、栄一さんを殺すことになったのです。そして、退社パーティーという名目で別荘に呼び出すことになったのです。その呼び出す役目は私でした・・・私は栄一さんに好意を持っていましたが、栄一さんも私に好意を持っていたような気がしました。それで、私がパーティーを主催するという形をとったのです。栄一さんは、とても喜んでくれました。そして、別荘に来てくれることになったのです。御手洗たちの策略とも知らずに・・・」

「御手洗は、そこで海に突き落として殺そうと・・・?」

「はい、海野幸秀が実行するということになりました。海野も御手洗の会社に出入りしていたのです。最初は、浅田や倉重には実行させようとしましたが、そんな度胸は二人にはありませんでした。そこで、金を出すということになったら海野がやるということになったのです。海野は血も何もない男です。金のためなら殺人も平気だったようです。御手洗は、別荘でささやかなパーティーを開催した後に、栄一さんを私が、外に呼び出すというシナリオまで作っていました。栄一さんの私に対しての好意を逆手にとったのです。私は、皆が飲んで疲れている時に、栄一さんを呼び出し、断崖に向かったのです・・・・」

「そこに、海野が待ち構えていた・・・そして、突き落とした?・・・」

「そうです・・・私たちは、断崖の岩の上に腰掛けて、海を見ながら懐かしい話をしていました。ころあいを見計らって海野が、栄一さんの後ろから着き落としたのです・・・あっという時間でした・・・とても、恐ろしい瞬間でした。栄一さんは、とっさに岩をつかもうとしたのですが、海野は、その手を足で踏んで突き落としたのです・・・栄一さんは、断崖からまっさかさまに海の中へ落ちていきました。私は・・・私は・・・」

と、過去の記憶が蘇ったのであろうか?顔面は蒼白になっていた。


「それで・・・海野は、栄一さんが死んだことを確認したのですか?」

「・・・いえ・・・少しだけ海の中を見ていましたが、私に向かって、ここから落ちたなら助かることはない・・・と言って、別荘に戻ったのです。確かに、海は荒れていましたし、私も絶対に助かることはないと思ったのです。しかし、海の上をよく見ると、栄一さんが海の上に浮いていたのです。私は何とかして助けたいという気持ちになりました。しかし、どうしていいのかも分かりません・・・辺りを見回していると、運のいいことに、釣り人が忘れていった細いロープのようなものが目に入ったのです。私は、そのロープの端を岩に結び、片方の端を海の中に投げ入れたのです。そして、それを栄一さんが掴む場面を見たのです・・・そこから先は、気が動転していて覚えていません・・・早く、別荘に戻らないと御手洗に疑われます・・・急いで別荘に向かったのです。御手洗は、私の帰りが遅いことを疑っていましたが、近くの花を束ねて海の中に投げ入れたというと信用してくれました。そして、全てが終わったのです・・・」

「それで・・・御手洗は、警察へ連絡して、酔った社員が過って海に落ちたと・・・」

「その通りです・・・1時間ぐらいして警察の人が来ましたが、断崖から海を見て、これは無理だという顔をしていました。一応、船をだして捜索してくれるということになったのですが、それも、簡単な捜索でした。御手洗たちは、神妙な顔で捜索に協力していました。簡単な事情聴取があったのですが、警察は何も疑うことはなかったのです・・・酔った日本人が足を滑らせて海に落ちたということで終わったのです・・・海上の捜索も・・・確か、2時間ぐらいで終わったと記憶しています。ここから落ちたなら、湾の外へ流されてしまうということでした。それで、警察も捜索を打ち切ったのだと思います。所詮、日本人が・・・」

「なるほど・・・それから・・・御手洗たちはマニラへ戻ったというこどすね。そして、栄一さんにかけていた保険金を請求するということになった・・・さらに、この事件を闇に葬るために、日本に戻ったということですね?しかし、かおるさんは、フィリピンに残った・・・何故ですか?」

「・・・栄一さんが生きているような気がしてならなかったのです。それと、御手洗にはついていけないと思っていました。御手洗からは、手切れ金としてお金を貰いました。手切れ金というよりも口封じだったと思います。このことは一切口外するなと・・・もし、そのようなことがあったなら、お前も同じことになると・・・」

「あなたは、それだけのためにフィリピンに残ったのですか?本当ですか?何か他に理由があったのではないですか?」と、新開刑事が尋ねた。

「・・・はい、それは・・・御手洗の子供がおなかの中にいたのです・・・日本で中絶することよりも、ここで・・・誰も知らない土地で、そうしたかったのです・・・殺人鬼の子供を生むことなんかできません・・・私は、決断したのです・・・勿論、御手洗は知りません・・・だから、異国で誰にも知られずに・・・」

「そうでしたか・・・で、かおるさんは、そのお金をもとでとして店をセブ島に開いた?」

「はい、しばらくはマニラで働いていました。その後、日本に戻った御手洗からの電話が頻繁にあり、私は怖かったのです。いつも、脅しの口調でした。絶対にしゃべるなと・・・それが嫌になり、1年後に御手洗には秘密でセブ島に移ったのです。それからは静かな日々でした。御手洗は、私のことを探していたと思いますが、数年たっても、何の変化はなかったので完全に諦めたと思ったのです。本当に静かな日々でした・・・栄一さんを殺したという記憶は消えませんが、私なりに平穏な日々でした・・・完全に御手洗とは縁が切れたと・・・」

「そうすると、栄一さんに再会したのは・・・?」