■勝汰章の著作刊行本
「笑顔になるための246のことば」
悲しみを乗り越える時に・・・
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今となっては、全て推測として考えることしかできないが・・・
留置されている、徳野茂美らに、純一郎と栄一の死が伝えられたようだ。
皆、一様に長い長い嗚咽であったと聞いた。
「新開さん・・・何とも哀れな最期でしたね。僕は、何としても助けたかった、そして、親子から本当のことを聞きたかった。でも・・・もう・・・何も聞くことはできません・・・情けない・・・」
「あぁ、終わったよ・・・俺も、何とも言えない。こんな悲しい事件は刑事人生の中でも一生記憶に残ると思う。栄一が生きていたことを、もう少し早く知っていたなら、全く違う展開になっていたはずだな。結局、6人が死んだことになる。死ななくてもいい人も・・・ただ、唯一の救いは、親子が一緒に天国へ行ったかもしれないということだ。それと、最後に父親に会えて幸せだったかもしれない。一度でいいから、純一郎の声を聞きたかったと思う。それが、残念でならない・・・」と、新開刑事は目を伏せた。
「はい、そう思います。一緒の最期ということが救いかもしれません・・・この海の奥底に二人は眠っている・・・」
「雪ちゃん・・・最悪の結末というやつだな・・・誰も予想できない・・・俺も、何か悲しいよ・・・さっ、これから、日本で残された茂美や八千代の裁判も始まることになると思う。俺は、もう一度、担当弁護士になりたいと思っている。他の弁護士なんかには任せられないよ。俺しか知らないことも沢山あるしな・・・」
と、岩崎弁護士が、柄にもなく言った。
「うん・・・岩ちゃんじゃなきゃ無理かもしれないね。少しでも情状のある判決になるように頑張ってよ・・・」
「あぁ、これから忙しくなるな。その前に、マニラ観光もしないといけない。明後日には、日本に戻るから、その前に・・・」と、まだ、観光のことを考えている。何とも不思議な人であった。
「雪田さん、新開さん・・・色々とお世話になりました・・・」と、大越刑事が言う。
「いえ・・・何の力にもならなかったと思っています。大越さん・・・山根かおるは、これから?・・・」
「そうですね・・・殺人犯人の逃亡に手を貸し、協力したことの罪は問われるでしょうが、情状酌量の余地はあると思います。栄一殺害に協力したことは時効ですし、栄一を助けたということも今の罪にとって酌量できるかもしれません。私も何とかして軽くなるように力を出してみます・・・」と、大越刑事が言った。
「俺も、戻ったなら担当刑事になる。少しでも罪が軽くなるように担当検事に話してみるよ・・・」
と、新開刑事も言った。
僕たちは、その後、マニラ署を後にしてホテルに戻ることにした。
ホテルまでの道から見えるマニラ湾は、何事もなかったかのように静かに波がよせていた。
新開刑事は、今夜、徳野茂美らを連れて日本に戻るということになった。
本庁からの刑事も来ていたので一緒に戻るらしい。
「岩ちゃん・・・今夜がフィリピン最後の夜になるな。今夜は、ゆっくりとしたいと思うけど、僕に付き合ってくれるかい?」
「あぁ・・・夜の観光だな・・・それが一番だよ・・・ハハハ」と、相変わらずだ。
「観光?・・・少し街でも歩こうか?野郎二人じゃ何の色気もないけどね・・・仕方ないな・・・」
「雪ちゃん・・・たまには男二人で飲むのもいいと思うよ・・・それと、美味しい料理も・・・な」
「うん・・・マニラ湾が一望できるホテルのラウンジがいいな。そこで親子の冥福を祈りたいと思っている。こんなに美しい湾で、あんなことが起きたとは信じたくないが、せめても供養だと思って飲み明かそうか?」
「そうだな・・・俺も付き合うよ・・・」と、岩崎弁護士と二人だけで飲むことになった。
美しい、とても美しい海だ。
この海のどこかで、純一郎と栄一も、美味しい酒を飲んでいるのかもしれないと思った。
夕陽が海に映えてキラキラと輝いていた。
僕にとっては一生忘れることのできない悲しい事件であった。
終わり
■ 次回からは、中古車屋探偵 雪田正三の殺人日記2
溶けない死体 日光 横浜 京都 死体移動のトリック
公開予定です。