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しかし、ここで待つということの、じれったさがあったのであった。

無駄に時間が過ぎている。ビビアンの家を張り込んでいる刑事からの連絡もない。

間違いなく、純一郎たちはマニラかマニラの近くにいて様子を伺っていると思う。




今度こそは、何としても取り逃がすわけにはいかない。

皆、真剣な眼差しで客船を見張っていた。

すると、大越刑事のもとに電話が入った。

ミンドロ島の警察から、一隻の漁船を日本人に売ったという男が分かったということだ。

何でも、破格な値段で買いたいということで、その男は承諾して漁船を売ったということである。




通常の中古価格よりも数倍も高い値段だ。

間違いない。金田純一郎たちだ・・・

その男の話からすると、5時間前だという。

そうすると、マニラ湾あたりに着くとすれば、1時間後だと予想できた。

僕たちの緊張はいっそう高まっていた。

さらに、その男からの話だと、3人が船に乗り、1人は、乗らなかったということである。



おさらく、その1人は、闇のルートの中国人であろうと思われた。

ミンドロ島では、その中国人の似顔絵をもとに捜索が行われているという。

3人は、間違いなくマニラへ向かっている。そして、客船に乗ろうとしているに違いない。

その連絡をもとに、空からの捜索も開始されることになった。

海上をマニラ方面へ向けて走る、一隻の漁船を探すことになった。

しかし、何十隻という船が行きかっているので、そうは簡単に見つけることは難しい。

それから、30分も経過したであろうか。大越刑事のもとに連絡が入った。

それらしき漁船を発見したということだ。空からの捜索が功を奏した。

さらに、緊張感が高くなる。

「新開さん、雪田さん・・・マニラ湾方面へ向かっている漁船が発見されました。空から停止を求めるアナウンスをしたのですが、停止命令を無視して高速で走っているということです。これから、警察船を出しますが、一緒に乗りますか? それとも、ここで待機しますか?」と、大越刑事が尋ねてきた。

「警察船に乗りましょう・・・ここで待っていても仕方ないと思います。純一郎たちも追跡されていることに気づいていますから、もしかしたなら、マニラではないところに向かうかもしれません。そうしたなら、ここにいても仕方ないと思います・・・」と、僕は答えた。

新開刑事も同じ考えだと言う。

僕たちは、急いで警察船の停泊している岸壁に向かった。

岩崎弁護士も、一人残されることが嫌だということで同行することになった。

空の警察のヘリコプターからの連絡で、停止を完全に無視してマニラ方面に向かっているという。

ヘリコプターは、漁船の上空を旋回しながら、何度も停止命令を出していたらしい。

しかし、近づくと、銃撃されたということであった。

ヘリコプターからも機関銃を発射できるのであるが、3人の身柄を殺さずに確保するという命令が出ていたので、どうしようもなく、ただ、上空から漁船の行く先を見守るしかないという。

「雪田さん・・・3人は必死で逃げているようですね。しかし、このままなら完全に包囲できます。相手は、ただの漁船ですから、こちらが何隻もの船で囲い込めば動くことはできなくなります。時間の問題でしょう・・・」

と、大越刑事が言った。

「そうならばいいのですが・・・相手も必死ですから、何が起こるか分かりません。何となく心配ですよ?・・・」

と、僕は、何か漠然とした不安を感じていた。

「雪ちゃん・・・大丈夫だよ・・・昼間だし、どこへ逃げても無理だよ。ねぇ・・・新開さん・・・」

と、岩崎弁護士が、いつものように暢気な態度だ。

「それは分からない・・・気を抜いちゃ駄目だよ・・・とにかく生きたままで確保したい。死んだなら何にもならない・・・まさか、自殺することはないと思うがね?・・・」と、新開刑事が言った。

僕は、自殺という言葉に敏感に反応していた。