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 「笑顔になるための246のことば」

  悲しみを乗り越える時に・・・

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漁船は、警察船が向きを変えようとして、とまどっている間に沖合の闇の中に姿を消してしまったのだ。

こんな闇夜なら、ヘリからも追跡ができない。警察船も、本格的なレーダーを持っていないので、漁船を探すことは無理だという。警察船からも、何発かの発砲があったが、何の役にも立たなかった。

またしても・・・

警察船は海に飛び込んだ男を捜索している。

海上は警察船のサーチライトと、車のヘッドライトで昼間のような明るさになっていた。

どうやら、警察船は追跡をあきらめたようだ。

岩崎弁護士・・・何というお粗末なことであろう・・・

ピストルの発砲があってから、ずっと、岩崎弁護士は地面に身を伏せたままである。

まるで、犬が伏せているようだ。

こんな時に、とんでもないことをしてくれたのだ・・・・

「雪田さん・・・困りましたよ・・・岩崎さんは・・・・とにかく、飛び込んだ男を捜索しています。溺れていない限りは、この湾の中にいます。おそらく、ジョセフではないかと思っています。少し、様子を見ましょう・・・それと、逃走している漁船は、フィリピン海軍に応援依頼をするしかないと思います。しかし、いくら応援したとしても、どこかの港に着岸したなら、探しようがないです。それにしても・・・とんでもないことをしてくれましたよ・・・」と、地面に伏せたままの岩崎弁護士を睨みつけた。

僕は「岩ちゃん・・・もう、終わったよ・・・」と、軽く背中を叩くと。伏せたままで、僕に顔を向けて

「・・・すまん・・・すまない・・・大変なことをしてしまった・・・皆・・・すまん・・・」

と、どうしようもない顔になっていた。まるで、怒られた犬のような顔をしていた。

「もういいよ・・・やってしまったことは仕方ない・・・あーあ・・・こんなことになるのなら、岩ちゃんをホテルにおいてくればよかったよ・・・また、一からだよ・・・」

「本当に・・・すまん・・・」と、起き上がり、大越刑事にも深々と頭を下げた。

すると、海のほうで大きな声がする。






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船が近づいてくる。段々と船の姿が肉眼でも分かるような距離になった。

船のスピードが、ゆっくりとなり、着岸する体勢になった。確かに、小さな漁船である。



ゆっくりと、岸壁に向かう。そして、エンジン音が小さくなり、船は横を向いた。


船上には、数人の人影が見える。

暗くて誰なのかは確認できないが、女らしき人もいる。

もう少しで、完全に着岸するという時に、カメラのフラッシュのような光が闇の中に光、あたりは明るくなってしまった。


岩崎弁護士のカメラだ。何ということだ・・・

どうやら、緊張のあまり、カメラのボタンを押してしまっていたのだ。


そのフラッシュで、漁船はエンジン音を大きくして岸壁から離れようとしている。

一斉に、刑事たちが船に向かって走るが、とても、漁船に飛び乗ることはできない。

一人の刑事が、ピストルを発射した。すると、その漁船からもピストルの発射している音と光が見えた。

僕たちは、一斉に地面に身を伏せた。

漁船は、岸壁から猛スピードで離れていく、沖合の警察船も動き出した。

岸壁に待機していた警察の車から一斉にヘッドライトが向けられた。

そのとたん、そのライトに映し出された船から誰かが海に飛び込んだようだ。

船は、警察船の横をすり抜け、浅瀬のほうに向かっている。警察船としては、浅瀬に行くことはできない。



浅瀬に入ると座礁してしまうおそれがあったのだ。



何ということだ。






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「雪ちゃん・・・今度はヘリコプター?・・・俺は・・・酔いそうだよ・・・」と、岩崎弁護士が言った。

「だったら、ホテルにいてもいいよ・・・別に、岩ちゃんが、いてもいなくても関係ないと思うし・・・」

と、僕が少しぶっきらぼうに言うと。

「・・・そんなに怒るなよ・・・ついていくから・・・でもな、行きはヘリだけど、帰りは車なんだろう? また、デコボコ道を走るのかい? 体に悪いなぁ・・・仕方ないか・・・」と、文句を言いながらヘリに乗った。

ダナオの港には、警察の人間が待ち構えている。

今度こそは、取り逃がすことはないであろう。

さらに、海上にも警察の船が沖合に待機している。

陸と海は、完全に包囲されていた。

仮に、岸壁に着いて、ジョセフが下船したとして、漁船が逃げようとしても、沖合の警察の船で追尾することができる。仮に、停船命令に従わない場合は、機関銃で威嚇又は威嚇以上の行動に出てもよいとの許可を得ていた。

刻々と、その逃亡漁船が港に近づいている。緊張の一瞬であった。

「雪ちゃん・・・夜のヘリは初めてだけど、下がこんなに真っ暗な場所も珍しいな?・・・」と、岩崎弁護士。

「田舎というよりも、ジャングルに近いよ・・・遠くにチラチラと見える光がダナオの町だと思うよ・・・」

と、言うと。大越刑事が「そうです・・・あそこがダナオの町だと思います。もうすぐです、ヘリは港の近くに着陸します。今度こそは絶対に捕まえますよ・・・まかしておいて下さい・・・」

「そうですね・・・今度こそは・・・陸と海は包囲されていますからね・・・」と、僕も信用する気持ちになっていた。

ダナオ港の周囲には、警察関係者が漁民に変装して待ち構えている。海上の船は、警察船だと気づかれないように、警察船の識別番号を隠している。

僕たちのヘリは到着した。

急ぎ、岸壁に向かう。あちらこちらに変装した刑事がいた。

これなら、猫一匹とても逃げられないと思った。

ダナオの港は、5隻ぐらいが停船できる広さである。すでに、警察の命令で、他の停船していた船は、沖合に移動されていた。岸壁は、一隻の船もいない状態になっていた。

僕たちも、港の倉庫の裏に隠れることにした。

セブからダナオに向かっていた他の刑事の車も到着していた。

ふと、遠くの海上を見ると、小さな船の灯りのようなものが、こちらに向かってくるのが見える。

少しして・・・

「雪田さん・・・あの船です。沖合に停泊している警察船から連絡がありました。間違いなく、その船です。こちらに、一直線に向かっています。警察船も、ゆっくり囲むように移動を開始しました。もう、逃げられませんよ・・・さて、これからですよ・・・」と、大越刑事。

「もうすぐです・・・何か武者震いしますね・・・なぁ・・・岩ちゃん?・・・」

「あぁ・・・まるでドラマのようだよ・・・さて、その瞬間を撮影しないと・・・」と、言って、カメラを構えた。



そのカメラが大きな問題を起こすことになろうとは誰も予期しないことであった。









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ジョセフは、3人の降りた船でトレドに戻るという手の込んだ段取りであった。

純一郎たちは、警察から追われていることを、かなり前から察知していて複雑な動きをしていたと思う。

その動きに、まんまと僕たちは、はまっていたのだ。

今頃は、その奪った漁船で香港へ向けて海を走っているかと思うと、何とも情けない。

しかし、ジョセフは、必ずどこかで下船する。そして、妻の待つ家に戻るのではないか?

ということは、セブから一番近い港で、そして、トレドまで車で戻ることができる港・・・?

ジョセフは、殺人犯人だと知らなかったということを主張したなら、そんなに重い罪に問われることはない。

そこまで考えて行動しているのではないか?

そうであれば、必ず、どこかの港で下船するはずだ。

僕は、大越刑事にセブ島の地図を見せてほしいと言った。

僕の意見に多数の刑事も賛成してくれ、皆で必死に地図を見ている。

一人の刑事が「ダナオしかない・・・」と、つい先日までいたダナオだと叫んだ・・・

その言葉に、他の刑事も頷く・・・ダナオからトレドまでなら車で2時間もあれば戻れるのだ。



それと、香港に行くのには丁度通り道のようなものだと分かった。

それ以外の港は考えにくい・・

そうすると、ジョセフはダナオで下船するだろう? 

今からなら、ダナオへ行くには車で1時間はかかると思うが船よりも車のほうが早い。




高速道路ではないが、セブからダナオの町へは、高速道路と言ってもいいぐらい、車を飛ばすことができる。



彼らの乗っている船は、小さな漁船であるから、車よりも遅いのは確かであった。

「万が一があります。車とへリコプターの両方で追跡しましょう・・・ヘリのほうが早い・・・」



と、大越刑事が提案した。

ここで取り逃がしたならば、大越刑事としてもメンツがないのであろう。

至急、ヘリコプターが準備され、僕たちはヘリ乗り場に向かった。

他の刑事は、車でダナオに向かうことになり、ダナオ警察の応援も準備されていた。

そのころ、海上の船は、僕たちの予想した通りダナオの港へと向かっていたのだ。

ジョセフを下船させるためであった。

警察の話だと、船はダナオには1時間ぐらいで到着するという見解であり、ヘリのほうが30分も早く到着することが分かった。

さらに、ダナオで船を下りることができる場所はひとつしかないということも分かった。

田舎の港町であるから、港湾の整備が進んでいない。それで、船を横付けすることができるのは、ダナオ港しかなという。こんな夜中に、海の上から泳いで陸地まで来るということは不可能だと思っていた。





彼らは、必ず、ダナオ港のどこかの岸壁に船をつける・・・と、皆は確信していた。





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「雪田さん・・・心配ないですよ・・・もう、こっちのものです。セブ市内をくまなく捜査していますから、必ず、足取りはつかめます。それに、前よりも人数が多い。それは彼らにとって不利です。セブ市内なら、交通防犯カメラも沢山ありますから、逃げることはないですよ。ダナオのような失敗はないと思います。もし、失敗したなら、フィリピンの警察は笑いものですよ・・・ハハハ・・・」と、自信満々であった。

僕たちは、セブ中央警察に着いた。刑事部屋に入ると、大越刑事が報告を受けた。

奪った車は、セブ市内の海そばのレストランの駐車場で発見され、その車の中から金田純一郎の指紋も採取された。



車のエンジンは、まだ暖かく、エンジンを切ってからは時間がたっていないという。

その近辺を徹底的に捜索しているという。袋のネズミだということを強調していた。

と、大越刑事が呼ばれた・・・・何やら話し込んでいる?

「雪田さん・・・笑いものですよ・・・また、やられましたよ・・・船です・・・船を盗まれました・・・中国人の1人は、何とか確保したというのですが、残りの5人は、取り逃がしたというのです。岸壁まで追い込んでいたのですが、運の悪いことに、漁船が船着場に帰ってきたのです。その船を奪って逃げたということです。でも、中国人の1人は確保しましたから、締め上げれば白状すると思います。これから、ここに連れてくるということです。雪田さん・・・まぁ・・・残念なことです・・・海上には警察の船が捜索していますから、そう遠くには逃げられないと思いますが・・・」

「えっ・・・船? また・・・船ですか・・・」僕と岩崎弁護士は、言葉もなくなっていた。

またしても、ミスをしたのだ。だから・・・信用できない・・・と。

今度は、今度は・・・・よくいる・・・こんなタイプの人間が・・・どこにでも・・・

しかし、この件は殺人事件なのだ。確かに、フィリピンで起こった事件ではない。日本で起こった事件の犯人が、フィリピンに逃げ込んで逃亡しているのだ。フィリピンにとっては迷惑な話には違いない。

フィリピンの人間が殺されたわけでもないし、本気で捜査する気がないのも尤もなことかもしれない。

そんなことを考えていると、例の逃げ遅れた中国人が連行されてきた。

中国人ということで、言葉の問題がある。全く、英語も話せないようであったが、大越刑事が、ふとしたことで英語は話せるということを感じたようだ。

英語の言葉の一つに敏感に反応したのだ。

大越刑事は大きな怒鳴り声で問い詰めた。

今までの大越刑事とは全く違う。机を叩きながら、彼の襟首をつかんでいる。

このままなら、暴行ではないかというぐらいの迫力ある態度であった。


その態度に観念したのかもしれない・・・彼は、重い口を開いた・・・



彼の話を要約すると・・・

金田純一郎からの依頼で、セブ港の沖合いに行き、そこで別の船に乗り換える。そして、香港へ逃亡するという段取りだということだ。その別の船というのが、彼らの乗っていた船だという。セブ港の沖合いで、乗り換えようとした時に、運悪く、海上警察に不審船として追跡されたということであった。二艘の船は、警察の船から逃れたものの、海岸のほうへ追いやられてしまい、上陸するしか手はなかったという。




そして、近くの民家に入り車を盗んだということまで分かった。

さらに、香港経由で韓国に渡り、日本に舞い戻るという手はずだという。

その中国人の話では、そういうことであるらしい。






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日本では、かなり田舎にいかないと遭遇できないような道である。

昼間に来た時とは全く違う。夜になると、かなり危険な道に変わっていた。

そのころ、セブ中央警察には、新しい情報がもたらされていた。

そして、その情報は、大越刑事に報告された。

日本人らしき数人が、民家に押し入り強引に車を奪ったという。その民家の人からの連絡があったというのだ。

さらに、中国語のような言葉を話していたともいう。

おそらく、純一郎やもう一隻の船に乗っていた中国人と思われる人物ではないだろうか?

奪った車のナンバーも分かっていた。

さらに、大掛かりな検問を始めるということであった。

「雪田さん・・・動きがありましたね。とにかく急ぎましょう・・・後、20分でセブ市内に入ります。まぁ、日本語でいうところの、袋のネズミということです・・・」

「しかし、中国人というのは、一体、何なのでしょうか? 岩ちゃんの言っていた国外逃亡のために船に乗り換えるところで発見されて、諦めて陸地にあがったのかもしれません。それにしても、僕たちは、セブ島を走り回っていますよ。なんだか、急いで観光している気分になっています。岩ちゃん?・・・」

「あぁ、めまぐるしいよ・・・船には酔うし・・・ガタガタの道を走るし・・・まるで、冒険しているようだよ。こんなことになるなら、マニラにいて、徳野茂美を連れて日本に帰ったほうが良かったよ・・・疲れるよ・・・」



と、泣き言を言っている。

「何を言っているんだい・・・岩ちゃんが、一緒に行きたいと言ったんだよ・・・僕は、何も誘っていない・・・」

と、言うと。

「・・・まぁ・・・乗りかかった船だな・・・諦めるしかない・・・残念だけどな・・・」

と、車の中から真っ暗な外を見ていた。

次第に、道の両端に街灯が見えてきた。セブ市内に近いと思う。

すでに、深夜になっていた。ここまで来ると、道も舗装されているので、車の動きもスムーズである。

ふと、隣を見ると、岩崎弁護士は、寝息をたてていた。相変わらずの人である。







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「そんなことがあったのですか・・・主人は関係しているのでしょうか?多分、関係しているのでしょうね・・・そうでなければ、帰ってくるはずだし・・・連絡をしてくると思うのです。こんな時間になっても、何の連絡もないということは何か隠しているとしか思えません。日本人の観光客を、こんな時間まで船に乗せているとは思えません・・・殺人犯に協力しているのですね?・・・」と、顔色は真っ青になっていた。

大越刑事が、優しく・・・言葉をかけた。

「奥さん・・・それは分かりません・・・ただ、その可能性は否定できないということです・・・今は、それしか言えません・・・それと念のために聞いておきたいのですが、ジョセフは日系人ですか?」

「はい、そうです。昔のことは知りませんが、父親が日本人だと聞いています。私と知り合った時も日本語は流暢に話していたのを覚えています。それで、日本との貿易を開始したと思います。過去については何も話してくれにいので本当に知らないのです。ただ・・・私には優しい人です。私は子供が生めない体なのですが、責めたりもしませんでした。だから、私はとても愛しています。ジョセフは私にとっては一番大事な人です。でも、こんなことになってとても不安で仕方がありません・・・どうしたらいいのでしょうか?」


「・・・待つしかないですね・・・」

突然、大越刑事の携帯電話が鳴った。

何やら険しい顔つきになった。とても大事な話のようだと感じた。

「雪田さん、4人の行方が分かりました。分かったといっても・・・セブ港に向かっている不審な二隻の船に停船命令を出したのですが、逃げられたということです。サーチライトを照らして追尾したのですが、セブ港の近くの港に逃げ込んだということで、その一隻の船を調べてみたらジョセフの船だということが判明したのです。彼らは間違いなくセブ市内へ向かっています。しかし、もう一隻は所有者が不明なのです。船の中には中国語で書かれた書類があったということです。今はこれしか・・・とにかく、その近辺を捜索しています・・・」

僕は、また大きな疑問の密林の中に入った。

何故? 船が二隻?・・・・

「雪ちゃん・・・中国がらみなら麻薬じゃないのかい? それとも・・・国外逃亡か?・・・」と、岩崎弁護士。

「うん、そうかもしれない・・・こうしちゃいられないよ・・・セブ市に戻ろう?・・・」

大越刑事が「もう、セブ市内から抜け出すことは無理だと思います。全ての道路には検問をしいていますから・・・」

と、言うのであるが、どうしても信用できない。ダナオの町でも同じようなことがあったので、僕は全く信用できないでいた。

「大越さん、検問だけでは無理ですよ。車ならそうかもしれませんが、車を使っていないなら検問は関係ないでしょう・・・とにかく戻りましょう・・・それしかない・・・」

「それがいい・・・こんなところにいても・・・ホテルもないし・・・」と、岩崎弁護士は不満顔だ。

ということで、僕たちは、もう一度セブ市に戻ることになった。

街灯もない、真っ暗な道を、車のヘッドライトだけで走ることになった。

センターラインも何もない、真っ暗な道・・・・この事件の闇のように・・・






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僕たちは、警察の船で海に出ることになった。



しかし、海といっても広大な広さである。どこを、どう探したらいいのか・・・途方にくれる・・・

また、大越刑事がヘリコプターを要請した。

海と空から捜索するという、大掛かりなものとなっていた。

外は、夕闇がせまり、このままなら捜索することはできないだろう。



しばらく捜索してみたが、その船を発見することはできなかった。

海上は完全に闇の世界となっていた。夜空には満天の星が瞬いている。

3人も、この星を見ているのであろうか・・・

と、ふと思っていると・・・

「雪ちゃん・・・・気分が・・・悪い・・・」と、岩崎弁護士がかなり弱っていた。

「船酔い?」

「・・・最初は何ともなかった・・・とても気持ちがいいと思っていた・・・しかし、駄目だ・・・もう・・・」

と、船の上から顔を海に突き出して青い顔色になっていた。

「何だよ・・・岩ちゃん・・・船の観光は最高だと言っていたくせに・・・もう駄目なのか? どっちにしても戻るしかないよ。こんなに暗いと探しようがないって・・・残念だけど戻るよ・・・」

「早く戻ろう・・・駄目だ・・・死にそうだ・・・早く・・・」と、完全にグロッキーになっていた。

「大丈夫だよ・・・あと、10分で港に着くと言っていたよ・・・もう少しの辛抱・・・ハハハ・・・」

「・・・笑いごとじゃ・・・・ない・・・死ぬ・・・・」と、騒いでいた。

結局、港に着いてからも、4人の所在は不明のままだ。今日の捜査は打ち切られた。

相手は船だということで、これ以上捜査することは不可能だとの結論だ。

見知らぬ土地で、僕は大きな不安にかられていた。今回の事件は、いつも、何かが僕たちを邪魔しようとする。

もう一歩というところで、迷宮の城へと入ってしまう。

もう一歩なのだ・・・純一郎と死んだはずの父親の栄一が一緒にいる。そして、謎の女の山根かおる、さらに、ジョセフ・・・

ジョセフの自宅にも刑事が張り付いているが、彼から奥さんへは何の連絡もない。

僕たちは、ジョセフの奥さんの好意で、その夜はジョセフの家に泊まることになった。

この土地には、ホテルというものは一軒もなかったのだ。

大越刑事と、ジョセフの奥さんのスージーの会話に興味を持った。

ところどころ大越刑事が通訳してくれていた。

「ジョセフは、65才になります。もう、警察では調べいると思いますが・・・以前は、マニラで貿易の仕事をしていました。老後はゆっくりと暮らそうということで、ここに移り住んだのです。10年ぐらい前です。私と結婚したのは、25年前になりますが、未だに、何の仕事をしているのかは分かりません。ただ、貿易ということだけしか話してくれないのです。不安もありましたが、何の不自由もなく暮らせるので、それでいいと思って付いてきたのです。子供もいないし、私はここを終の棲家としていこうと思っていました。何故? 警察に追われないといけないのでしょうか? 私にも詳しく話してくれませんか?・・・」

と、大越刑事に懇願していた。

それを聞いて・・・大越刑事が、重い口を開いた。

今までの経緯を話したのだ。勿論、捜査上において話せないこともある。

口外できる最低限の話をしたのだ。






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運のいいことに、ジョセフの奥さんがいて、ジョセフの写真を提出してくれた。

警察や日本人が尋ねてきたことに、一体何があったのかという不安な顔をしていた。

場合によっては、犯人隠匿になると、大越刑事が話してくれたので、何らかの連絡があれば警察へ連絡すると約束してくれた。

金田純一郎、金田栄一、山根かおる・・・一体どこにいるのだろうか?


ジョセフという男は、写真で見るかぎりは日系のようだ。

トレド警察からの情報では、10年以上前にこの地に住み着いたということである。



それ以前の素性は不明であるという。

前科も犯歴も記録にはないということであった。

本業は、船のエンジンを日本より輸入している、しかし、近所の人の話だと、それだけでは食べていけないということで、魚を獲ったりして生計を立てているということを話していたという。

しかし、それにしては大きな家であり、近所の人も不思議だと思っていると話してくれた・・・

子供はいない。奥さんとの二人暮らしだという。奥さんからの話だと、月に1回は、マニラに行っているということを聞いた。仕事の関係だということであるが、何も詳しいことは教えてくれないという。

そんな男ではあるが、事務所も持ち、事務員まで雇っている。

車も、大型の高級車を所有していると聞いた。

何やら犯罪に加担している匂いがする男であった。

3人はジョセフと一緒にいるということはないか? あくまで推測であるから、僕たちは全く見当違いの場所にいるという不安もあった。ジョセフの居場所さえ分かったなら・・・・

トレドに着いてから、4時間が経過しようとした時である。

ジョセフの奥さんから電話が入った。

日本人の観光客が来ているので、舟で観光するという内容であった。

奥さんは、大越刑事から聞いたことを、ジョセフに言おうとしたのだが、携帯の電波が悪くて途切れてしまったということであった。

日本人の観光客? トレド警察の刑事が・・・「こんなところに日本人の観光客が来ることはないです。観光は絶対にない・・・」

確かに、僕の目から見ても観光地という場所とは程遠いと思う。

そうすると、間違いなく、その日本人というのは、3人であろう・・・

しかし、純一郎と知り合いなら、奥さんには観光とは言わないのではないだろうか?

ジョセフは、純一郎が警察に追われているということを知っているのではないかと思った。

船ということで、漁港や個人の船着場を徹底的に調べることになった。しかし、このエリアには無数の船着場がある。ジョセフが所有している船着場からは、一艘の船がなくなっていることが分かった。

そして、そこには、ジョセフの車と、3人が乗っていたと思われるレンタカーが残されていた。

間違いなく、4人は海の上にいる。