まずは2つの記事を読み比べてほしい。
御岳山ケーブルカー、巻上設備を全面更新へ(RESPONSE)
http://response.jp/article/2015/03/31/247941.html
御岳山:ケーブルカー来年2カ月運休 通学・通院手段なく(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150328k0000m040139000c.html
さすがに交通関係扱うRESPONSE、ちゃんと事実を的確に簡潔に書いている。
それに引き換え毎日新聞の文章の読みにくいこと読みにくいこと。
加えて、「孤立」などと、無駄にオオゴトな酷い印象を与えようとしているように見える。
ちゃんと読めば、
「御岳山駅からふもとの滝本駅までの間に2・8キロの山道があるが、
道幅が狭いため軽自動車しか通れない。」
と書いている。
軽自動車、通れるじゃないか。
子供の通学が厳しいといっても、小学生10人、中学生5人。
こういっては何だが、敢えてそこに住んでいるのだし、
運行しているときでさえ7:30~18:30
の営業時間なのだ。
運賃の高さも考慮すると、本当に普段通学で使っているのか
訝しかしんでしまう。(それとも、通学補助があるのか?)
もうね、
「じゃあ何か?設備を更新せずに老朽化して事故が起こってもいいのか?」
と問い詰めたい。ケーブルカーは急峻な地形を通るだけに工事が難しい。
周辺状況も加味するとほぼ日中しか無理だろう。それでも天候の厳しい冬に
敢えてやろうとするのは影響を最小限に抑えようとしたからではないのかと推測する。
この手の記事ですらこういう書き方なんだから、その他の記事は
どういうスタンスで書いているか、何をかいわんやと言う感じがする。
ついでに
「同鉄道によると、今回の工事はケーブル巻き上げ設備の全面交換で、
部品を調達しやすいインバーター方式に替える。」
別に詳細の理論まで解れとは言わないが、事実関係はちゃんと抑えて欲しい。
(以下、色を変えている部分は読み飛ばしても可。)
現状はRESPONSEによると「二次抵抗制御方式」。
交流誘導電動機は一般にブラシ(整流子)
が要らないのだが、大型の誘導電動機の場合は
始動時の電流を抑えるために二次抵抗の繋ぎを切り替える場合がある。
これが二次抵抗制御方式。
誘導電動機は理論上、定格回転数よりも少し遅いぐらいが最もトルクの出る特性で、
始動時のトルクは弱い。そのため、そのまま動かそうとすると大電流が流れてしまい
最悪電動機が焼けてしまう恐れがある。そのため、始動時は回転子に二次抵抗を
繋げることで電流を低く抑え、回転数が上がったら二次抵抗を通らないようにする。
この場合、誘導電動機でもブラシが必要になる。ブラシは固定した電極と回転する
回転子を接触させて電流を流して部品なので、使えば使うほど磨耗していくので
メンテナンスが必要になる。
これに対し、インバータを使用する場合は、電源周波数を変化させて定格回転数を変化させる。
定格回転数が変わると言うことは定格トルクカーブも変わるので、わざわざ
二次抵抗繋げなくても始動時の電流を抑えることができる。
二次抵抗使わないのであればブラシは不要。
ブラシ自体はカーボンでできていて、消耗品。かつ、昔のモーターには必ずあった部品。
(特に直流電動機はほぼ必須) なのでそれほど入手が難しいわけではない。
むしろ、インバータの方が製造中止後数年で交換部品がなくなるため、
予め予備品を確保しておく必要がある。
もう一つ、安全性から考える。ブラシの磨耗をほうっておくと、絶縁破壊に繋がり
最悪電動機が焼ける。そのため、定期的に絶縁抵抗を測って監視し、大体年に1回は
ブラシの溝の復旧かブラシの交換が必要になる。
対して、インバータが壊れても動かなくなるだけで、電動機が焼けるほどの故障は考えにくい。
つまり、二次抵抗方式からインバータ方式に変えて有利になるのは、
メンテナンスコストと、安全性。
部品の調達は下手すりゃ納期が逆に長くなる。
まぁ、「電動機(またはモーター)」と言わずに「巻き上げ設備の更新」と書いて
その次にいきなり「インバータ」なんだから
何も理解せずに書いているんだなと言うのは解るけどもね。
(あ、ついでのほうが長くなった。)