時が止まったかのような静寂の中に、木の温もりと鉄の匂いが混ざり合う。
今回訪れたのは、大井川鐵道の暫定的な終着駅、川根温泉笹間渡駅です。
そこで出会ったのは、私よりもずっと長く、昭和の激動を走り抜けてきた「大先輩」でした。
古き良き時代の面影を残す駅舎と、今なお現役で力強く走る車両。
かつて大阪の街を走っていた輝かしい車両が、今は静かに暮らす姿──そんなひとときの記録です。
前回までのお話
静岡県の未乗路線をクリアする旅。
大井川鐵道の本線クリアを目指して進んできましたが、令和4年の台風被害という大きな壁が立ちはだかっています。
現在は家山駅から先が復旧途上のため、この川根温泉笹間渡駅が暫定的な終点です。
乗ってきたズームカー
かつて南海電鉄で「ズームカー」として親しまれた名車。
その丸みを帯びた優しいフォルムが、山あいの景色に溶け込んでいます。
この場所まで運んでくれた懐かしの車両とともに、ここから本日の駅めぐりをスタートします。
川根温泉笹間渡駅
構内(金谷方面)
線路は一本。ホームも一つ。
そんなシンプルな「棒線駅」の佇まいが、旅情をそそります。
構内(千頭方面)
この先、線路は千頭へと続いていますが、今は静かに眠ったまま。
錆びたレールを見るのは胸が痛みますが、いつかまた、ここを列車が走り抜ける日を信じて待ちたいものです。
ホームから見た駅舎
ホームの向こうに、風格漂う木造駅舎が見えてきました。
これからどんな風景に出会えるのか、胸が高鳴ります。
店舗がある?
駅舎の中には、地元の温かさを感じさせる小さなお店が入っています。
無人駅であっても、誰かの手が入っている温もり。
このお店は「ひぐらし」というカフェだそうです。
営業時間外だったため店内には入れませんでしたが、コーヒーはもちろん、野菜のピザや手作りケーキが人気のお店だそうです。
サイドビュー
私の駅訪問の習慣で、ぐるっと駅舎の外側に回って見ました。
使い込まれた木材の質感が際立ちますねえ。
現代の機能的な駅にはない、呼吸をしているような建物の風情を感じます。
どこか懐かしい、まさにセピア色の光景です。
出窓
目を引くのが、この可愛らしい出窓のような細工。
かつては四季折々の花を飾っていたのでしょうか。
ここに花があったら、きっと駅全体がぱっと明るくなっていたことでしょう。
時刻表
運行本数は決して多くありませんが、ここにも観光列車はやってきます。
部分運休中であっても、沿線を存分に楽しんでもらおうという思いが伝わってきます。
そう思うと、このレトロな駅が果たしている役割の大きさを感じずにはいられません。
待合スペース
板張りの壁に、作り付けのベンチ。
余計な装飾は何もありません。
出札窓口
駅としては無人ですが、かつての切符売り場の痕跡は残っています。
ベニヤ板で塞がれることもなく、当時の面影を大切に守り続けている姿に、観光鉄道路線である大井川鐵道がいかに駅舎を観光資源として大事にしているかを感じるとともに、駅への愛着を感じて嬉しくなりました。
カウンターの隅にある手荷物窓口の痕跡は、かつてこの地の生活のすべてを鉄道が支えていた時代の名残ですね。
このようなレイアウトは国鉄だけのものだと思っていました。
駅舎入口
正面に回ると、そこには落ち着いた佇まいの「玄関」がありました。
派手さはないけれど、訪れる人を包み込むような包容力があります。
駅前
駅前も、駅舎の雰囲気を壊さない豊かな自然に囲まれています。
写真からも鳥のさえずりと木々の囁きが聞こえてきそうではありませんか?それだけで十分な贅沢です。
駅舎全景
駅舎、駅前、そして流れる空気感。
すべてが愛おしくて、離れがたい思いに駆られる……。
まさに「日本の原風景」がここにはありました。
再びズームカー
形式表示
帰りの時間が近づいてきました。
乗降客がほとんどいなかった旅、まるで私のためにここで待っていてくれていたような錯覚に陥りました。
再びホームで待っていてくれた車両の足元に、ふと目をやると「モハ21001」の文字が。
製造年度
驚いたのは、その製造年です。「昭和33年」。
私よりも長く、実に70年近くも走り続けているのです。
静かで乗り心地の良い最新車両も良いけれど、この「昭和の鉄人」が放つ、いぶし銀の魅力には敵いません。
「まだまだ私なんて、のんびり歩いていられない。もっと頑張らなくちゃ!」
大先輩に背中を押されたような、清々しい気持ちで駅を後にしました。
次回は、大井川本線復路のご紹介です。
往路で失敗した門出駅の駅名標撮影は成功するのか。
どうぞお楽しみに。
(令和5年12月撮影)
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金谷・新金谷駅周辺にはビジネスホテルは少ないので、島田駅を拠点にすると便利です
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