6月15日の日経新聞の記事です
復興庁と国土交通省は東日本大震災の被災地の復興工事で新たな発注方式を導入する。調査・設計と工事施工を一括で大手ゼネコンなどに発注する。
市町村の業務である発注や調整、施工管理を民間が担うことで、大量の復興事業を抱えて人手不足の市町村の負担を軽減。工期を短縮して早期復興につなげやすくする。第1弾として7月から宮城県の東松島市と女川町で始める。
この公共工事の発注方式は米英などで導入されているが、日本で本格的に導入されるのは初めて。平野達男復興相と羽田雄一郎国交相が15日の閣議後の記者会見で発表する。
復興庁と国交省が導入するのは、区画整理や集団移転など地区をまたぐ複数の事業の「調査・設計」から「施工」までをまとめて、ゼネコンなど民間企業に発注する方式。請け負った民間企業は市町村に代わり、工事の発注計画や契約・品質管理を手掛けるのが特徴だ。
日本ではこれまで個々の公共工事ごとに「調査・設計」と「施工」に分け、市町村が個別に発注していた。
コンストラクション・マネジメント(CM)とよばれる新方式だと、設計のできた部分から工事を始められるので、迅速に復興事業を進めやすくなる。
一括受注したゼネコンなど民間事業者は、道路の復旧、区画整備など個々の分野ごとに建設会社やコンサルタントに事業を発注する。民間の創意工夫で事業費を抑える効果も期待できる。
工期短縮、コストも圧縮
復興庁と国土交通省が日本の公共工事で初めて本格的な一括発注方式を導入する。被災地での事業が成功すれば、被災地以外にも国際標準の方式が広がり、日本の公共工事のあり方に一石を投じる可能性もある。
コンストラクション・マネジメント(CM)という発注方式は、日本で2000年ごろから技術者不足に悩む市町村を支援できると注目され始めたが、契約の対価の算出方法が確立されていないなどの理由で導入が見送られてきた。
一括発注方式を導入する第1の利点は、工期を短縮できること。先行的に東京都が実施した車両基地の整備事業では、引き渡しまでの期間が27カ月から20カ月に短縮された。被災地ではより大きな事業が対象で、工期短縮の効果がさらに大きくなる公算が大きい。
コストの圧縮も期待できる。新方式では、各専門工事を施工する工事業者への支払金額がすべて発注者である市町村に開示される。さらに監査法人など第三者が監視する仕組みを導入。コスト構造を透明にすることでムダを省きやすくなるが、実効性が課題だ。
これまで施工を一括で請け負い、下請け業者に自由に発注してきたゼネコンには受け入れられにくいとの指摘があるが、復興庁と国交省は被災地での復興工事で新発注方式の利点を見極める方針だ。
管理を請け負う民間企業が当初の予定工費より安く事業を終えた場合に得られる対価や、逆に当初の予定を超えた場合の責任のあり方が今後の制度設計のカギを握る。