穀物高騰、勝ち組投資家が注目した点は | 株えもんのブログ

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私は商品先物はやらないのですが、興味深い記事なので載せておきます。


 8月下旬、代表的な穀物のトウモロコシのシカゴ先物が過去最高値を更新した。春先は豊作観測が広がり相場はじり安だったのが、米国の産地の干ばつで一変した。



シカゴ先物は約2カ月で6割、東京の先物も約4割上昇した。値上がり前に先物を買った投資家は「完勝」したはずだ。弱気ムードが広がるなかで買いを入れた投資家は何を判断基準としたのだろうか。



 商品先物は証拠金方式のため、差し入れた証拠金の数倍から数十倍の取引ができる。証拠金の何倍を取引するのかを示すのが倍率で、レバレッジとも呼ばれる。


 トウモロコシの倍率は現在、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が約20倍、東京穀物商品取引所が25倍程度だ。



 レバレッジ20倍の商品が6割上昇すると、証拠金として投じたお金の12倍分が戻ってくる計算。同25倍の商品が4割上がれば戻りは10倍分だ。


 穀物はハイリスク・ハイリターンといわれる商品先物の代表的な商品のひとつだが、1年中相場が乱高下を繰り返している訳ではない。経験的に大幅な相場変動が起きやすいのは例年6~9月だ。



 主産地の米国が穀物の生育に重要な時期にあたり、この時期の天候が収穫量を左右するためだ。


 予報技術が発達した現在でも、天候を事前に言い当てるのは容易でない。降雨や気温によって穀物価格は大きく変動するため、この時期の取引は一般に「天候相場」と呼ばれる。



 天候相場の序盤にあたる今年の6月上旬、シカゴのトウモロコシ先物は1年半ぶりの安値を付けた。


 商品取引会社、フジトミの斎藤和彦チーフアナリストは「作付面積が大幅に増え、秋の収穫量が過去最高になるとの米農務省の予想から、先安観測が支配的だった」と振り返る。



米農務省は2月、2012年9月~13年8月の米国のトウモロコシ生産量を前年度比16%増の1423500万ブッシェルと予想。


 毎年この時点の予想は作付面積に予想単収をかけた計算上のもので、結果は天候次第で大きく変わる可能性がある。それでも、増産幅があまりに大きかったので弱気論が広がった。



 投機資金の買い意欲の目安となるファンドの買い越し幅は5月中旬時点で9万枚(枚は最低取引単位、1枚は5000ブッシェル)と3カ月で3分の1に減少。東穀取のトウモロコシ先物も価格の低迷と売買の低迷が続いた。


 市場のほとんどが弱気に振れるなか、買いを入れる投資家もいた。オンライン商品先物大手のドットコモディティの担当者は「在庫率に注目していた投資家がいたようだ」と振り返る。



 米農務省が3月時点で予想した12年8月末の米国内在庫率は6.3%と16年ぶりの低水準だった。3年連続の低下で需給が引き締まる目安といわれる10%を大きく下回った。


 「天候がどう転ぶかは誰にもわからない。豊作と凶作の可能性が半々とすれば、前年から繰り越す在庫が少ない場合、買いを入れておけば、凶作になった時に大幅な上昇が期待できる。半面、豊作になったとしても在庫は不足しているのだから値下がり幅は抑えられる」という。



 東穀取のある幹部も同様の指摘をする。「穀物先物は伝統的な先物商品で穀物だけにじっくり取り組む人もいる。現物の需給をみて、相場の全体の流れの逆方向に張った人がいたはず」とみる。


 それはけっして珍しい考えだった訳ではない。3月24日付の日本経済新聞の商品面は「トウモロコシ、高騰リスク今年も 低在庫で天候相場入り」との記事を掲載している。価格上昇を「リスク」と表現しているのは、原料を仕入れる飼料メーカーや消費者などを念頭に、安値が続かない可能性もある点を指摘するためだ。




 トウモロコシは前年の11年6月末に過去最高値を付けた。米産地が熱波に見舞われ生育が悪く、需給が逼迫したためだ。記事は在庫の積み増しが進まないまま12年の天候相場を迎えるため、もし天候不順なら相場が再び高騰する可能性に言及している。結果として、そのリスクは顕在化した。


 6月中旬以降、米中西部の産地の乾燥と気温の上昇が止まらなくなる。作柄は「豊作」から「平年以下」、「24年ぶりの悪さ」へと週を追うごとに落ち込んでいく。先物を売っていた投機家の買い戻しに加え、新規の買いも集まり、相場は1ブッシェル8.4ドル台に高騰、前年に続いて過去最高を更新した。



 商品市場には投資マネーの流入が目立っている。大手ファンドは価格が変動しやすい点で商品を株式と同じ「リスク資産」としてひとくくりにし、株価が上昇すれば買い、下落すれば売るパターンが目立つ。今年5月は株や商品市場でリスク資産を圧縮する動きが広がり、商品相場は軒並み下落した。


 さらに、相場が上昇または下落基調の商品に、トレンドフォロー型と呼ばれるファンドが相場と同じ方向の注文を出す例も目立つ。


 今春のトウモロコシの場合、相場の下落トレンドに追随するファンドの売りが出ていたようだ。結果的に異常気象による相場高騰で、これらのファンドは損失を出した可能性が高い。



 一方、天候相場の前にトウモロコシを買って相場の高騰後に売り抜けた投資家は「低いリスクで意外に大きな利益が出た」と振り返っているのではなかろうか。