日本は少子高齢化が大きな問題となっています。実は高齢化が進んでいるのはヒトだけでなく生活や産業活動を支えるインフラも同じです。公共インフラの「平均年齢」が上昇している。直近10年では4歳上昇し、15歳を突破した。
小泉内閣以降、公共投資の予算を大きく削減したために、老朽化したインフラの更新が間に合わないためだ。
安全を確保できないため通行止めの橋梁は3年間で1.5倍に急増した。財政難のなかインフラの取捨選択を含めた対応策が必要だが、政府の対応は後手に回っている。
クレディ・スイス証券の推計によると、道路や橋梁など公共インフラをすべて合わせた平均年齢は2011年現在で15.3歳。00年から3.9歳上昇した。3.5歳上昇して44.9歳となる日本人の平均年齢の上昇ペースとほぼ同じだ。日本が抱えるもう一つの「高齢化」だ。
■「動脈」突如切れ混乱
なかでも深刻なのは橋だ。4月末、天竜川を渡る浜松市の「原田橋」が突如として通行止めになった。原因は「つり橋の老朽化によるケーブル破断」(同市道路課)。愛知県側に通じる唯一の動脈が切れ、地元には今も混乱が広がっている。
通行止めの橋梁は昨年4月時点に全国で216カ所と3年前の1.5倍に増えた。通行規制も1658カ所と倍になった。原田橋は築56年。耐用年数の60年を迎える全国の橋梁数を単純計算すると今年の275カ所から10年後には6倍になる。
1950~70年代の高度成長に建設ラッシュが起きたためだ。米国では07年にミネソタ州で老朽化した橋の崩落事故が起き、100人を超える死傷者が出た。
国の12年度の公共事業関係費は4.5兆円とピークだった97年度の半分以下。地方自治体の単独の事業費も5.1兆円と減少傾向だ。
維持管理費と更新費、災害復旧費の合計額は増え続けており、10年度には4.7兆円と新規投資(3.6兆円)を上回った。国土交通省の推計では20年度に5.2兆円、30年度には7.1兆円に膨れる。
■英は民間資金の活用普及
総務省は3月、地方自治体の今後40年間のインフラ更新費は現在の2.6倍になると調査結果をまとめた。更新費が積み上がり、地方が財政危機に陥る。これが最悪のシナリオだ。
回避するためには人口の減少に対応したインフラの取捨選択や、更新の急なピークを作らないように工事を分散する計画や、民間資金活用に向けた政府の強力な推進が必要になる。
上下水道事業の民営化を検討した兵庫県加西市。有識者委員会はPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の実施を提案したが、計画は1年以上止まったままだ。
担当者は「事業規模が小さいために民間側は収益を見込みづらい」と打ち明ける。財政が厳しい小規模な自治体ほど選択肢も限られ、道筋が見えない。
英国では財政再建を進めたサッチャー政権下で国営企業の民営化が進み、90年代からPFIが普及した。
東日本大震災からの復興や政府による巨大地震想定の見直しで、耐震化にともなうインフラ補修も一段と増える。政府の戦略的な対応が求められている。