ふんわりシフォン -340ページ目

月が満ちるまで 感謝の気持ち 4

本当に、バカな息子だよ……


風花、許してやってね


ぽろぽろ泣きながら、おばあちゃんは言った。

魂の抜けたお父さんを見るのは辛かった


そう 言った。


お母さんの想い

お父さんの想い


両方、よく分かるのだと。



誰が悪いわけでなく、みんな自分に正直に生きてきた。


ひどいお父さんだと思う時もある



ひどいお母さんだと


それでも


生まれて来たことに意味があるなら


生きていくことに意味があるなら


自分の命と引き換えにわたしを産んでくれた


お母さんの分も生きていかなければいけない気がする

きっとお母さんは、自由に生きなさいって言ってくれると思う。

誰より

自由に生きてきたから









「ね、ふーかっ聞いてる」

ぼんやりしていた。

「えへへっぼーっとしてた」

呆れ顔のちはやがいた。

「まったくもぅ……もう一回言うからね……」

何気ない日常。

感謝している。いつも、いつも。

月が満ちるまで 感謝の気持ち 3

写真を見つけたちはやが、声をあげる。

「かっわいい!七五三じゃない」

着物姿のおばあちゃんと、わたし。小花を散らした着物が珍しくて、かわいくて脱ぎたくないとだだをこねた。

会う人みんな、優しい顔で見守ってくれていた。

「ちはやも写真あるでしょう」


「まあね。かわいくてビックリするよ~」

にこにこしながら他の写真も見ている。

どれも、おばあちゃんとのツーショットを選んでいた。

遠足、運動会、入学式。

アルバムには穴が空いてしまうけれど、いつも見れるように身近に置いておきたかった。

「口元がおばあちゃんかなぁ…風花の目はお母さんからかな」

「……うん、当たり。目はよく似てるらしいよ」



自分でも嫌になるほど。



写真でしか知らないお母さん。どんな声をしていたんだろう。

わたしにどんな言葉をかけてくれたんだろう。



お母さんのお腹で、どんな言葉を聞いていたのだろう。

知らない世界に生まれおちるわたしを、優しく抱き寄せてくれたのか。



お母さんが生きていてくれたなら、お父さんもわたしを憎みはしなかった。




お母さんの命と引き換えに産まれてきたから。




どちらかしか助けられない



そのぎりぎりの選択で、お母さんのだした答え。



それは



正しかったのか、わからない。




乳飲み子を抱えた男親は、自分の母親に面倒を頼む。

一緒に暮らした日々で、


お父さんの記憶はたくさんの本と後ろ姿。




お母さんにそっくりだという、わたしの顔を見ると、なきべそをかいた子供のような顔をした。



見ると、思いだすから。



お母さんをとても愛していて、忘れられない……



楽しかった記憶を……



だんだんと離れていったお父さん。




そんなお父さんを、おばあちゃんはバカ呼ばわりした。

月が満ちるまで 感謝の気持ち 2

「ふうちゃん、何してんの」
机の上に材料を出したところだった。ほんと、目がはやい。ちはやは。

土台になるカラーボード、細工につかう厚紙、カッター、はさみ、接着剤。

「これから写真のコラージュを作ろうと思って」

「へえ~~面白そう。デコるの」

キラッキラのラインストーンを散りばめた、おばあちゃんがよぎる。

想像のなかでは、豹柄パンツに蛍光紫のシャツ、ちりちりパーマの派手な姿になっている。

「ううん。おばあちゃんにあげるつもりだから」

ふるふると頭を振れば、その凄い姿が追い払えそうだった。

「カワイイに年齢はないんだからね。むしろぜひ、やんなさい」

はいはいと流しながら、色紙に下絵を留めていく。

花の図案だ。

おばあちゃんの大好きな花。

いくつか作った下絵を拡大と縮小のパターンをつくり、コピーしてある。





花びらやがく、おしべやめしべの下絵がある。

いろんな色を重ねたら、きっとカワイイ。

「風花、器用だね。これなんか細かい」

やわらかい花びらを三層に重ねるつもりだった。

誰かに褒めて貰えるのは嬉しいな。