月が満ちるまで 感謝の気持ち 1
高校からはバイトをはじめた。
どこにでもある、お寿司屋さん。土日や祝日になると法事や宴会があるので、準備から手伝いにいく。
「ふーかちゃん、カマボコ切っておいてね~」
にこにこしたママさんに頼まれる。
「法事、何人ですか」
冷蔵庫からカマボコを出しながら聞く。三ツ葉もいるなぁ。
「35人ね。そのうち子供は5人」
カマボコに三ツ葉、椎茸、銀杏、贅沢な茶わん蒸しなら、エビがはいることもある。
器を数分用意して、ひとつづつお盆に並べると、お盆二つ分になった。そのまま重ねおいて、材料を刻む。
「覚えが早くて助かるわ。卵液は大きい方の冷蔵庫だから」
「はい。いつもの器ですよね」
お客様に出す料理を手伝うのは茶わん蒸しくらい。あとはお通しや、揚げ物の盛り付け、テーブルのセッティング、デザートの果物を用意したりする。包丁を使って手伝うのは、茶わん蒸しくらい。
バイトを始めて、茶わん蒸しの作り方を覚えたので、おばあちゃんに作ってあげた。
大きな蒸し器に、湯呑み茶碗二つ分。
へえ、なんて言っていた。
孫の手料理もいいものだね、なんて。
湯気のたつ料理はそれだけで、ご馳走なきがする。
一緒に作った炊き込みご飯と焼き魚。
おばあちゃんの糠漬けをだして。
いつもより豪華。どうってことない日だけど、特別な食事。
何を食べるかより、誰と食べるかのほうが、ずうっと大事な気がする。
初対面だったり、慣れていないと緊張して気詰まりになってしまう。
もちろん、美味しい食事ならその料理自体が楽しい話題になるのだろうけど、なかなかそんな機会もない。
おばあちゃんが居てくれるから、わたしはわたしのままで居られる。
ありがたい。
いつも感謝している。だからなにかお礼がしたかった。
どこにでもある、お寿司屋さん。土日や祝日になると法事や宴会があるので、準備から手伝いにいく。
「ふーかちゃん、カマボコ切っておいてね~」
にこにこしたママさんに頼まれる。
「法事、何人ですか」
冷蔵庫からカマボコを出しながら聞く。三ツ葉もいるなぁ。
「35人ね。そのうち子供は5人」
カマボコに三ツ葉、椎茸、銀杏、贅沢な茶わん蒸しなら、エビがはいることもある。
器を数分用意して、ひとつづつお盆に並べると、お盆二つ分になった。そのまま重ねおいて、材料を刻む。
「覚えが早くて助かるわ。卵液は大きい方の冷蔵庫だから」
「はい。いつもの器ですよね」
お客様に出す料理を手伝うのは茶わん蒸しくらい。あとはお通しや、揚げ物の盛り付け、テーブルのセッティング、デザートの果物を用意したりする。包丁を使って手伝うのは、茶わん蒸しくらい。
バイトを始めて、茶わん蒸しの作り方を覚えたので、おばあちゃんに作ってあげた。
大きな蒸し器に、湯呑み茶碗二つ分。
へえ、なんて言っていた。
孫の手料理もいいものだね、なんて。
湯気のたつ料理はそれだけで、ご馳走なきがする。
一緒に作った炊き込みご飯と焼き魚。
おばあちゃんの糠漬けをだして。
いつもより豪華。どうってことない日だけど、特別な食事。
何を食べるかより、誰と食べるかのほうが、ずうっと大事な気がする。
初対面だったり、慣れていないと緊張して気詰まりになってしまう。
もちろん、美味しい食事ならその料理自体が楽しい話題になるのだろうけど、なかなかそんな機会もない。
おばあちゃんが居てくれるから、わたしはわたしのままで居られる。
ありがたい。
いつも感謝している。だからなにかお礼がしたかった。
秋の便り
晴れた空に秋の気配
夏よりも高く澄み渡っていく
ほわほわと浮かぶ雲は
何処へいくのか
飛びはじめたトンボが
実りを蓄えた田を飛ぶ
収穫まで太陽を浴びて
おいしくなーれ
秋の実りのたより
甘い果実の香り
稲の穂が
風の道を示す
遠くへと誘う郷愁
月が満ちるまで 風待ち 15
待っていたかき氷が届いた。
「食べよ。食べよ」
にこにこしたハルが促す。
思っていたより、ずっとボリュームがあった。
器からお伽話の雪山のようにそびえている。器の内側に透けて見えるシロップが綺麗だ。
さくさくした大きい破片だった。
「水の味がするね」
「水が良くないと出来ないよね」
みんないっしんにスプーンを使って山を崩していく。
「ちはやちゃん、取り替えっこして食べようよ」
ハルの言葉に、浦川は渋々器を滑らそうとした。
「そんな変わらないよ」
「あ、俺マンゴー食いたい。チャレンジャーだよな、ハルは」
さっき買ったジャムは、コケモモと薔薇だった。母さんに買って行くんだ~~って言ってたっけ。
「海斗っ、お前身分をわきまえろ!ちはやちゃんが先だろ。ヒドイ奴だな」
「いいだろ、俺の食ってていいから」
ブルーハワイの器を滑らす。
浦川はどれどれなんて、マンゴーの器から氷をすくって口に運ぶ。
「あ、意外といけるわ。どんな味かと思ったけど」
「わたしも、いい」
橘さんもマンゴー味を口に運ぶ。
みんなで同じ器から食べるのがおかしい。
普段、しないから。
俺、こいつら好きなんだな。
さくさく食べても頭が痛くならない。
常温に戻してから削るかららしい。常温の氷って変だけど。
「この氷、ずうっと食べられたらいいね」
ぽつりとこぼれた言葉だった。
暖冬の影響で、必要な厚さになるまでの氷が出来なくなっていると聞いていた。
氷を切り出す回数も六回から二回に落ち込んでいるそうだ。
「俺達にできるのは、感謝して食べることだよ」
しみじみと器を見つめる。食べ始めてから、氷が溶けていなかった。
お祭のかき氷なら、器の底にシロップの水たまりが出来ているはずだ。
「すごいよね、この氷」
ゆっくりと凍らせた氷は真ん中が白くなったりしない。白いのはカルキなどの不純物だ。
向こう側の透けて見える氷を削って作ってもらっている。
切り出した氷は保存用の氷とおがくずに守られて、夏を待つ。
体積を減らしながら、俺を待っていてくれた。
何ヶ月も氷室のなかで。
「食べて帰って、みんなに言おうよ。すげぇ氷だったって」
「そうだね。なくならないようにみんなに知ってもらいたいね」
「そうだ、なくなる前にオレに返せ」
ハルがマンゴーを取り返す。
「あぁ…減っちゃった…。ちはやちゃん一緒の器から食べようっ」
おねだり光線、発射。
「悪いけど、無理。自分のを食べるので精一杯」
明らかにショックなハル。
次は頑張ってくれ。
「食べよ。食べよ」
にこにこしたハルが促す。
思っていたより、ずっとボリュームがあった。
器からお伽話の雪山のようにそびえている。器の内側に透けて見えるシロップが綺麗だ。
さくさくした大きい破片だった。
「水の味がするね」
「水が良くないと出来ないよね」
みんないっしんにスプーンを使って山を崩していく。
「ちはやちゃん、取り替えっこして食べようよ」
ハルの言葉に、浦川は渋々器を滑らそうとした。
「そんな変わらないよ」
「あ、俺マンゴー食いたい。チャレンジャーだよな、ハルは」
さっき買ったジャムは、コケモモと薔薇だった。母さんに買って行くんだ~~って言ってたっけ。
「海斗っ、お前身分をわきまえろ!ちはやちゃんが先だろ。ヒドイ奴だな」
「いいだろ、俺の食ってていいから」
ブルーハワイの器を滑らす。
浦川はどれどれなんて、マンゴーの器から氷をすくって口に運ぶ。
「あ、意外といけるわ。どんな味かと思ったけど」
「わたしも、いい」
橘さんもマンゴー味を口に運ぶ。
みんなで同じ器から食べるのがおかしい。
普段、しないから。
俺、こいつら好きなんだな。
さくさく食べても頭が痛くならない。
常温に戻してから削るかららしい。常温の氷って変だけど。
「この氷、ずうっと食べられたらいいね」
ぽつりとこぼれた言葉だった。
暖冬の影響で、必要な厚さになるまでの氷が出来なくなっていると聞いていた。
氷を切り出す回数も六回から二回に落ち込んでいるそうだ。
「俺達にできるのは、感謝して食べることだよ」
しみじみと器を見つめる。食べ始めてから、氷が溶けていなかった。
お祭のかき氷なら、器の底にシロップの水たまりが出来ているはずだ。
「すごいよね、この氷」
ゆっくりと凍らせた氷は真ん中が白くなったりしない。白いのはカルキなどの不純物だ。
向こう側の透けて見える氷を削って作ってもらっている。
切り出した氷は保存用の氷とおがくずに守られて、夏を待つ。
体積を減らしながら、俺を待っていてくれた。
何ヶ月も氷室のなかで。
「食べて帰って、みんなに言おうよ。すげぇ氷だったって」
「そうだね。なくならないようにみんなに知ってもらいたいね」
「そうだ、なくなる前にオレに返せ」
ハルがマンゴーを取り返す。
「あぁ…減っちゃった…。ちはやちゃん一緒の器から食べようっ」
おねだり光線、発射。
「悪いけど、無理。自分のを食べるので精一杯」
明らかにショックなハル。
次は頑張ってくれ。